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2020.10.8

【完全版】BYODとは?メリットとデメリットや導入のポイントを大公開!

欧米を中心に、導入する企業が増加傾向にある「BYOD」。セキュリティ基準が明確化されていないため注意が必要ですが、正しいリスクヘッジさえ行えば多くのメリットが期待できます。企業経営者や人事担当者の中には、話題のBYODが気になっている方も多いのではないでしょうか。今回は、BYODの基礎知識やメリット・デメリットをはじめ、実際に導入する際のポイントなどを幅広く解説していきます。

BYODとは?

BYODとは、「Bring Your Own Device」の頭文字をとった略語で、仕事に従業員が所有するスマートフォンやパソコンなどのデバイスを使用することを指します。個人が所有するデバイスは、セキュリティ対策が十分ではないケースも珍しくありません。このため、重要機密や顧客の個人情報などが漏洩するリスクを避けるために、従業員が個人的に所有するデバイスの業務使用は禁止している企業がほとんどでした。しかし、現代ではスマートフォンやタブレットなどの普及により、電話やメール、スケジュール・タスク管理などに個人のデバイスを用いるのが一般的となってきました。
こうした背景もあり、従業員のデバイスから社内システムなどにアクセスし、業務に必要なデータを見たり編集したりすることで、業務を効率的に進められるといったメリットが大きくなってきたのです。ただし、セキュリティの面を考えると、やはり簡単に個人所有のデバイスを業務に使用することはできません。そこで、個人所有のデバイスを業務に使用する際は、情報漏洩などへのリスクヘッジを十分にしたうえで、正式な手続きを経て行おうというのが「BYOD」の基本的な考え方です。欧米諸国ではBYODの積極的な導入が進められており、アメリカの大手コンサルティング企業のガートナーは、2023年末までにBYODポリシーを拡大すると明言しました。
また、アメリカの自動車統計調査会社であるモーターインテリジェンスによると、BYODの市場規模は、2019年から2024年にかけて15%もの年平均成長率を達成するという報告もあります。このように、BYODは世界的に拡大傾向にある市場ですが、日本ではまだそれほど認知度が高くありません。総務省が2018年に公表した「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」によれば、2018年度時点ですでにBYODを導入している企業は10.5%しかなく、他国と比較すると低い数値にとどまっているのが現状です。まだ普及していないからこそ、迅速な導入で他社との差別化を図り、柔軟な働き方に対応できる企業だとアピールすることもできるでしょう。

BYODのメリット

BYODのメリット①【企業編】

BYODを導入すると、従業員はそれぞれ自分が普段使っているデバイスで業務を行うようになります。これにより、企業としては主に3つのメリットが期待できます。1つ目は、「業務の効率化・生産性向上」です。企業が業務用のデバイスを貸与する場合、従業員はそのデバイスの使い方をまずマスターしなければなりません。特別なシステムを使ったデバイスであれば、それを使いこなすための知識やスキルの習得も必要です。自分の業務をこなす一方で、新しいデバイスの使い方を勉強するとなれば、従業員に余計な手間や労力がかかってしまうでしょう。そのために、本来の業務が遅れたりモチベーションが下がったりしては本末転倒です。
この点、従業員が普段使っているデバイスなら、新しい使い方を覚える必要がありません。スムーズに作業できることに加え、肌身離さず持ち歩いているため、業務に急な対応が必要になったときでもすぐに対処できます。業務に対して従業員のレスポンスが早くなれば、効率化や生産性の向上が期待できるのです。2つ目のメリットは、「コスト削減」です。企業がデバイスを貸与する場合、デバイスに関するさまざまな費用を負担しなければなりません。契約の基本料金や通信費などのランニングコストはもちろん、社員が増えるたびに新たな端末の購入も必要です。
これに対し、BYODでは従業員がもともと持っているデバイスを活用するため、端末の購入や通信費の負担なども必要ありません。従業員が多ければ多いほど、このコスト削減効果は大きなものになるでしょう。3つ目は、「シャドーITの撲滅」というメリットです。シャドーITとは、企業が正式に認めていないにもかかわらず、従業員が独断で自分のデバイスを業務使用してしまうことを指します。きちんとしたセキュリティ対策がとられていない個人所有のデバイスを業務使用すると、当然ながら情報漏洩などのリスクが高くなるので非常に危険です。
この点、BYODでは事前に十分なセキュリティ対策を行うのはもちろん、厳しいルール作りや研修なども行うため、従業員が不用心にデバイスを使用するケースと比べてリスクを軽減できます。企業が従業員のデバイスの業務に関するデータを監視するシステムもあるので、安心感も得られるでしょう。

