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2019.11.20

企業価値を向上させるコーポレートガバナンスとは?メリットやガイドラインを紹介

コーポレートガバナンスは、企業内の不正を防ぎ健全な経営を行うことで企業価値を高める仕組みです。しかし、コーポレートガバナンスを強化するためには深い理解が必要で、具体的にどのような対策を行えばよいのか知りたいという企業経営者も多いでしょう。そこで、コーポレートガバナンスの意味やメリット、強化のガイドラインの策定方法などについて紹介します。

目次

コーポレートガバナンスとは

「コーポレートガバナンス」というと、新聞やテレビで企業の不祥事に関するニュースが伝えられるときなどによく耳にする言葉です。しかし、その意味や目的について正しく理解できている人はそれほど多くないかもしれません。まずは、コーポレートガバナンスという概念について、理解を深めましょう。

コーポレートガバナンスの意味

「コーポレートガバナンス」は、日本語では「企業統治」とも呼ばれます。主に、企業が不正行為を行なってしまうのを防ぐために、さまざまな角度から監視・監督を行う仕組みのことを指す言葉です。企業が持続的に成長しながら企業価値を高めていくために必要不可欠な概念ですが、「コーポレートガバナンスとは何か」ということについては具体的な定義がありません。そのため、コーポレートガバナンスを行うことの意味を考え、目的をもって経営を管理・統制していくことが大切になってきます。

コーポレートガバナンスコードとは

コーポレートガバナンスそのものには明確な定義がありませんが、企業の取り組みを明確にするために金融庁と東京証券取引所が中心となって定めた「コーポレートガバナンスコード」というルールが存在します。コーポレートガバナンスコードは、企業が高い透明性をもって正しくコーポレートガバナンスに取り組んでいることが、企業の外部からみても明確にわかるようにするためのものです。5つの「基本原則」からはじまって、30個の「原則」と38個の「補充原則」があり、全体として73個の原則で構成されています。

コーポレートガバナンスの目的

コーポレートガバナンスコードにおける定義では、コーポレートガバナンスとは「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」です。そのうえで5つの基本原則を示し、コーポレートガバナンスへの取り組みが企業の持続的な成長と企業価値の向上、ひいては経済の発展につながるとしています。ここからは、5つの基本原則について1つずつ紹介します。

株主の権利・平等性の確保

第1の基本原則は、「株主の権利・平等性の確保」です。この原則では企業に対して、株主の実質的な権利を確保するための努力を行うことを求めています。株主が権利を行使できるような環境整備を行うなどの、適切な対応が必要です。また、株主間の実質的な平等性を確保するうえで、少数株主や外国人株主に対して十分に配慮すべきであることについても言及されています。これらの株主に関しては、株主としての権利と平等性について特に懸念が生じやすいためです。

ステークホルダーの保護と利益向上

第2の基本原則は、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」です。株主以外のステークホルダーとは、顧客や取引先のほか、従業員、債権者、地域社会などをはじめとした企業経営に関わりのある利害関係者のことです。企業の成長や企業価値の創出は、さまざまなステークホルダーによるリソースの提供などの貢献によって支えられています。企業には、このことを認識したうえで、ステークホルダーとの適切な関係を維持し協働を行なっていく努力が求められています。個々のステークホルダーの権利や立場を尊重できるような企業文化・企業風土の醸成のために、リーダーシップを発揮していかなければなりません。

株主へ方向性の提示

第3の基本原則は、「適切な情報開示と透明性の確保」です。財政状態や経営成績などの財務情報や、経営戦略や経営課題、リスクやガバナンスなどの非財務情報について、企業は法令にもとづく開示を行わなければなりません。また、法令にもとづかない部分についても、主体的な情報提供を行うべきであるとされています。これらの情報は、株主との対話を建設的に行うための基盤ともなり得るものです。そのため、開示・提供される情報が正確でわかりやすいことや、情報としての高い有用性を備えていることも求められます。また、取締役会は、株主と対話を行ううえで特に非財務情報が重要であることを理解して、情報提供に取り組む必要があります。

取締役会等の責務

第4の基本原則は、「取締役会等の責務」です。取締役会は、株主に対して受託者責任と説明責任があることを認識しなければなりません。そのうえで、会社の持続的な成長と企業価値の中長期的な向上のため、収益力や資本効率などの改善に取り組んでいくことになります。このとき、株主に対して企業戦略などの方向性を示すとともに、経営陣幹部がリスクテイクを適切に行えるようにするための環境を整えることが求められます。また、経営陣や取締役に対しては、客観的で実効性の高い監督を行うという役割を果たすことが必要です。

