2020.05.27

ダイバーシティマネジメントとは?導入メリットや具体例も紹介

ダイバーシティマネジメントとは?導入メリットや具体例も紹介

ダイバーシティという言葉をよく耳にするようになりましたが、実は日本はダイバーシティが遅れている国とされています。この言葉が、いまひとつよくわからないという人もいるでしょう。「ダイバーシティ(Diversity)」は直訳すると「多様性」、それを経営に活用して組織を強化する手法が「ダイバーシティマネジメント」です。この記事ではダイバーシティマネジメントを理解したい人に向けて、導入メリットや具体例などを解説します。

ダイバーシティマネジメントとは

ダイバーシティは学術的には生物的多様性や遺伝的多様性という意味で使われるなど、幅広い意味を含んでいます。ビジネスシーンで使う場合は、主に従業員の多様性や勤務条件の多様性などを意味して使われています。「ダイバーシティマネジメント」とはダイバーシティ経営などとも呼ばれ「企業が従業員の多様性を受け入れ活用しながら組織力を高めていくこと」を意味する用語です。

日本では「女性活躍促進」と絡めて考えられることが多いですが、必ずしもそうではありません。外国人労働者や高齢労働者、ハンディキャップのある人などが同じ職場で働くことも含みます。働き方改革で推進されている在宅ワーカー、短時間労働者なども同様です。また「仕事より家庭生活を優先させる」と考える人とそうでない人が違いを認めながら仕事ができる雰囲気を作るなども、広い意味ではダイバーシティマネジメントといえるでしょう。

なぜ、このダイバーシティが日本で注目されるようになってきたのでしょうか。それは社会状況が大きく変化しているからです。かつての日本社会では、社員として活躍できる人は「日本人」で「健康」な「男性」という条件を満たしていると考えるのが一般的でした。しかし、少子高齢化社会における労働力の減少、女性の社会進出機運の高まり、IT技術などの進歩によるビジネスのグローバル化などで状況は大きく変わっています。多様性を受け入れなければ企業活動そのものが難しくなっているのです。

そうしたなか、非正規雇用や外国人労働者、障がい者など多様な人材を積極的に受け入れる企業が増えています。労働力確保だけに留まらず、企業の生産性向上など多くの相乗効果をもたらすことがわかってきたからです。企業が成長していくためにも、従業員の働きやすい環境を整えるうえでも、ダイバーシティマネジメントを取り入れる重要性が増しています。

ダイバーシティの種類

ダイバーシティの種類は「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ」の2つに大きく分けられます。表層的ダイバーシティは「人種」「民族」「年齢」「性別」「障がい」など自分の意志で変えられない属性です。また「価値観」「性的思考」など自分では変えることの困難な属性も表層的ダイバーシティに分類されます。大まかには、誰の目にも違いがわかりやすい属性が表層的ダイバーシティです。

一方、深層的ダイバーシティに分類されるのは、外見から識別が難しい内面的な多様性です。たとえば、「受けてきた教育」「宗教」などの違いは人を見ただけではわかりません。しかし、何かの折に大きな違いとなって現れ、扱い方によっては大きな障害になることもあります。正しいと思う基準が人それぞれ違うため、かえって問題が複雑になりやすいのが深層的ダイバーシティの属性の特徴です。また、「収入」「組織図上の役職や階層」「雇用形態」「職務経験」なども、その人についてよく知らなければ明らかにならない属性なので、深層的ダイバーシティに分類されます。

ダイバーシティの歴史

ダイバーシティという考え方は、1960~1970年代のアメリカで起こった人種差別撤廃のための公民権運動と、男女平等を訴えた女性運動にまでさかのぼります。これらの運動によって1964年に公民権法第7編が制定され、不当な人種差別を受けた人は雇用者を告訴できるようになりました。また、雇用機会均等委員会(EEOC)も1965年に設立され、性別・人種に関する雇用差別が監視されるようになります。1972年には直接差別・間接差別のいずれも告訴できるようになりました。また、アファーマティブ・アクションによって雇用形態の詳細な報告と救済計画の提出が雇用者に義務付けられます。