BYODのメリット②【従業員編】

BYODの導入は、企業だけでなく従業員自身にもメリットをもたらしてくれます。たとえば、使い慣れたデバイスを活用できることで、操作の面でストレスをためることがありません。必要な作業をすぐに行えることで、従業員満足度も向上するでしょう。また、複数のデバイスを持ち歩く必要がないという点もメリットです。企業からデバイスを貸与される場合、従業員自身のデバイスとあわせて何台も管理しなければなりません。デバイスによってはかなりの重さがあり、複数台を持ち歩くことに不満を感じることもあるでしょう。充電やアップデートなどの手間も台数分必要となり、管理する台数が増えれば、それだけ紛失する可能性も増えてしまいます。
また、企業から貸与されたデバイスを紛失したとなれば、始末書の作成などさまざまな労力やプレッシャーもかかります。こういった面からも、従業員が管理するデバイスの数を減らせるのは大きな魅力といえるでしょう。さらに、自分のデバイスなら肌身離さず持ち歩くため、場所を選ばず仕事ができるようになります。自宅のパソコンなどを使えば、在宅勤務などさまざまな働き方が可能になります。育児や介護、病気療養など、家庭の事情で退職せざるを得なかった従業員も、自宅で仕事を続けられる可能性も高まるのです。

BYODのデメリット(リスク)

企業、従業員双方にさまざまなメリットがあるBYODですが、一方でデメリットもあるため注意しなければなりません。たとえば、従業員がデバイスを紛失したり盗まれたりすれば、そこから業務に関するデータまで漏洩する恐れがあります。デバイスの中身や持ち歩きを細かくチェックできず、退社時の権限管理なども難しいため、悪意を持ったデータの持ち出しが起きる可能性もあるでしょう。このほか、従業員の家族や友人など第三者がデバイスを操作して情報が漏れたり、従業員がプライベートで使用したネットワーク経由でデバイスがウイルス感染したりする恐れもあります。
このほか、いつでもどこでも仕事ができるようになることで、従業員の労務管理が複雑化してしまう問題にも対処しなければなりません。働き方改革により、近年は正確な勤怠管理が求められているため特に注意が必要です。BYODに対応した勤怠管理システムの導入など、別途検討しなければならないことも増えるでしょう。また、デバイスのデータのうち、従業員個人のものであるプライベートな部分の情報保護や、運用ルールの徹底・セキュリティ教育など、対応が必要なポイントは多岐にわたります。

BYOD導入のポイント

BYOD導入のポイント①【運用編】

BYODのメリット・デメリットなどを理解したところで、次は安全に運用していくためのポイントを押さえておきましょう。運用にあたり、まずはセキュリティガイドラインを作成しなければなりません。情報漏洩を防ぐためにも、BYODのセキュリティ対策は最優先で取り組むべきことです。ガイドラインには、基本として「保護すべき情報の範囲」「私物端末の利用範囲」「BYODにおける行動規範」「BYODにおける禁止行為」「ルール違反に対する制裁」などを定めましょう。なお、BYODは誰でも自由に認めるのではなく、事前に必ず企業側の許可を得るシステムにするのがおすすめです。従業員にもわかりやすいようにシンプルなルールでガイドラインを作成し、運用内容を明確にしておきましょう。

BYOD導入のポイント②【システム編】

BYOD導入時には、システム面の注意も必要です。まず、デバイスを管理するために「MDM」を導入しましょう。MDMはモバイル端末を管理するための手法のことで、ソフトウェア製品として販売もされています。デバイスの脆弱性対策やウイルス感染の防止、外部接続とのログ取得による監視など、さまざまな役割を担います。また、デバイス内のデータを管理するMAMや、業務にかかわるコンテンツのみを管理するMCMなどの導入も必要です。
さらに、デバイスを紛失した場合に備え、遠隔操作で強制停止やデータ消去などを行えるよう、リモートワイプ機能も導入しておきましょう。情報はすべてクラウド上に保存し、デバイスでは操作のみを可能にするVDI(デスクトップ仮想化)も、BYODで役立つシステムです。このほか、不特定多数のデバイスによる社内システムへのアクセスを防ぐため、クライアント証明書をインストールしておくのもおすすめです。

