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2020.5.11

1on1は話すことが目的ではない|正しい進め方・テーマ例を紹介

1on1は、面談相手との信頼関係を高めながら人材育成につなげる目的で定期的に行う、1対1のミーティングです。1on1を実践することで、メンバーの相互理解の促進やモチベーションアップなどの効果が期待できます。しかし、テーマの選び方や効果的な進め方がよくわからない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、1on1の正しい進め方や話すテーマの例、実施する際の注意点などを解説します。他社の事例や1on1を効果的に進めるツールも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

1on1をシステム化するなら、1on1エバンジェリスト・堀井耕策氏が監修した「1on1 Talk」がおすすめです。タレントマネジメントシステム「CYDAS」の各種機能と組み合わせて活用することで、さらなるエンゲージメント向上が期待できます。

1on1ミーティングの意味とは

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で話し合って部下の成長につなげる意味を持つミーティングです。対等な立場で話し合いながら関係性を深める目的もあるため、メンターとメンティの対話にも活用されています。1回あたりの時間は15分~30分程度と短いですが、月1回・週1回といった高頻度で行われるのが特徴です。

もともとは、半導体メーカー大手の米国インテル社が取り入れたマネジメント手法として注目され始めました。日本でも、多様化する個人の価値観や働き方を尊重しながら、社員のパフォーマンスの最大化を目指す目的で1on1を導入する企業が増えています。

人事評価面談との違い

人事評価面談では上司が部下に対して一方的に情報を伝達するのに対し、1on1では面談する側が面談相手の話を傾聴して情報を引き出すという違いがあります。目標管理という共通の目的があるという見方もできますが、評価面談では結果を重視するのに対し、1on1では目標達成のプロセスを重視しているのも違いの一つです。

また、従来の個人面談は、部下に指摘すべき事項が生じたときに一方的に実施されるイメージがあり、面談相手にとってはストレスになるケースもあります。一方、1on1では面談する側とされる側が対等な立ち位置で、しかも定期的に行われるので心理的な負担が軽いのも特徴的です。

1on1を実施する目的

1on1は、面談相手の成長を促する目的で実施されます。プライベートの話も交えながら、面談相手から情報を引き出し、適切にフィードバックを行った上で自主的な行動をサポートしていきます。面談相手が抱えている仕事上の課題や悩みを共有して、解決の糸口を一緒に探すのも1on1を実施する目的の一つです。

面談する側としては、面談相手の情報を十分把握できないと悩む場面もあるでしょう。しかし、1on1には面談する側・される側が信頼関係を深める目的もあるため、短時間でも定期的に話し合いを深めることで互いに心を開いて話しやすくなります。対話がスムーズに進めば、面談相手の状況を的確に理解できるようになり、フィードバックの質も高まります。その結果、面談相手だけでなく面談する側の成長にもつながるのです。

1on1導入企業が増加する背景

近年は「VUCAの時代」と呼ばれており、市場の変化が急速に進んでいます。新型コロナウイルス感染症の影響も長期化するなど、社会情勢の先行きを見通すのも難しいのが現状です。優れた人材を確保して企業の競争力を高めるためには、上司・部下といった関係性にとらわれずに知見を共有していく姿勢も求められます。1on1を導入する企業が増えている背景についても確認しておきましょう。

VUCA時代への適応

「VUCA」とは国際情勢の複雑化を表す軍事用語ですが、2010年代に入ってからはビジネスシーンにおいても「将来の予測が難しい状態」という意味で使われるようになりました。技術革新や個人の考え方の多様化といった、これまでの経験則が通用しないシーンが急増しています。そのため、1on1を通じて社員一人ひとりが自分で考えて、主体的に行動する習慣をつけようと考える企業が増えているのです。

ちなみに「VUCA」とは、以下の英単語の頭文字から作られた単語です。

・Volatility(変動性)

・Uncertainty(不確実性)

・Complexity(複雑性)

・Ambiguity(曖昧性)

