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2020.2.21

従業員のキャリアデザインが重要な理由とは?企業ができる支援方法を紹介

従業員のキャリアデザインに積極的に取り組む企業が増えてきています。なぜなら、従業員の成長が企業の成長につながるという考えが普及してきているからです。ただ、だからといって漫然と取り組んでも、おそらく期待できるような効果は得られないでしょう。そこでこの記事では、従業員のキャリアデザインを支援するメリットやその際の考え方、さらには具体的な方法などについて説明していきます。

キャリアデザインとは

人がよりよく生きていくためには人生設計が欠かせませんが、なかでも仕事に焦点を当てたものを「キャリアデザイン」といいます。言いかえれば、キャリアデザインとは、人生を通して仕事とどのように向き合っていくかを自分の理想と照らし合わせながら設計することだともいえます。ただし、自分の中の理想を単に列挙すればよいというわけではありません。キャリアデザインを描く際には実現可能かどうかが重要なポイントとなります。したがって、自分にはどんな仕事ができるのかを把握しつつ、できる仕事を増やしながら理想に近づけていくことを考えていかなくてはならないのです。
キャリアデザインが注目されるようになった背景として、年功序列から成果主義への移行と終身雇用の崩壊が挙げられます。エスカレーター式に出世できた時代は過去のものとなり、しかもリストラによって仕事が突然なくなることも珍しくなくなった時代だからこそ、自分の生き方は自分で決めなければなりません。キャリアデザインを行うことは、転職や再就職を可能にする力をつけることにもつながります。すなわちキャリアデザインをしっかり描ける能力を身につければ、特定の企業に縛られない自由な働き方を選択でき、人生を豊かなものにすることにもつながっていくのです。

企業がキャリアデザインを支援する重要性

企業が従業員のキャリアデザインを支援する動きが広がりつつあります。その背景として、グローバル化による競争の激化が挙げられます。つまり競争力のある企業になるためには生産性の向上が必要不可欠であり、キャリアデザインを支援して従業員の能力を向上させることが有効な手段だといえるでしょう。一方で、キャリアデザインは従業員個人にとっても理想に近づけるというプラス面があることから、モチベーションやエンゲージメントが向上して早期離職を防ぐ効果も期待できます。
その他にもキャリアデザインを支援するということは、各従業員のキャリアに対する考え方を確認しながらコミュニケーションをとることにもつながるため、その情報を人事異動に生かせるというメリットもあります。もちろんキャリアデザインに自覚的な社員が増えれば、他社に転職したり起業したりする者が増えてしまったという事態にもなりかねません。それでも各社員のキャリアを誠実に支援していれば、そこから信頼関係が芽生えてくるはずです。その結果、たとえ会社を出て行ったとしても、ビジネスにおける有益な付き合いや優秀な人材のカムバックなどが期待できるようになります。このように、キャリアデザインの支援は企業にとってもさまざまなメリットがあるのです。

キャリアデザイン支援

1.現状を把握する

キャリアデザインは従業員一人一人が抱いている理想像を自分の中で明確にし、それに向かって設計するものです。理想と現実の間にかなりの隔たりがある場合は、その隔たりをいかにして埋めるかが問題になってきます。各従業員は理想に近づくために自分は何ができるのか、そして何をするべきかを考えなければいけません。ただ、個人でそれを行おうとしても理想と現実のギャップを埋めようとするプロセスで壁にぶつかる場合があり、それゆえ企業からの支援が必要となってくるのです。
企業がキャリアデザインを支援するためにはまず、各従業員がどのような技術や特性を有しているかの把握を行う必要があります。個人が「自分は何ができるのか」と考えていたのと同じことをより客観的な立場で行うわけです。たとえば「従業員Aは論理的思考が得意で従業員Bはコミュニケーション能力が高い」などといった具合です。とはいえ、白紙の状態からそれらについて把握しようとするのは容易ではありません。このような現状把握を組織的に行うには、企業としての体制づくりが大切です。特に人材のスキル、特性、実績などを総合的に記録および管理する仕組みやシステムがあると対応しやすくなってきます。

2.将来的なキャリアパスを設計する

従業員ごとの現状が把握できれば、それに基づいたアドバイスが行えるようになります。たとえばその理想に近づくにはどのような学習をし、どういった仕事を経験すればよいのかといった助言です。ただ、すべての従業員が明確なキャリアデザインを描けるとは限りません。なかには日々漠然と仕事をこなしているだけで、将来の明確な理想像を描けない人もいるはずです。そういった従業員に対しては、どのような仕事なら興味が持ててやりがいを感じるのかを聞き出し、そのうえで「やりたいこと」や「なりたいもの」を探す手伝いをするのもキャリアデザイン支援の重要な役割だといえます。
しかし、いくらキャリアデザインを描くことの重要性を説いたところで、会社の現状がとても各自の理想をかなえられるとは思えない状態だった場合、それを描こうというモチベーションは低下してしまいます。頑張れば明るい将来が待っているという期待感があるからこそ、人は前向きになれるものです。したがってキャリアデザインについてアドバイスをする立場にいる者は、明るい将来像を自ら体現し、部下に見せられるようにしておくことも期待されています。
いずれにしてもほとんどの場合において、一足飛びでは理想にたどり着けません。段階的にステップアップしていくための「キャリアパス」を設計する必要があります。ちなみにキャリアパスとは、理想像にたどり着くまでの道筋という意味です。これが明確になることによって、最終目標を達成するのに必要な段階的な目標が明確となり、より具体的な努力を行えるようになってきます。そして、その作成を支援するのも企業としての重要な役割です。

