「伝わる言葉の素」は頭の中にありますか?

文具店で変わったペンやノートを見るとすぐに飛びついて購入してしまいます。
「何に使おう?」「仕事で使うにはもったいないかな…」などと考えているうちにどんどん文具は増え続け、自宅の本棚を占領するだけの「モノ」となってしまいました。

これじゃ文具に失礼だ、ということで、何とか活用する方法を考え、思いついたのが「お散歩記録」です。

休みの日にふらっと出かけては、いろんな街を散歩しています。友人たちもその趣味は知っており、「●●行ったんだよね?どうだった?」と聞かれるのですが、「良かった!楽しかった!おいしかった!」と伝えたい感動をうまく言葉にできないもどかしさを最近感じていたので、頭と心に残っている「思い出」をアウトプットしてみようと思ったのです。

その時立ち寄ったかわいい雑貨ショップ、渋いマスターと優雅なカップが懐かしい喫茶店、おいしいお蕎麦屋さん…
そのお店の場所はもちろん、雰囲気や会話も切り取って残し、思い出話であとご飯2、3杯はいけるな、という状態にしようと鼻息荒くノートを広げたのですが・・・

これが思ったより大変!
まったく筆が進まないのです。

「目的なく何も考えず気ままに散歩しているから、実は『思い出』は頭にも心にも残っていないのかもしれない…」
ふと、そう感じました。

そして似たようなことが、仕事の現場でもあるな、と思い出したのです。

最近、後輩によく質問されるのが、「研修講師をするとき、受講生の心に残る言葉はどう準備するのですか?コツはありますか?どのような本を読めば書いてありますか?」ということ。

この質問には次のように答えます。
“研修の目的やテーマが固まった時点で、受講生のレベル感やマインドの状態などを考慮した上で、伝えたいキーワードや言葉を考えます。今まで読んだ本や知識、経験、事例などあらゆる情報をフル活用した上で、考えて考えて言葉はひねり出すんだよ。この研修を通して、何を伝えたいか。それが言葉になるんだよ。”

これが事実なのですが、質問してきた本人にとっては、想定した答えではないらしくがっかりした表情。
どうやら、皆、コツ・キーワード集・テンプレートを欲しているようです。

そんな後輩には「ごめんね。でも、自分で考えていない・心にも思っていない言葉は伝わらないよ」と伝えています。

巷には、「雑談力」「プレゼンの極意」「ビジネスで使える会話集」など、こういう言葉を使えば伝わるよ、コミュニケーションがとれるよというテーマが溢れています。にもかかわらず、ビジネスでもプライベートでも、なぜこんなにコミュニケーションの問題を抱えている人が多いのでしょうか?

それは、人間の思いや考えの「表現方法の一つ」でしかない「言葉」にコミュニケーションにおける役割の多くを任せてしまったことで、その「言葉」に振り回されてしまっているからではないでしょうか。アウトプットこそがコミュニケーションだと。

上司と部下のミスコミュニケーションも多くの会社で解決すべき重要課題と認識されていますが、上辺の言葉だけ並べてもコミュニケーションは改善されません。相手を観察し、相手に寄り添い、相手のことを思わなければ、かける言葉は出てこないし、伝わるコミュニケ―ションなんて実現しえないのです。

思いあってこその言葉。
スマートな言葉じゃなくても、考えや思いが乗っていれば、それは伝わるし、逆にとても美しく滑らかな言葉でもそこに思いがなければ、まったく入ってこないものです。

コミュニケーションの本質は、「そこに思いがあるのかないのか」なのかもしれません。

ということで、私が散歩の際に何も考えていないことが明らかになりました。これからは出会う人々の生活や思いにまで意識を巡らせながら散歩するのか、はたまた何も考えていないことがストレス発散となっているので良しとするのか、は少し考えたいと思います…

Photo by Erik Witsoe on Unsplash


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