個人のキャリアも多様化しており、時には部下が上司よりも豊かな知見を持っているケースも少なくありません。一方、上司には経営戦略に沿ってチーム全体のパフォーマンスを高める役割が求められます。VUCA時代に適応していくためには、「上司と部下」、「リーダーとメンバー」といった関係性にとらわれずに意見を出し合う必要があるでしょう。個人の意見を幅広く集めるためにも、1on1を活用する企業が増えているのです。

人材の離職防止

社員一人ひとりと向き合うことで組織へのエンゲージメントを高め、離職を防止するためにも1on1を活用する企業が増えています。企業のビジョンを一方的に押しつけるだけでは、社員の共感を得られず、転職の動機につながるなどのリスクがあります。

終身雇用制度の崩壊に伴い、転職してキャリアや収入を高めたり、柔軟な働き方を希望する人が増えています。副業やパラレルワークも普及し始めており、人材が離職する可能性が年々高まっているのが現状です。さらに、人口そのものも減っているため働き手の確保も持続的な企業経営にとっては重要な課題となっています。定期的な対話を通じて社員と信頼関係を深め、長く働き続けることができる環境を整備することが1on1の増加する背景にあります。

1on1の基本については、こちらの記事でも解説しています。

「1on1とは?目的や人事評価面談との違い、「意味がない」と言われないためのポイントをわかりやすく解説」

1on1を実施する4つのメリット

1on1のミーティングの効果を最大限に活用するために、適切な運用方法についても確認しておきましょう。ここでは、1on1を実施することで得られる、4つのメリットを紹介します。

面談相手の成長を促す

1on1を適切に運用することで、面談相手の成長を促すことができます。1on1での話し合いをきっかけに、仕事で成功したことやうまくいかなかったこと、メンバーや顧客に迷惑をかけてしまったなどを振り返る習慣がつくようになるからです。自分の仕事を振り返る習慣をつける意味でも、1on1を実施する価値は高いでしょう。

さらに、上司やリーダーといった面談を行う側も、相手の成功エピソードや仕事上の課題などの情報を定期的に共有できるようになります。そのため、面談相手がどのような問題を抱えているのか、なにを考えているのかなどの状況を把握しやすくなり、マネジメントにも効果を発揮します。

その結果、面談相手は自分の仕事を振り返り、仕事上の経験と向き合うことで成功パターンや失敗パターンの蓄積ができるようになるのです。今後の仕事で気を付けるべきポイントや課題が見えてくる可能性も出てきます。メンタル面での課題に気づき、克服できるチャンスが生まれるかもしれません。

面談を行う側にとっても、面談相手と1on1で共有した課題や悩みをもとに的確なアドバイスができる可能性が高く、互いの成長につなげることができるでしょう。面談を重ねるにつれて、潜在能力や成長の可能性を見いだすことも可能です。あらゆる角度から面談する側・受ける側双方の成長を促してくれるのが、1on1のメリットです。

面談相手との関係性を構築する

1on1を実施すると、面談相手と定期的に話ができる機会ができるため、自然に親近感の醸成につながります。

仕事中はお互いが常に忙しく、コミュニケーションがなかなかとれないケースが多いでしょう。1on1で相互理解の時間を確実に確保することで、コミュニケーションの活性化にも有効といえます。

1on1の中で個人的な悩みや将来の目標など自分自身の話をしやすくなり、良好な関係性を築くと同時に信頼関係も深まるでしょう。その結果、安心して仕事に取り組む環境も整って業務の効率化にも貢献します。

面談相手や現場の理解度を上げる

1on1を継続することで、上司やリーダーといった管理職は、面談相手や現場の状況に関する理解を深めることが可能です。

管理職は一つの業務を深堀りするのではなく、業務全体をマネジメントする役割を持っています。そのため、顧客対応をはじめとする実務は部下が行っていることが多く、仕事の進捗や日々の変化まで細かく把握することが難しいケースが少なくありません。

現場で急ぎの仕事や深刻な問題を抱えているにもかかわらず、急ぎでない仕事を管理職が依頼してしまい、現場を混乱させることもあります。現場の立場からすると、現場や個人の仕事の状況を直接上司に話せず、困惑や混乱がさらに広がる可能性も出てきます。管理職や企業への信頼関係を損ねる恐れも出てくるでしょう。

