グラフは踊る

ここ最近のIT技術の飛躍的な進歩により、私たちの周りには様々な情報が溢れ、日常生活の中にもデータだのグラフだのが押し寄せている感じです。新聞や雑誌、テレビなどで目にするグラフは、数字だけを言われるよりもわかりやすく、インパクトがあるので「何かを理解する」には良いツールだと思います。

ただ、グラフで表現されているデータを正しく理解できないと、誤った認識をしてしまうこともあります。そこで今回のお題を「グラフは踊る」としてみました。

まず、この日本の人口の歴史的推移を表したグラフを、細かい数字の説明は気にせずに、グラフのカーブに注目してご覧ください。

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何なんだ、この急上昇&急降下は・・・と思われる方が多いと思います。私も「え?何これ?」と思った一人です。

このグラフの線形だけを見ると、「近い将来日本は無くなるのではないか?」という不安を抱いたり、「いきなり人口が増加に転じた頃に何があったんだろう」と思われたり、いずれにしても少し過激なグラフです。

実はより過激に見せるためにグラフの一部をマスクしていますので、次に全体像をお見せします。

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はい、実はこのグラフの横軸のスタートは西暦600年なのです。大化の改新が645年ですので、はるか昔の日本の姿です。なあんだ・・・そうなんだ、あぁびっくりした、がこのグラフをきちんと見た時の私の感想です。

ここに見えるように。日本の人口は西暦600年から1000年の間はゆるやかな上昇、一度急上昇して(1600年から)踊り場(1721年から)を経て、1872年ごろからかなり極端な急上昇のカーブを描き、すでに増加のピークは過ぎて(2010年頃)、現在「急降下の真っ最中」です。

日本の人口は減る、と言われ続けていますが、より長いスパンで見渡してみるとその実態がよくわかりますし、楽観的な予測にしても悲観的な予測にしても、決して「緩やかな減少」ではないことも見て取れます。あぁ、本当に日本の人口は減ってしまうんだ、という事実に改めて気づかされたグラフでした。そして若干不安になったのは「この急降下はいつ“緩やかな減少”に移行するのだろうか」ということ。

その答えになるかどうか、もう一つのグラフをお見せします。良く目にする人口ピラミッドですが、「ピラミッド」だったのは1960年まで、今は「積乱雲」のようで、この先は細くなる一方です。ここでもまた2060年のかなり悲観的な予測(キノコ?)に不安がつのります。

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少子高齢化に歯止めをかけなければならない、と政府やマスコミが声を大にして様々な情報提供をしていますが、これらのグラフを見せられれば「あ、そうですね。はい、わかりました」と納得できてしまう気がします。いかがでしょうか?

このように「グラフ」には「日本の人口は毎年xx%ずつ減少」「西暦2060年には人口のxx%が高齢者」と数字で言われるよりも直感的にわかりやすい利点があり、何より視覚的なインパクトがあります。

ただ、最初にグラフの一部を隠してお見せした時のように、グラフの元になったデータ、その根拠(出典)、縦軸や横軸のスケールなどを正確に把握しておかないと、グラフの見た目に踊らされることになります。情報操作といわれるようなものが可能になるのもグラフの怖さです。

日ごろ情報を提供する側の私たちが「事実をわかりやすく正確に伝える」ことを心掛けるのはもちろんのことですが、情報に接する際も見た目のインパクトに踊らされてしまうのではなく、「情報の確度や精度、出典、母集団の妥当性」などに気を付けたいものです。

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青栁伸子
コンサルティングチーム ディレクター

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