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2021.6.9

360度評価運用のポイントと導入方法|活用事例も紹介

360度評価は上司から部下だけでなく、部下から上司、そして同僚間が仕事に取り組む姿勢を中心に評価する仕組みです。仕事ぶりのフィードバックを多面的に行えるのがメリットですが、360度評価を効果的に進めるには部門内での信頼関係の構築が欠かせません。制度導入にあたってはルールを明確化するなど、客観性を保つ工夫も求められます。

この記事では、360度評価の導入方法やメリット・デメリット、失敗しないための運用方法を企業事例とともに解説します。

360度評価とは

360度評価とは、仕事に関係するさまざまな立場の人が特定の従業員を評価する仕組みで、「多面評価」とも呼ばれます。成果や能力に着目する上司の評価とは別に、多角的な視点で評価対象者の執務態度を評価することが主な目的です。上司はもちろん、部下や同僚・他部署の人、時には取引先の関係者も評価に加わります。仕事の姿勢を振り返る機会を提供し、評価対象者の行動変革に繋げていきます。上司も部下から評価されるため、マネジメント層の育成にも効果的です。

360度評価を導入する目的

複数の人から入手した、普段の仕事ぶりに関する情報を人材育成に活用することが、360度評価を導入する目的です。豊富な情報から評価対象者が自身の長所・短所に気づくことができ、行動の変革に繋がります。また、存在が認められているという実感から、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。単独評価で起こりがちな感情移入や寛大化といった評価エラーを修正して、評価の客観性と信頼性を高めるのも360度評価の目的の一つです。

360度評価が注目される背景

年功序列制度から成果主義への移行に伴う会社組織の変容が、360度評価が注目される背景の一つです。
人件費の削減に伴い、実務とマネジメントの両方に携わるプレイングマネージャーが増えており、部下の育成やコミュニケーションにかける時間が減少しています。また、テレワークの普及により、部下の仕事ぶりが見えづらくなっている一面もあります。そのため、管理職ひとりの考えで評価を下すのが難しくなっているのが現状です。
さらに、人事評価の結果で昇給・昇格を決める場合、不適切な評価を行うとハラスメントと主張されるリスクも生じます。他社との競争に打ち克つため、部門を超えて業務を進める機会も増えてきました。仕事に関わるあらゆる人からの評価を集めて、評価の納得度を高めるためにも360度評価は注目されているのです。

360度評価のメリット

360度評価のメリットとして、人事評価制度の納得度を高め、会社と従業員との揺るぎない信頼関係を構築できる点があげられます。従業員が評価に直接関与するため、当事者意識の高い組織運営も実現可能です。

評価の客観性が高まる

360度評価では、複数の人が評価を行うため、上司の主観や心証に影響されない点がメリットと言えます。上司が気付かなかった情報が加わることで、評価の客観性が高まるだけでなく、評価対象者の行動特性も可視化しやすくなります。評価結果のフィードバックを通じて、関係者とのコミュニケーションも深まるでしょう。多くの情報をもとに自分自身を客観的に見つめる機会が生まれ、新たな発見や気づきを通じて成長を促す効果も期待できます。

評価に対する納得度が高まる

360度評価では上司以外の評価も多数集まるため、評価内容に対する納得度が高まるのも特徴です。人事評価に納得できない状態では、仕事のモチベーションが低下し、離職につながる恐れもあります。一方、複数の人から同じ内容の評価を受けた場合は、上司単独の評価よりも納得して受け入れやすくなる傾向があります。公平な評価を行う環境が保たれていれば、評価内容に関わらず会社への信頼感が増し、仕事へのモチベーションも高まります。

当事者意識が高まる


360度評価では、誰でも評価する側になるため、組織運営への当事者意識が高まる効果も期待できます。自己評価と360度評価の結果を比較することで、自分の強み・弱みを把握できるなど、自己理解を深められる点もメリットです。自分の示した評価が相手の行動意識を変えるという考えから、上司だけでなく関係者全員に公平に接しようとする意識も生まれます。その結果、組織への帰属意識も高まり、早期離職の防止にも繋がるでしょう。

360度評価のデメリットと注意点

360度評価では、多様な情報が集まりやすい反面、人間関係に忖度(そんたく)して適切な情報を提供しない人が現れる懸念もあります。主観的評価に起因する人間関係の悪化やモチベーション低下も気がかりです。360度評価のデメリットと注意点を確認しておきましょう。

評価に主観・ばらつきが出る

評価することに慣れていない状態で360度評価を行うと、主観や好き嫌い・個人的な人間関係が評価に反映される懸念があります。評価結果にバラつきが生じて、360度評価のメリットである客観性を損ねる危険性も出てきます。低い評価結果が出た場合に、仕事へのモチベーションが下がるなど、会社の生産性にも影響が及ぶ恐れがある点にも注意が必要です。360度評価を実施する前に、評価の目的や方法を具体的に説明しておくようにしましょう。