3.個人目標を組織目標とすり合わせる

企業が従業員のキャリアデザインを支援するのは、従業員がキャリアデザインを達成することが競争力を高める結果となるからです。しかし、そのキャリアデザインが企業の目指しているものとかけ離れた単なる個人目標だった場合、支援をする意味合い自体が薄れてしまいます。そのため、個人の目標と組織の目標をすり合わせ、キャリアデザインの達成に向けての努力が組織の向上につながるよう修正を加える必要があります。
具体的にはまず、従業員と上司が綿密なコミュニケーションをとりつつ、各自適切な目標を設定します。そのうえでどうすればそれを達成できるのかという評価基準を定め、そのためには何をしなければならないかというアクションプランを決めていくといった流れになります。この場合、ポイントとなるのが目標は単なる数値ではなくアクションプラン、つまり行動ベースで定めていくのが好ましいでしょう。なぜなら数値目標達成の難易度は状況によって常に変化し、極端なケースではなんの努力もしないで目標を達成してしまったなどといったことにもなりかねないからです。
このようにして決めた目標は個人目標でありながら、組織が達成すべき目標として管理していくことになります。これを目標管理(MBO)といいます。

4.定期的な面談で目標を管理する

アクションプランと評価基準が明確になれば進捗管理が可能になり、それに基づいて目標管理をしていくことになります。しかし、単に進捗状況が良いか悪いかをチェックするだけでは目標管理をしているとはいえません。従業員のエンゲージメントを高めるなどして、より効率的にキャリアプランを達成できるように導いていく必要があります。そのためには、定期的に面談などを実施してこまめに進捗の確認をし、同時に上司からの適切なフィードバックを行うのが有効です。
実際こうしたことを実施するために、上司が1対1で従業員を支援する時間をつくれる「1on1」ミーティングを導入する企業が増えてきています。1on1は進捗確認とフィードバックのほか、アクションプランを実行するにあたって必要な課題解決、場合によっては目標設定自体の修正についての話し合いを行う場となるわけです。ただし、従業員のキャリアも含めて話し合うためには何より信頼関係が重要なため、信頼関係を築くためには必要に応じて上司が従業員のプライベートな相談を受けることもあります。したがって、そうした問題にうまく対応できるかどうかも目標管理を行うための重要なポイントとなるでしょう。

5.人事評価制度とあわせて運用する

ここまで説明したように、目標管理を適切に実施すると企業の目標とも合致し、同時に個人の実績を評価するための明確な基準にもなります。これは給与査定などを含めた評価制度にも活用しやすいというメリットにもなります。つまりキャリアデザインの支援は「従業員の能力向上」と「組織目標の達成」だけでなく、「人事評価」の点でも有効になるでしょう。したがってキャリアデザイン支援を行う際には、人事評価制度とあわせて運用することがおすすめです。
そのためには、従業員各自のキャリアデザインに関する情報を人事部門に集約させる仕組みおよびシステムを確立させることが大切です。従業員のキャリアを長期的に支援しながら、目標管理を評価制度と組み合わせやすくなります。

キャリアデザインを支援するときの注意点

従業員のキャリアデザイン達成に向けて行う支援が有効なものになるかどうかは、上司によるサポートの質にかかっています。たとえば、上司が組織目標の達成ばかりを部下に押し付けていたとすれば、それは目標管理ではなく単なるノルマ主義にすぎません。従業員の自主性を育むことができず、キャリアデザインの支援という本来の目的からも遠のいてしまいます。かといって個人のキャリアだけを考えた目標になってしまえば、今度は組織の目標を達成できなくなり、給与面でも評価を得られないことになってしまいがちです。
個人の能力とモチベーションを引き出しつつ組織目標を達成していくためには、部下を適切に支援できるだけのマネジメント力が必要です。キャリアデザインの支援を企業が行おうと考えるのであれば、まずはマネジメント力を備えた人材を育成することが重要になってきます。その過程を飛ばしてシステムだけを先に導入してしまうと、形だけのものになってしまうおそれがあります。

キャリアデザインを支援して企業としての競争力を高めよう

企業として各従業員のキャリアデザインを支援することには、従業員個人の能力向上と組織目標の達成、人事評価にも活用できるメリットがあります。また、上司によるキメ細かなサポートがあれば、従業員のモチベーションとエンゲージメントの向上も期待できます。つまり、一石二鳥にも三鳥にもなるわけです。積極的にキャリアデザインの支援を行い、より生産性と競争力の高い企業を目指してみてはいかがでしょうか。

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