1on1を実施すれば、管理職と対話する時間が保障されるため、現場で困っていることや発生しそうなトラブルなどの情報を早い段階で共有できるようになります。管理職がすべての現場をチェックできない場合でも、オンライン会議システムなどを活用した話し合いも可能です。メンバー個人がおかれている状況も把握しやすくなるでしょう。
さらに、メンバーの家庭事情や性格などを細かく把握できれば、会社が自分を理解してくれているという安心感ももたらされます。企業とメンバーのエンゲージメントを向上させると同時に、仕事のパフォーマンス向上も期待できる可能性も高まります。

面談相手のモチベーションを向上させる

1on1の継続は、面談相手のモチベーション向上にも効果を期待できます。例えば、「どのようなことでモチベーションが下がったか」「仕事の進め方に対して意見はないか」などのヒアリングも効果的です。

面談相手の仕事に対するモチベーションは、それぞれの置かれている状況により常に変化しています。メンバー1人のモチベーションが下がってしまうと、周囲のメンバーにも少しずつ影響を及ぼし、組織全体のモチベーションにも影響する恐れもあるので注意が必要です。
モチベーションが下がっている原因を把握するためには、メンバーが気兼ねなく本音を話せる環境を整えましょう。メンバー個人の課題が理解できれば、職場環境を改善する方法が見えてくるかもしれません。また、メンバーは管理職が職場環境の問題について理解を示してくれたと実感でき、信頼関係も深まるでしょう。その結果、仕事に対するモチベーションにつながり会社の利益にも貢献できます。

具体的な1on1の進め方

1on1を効果的に実施するには、正しい進め方を確認しておくことが大切です。面談シートを活用したりアジェンダを作成したりするなど、1on1の流れをあらかじめ確認しておくようにしましょう。1on1の流れや質問項目の例を紹介します。

1on1の目的を面談相手に伝える

1on1を始める前に、面談する側が面談相手に1on1を実施する目的と内容をわかりやすく伝えるようにします。面談相手の中には、上司やリーダーなどと直接話をするのに、不安を感じたり緊張したりする人も少なくありません。1対1の面談なので、業務の進捗状況や自分の能力に関して厳しく管理されるのではという誤解が生じる懸念もあるでしょう。そのため、1on1は仕事で抱えている課題や個人的な悩みなどの話を聞くために行うものであり、面談相手を管理する手段ではないことを明らかにしておくことが大切です。

また、仕事やプライベートの話をしたことで人事評価や給与改定などに影響すると考える人もいます。人事評価の面談と1on1とは目的が別であること、そして対等な立場で話し合いながら互いの成長につなげる場であることも伝えるようにしましょう。

日程や頻度を決める

1on1を実施する際は、あらかじめ日程や頻度を面談相手と同意しておくようにしましょう。ミーティングによって仕事が妨げられると面談相手が感じてしまうと、継続した1on1の実施が難しくなる恐れがあるからです。

会社によって1on1の実施頻度はさまざまですが、最低でも月1回、できれば週1回は実施することをおすすめします。頻度が多すぎると、1on1が手間だと感じて形骸化しやすくなります。反対に頻度が少なすぎると情報共有が不十分になるだけでなく、話し合った内容を忘れてしまい関係性の構築に影響が出る懸念も生じるでしょう。組織として1on1の頻度を決めた場合でも、面談相手の仕事内容やコンディションによっては実施頻度を調整する必要もあります。1on1の効果を高めるためにも、日程や頻度は慎重に決めるようにしましょう。

1on1を実施する曜日や時間帯を決める際は、仕事の流れへの配慮が必要です。朝の早い時間はすぐに仕事を始めたい人が多く、週末や週明けだと話し合った内容を忘れてしまう可能性も出てきます。また、終業間際だと話し合いが長引くのを敬遠して話す内容を少なくする人もいるかもしれません。始業・終業間際の時間帯や週末・週の始めを避けて、週の後半の午後に実施するとよいでしょう。シフト制を採用する職場では、シフトに1on1のスケジュールをあらかじめ組み込んでおくと仕事の予定が立てやすくなります。