これらの施策によって、企業への導入が進んだのが第2段階とされています。1980年代に入ると、雇用機会均等法施策を守っているアメリカ企業は約8割となり、アファーマティブ・アクションを順守する企業も約7割までになったのです。しかし、この第2段階では、差別に対して訴訟を起こされないためや、企業イメージを守るためにノルマを課しているだけなどの側面がありました。つまり、ダイバーシティの本質的な考え方が重視されているわけではなかったのです。形式上ダイバーシティを掲げているだけの企業もあり、期待と現実とのギャップを感じて離職する従業員の数も少なくありませんでした。

第3段階のダイバーシティは、1980年代におけるアメリカでの大量生産・大量消費時代の終焉とともに始まります。大量に物を生産することで物価が安くなり、それがさらなる大量消費を促すという構造は、中心的な労働力であった白人男性の減少とともに終わったのです。この労働人口構成の激変に対応する手段として、女性や非白人労働者に注目が集まるようになり、企業へのダイバーシティが加速します。第3段階のダイバーシティでは「新商品・新サービスを生み出す」「新市場を開拓する」など競争優位性を獲得する方法として、ポジティブなダイバーシティの導入が進んだのです。その後、グローバル化の推進などによって労働者の多様化はますます進み、ダイバーシティの重要性も増しつつあります。

ダイバーシティマネジメントの日本企業の現状は?

ダイバーシティという考え方、およびダイバーシティマネジメントの導入は日本でも進んできました。とはいえ、日本のダイバーシティマネジメントは諸外国に比べてかなり遅れているといわれています。議論や報道だけをみても、表層的ダイバーシティの事柄に留まり、深層的ダイバーシティまで及ぶ事柄はほとんどありません。原因として指摘されているのは「島国の環境により単一民族に近い人口構成だったこと」「終身雇用制度が一般的だったこと」の2点です。

多民族国家のアメリカと違い、日本では違う人種の人との接触があまりありません。たとえば昭和世代なら、まさかコンビニや飲食店で外国人が働く世の中がくるとは思っておらず、少なからずとまどいを感じているのではないでしょうか。ダイバーシティとは頭で理解するだけでは不十分であり、ましてダイバーシティマネジメントを実践するのは困難です。対話や議論によって対立する問題を乗り越えるというより、暗黙のルールや常識を守っているだけでよかった日本社会は、ダイバーシティを受け入れる文化がもともと少なかったといえるでしょう。

また、終身雇用制度も間接的にダイバーシティを遅らせる役割を果たしています。終身雇用で、なおかつ年功序列という日本特有の文化は、生活に安定をもたらした一方で女性進出も遅らせました。かつてのアメリカで白人男性が働けばよかったのと同じように、日本でも男性が働き、女性が家事や育児を担当するほうがバランスのよい世帯が多かったからです。

しかし、日本を取り巻く状況は大きく変わりました。まず、少子高齢化社会によって労働人口減少と労働人口構造の変化が急速に進んでいます。仮に日本人の健康な男性を正社員で終身雇用できる企業であっても、必要な人材を確保するのは難しくなってきました。女性や高齢労働者、外国人、ハンディキャップを持つ人など、あらゆる労働力を活用しなければ、企業の成長が望めないケースが増えています。また、企業のグローバル化も進み、多様な人材が働く職場も増えてきました。国籍や人種を問わずに積極的に導入する企業も少なくありません。英語を企業内の公用語にするなど日本人が多様化に合わせる試みなどもあります。

また、内面の多様化、つまり潜在的ダイバーシティの重要性も高まってきています。雇用意識や価値観が多様化したことから、企業の側でもこれらを吸収するための組織づくりが求められているのです。ダイバーシティマネジメントが進んでいる会社では、専門部署を設けてダイバーシティに対応するためのルールの構築などに取り組んでいます。顧客・消費者の多様化への対応も必要です。主にIT技術の進歩により情報量が格段に増えたことから、顧客のニーズはより細かく分かれ始めました。消費の多様化に対応するためには、企業の側も広範囲にアンテナを張っておく必要があります。そういう面でも、多様な人材を揃えてさまざまな発想や施策を打ち出していくことが、企業の競争力を左右するようになっているのです。