BYOD導入のポイント③【従業員編】

ガイドラインとシステム面を整えたら、次は従業員への教育も行いましょう。どれほどセキュリティ対策を充実させていても、実際にデバイスを扱う従業員の意識が低ければ、情報漏洩のリスクは軽減できません。BYODを始める前に、対象の従業員に対してITリテラシー向上のための研修を行っておきましょう。どのようにデバイスを活用するべきか、どのようなリスクがあるのか、トラブルが起きたときにどう対処すれば良いのかなど、細かいポイントまでしっかり周知徹底することが大切です。
また、情報漏洩などに十分な注意が必要だという自覚を持ってもらうためにも、事前にBYODに関する誓約書を取り交わしておくと良いでしょう。従業員の意識を高めるだけでなく、情報漏洩が起きたときなど適切な対処ができるようになります。内容は各企業が決めて構いませんが、「私物端末の名義人が従業員本人であること」「私物端末を登録制とすること」「私物端末の利用範囲」「企業による監視に同意すること」などを定めるのが一般的です。このほか、「不適切または禁止行為を行わないこと」「ルールに違反した場合は処分が下されること」なども明記しておきましょう。

BYOD導入のポイント④【法務編】

BYODに関するさまざまなルールや関連する項目について、就業規則に記載しておくことも大切です。たとえば、BYODによる在宅勤務を行う場合、始業・終業時間や残業の有無などをどのように管理するのか、デバイスを業務に使用した場合の通信費は誰が負担するのかなど、細かい点まで就業規則に反映させておきましょう。これらを曖昧にしたままBYODを始めると、従業員との間でトラブルになってしまう恐れがあります。また、グローバル展開している企業の場合、各国での文化や生活習慣、意識の違いなどにも注意しなければなりません。日本では問題なく受け入れられていることでも、諸外国では大きなトラブルに発展する可能性もあります。その国ごとの法律や価値観などを詳しくチェックし、適切な内容でBYODを導入することが重要です。

BYOD活用事例を紹介!

人気アパレル企業「ユナイテッドアローズ」では、実際にBYODを導入し一定の成果を得ています。所定の手続きを経てBYODを認められた従業員は、自分のスマートフォン経由で商品の在庫検索や社用メールの確認などが可能になりました。従業員のデバイスに業務データを保存させないシステムを利用しているため、セキュリティ対策も万全です。必要なときにすぐ業務が行えることで、業務の効率化や顧客へのサービス向上のほか、従業員のストレス軽減にも役立っています。
また、学びの場である「九州大学」でも、2013年からBYODが導入されました。学習するうえでパソコンの需要が増してきたものの、予算の関係で十分な台数を購入できなかったため、学生自身が持つデバイスを利用できるように導入したのです。パソコンを購入するためのコストをBYODで活用できるネットワークシステムの導入コストにあて、学生のニーズに応えています。BYODにより、社会に出る前の学生がしっかりとしたITリテラシーを身につけ、デバイスやデータを適切に管理できるようになるというメリットも生まれました。
自治体のひとつである「佐賀県」でもBYODを活用しています。佐賀県は、ITに詳しい人材を育てることを目的として、2014年からすべての県立高校においてBYODを導入したのです。学校内に無線LANや電子黒板などを設置して環境を整えたほか、デバイスの購入代金の一部を負担したうえで、学生一人ひとりにパソコンやタブレットを購入するよう勧めています。デバイスは授業でも使用され、幅の広い教育が可能になりました。また、高校生のうちから頻繁にデバイスに触れることで、データの管理やセキュリティへの意識を高める効果が得られています。

BYODの活用で業務の効率化を図ろう!

生産性や利便性の向上、コスト削減などが期待できるBYODは、企業だけでなく従業員にもメリットの多い手法です。大学や自治体など幅広い分野で導入されている事例を見ても、いかに魅力的なものかがわかるでしょう。日本ではまだ普及し始めたばかりですが、世界の例を見ても将来的に市場が拡大する可能性は高いです。今回紹介したポイントを参考に、正しい対策を講じたうえでBYODの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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