株主との対話

第5の基本原則は、「株主との対話」です。企業が株主と対話する場所は、株主総会だけとは限りません。それ以外の場所や場面においても、株主との建設的な対話を行うことが求められています。企業は経営方針などの情報をステークホルダーにもわかりやすいように明確に表現し、株主に説明して理解を得られるよう努めなければなりません。また、経営陣は株主の声に耳を傾けながら、株主が何に関心をもち、どんな点に懸念を抱いているかなどについて正当な関心を払うことが必要です。

コーポレートガバナンスが注目された背景

コーポレーガバナンスが注目されるようになったのは、バブル崩壊後の1990年代以降のことです。それまでは、経営陣が企業経営を株主のために行なっているかどうかを監視するシステムはありませんでした。ではなぜ、コーポレートガバナンスが注目されるようになったのでしょうか。その背景について紹介していきます。

企業の不祥事増加

バブルが崩壊してから、日本国内の大手企業やその子会社で、相次いで不祥事が発生しました。その内容は、製品の品質チェック工程における数値の水増しや、不適切な会計処理による粉飾決算や横領、労働基準法に抵触するような雇用形態といったものです。これらの不祥事の背景には、成果主義が浸透したことで従業員へのプレッシャーが増したことや、短期志向の株主が増加したことなどがあると考えられます。社会的な状況の変化によって次々に起こされるこのような不祥事は、ステークホルダーの利益を損なうばかりか、経済市場にも悪影響を及ぼす危険性があるものでした。そのため、企業を適正に統治することへの要請が高まり、コーポレートガバナンスの考え方に注目が集まるようになったのです。

エージェンシー問題

「エージェンシー」とは、委託者が経営者に業務を委託するような関係性のことを指す言葉です。一般的に、企業と株主との間には、株主が企業に事業を委託しているという関係が成り立ちます。そのため、企業には事業による利益を株主に還元する責務があると考えられます。しかし、経営者がそのような関係性に則った行動を取らないかもしれないというリスクが、常に存在しているのです。株主との間に「利害の不一致」があるために経営者が自らの利益を追求してしまうことによって、不正を行ったり「情報の非対称性」が生じたりといったことが起こります。このようなリスクが顕在化したものが、「エージェンシー問題」です。エージェンシー問題を防ぐために、株主の利益と一致しないような経営者の行動や、利益に結びつかない投資などを監視する仕組みの強化が求められるようになりました。このことも、コーポレートガバナンスが注目されるようになった理由のひとつになっています。

経済のグローバル化

経済のグローバル化も、コーポレートガバナンスが求められるようになった背景のひとつとして挙げられます。国際競争の激化をうけて、より高い競争力を求めて成果主義や職務給をベースにした人事評価制度を導入する日本企業が増えたのです。その結果、日本企業における不祥事が増加することとなり、経営の監視を強化すべきという声が強まりました。また、グローバルな経営を行ううえで、さまざまなステークホルダーの利益を損なわないようにする考え方がより必要になることからも、コーポレートガバナンスが注目されるようになっていきました。

コーポレートガバナンスのメリット

コーポレートガバナンスは、株主などのステークホルダーにとってメリットがある仕組みですが、導入する企業にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。コーポレートガバナンスを導入・遵守することで得られる、企業のメリットを3つ紹介します。

企業価値の向上

コーポレートガバナンスに取り組むことは、ステークホルダーの利益を損なわないように保護するということ以外にも、企業にとっての意味や効果があります。企業価値の向上も、そのひとつです。企業価値とは企業の対外的な魅力のことであり、企業価値が高いということは優良企業として社会的に認知されているということでもあります。また、企業価値は資産と負債をもとにして計算されることから、企業の株価にも影響するものです。株価は企業の将来性を判断する材料にもなるものですから、コーポレートガバナンスに正しく取り組んで企業価値の向上に努めれば、金融機関などからの融資も受けやすくなり倒産などのリスクも少なくなります。

経営陣の不正防止

バブルが崩壊してから相次いだ企業の不祥事は、ステークホルダーに大きな損失をもたらすばかりでなく、日本経済の停滞をも招きかねない深刻な問題でした。特に日本企業のなかで多かったのが、不正会計や粉飾会計などによる不祥事です。企業が私物化されたような状況や、不適切な処理が行えてしまうような業務プロセスは、コーポレートガバナンスに取り組むことによって改善されます。その結果、不祥事によって経営が滞ることがなくなり、業務も円滑に行われるようになります。