ダイバーシティマネジメントを導入するメリット

ダイバーシティマネジメントには企業と従業員の双方にメリットがあります。

ダイバーシティマネジメントを導入するメリット(企業)

企業目線でのメリットは以下の3つです。
1つ目に「創造力の強化」が挙げられます。多様性を獲得するということは、幅広くさまざまな角度から意見やアイデアを集約できることであり、イノベーションの力を高められます。国内において新たなニーズを獲得できることもあるでしょうし、また海外でビジネスチャンスを広げられるかもしれません。実際、イノベーションとダイバーシティマネジメントには相関関係があることが明らかになっています。

2つ目は「人材を確保しやすい」というメリットです。ダイバーシティを認めると採用する人材の幅も広がります。たとえば、プログラムのミスを発見する能力の高い発達障害の人たちを雇用して、業務を向上している会社などがその一例です。また、子育て中の女性を在宅で雇用するなど、ダイバーシティマネジメントが人材確保の安定化に役立っている事例もあります。

3つ目は「企業評価の向上」です。多様な働き方を提供することは、従業員のモチベーション向上や長期間の就業につながります。また、社外の人間に対して好ましい印象を与えることも期待できます。そのような印象を持った人が商品を購入してくれたり、その企業で働きたいと思ってくれたりするなど、結果的に企業の成長につながることもあるでしょう。

ダイバーシティマネジメントを導入するメリット(従業員)

次に、従業員目線でのメリットを3つ紹介します。
1つ目は「多様な活躍の機会や選択肢を与えられる」ことです。一般的にダイバーシティマネジメントが進んだ企業は、組織内の異動が活発になります。そして、従業員それぞれの個性やスキル、自主性が尊重される傾向があります。適材適所という考え方は昔からありますが、年齢や性別など表層的ダイバーシティの属性に囚われている企業も少なくありません。これらを改善するだけでも、やりがいを持って自分の力を発揮できる従業員が増えるのではないでしょうか。

2つ目は「多様な人材との接点が生まれる」ことです。違いを受け入れて協力して働くことは従業員の視野を広げ、新しい発想をもたらしてくれます。たとえば、留学や海外旅行は異文化交流ができるよい機会ですが、社会人になると企業内の狭い常識に留まってしまいがちではないでしょうか。もし企業が多様な人材を受け入れていれば、こうした成長の機会を多く持てます。

3つ目は「個性が尊重される」という点です。単一民族に近い日本の社会という背景もあってか、日本人は個性より協調性が重んじられる傾向があります。もちろんよい面もありますが、一方で個性的な人が息苦しさを感じていることも多いといえます。相手を尊重ことを企業内で徹底すれば、自由な社風へとシフトしていき、居心地のよさを感じる従業員も増えるでしょう。

ダイバーシティマネジメントの推進における課題

ダイバーシティマネジメントにはメリットが多いものの、推進するうえでは以下の3つが課題になりやすいといえます。
第1に「待遇・評価が複雑化して、従業員に不平等感や不満が生じやすい」ことです。たとえば独断専行型の従業員がいたとすれば、それを個性と考えるべきか自己中心的と捉えるかで評価が分かれてしまいます。また、多様な人材を雇用すると人事部に負担がかかるなど、具体的な問題も生むことがあります。

第2に「コミュニケーションエラーが起こりやすい」ことです。ダイバーシティを推進するということは、従業員間の違いを広げるということでもあるので、言語の壁で困ったり価値観の違いなどで悩んだりする従業員も増えやすくなります。これまでスムーズに連絡・指示ができていた業務が滞ってしまうことなどもあるので注意が必要です。

第3に「ハラスメント発生リスクが生じる」ことです。本来、ダイバーシティが推進されれば、差別や対立などが少なくなるはずです。しかし、ストレスが溜まった職場では、つい不適切な発言や態度が出てしまうこともあります。また、急速に多様な人材を受け入れれば、知識がないために意図せずハラスメントになってしまうこともあるでしょう。たとえば、障がい者に何ができて何ができないのか、しっかりレクチャーできていなかったとします。その状態では「障がい者だからできないはず」と勘違いして仕事を与えないなどのトラブルが生じることも考えられるのです。