周りからの評価を気にしすぎてしまう

周りからの評価を気にしすぎる余り、他人への評価を甘くする人が現れる可能性がある点にも注意が必要です。特に記名式で360度評価を行う場合には、上司からの報復を恐れて率直な評価ができない人も出てくるでしょう。反対に、部下からの評価を気にして上司が厳しく指導しなくなると、部下のスキルアップを阻害するというデメリットが生じてしまいます。上司がリーダーシップを発揮できないと、組織の統率が取れなくなり業務に支障をきたします。「昇給・昇格には360度評価の内容を加味しない」と明確化しておくのも、正しい評価情報を得る方法の一つです。

不正が発生する可能性も

好き嫌いの延長などで、社員同士が評価内容を申し合わせるという不正が発生する可能性もあります。例えば、同僚や部下に良い評価をつけるよう要求したり、嫌いな上司に低い評価をつけるよう呼びかけたりする行為です。不正な評価を放置すると、評価制度自体の信頼性が下がるだけでなく、職場内の人間関係を悪化させてしまいます。評価に対する報復行為を禁止するなど、評価ルールを周知徹底しておくことが大切です。

失敗しないための360度評価運用ポイント

360度評価制度の運用に失敗しないためには、評価基準とルールを明確化しておくことが大切です。社員全員を対象にすると、公平性と客観性が保てるでしょう。360度評価を適正に運用し、成功につなげるためのポイントを紹介します。

評価基準とルールを明確化する

360度評価では多数の人が評価に関与するため、評価基準とルールを明確化しておくことが重要です。評価基準が曖昧だと評価者の主観が入りやすくなり、適切な評価が難しくなってしまいます。不正行為が発生したり評価者によってバラつきが生じたりしないよう、ルールの周知徹底も必要です。360度評価を実施する目的や将来的なゴールを具体化するとともに、執務態度の評価を通じて人材育成に活用することを社員に明示しておきましょう。

フィードバックとフォローを行う

360度評価で得られた従業員の優れた点や課題・改善点には、必ずフィードバックを行います。フィードバックがなければ評価の目的が理解されず、非協力的あるいは無関心になってしまう恐れがあるので注意が必要です。フィードバックを行う際は、担当者の主観を入れずに事実だけを伝えるようにします。課題を乗り越える方法について具体的なアドバイスも伝えれば、行動の変容を目指せるでしょう。面談やレポートによるアフターフォローも大切です。

評価項目は少なめに設定する

360度評価を会社に定着させるためには、評価項目を少なめに設定するようにします。評価項目が多すぎると、集計に時間がかかり、評価者への負担が大きくなりがちです。評価を受ける人にも面倒だという印象を与え、回答が適当になる可能性も出てきます。反対に設問が少なすぎると正確な評価ができません。通常業務の中で負担なく評価できるよう、評価項目は30項目前後、10~15分程度で行えるものをおすすめします。

すべての人を対象にする

360度評価の客観性と公平性を保つために、すべての社員を対象にするようにします。一部の社員だけを対象にすると、評価の透明性を損ねる場合があるので要注意です。経営者も評価対象に加える、社員の意見が経営に取り入れられる機会も生まれ、風通しの良い組織作りにつながるでしょう。評価に携わることで自分が組織運営に関わっている当事者だという実感が得られ、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。

360度評価の導入方法

360度評価の導入方法について、具体的に確認してみましょう。360度評価に対応した人事評価システムを導入するのも一つの方法です。

目的を明確にする

360度評価を導入する前に、目的を明確にしておくことが大切です。評価の結果は、人材育成の資料として活用するだけでなく組織全体の連帯感を高める、管理職のマネジメント力を向上させるなど、さまざまな目的で活用できます。評価結果の活用方法に応じて、データ分析の方法なども決めておきます。360度評価を導入した後に企業が望む姿についても、従業員に説明できるように議論を深めておきましょう。

運用ルールを決める


360度評価の目的や活用方法に応じて、評価基準などの運用ルールも決めておきます。不正な評価を防ぎ、モチベーションを低下させない仕組みづくりも重要です。匿名式だと気兼ねなく評価ができる一方、意見が感情的になる可能性があります。記名式の場合は発言責任が伴うため、的確な評価を得られます。また、必要に応じて、評価者になり得る人全員に対して適切な評価スキルを身につける研修を行うと効果的でしょう。

評価者と被評価者を決める


評価を受ける人(被評価者)との仕事上の関係性を確認しながら、評価者を決めていきます。同じ部署・同じプロジェクトで関わりのある人から評価者を選ぶのが一般的ですが、取引先の関係者を評価者とする場合もあります。被評価者1人あたりの評価者は2~10人程度が目安です。管理職・部下・同僚などからバランス良く評価者を選ぶようにしましょう。匿名で360度評価を行う場合は、被評価者に評価者の情報が伝わらないよう配慮が必要です。

評価項目を決める

360度評価の目的に合わせて、評価項目を決めます。日常の様子を確認しやすい「執務態度」に着目するのも一つの方法です。評価のバラツキが生じないよう、客観的な事例を問う設問にします。例えば、一般社員向けと管理職向けでは、それぞれ以下のような項目を設定すると良いでしょう。