財務体制の強化

企業が中長期的な成長戦略を立案し実行に移すためには、現在の経営体制に見合った融資や出資を受けることが必要です。特に、金融機関からの融資が不可欠なものになっているという企業は多いでしょう。そのためには、コーポレートガバナンスに則った情報開示が役立ちます。事業の状況などをステークホルダーにも理解しやすいような透明性の高い情報として可視化すれば、適正な評価にもとづいて融資や出資を受けられるようになります。

コーポレートガバナンスのデメリット

コーポレートガバナンスの導入は企業にとってメリットがある一方、デメリットもあります。デメリットについて理解することは、コーポレートガバナンス強化のためのヒントにもなるでしょう。ここでは、コーポレートガバナンス導入のデメリットについて紹介します。

オーナー企業では経営牽制の困難

株主が社長をつとめるオーナー企業では、取締役や社外のステークホルダーが経営陣による支配体制を監視し、もし不適切な行動があれば牽制することが必要です。しかし、このような経営牽制機能をコーポレートガバナンスに期待したとしても、オーナー企業で適正に機能させることは簡単ではありません。経営者がひとたび暴走してしまえば、不祥事のニュースになるような重大なコンプライアンス違反を起こしたり、企業全体が疲弊して倒産の危機に陥ったりというような状況になるまで、コーポレートガバナンスは適正に機能しない恐れがあります。

長期的な会社の成長妨げ

株主やそのほかの企業外部のステークホルダーは、目先の利益を求めてしまう場合があります。コーポレートガバナンスにおいてはステークホルダーの利益は重要事項であるため、この場合、経営陣も短期的な利益に向かわざるを得なくなってしまいます。このような現象は、企業の長期的な成長を妨げる恐れのあるものです。経営陣がリーダーシップを発揮しづらい状況になるため、事業再編のような大規模な改革が必要になったとしても、ステークホルダーからの抵抗を受けることになるかもしれません。

ビジネスのスピード感の失速

コーポレートガバナンスにおいては、企業戦略の方向性を株主などに明確に示すことが基本です。コーポレートガバナンスコードに則って運営している企業の場合は、取締役会が「中長期経営戦略」を示すことが求められます。しかし、ときには迅速な決断と実行が必要なビジネスもあるでしょう。そのようなとき、コーポレートガバナンスの監視機能によってストップがかかり、ビジネスチャンスを逃してしまうケースがあるかもしれません。

コーポレートガバナンスのガイドライン

コーポレートガバナンスのガイドラインを自社で独自に策定し、公表しているという企業も増えてきています。そのような企業の中には、既存のガイドラインを適宜アップデートしている企業も少なくありません。その背景には、公表することによって自社の経営について海外投資家からの理解を得やすいということがあります。コーポレートガバナンスのガイドラインを策定・公表することは、企業がガバナンスに関して積極的に取り組んでいることを投資家などにアピールする機会となるのです。ガイドラインにどのような内容を記載するかは、企業ごとに自由に決めることができますが、多くの上場企業ではコーポレートガバナンスコードを基準にしています。ここでは、ガイドラインに記載が必要な項目と記載を検討したほうがよい項目について、紹介します。

基本方針

ガイドラインの最初にはコーポレートガバナンスの基本方針について記載するのが通常ですが、記載すべき項目については決まっていません。重要事項のみに絞ったり、多数の項目で詳細に規定したりと、企業によって違いがあります。日本取締役協会がベストプラクティスとして「コーポレートガバナンスに関する基本方針」のモデルを策定・公表していますので、ガイドラインを策定する際は参考にしてみるとよいでしょう。このモデルで採用されている記載項目は、コーポレートガバナンスコードに示されている5つの基本原則に対応した5項目となっています。

開示すべき項目

コーポレートガバナンスコードにある全73個の原則のうち、11個については「開示すべきである」と規定されています。ガイドラインを策定する際は、以下の項目について開示が必要です。

  • 原則1‒4:政策保有株式
  • 原則1‒7:関連当事者間の取引
  • 原則2‒6:企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮
  • 原則3‒1:情報開示の充実
  • 補充原則4‒1①:経営陣に対する委任の範囲
  • 原則4‒9:独立社外取締役の独立性判断基準及び資質
  • 補充原則4‒11①:取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方
  • 補充原則4‒11②:取締役・監査役の兼任状況
  • 補充原則4‒11③:取締役会全体の実効性についての分析・評価
  • 補充原則4‒14②:取締役・監査役に対するトレーニングの方針
  • 原則5‒1:株主との建設的な対話に関する方針