時には、急な仕事が入って1on1をキャンセルしなければならない場面も出てきます。1on1を長続きさせるためにも、キャンセルしたままにせずその場で次の予定を入れるようにしましょう。面談する側が面談相手の予定に合わせるようにすれば、1on1を大切にする姿勢も伝わるでしょう。

当日のテーマを決める

1on1は自由に話し合える場なのでテーマが多岐にわたります。中でも「相互理解」「現状把握」「能力開発」は必ずテーマに盛り込みたい内容です。1回あたりの時間が短いため、充実した話し合いを行うためには前もってテーマを決めて面談相手と共有しておくようにしましょう。テーマを決めずに話し合いに入ってしまうと十分な情報共有ができず、時間が無駄になったという印象が残りがちなので注意が必要です。

当日のテーマは面談する側が決めるのが一般的ですが、面談相手からリクエストがあればそのテーマを優先するとよいでしょう。面談相手と情報を共有して課題を解決するための時間だと意識して、当日のテーマを考えるようにします。話の流れをテンプレートにしておくと、テーマの設定がスムーズです。

1on1の質問項目例

1on1で質問する内容の例をいくつか紹介します。面談相手が自由に話せるよう、オープンクエスチョンを活用するようにしましょう。どうしても話すテーマが見つからない場合は、雑談を通じて課題や悩みを拾い出して次回の1on1につなげるのも一つの方法です。

【相互理解】

・週末は何をして過ごしたのか

・最近気になった出来事について

・食べ物やテレビ番組などの好み

・趣味について

【現状把握】

・仕事に対する悩みはないか

・体調に変化はないか

・職場に対する提案や改善点について

・担当する業務で面談する側がサポートできる内容はあるか

【能力開発】

・仕事のやりがいについて

・自分の強みや弱みについて

・今後チャレンジしたいと思っていること

・取得したい資格など将来的なキャリアについて

当日の進め方を考える

1on1当日の進め方を面談する側と面談相手とが相談して決めると、充実した対話が実現しやすいです。面談する側が事前に1on1のシナリオを考えておき、面談相手に提案しながらベストな進め方を模索していくことが大切です。1on1の前に課題があったほうがよいと考える人もいれば、話し合いながら課題を絞り込みたいと考える人もいます。課題の設定方法についてもあらかじめ決めておけば、心理的な負担も軽減されるでしょう。

1on1当日は、話し合いを始める前に課題の再確認を行います。話し合いの終了前には、面談する側が話の内容を総括して、面談相手の同意を得ることが大切です。話し合った課題について今後どのようなサポートができるのかなど、具体例も提示するようにしましょう。

1on1を実施する

1on1での話し合いをスムーズに進めるために、冒頭で簡単な雑談をするなどアイスブレイクを設けるようにします。面談相手によっては強く緊張している場合もあるため、お互いが打ち解けやすくなる雰囲気を作ることが大切です。

面談相手が話しやすい雰囲気だと感じてくれれば本音も出やすくなり、情報共有や現状把握もしやすくなります。話し合いの内容はメモしておき、記録に残しておくことも次回の話し合いにつなげる大切なポイントです。ただし、オンラインで1on1を実施する場合など録音で記録したいときは、相手の同意を得るようにしましょう。

振り返りと次回への軌道修正につなげる

1on1が終了したら面談相手から十分に情報を引き出せたか、そして成長に必要なアドバイスができたかなどを振り返り、次回の話し合いに生かすようにします。話し合った内容を忘れてしまわないよう、早い段階で記録を共有することも大切です。また、次回の1on1で話し合う課題も決めておけば、話したい内容を事前に整理できて効率のよい1on1が実現するでしょう。

1on1を実施する際の注意点

1on1の効果を発揮するためには、短時間のミーティングでも長続きさせることが欠かせません。面談相手が安心して本音を話せるよう、情報管理を徹底するだけでなくミーティングのタイミングや場所への配慮も必要です。1on1を実施する際の注意点を紹介します。