【一般社員向けの評価】

  1. 仕事への主体性
  2. 同部署メンバーへの対応
  3. 部署内・プロジェクト内での協調性
  4. 業務遂行能力
  5. メンタル耐性

【管理職向けの評価】

  1. リーダーシップ
  2. 部下への対応
  3. 組織・チームの統率
  4. 自己啓発力
  5. 管理職にふさわしい態度

評価を強制されたという印象を与えないよう、「評価できない」「わからない」といった選択肢を設ける配慮も必要です。

スケジュールを決める

評価の集計・分析に時間がかかることを念頭に置いて、360度評価のスケジュールを決めます。従来の人事評価と異なる仕組みのため、社員へ制度を周知徹底する時間も必要です。人事評価や人員配置といった評価結果の活用目的に合わせて、ゆとりあるスケジュールを組みましょう。スケジュールを確定する前に、人事部など特定の部署でトライアル運用を行って問題点の洗い出しを行っておくのも一つの方法です。

社員に周知する

360度評価のプランとスケジュールが決まったら、社員への周知を行います。評価が初めての人がいることを前提に、360度評価の導入目的や背景をわかりやすく伝えることが、不安を取り除く上では大切です。評価の流れやメリットなどを伝えて、360度評価に関する理解を高めるようにします。全体周知とは別に個別対応の場を設けて、評価制度導入への納得を得られるようにするのもよいでしょう。

フィードバックする

評価者の評価が終了したら、被評価者に対してフィードバックを行います。必要に応じて、被評価者の上司に対しても情報提供を行います。長所を認めたうえで短所の改善を促す場とするため、客観的なスタンスをとりながらも受容的態度を示すことが大切です。評価点をフィードバックする場合は、個人別の評価を共有せず、平均値のみを示すようにします。見つかった課題を乗り越えてさらなる成長につなげる「PDCAサイクル」を回すことが、360度評価の有効活用につながります。

評価コメントの書き方

360度評価でコメントを書く際は、評価対象者の強み(良い部分)と改善点(反省すべき点)の両方が伝わるように意識することが大切です。解釈のズレが生じないよう抽象的な表現は避けて、具体的な言葉で伝えます。例えば、来期の目標達成を促したい場合は「来期は□□を改善して、○○件を目指してみましょう」と、改善案も具体化します。きつい言葉や否定語を使わず、「□□だとより望ましいです」といった肯定的な表現に努めることも大切です。

360度評価を導入している企業事例

360度評価をコミュニケーションの促進やエンゲージメントの向上につなげている企業は少なくありません。360度評価を導入している企業の事例を確認してみましょう。

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)

株式会社ディー・エヌ・エーでは、社員が熱意を持って働ける環境づくりを目的とした人事プロジェクト「フルスイング」を推進しています。
中でも半期に1度、マネージャーを対象に記名式でフィードバックを送る「360°フィードバック」では、自分が直面する課題や改善点が明確化され、スピーディーな改善につながっています。
チームレベルでは「2S2B(2ストライク2ボール)」制度が導入されています。フィードバックされる人の良いところ・悪いところを実名で付箋に書き出した後、ディスカッションを通じて業務改善につなげる仕組みです。 透明性を重視する社風を背景に率直に意見を交換しあうことで、メンバー同士の絆が深まっています。

株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは、スタッフ同士の感謝のコミュニケーションを促進するために、リアルタイムでピアボーナスを贈り合える制度「mertip(メルチップ)」が導入されています。
メルカリの3つのバリュー「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」に紐付いたハッシュタグと共にメッセージが全社に共有されるため、日々の貢献が見える化されやすくなっています。同時に、拠点・部署を超えた信頼関係が構築されているのが特徴です。互いの存在を認め合う風土も生まれ、従業員エンゲージメントの向上にも繋がっています。

質の良い360度評価を実現させる「CYDAS PEOPLE」

CYDAS PEOPLEの「バリュー評価(360度・多面評価)」アプリケーションでは、日々の活動に対して仲間からフィードバックをもらい、気付きから成長を促すということがシステム上で完結できます。各社の経営理念や行動指針に紐付いた評価を実現し、経営理念や行動指針を現場へ浸透させることが可能です。
360度評価の効果を高めるためには、日頃のオープンなコミュニケーションが欠かせません。CYDAS PEOPLEでは、コミュニケーションの活性化を促進する機能も豊富に取り揃えています。

例えば、社員全員が利用できる掲示版機能があり、人事発令などの会社からの大切な情報を共有することや、SNSの投稿のように記事を投稿して、コメントやスタンプでリアクションをし合うといったことができます。

また、1on1を支援する「1on1 Talk」アプリケーションは、1on1の計画・実施中の記録・フィードバックや振り返りまでをシステム上で実現可能です。上司と部下の相互理解を深め、信頼関係の構築をサポートします。

これから360度評価を導入しようと考えている方や、360度評価の質を高めたいと考えている方は、タレントマネジメントシステムの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。

CYDAS PEOPLEのより詳しい内容を知りたい方は、こちらからお気軽にご相談ください。

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