規定されていない事項

コーポレートガバナンスコードによる規定がないものの、ガイドラインへの記載を検討するとよい項目もあります。ここでは、例として2項目を紹介しましょう。

  • 取締役会議長の条件:コーポレートガバナンスコードでは、経営の執行と監督を分離することが推奨されています。取締役会に監督機能の実効性をもたせるためには、取締役会議長は経営責任者が兼任できないことなどをガイドラインで明記すべきかどうか、検討するとよいでしょう。
  • 社外役員の任期:コーポレートガバナンスコードでは、独立社外取締役について、その独立性の判断基準を明確にすることが求められています。しかし、任期については規定されていません。任期が長くなれば独立性に疑問が生じるケースもあるため、ガイドラインを策定する際の検討事項とするとよいでしょう。

上場企業のコーポレートガバナンス

上場企業では、実際にどのようなコーポレートガバナンスを策定・遵守することで企業価値を高めているのでしょうか。ここでは、コーポレートガバナンスへの取り組みが高い水準で行われている3社について、事例を紹介します。

HOYA

光学機器やガラスを扱うメーカーのHOYAは、グローバル水準のコーポレートガバナンスモデルを実践する企業として、日本取締役協会が主催する「コーポレート・ガバナンス・オブ・ザ・イヤー」のGrand Prize Company(大賞企業)に選出されました。HOYAでは、1995年より社外取締役の導入を開始し、2003年には社外取締役を過半数以上とする取締役会を定款で定め、企業価値の向上を支える重要項目と位置付けています。また、経営者の選解任やサクセッションプラン(後継者育成)といった重要な要素も、コーポレートガバナンスに盛り込んでいます。経営者も社外取締役に監督されるということを自覚したうえで経営に臨んでいる企業といえるでしょう。

花王

洗剤やトイレタリー、化粧品などを扱う化学メーカーの花王も、「コーポレート・ガバナンス・オブ・ザ・イヤー」のGrand Prize Company(大賞企業)に選出されている企業です。花王では、企業理念である「花王ウェイ」にある『絶えざる革新』をコーポレートガバナンスにおいても実施することで企業価値の継続的な増大を目指しています。EVA(経済付加価値)を経営指標として取り入れるなど、独自の工夫でコーポレートガバナンスの質を重視した経営を行なっています。制度としてガバナンスが社内に浸透している点も特徴的です。

アステラス製薬

アステラス製薬は、コーポレートガバナンスの仕組みを企業の成長と結びつけている企業です。グローバル展開において東京本社を株主のような存在として位置付けている点などから、「ガバナンスが根付いている」と「コーポレート・ガバナンス・オブ・ザ・イヤー」でも高く評価され、入賞企業に名を連ねています。取締役会の設置などの体制面を整えるだけでなく、役員への業績連動報酬の導入、経営計画における欧米流KPIの活用、株主への還元を自己資本配当率をもとに行うなどの仕組みが整えられているのも特筆すべき点です。

コーポレートガバナンスは中小企業にも必要!?

上場企業ではコーポレートガバナンスの導入は必須となっていますが、非上場の中小企業においては導入の必要性はそれほど高くありません。しかし、企業の社会的信用や信頼を得るために、中小企業でもコーポレートガバナンスを導入しているケースがあります。そのような企業では、具体的にどのようなガバナンス項目を策定しているのでしょうか。中小企業におけるコーポレートガバナンスの特徴と仕組みを紹介します。

中小企業のコーポレートガバナンスの特徴

中小企業では、経営者自身が株主でもあるというケースが多くみられます。所有と経営が一致していることから、株主の利益を最大化するという原則に従う必要性は、上場企業に比べて低いといえます。また、エージェンシー問題が発生しないことや、組織の階層構造がシンプルなため迅速な意思決定を行えることがメリットです。その一方、経営者の議決権比率が50%以下になると非同族の株主から配当を増やすことを要求されることが考えられるため、経営体制としては同族経営にとどまる企業が多くなっています。

外部ガバナンスの仕組み

中小企業のコーポレートガバナンスは、基本的に「内部ガバナンス」です。その中核となる取締役会では、代表取締役が暴走してしまったとしても、牽制役としての効果を発揮しにくいのが一般的です。そのため、企業を本家・分家に分離し、互いに競合しない事業範囲を担うことによってリスクを回避するという方法がみられます。あるいは、本家と分家の当主間で相互に牽制しあうような仕組みを設けている企業もあります。株主などによる「外部ガバナンス」が機能しにくい場合や、経営者が過度にリスクを避けようとするような場合には、従業員などの人的リソースを生かしきれず、生産性の低い状態でとどまってしまうケースがあるのも実情です。