1回きりで終わらせない

1on1では1回のミーティングで得られる情報量に限りがあるため、1回きりの話し合いでは現状把握や課題解決につながりません。導入当初は月1回を目安に1on1を設定して話す場を整え、徐々に頻度を高めていくと継続的な実施につながります。

1回の話し合いで結果を出そうと考えず、面談する側・面談相手の双方が「話せてよかった」と実感できる場を目指すとよいでしょう。話し合った内容はメモに残しておけば次回以降の1on1につながり、関係性も深まります。

本音を引き出す

1on1を通じて面談相手から本音を引き出すには、面談する側との信頼関係が必要不可欠です。面識がある相手とはいえ、ミーティングの場でいきなり「何でも話して」と言われても面談相手は戸惑ってしまいます。1on1のスタート当初は個人的な話から始めて、互いに打ち解けられる関係性を作ってから仕事に関する話にシフトしていくとよいでしょう。指示・命令する態度は避けて、目を見て話すなど相手を理解する姿勢を示すことも大切です。

話す場所・タイミング・頻度を選ぶ

面談相手が話しやすい環境を整えることも、1on1を効果的に進めるためには重要なポイントです。対面での実施が理想的ですが、テレワークで勤務する人も増えているためオンラインミーティングも選択肢の一つになります。緊張感をほぐして本音を引き出すために、オフィス以外の場所で1on1を実施するのも効果的です。仕事の状況や本人の希望に合わせて1on1を実施する時間帯や頻度を調整すると、無理なくミーティングを継続できるでしょう。

情報の公開範囲を決めて管理する

面談相手が安心して話せる場を守るため、話し合いで得た情報の公開範囲を明確にしておくことも大切です。例えば、人事部と共有していい情報なのか、あるいは他人に知られると職場内の関係性が悪くなるなど、内容ごとに情報を伝えていい相手・悪い相手を面談相手と共に決めるようにします。

得られた情報を業務の改善や人材育成に活用するために、時には情報共有の必要性を面談相手に十分説明して理解を得ることも必要です。話し合いの秘密が守られないと信頼関係が損なわれ、1on1の実施そのものが難しくなる恐れがあるので注意してください。

1on1をスムーズに進めるコツ

1on1では、面談相手の話を傾聴する前提で実施するミーティングです。面談する側が自分のことをさらけ出せば、場の空気が和らぎ話しやすい環境も整うでしょう。1on1をスムーズに進めるコツも確認しておきましょう。

傾聴力を磨く

面談相手が話しやすい環境を整え、1on1がスムーズに進むようにするためには面談する側が傾聴力を磨くことが大切です。面談する側が先に発言したり話す時間が長くなりすぎたりすると、面談相手は自分の考えを率直に話すのが難しくなってしまいます。

話にあいづちを打つ、または話した内容を言い換えるなど相手を理解しているという姿勢を示すようにしましょう。仮に上司や会社に対する不満が出たとしても不快感を示さず、「大変でしたね」「いつもありがとう」というように、話そのものを受け入れることも1on1では重要視されています。

自己開示をする

普段一緒に仕事をしてる間柄といっても、すぐに心を開くのは難しいものです。そのため、面談する側が自己開示することが相手の話を引き出す上で重要となってきます。面談相手が親近感を持つ内容、あるいは面談する側の失敗談をすることで話し合いの場が和んで、本音を引き出せるようになります。ただし、1on1では面談相手が主役だということを念頭におき、話す時間は2~3分ほどにとどめておきましょう。

相手の情報を事前確認する

1on1の実施前に面談相手の情報を把握しておけば、話し合う内容も整理できスムーズに話し合いを進められます。複数のメンバーと1on1を実施している場合、相手の状況・仕事内容や話し合いの日時などが似ていると、誰と話した話題だったのか不明確になるケースが少なくありません。その結果、他人に知られたくない内容が筒抜けになるリスクも生じます。話し合いごとにメモを残して読み返す習慣をつけることも、信頼関係を保ちながらスムーズに1on1を進めるためには重要です。

1on1の他社事例

ヤフー

ヤフーでは、1on1を「部下のための時間」と明確に位置づけた上で週1回・30分のミーティングを実践しています。上司が部下の真意をくみ取り、普段の業務に落とし込んだ上で潜在能力の発掘につなげているのも特徴です。

