組織デザインの意味

ピープルマネジメントを考えるうえで避けて通れないのが「組織」です。人は組織に所属していますから、必ず仕事やパフォーマンスに影響を与えます。今回は組織デザインについて考えてみます。

組織のあるべき姿は人が作りだすものです。いまあなたが所属する組織構造・運用体制も誰かが考えた結果としてあるものです。どうやってこの組織というものは考えられているのでしょうか。ここでいう組織とは単なる構造だけではありません。ここでは人、戦略、オペレーションなどが絡み合う要素としての組織を考えます。

先日Deloitteが発表したGlobal Human Capital Trends 2016によると、130カ国、7,000人余りの主に人事関係者を調査した結果、組織デザインがもっとも重要な課題として浮かび上がってきました。続いてリーダーシップ、カルチャー、エンゲージメント、学習、などと続きます。

この組織デザインが重視されている背景はいくつかあるようです。レポートによると、時代の変化とともに働き方や市場との関わりが変わってきたというのが一つの大きな理由です。たとえば、昔から定番だった機能別組織からよりネットワーク的、プロジェクト的に動ける組織体制を採用するようになってきたことが上げられます。今や機能別組織体制をもっている組織は全体の38%、5万人以上の規模になるとわずか24%ということです。社内での動きを機敏にすることも理由としてあるのでしょうが、より顧客指向になってきているということもあると思います。顧客のニーズが変化しやすい、または理解しにくくなってきている中でその反応をよくする体制にする必要があるというのは自然な流れです。

例えば、レポートに出ているUberの例では、街という単位ごとに3つの役割を設定しており(City General Manager、Community Manager、Driver Operations Manager)、これ以外は街ごとのニーズにあわせて最適化されていると言います。顧客層は街ごとに存在するわけで、その単位で組織体制を作るのは動きを柔軟にするためにも意味があることでしょう。

私が以前コンサルティングプロジェクトで携わったケースも大変ユニークです。これはある製薬会社がグローバルの研究開発組織改編を行い、それまでは地域別に組織があり、その下に機能別組織があった従来の体制を完全に変えました。疾患領域ごとに組織を作りかえ、上流から下流まで一気通貫して一つの組織で責任を持つことにしました。その結果、地域も超えたバーチャルな疾患領域組織体制を作り上げたのですが、これは薬の世界では上流から下流まで大変なコストと時間がかかるのと、薬は世界のどこでも共通の価値であるため、この組織体制は結果としてより機能していると見られています。このケースはその後書籍などでも取り上げられ、他の製薬企業でも同様の体制に変える例が見受けられるようになりました。

もう一つ重要な時代の変化というのはミレニアル世代層の増加です。このミレニアル世代はデジタル環境の中で生まれ育ってきた21歳〜34歳とされていますが、2025年にはこの世代が世界の労働人口の75%を占めると予想されています。これが何を意味するか。彼らにとってデジタルツールは空気のような存在であり、それより上の世代の人に比べて圧倒的にリテラシーが高いのです。つまり、「スピード」「効率化」「オープン」「共有」といったことが当たり前に行われる環境を求めていると考えます。

上記のようなことが組織デザインの重要性が認識されてきている理由です。では組織デザインをするうえでの要諦はなんでしょう。比較的シンプルにまとめているのがPwC Strategy&による10の原理です(注1)。詳細は省きますが、ここでのポイントは構造、流れ、そして意志決定のガバナンスを適切に設定することです。それも「公式」にデザインされるものと、「非公式(カルチャーや人の動機などに左右される)」なものが混在していることに気をつける必要があります。

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ここで「人」に対する理解・判断の重要性はあまり理解されていないように思います。このレポートではトップタレントに注目して彼らがどういう人材なのか、どういうポジションを任せたいのか注意せよとしています。組織デザインをしていくうえで、ポジションやFTEといった概念だけで考えていくと、人をものとして考えることにつながって適切な組織デザインができない可能性があります。むしろ重要ポジションをどういう人材が配置されるとどういう機能になるのか、そういう視点が重要だということです。ミクロの視点からの人が配置されるべき理想のポジションやタイトル、そしてマクロの視点からの組織デザイン。これらを両輪として考えてこそ本当の組織デザインができるのだと思います。

注1)10 Principles of Organization Design

著者情報

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諸橋峰雄 | Neo Morohashi, Ph.D.
取締役、CYDAS Europe準備室長 | Managing Director, CYDAS Europe Pre-Opening Office

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