内部ガバナンスの仕組み

会社法の定めるところによると、非公開企業や非大企業は取締役会設置会社としても取締役会非設置会社としても設立が可能です。取締役会非設置会社は取締役と株主総会を設置することで設立できるため、経営者にあたる取締役1人と、経営者の縁者のみで構成された少人数の株主総会によって運営される中小企業も少なくありません。経営者と従業員の距離が近いことから、迅速な意思決定を実行にうつせるというメリットはあるものの、経営の監視については課題があるのが一般的です。また、社是や社訓、経営理念などを通して内部統制をはかる企業が多いのも中小企業の特徴です。

コーポレートガバナンスを強化するには?

大企業か中小企業かに関わらず、コーポレートガバナンスはそれぞれの企業の社風や特性などにあわせて策定することが可能です。ここでは、コーポレートガバナンスを強化するために必要となる取り組みについて紹介します。

業務の可視化と評価

M&Aなどにより海外進出を積極的に行う日本企業も増えてきています。その一方、グローバル標準を用いた経営や事業移転に関して遅れがあるともいわれています。日本企業には、地域ごとに異なる業務プロセスによって事業を行う傾向があるのです。このことは、コーポレートガバナンスの視点から考えれば、親会社が各地域の子会社を統制する力が弱いということを意味しています。子会社による不正や不祥事のリスクをおさえるためには、グローバル標準をベースにした業務の可視化と評価が必要です。

内部統制の強化

コーポレートガバナンスを適正に機能させるためには、企業の内部統制は欠かせません。透明性をもって情報開示を行うことと財務状況の適切な報告を行うことは、コーポレートガバナンスに取り組むうえでの重要事項ですが、これらは内部統制においても必要なことです。そのため、内部統制とコーポレートガバナンスは別々のものと考えず、あわせて推進していくことが大切です。この考え方は、内部統制を強化するとともに、コーポレートガバナンスに取り組むうえで欠かせない取締役会や監査部門の役割を明確にすることにも役立ちます。

委員会・制度の設置

コーポレートガバナンスには、企業の経営体制を監視する仕組みづくりが重要です。社外取締役や社外監査役を設置したり、役員の報酬を決定するために報酬委員会を設置したりというように、客観性の高い組織や制度を導入することがコーポレートガバナンスの強化につながります。

社内への周知

コーポレートガバナンスと内部統制をあわせて推進していくには、その重要性について従業員が理解することも大切です。定期的・継続的な社内教育を通してすべての従業員にコーポレートガバナンスの概念が浸透すれば、内部統制はより強固になり、企業全体としての統治にもよい影響を与えます。ひいては、事業の成長と企業価値の向上にもつながるでしょう。

コーポレートガバナンスの申請について

上場を行おうとする企業は、「有価証券上場規程」の定めるところにより、申請の際に「コーポレートガバナンスに関する報告書」と「独立役員届出書」を提出しなければなりません。コーポレートガバナンスに関する報告書は、上場会社としてふさわしい企業であるかどうかを審査するためのものです。以下の各項目について記載する必要があります。

  • コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報
  • 経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレートガバナンス体制の状況
  • 株主その他の利害関係者に関する施策の実施状況
  • 内部統制システム等に関する事項
  • その他

上場を行うには、独立役員を少なくとも1人は設置しなければなりません。このルールを遵守しているかどうかは、独立役員届出書を通して確認されることになります。独立役員届出書には、以下の各項目について記載する必要があります。

  • 独立役員・社外役員の独立性に関する事項
  • 独立役員の属性・指定理由等の説明
  • 補足説明

HRテックでコーポレートガバナンスを強化する

企業がコーポレートガバナンスを強化していくためには、業務プロセスの可視化や評価、社内への通知などをスムーズに行える環境づくりが大切です。そのためには、HRテックなどのITツールを活用するのが効果的です。国内外に支店がある企業では、グローバル標準をベースにした業務プロセスを推進するとともに、タイムラグのない一斉通知を行うことが可能になります。業務フローを可視化するツールなどを活用すれば、誰にとっても理解しやすいプロセスを構築する手助けになるでしょう。

コーポレートガバナンスを強化して企業価値を高めよう

コーポレートガバナンスの導入は、健全な経営によって企業を発展させるために有効な手段です。ガバナンスを継続的に遵守し強化していくためには、社内の組織体制やITツールによる環境整備も必要となります。企業の理念や方針にあわせてコーポレートガバナンスを策定・強化することで、企業価値を高めていきましょう。

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