1on1を導入する前のヤフーでは、上司が多忙なために部下とのコミュニケーションが不十分な状態でした。隣の席にいる同僚ともメールでやりとりすることが日常化していたようです。対話不足が原因の、業務の混乱やトラブルも問題となっていました。その状況を打破するために、業務の仕組みとして上司と部下が向き合ってコミュニケーションを取る時間を設けたわけです。

1on1の実施にあたっては、上司が部下の話を聞くために「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」3つのスキルを整理した上で社内ガイドラインを作成しました。さらに、部下が1on1の結果を評価する「1on1チェック」や社内コーチの養成を行い、1on1の質を高める工夫もこらされています。

その結果、上司と部下の理解が深まってコミュニケーションが活発化し、社内でも1on1が役に立っているという声が聞こえてくるようになりました。社内の人材育成に大きく貢献するなど、1on1は企業が抱えるさまざまな課題の解決に役立つのです。

クックパッド

クックパッドでは、メンバー間の信頼関係を強化するために週1回・15分の1on1を取り入れています。少人数のチーム制で働くエンジニアが他のメンバーを理解した上で業務の課題を発見し、トラブルを未然に防いでいるのが特徴です。

メンバー自身の能力を発揮できている一方で、チームプレーが得意でない社員が多いことが強いチームを作る上では一つの課題でした。チーム力を高めるためにはメンバーの相互理解が必要だと考えたことが、1on1を導入したきっかけです。気軽に話せる雰囲気を大切にしているため、仕事の話だけでなくプライベートに関する話など話題は多岐にわたります。したがって、1on1の実施にあたっては具体的な目標が設定されていません。

1on1によって定期的にコミュニケーションをとる時間を確保でき、普段あまり話さないメンバーとの信頼関係も構築できるようになりました。自由に話せる場として機能しているため、仕事上のトラブルや個人的な悩みも気軽に話すことができ、抱えている問題を早期に発見できるのもメリットです。問題が大きくなる前に仕事上のトラブルに気づき、サービス提供への影響を最小限にとどめることも可能になります。業務の課題を解決する場としても、1on1が有効に機能しているのです。

また、1on1を行う日時と場所を固定して、無理なく続けられる工夫もこらされています。何らかの理由で面談ができなかった場合は翌週にスキップできるため、仕事の進行には影響しません。15分で話し足りないときは外に出かけてランチをしながら1on1を続けるなど、柔軟な進め方でミーティングが行われています。1on1という形で本音を自由に話せる場が確保されることで、安定したコミュニケーションが実現できるのです。

1on1を効果的に行うためのツール「1on1 Talk」

サイダスでは、1on1を効果的に実施するためのツールとして「1on1 Talk」を提供しています。1on1の実施計画からミーティング後の振り返り・フィードバックまで、すべての流れがクラウド上で完結できるサービスです。

話題探しを支援する「トークテーマ設定機能」が搭載されているため、ミーティング前にアジェンダを作成する手間が省けます。面談相手との関係性も見える化されるので、成長度合いのチェックも可能です。

面談を受ける人は、アプリ上で1on1のテーマを確認した上で自分のコンディションを登録できます。面談相手に直接話しづらい内容も伝えやすいため、心理的安全性が保たれるのも特徴です。

単なる面談記録にとどまらず、「どのように運用すれば効果的な1on1が実施できるのか?」というノウハウ面のわかりやすさにこだわって「1on1 Talk」は作られています。

まとめ 1on1をうまく活用して良い組織作りを

1on1をうまく活用することで、上司・部下それぞれの成長につながるなど、組織に大きなメリットがもたらされます。例えば、定期的にコミュニケーションの場を共有することで信頼関係が確立され、仕事や現場の状況を簡単に把握できるようになります。仕事やプライベートの状況に理解を示すことで心理的安全性が保たれ、モチベーションの向上にもつなげられるでしょう。

人材や市場の多様化に対応するために1on1を導入する企業が増えており、1on1を効果的に進めるツールも登場しています。優れた組織を作るために、人事戦略の中に1on1を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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