ダイバーシティマネジメントを取り入れるポイント

ここではダイバーシティマネジメントを導入する際のポイントを、施策を実施する側の立場で4つ紹介します。
まず、大切なのは経営陣が本気で取り組むことです。形式上取り入れるだけでは、先に解説したノルマや体裁だけの第2段階のダイバーシティマネジメントに留まってしまいます。特に日本の企業においては表層的ダイバーシティから取り組むことが多いので、企業の方針や理念、あるいは社内規定としてトップが明確にアナウンスすることが需要です。

2つ目が、従業員を巻き込むことです。トップダウンも必要ですが、ダイバーシティを浸透させていくには従業員の協力が欠かせません。従業員への教育なども定期的に実行していきましょう。

3つ目は経営戦略に沿わせることです。というのも従業員がダイバーシティにメリットを感じないと、納得や理解をしにくいからです。ダイバーシティマネジメントによって企業がよくなっていると実感できなければ、不平不満が溜まりやすいので注意しましょう。

最後に重要なのは、特定のダイバーシティだけ重視しないことです。たとえば女性を大切にするという考え方は重要ですが、あまりに女性を優遇してしまえば男性社員はやる気を失ってしまうでしょう。組織全体のバランスや生産性を考えて、施策を実行していくことが必要です。

ダイバーシティマネジメントの導入事例

ダイバーシティマネジメントの導入事例1

損保ジャパン日本興亜は「人間尊重推進本部」という部署を新たに設け「女性の活躍推進」「人権の啓発」「労働時間の見直し」「健康管理」の4つに取り組みました。具体的には託児所と連携して仕事をしやすくしたり、育児短時間勤務制度を推進したり。また、業務職に人事ローテーションを取り入れたり社内公募制ジョブチャレンジ制度を導入したりするなど、社内の活性化や自主性を尊重する施策を実施しました。短時間勤務制度や退職者再雇用制度など多様な働き方も積極的に導入した結果、「東京労働局優良賞」を受賞するなどダイバーシティマネジメントの成功事例として評価されています。

ダイバーシティマネジメントの導入事例2

障がい者の雇用においては教育や研修がかかせません。ある会社ではパソコンで要約筆記するスタッフを配置して、都度タイピングすることで障がい者が仕事内容を理解するのを支援したといいます。また、弱視のハンディキャップがある人にプロジェクタ投影用のディスプレイを使ってもらうなど、自分にあったサイズを選べるように環境を整えました。移動が困難な障がい者の人もいます。ある会社は研修会場が遠い場合にはバスをチャーターしたり、教室内の座席位置を事前に確保したりなどして障がい者をサポートしました。これらは全て研修段階での施策です。障がい者に限らず多くの従業員との違いが大きいほど、初期段階に充実した施策をすることが必要といえます。

ダイバーシティマネジメントの導入事例3

社員の8割が男性というローソンは、自社では女性社員が十分に活躍できていないと分析していました。そこで女性が活躍するためには男性も積極的に育児に参加する姿勢が必要と判断し、男性の育児休職を積極的に促しました。国の制度とは別にローソン独自の育児休職として、休みの上限を5日(生後3カ月以内の場合)としたのがポイントです。つまり、育児休職のハードルを下げることで、休暇取得を促進したのです。日本の社会では多くの男性が育児休職に抵抗を感じているといいます。このように、負担のかからない形で従業員を啓蒙し、企業にダイバーシティを浸透させていくという導入事例もあります。育児への理解が深まった男性が職場に増えたことで、女性社員の職場復帰の意欲が高まるなどの波及効果もあったとされています。

全社でダイバーシティマネジメントに取り組もう

ダイバーシティマネジメントは、少子高齢化社会における人材確保やグローバル化したビジネスに対応するために不可欠です。また、多様化する顧客ニーズに応えるためにも、企業そのものが多様な人材を雇用することが必要になってきました。ダイバーシティマネジメントは、変化しつつある市場に対応するうえで大きな強みになります。全社でダイバーシティマネジメントに取り組んではいかがでしょうか。

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