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2019.6.7

エンゲージメントを高めるメリットは?向上への取り組みや施策例を紹介

従業員のエンゲージメントを高めることができれば、企業の業績アップを目指せるだけでなく、離職率の低下なども期待できます。この記事では、エンゲージメントが企業活動にとって重要な理由や、エンゲージメント向上を実現するために必要な準備、施策例などをご紹介します。

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは直訳すると「婚約」や「約束」「契約」といった意味があります。人事領域では「企業と従業員との結びつき」あるいは「企業に対する愛着・思い入れ」という意味を持ちます。企業と従業員が対等に向き合い、信頼関係を保ち続ける関係性がエンゲージメントです。

エンゲージメントとロイヤリティ、従業員満足度(ES)の違い

エンゲージメントと類似している、ロイヤリティや従業員満足度(ES)の意味を確認しましょう。ロイヤリティは「愛社精神」「組織への帰属意識」という意味を持ち、上下関係が前提となる考え方です。

また、従業員満足度(ES)は仕事上の人間関係や、企業から提供される報酬に対する満足度を示すものです。職場環境や給与などの額によってESが変化する可能性があります。

したがって、企業・従業員双方に心のつながりが伴うエンゲージメントとは異なり、ロイヤリティや従業員満足度は従業員が企業への一方通行な思いなどを示したものです。

エンゲージメントの測り方

エンゲージメントを測定する際は、人事評価にあわせてアンケート調査を活用する企業が多いです。ただしアンケートを実施しても、「企業への愛着」や「思い入れ」といった定性的な情報は数値化しづらい一面もあります。そのため、建前の回答を防ぐために、アンケートは無記名にして本音で答えてもらうのも一つの手でしょう。あえて部署や年代を集計対象にしない企業もみられます。

近年では、従業員エンゲージメントを継続的に測定する「パルスサーベイ」という方法も普及し始めています。パルスサーベイとは、簡単な質問を通じて従業員の心理状態や仕事への満足度を確認する仕組みで、空いた時間に手軽に回答できるのが特徴です。
幅広い観点からの質問を通じてエンゲージメントを測定する「エンゲージメントサーベイ」と組み合わせれば、より精度の高い調査結果を得られます。

エンゲージメントを向上させる3つのメリット

続いて、エンゲージメントを高めることが企業にとってなぜ重要なのかを説明していきます。そこには主に3つの理由があります。

1:企業の業績アップにつながる

エンゲージメントを高めると、企業の業績アップにつながるメリットがあります。エンゲージメントが向上することで、愛着のある企業のためにもっと頑張ろうという意識が芽生えるためです。

企業のために頑張ろうという気持ちが従業員のやる気につながれば、仕事の効率が上がるだけでなく、アウトプットの質も良くなってきます。質の高い仕事をしてくれる従業員が増えれば増えるほど、企業としての生産性も上がり、業績の拡大も期待できるでしょう。

2:従業員の離職率低下につながる

エンゲージメントが高まると、従業員の「引き続きこの企業で頑張りたい」という思いが強くなり、離職率の低下にもつながります。「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10」によれば、転職者が退職を決めた理由の1位が「上司や経営陣との関係」、2位が「労働時間などの職場環境」でした。つまり、給与や仕事内容への不満よりも、上司との関係性や、企業全体への不満のほうが理由としては上位になることがわかっています。従業員の退職を防ぐには、経営方針の透明化はもちろん業務内容の改善が必要不可欠です。
あわせて、残業時間の削減やフレックスタイムの導入といった、働く環境の改革を通じて従業員エンゲージメントを高める必要もあるでしょう。

3:採用コスト削減につながる

従業員が退職すると新たに人材募集を行う必要が生じ、相当なコストがかかります。しかし、エンゲージメントを高めて離職率を低下させることができれば、採用コストの削減にもつながります。

他社と比べて離職率が高い、従業員の勤続年数が短いといった傾向がみられる企業は、その理由を具体的に把握することが必要です。例えば、従業員の退職理由を確認・分析したり、現在働いている従業員が待遇や環境に不満を感じていることはないか調査したりすることなどです。
退職者にみられる共通点や従業員に共通する不満が見つけられたら、まずはそこから優先的に改善していくべきでしょう。

エンゲージメント向上施策|取り組みの流れ

エンゲージメントを高める施策への取り組み方を、4つのステップで説明します。

ステップ1:現状把握を行う

エンゲージメントを下げている要因を突き止めることが、エンゲージメントを向上させるための第一歩です。

例えば、離職率が高いにもかかわらずその原因が不鮮明な場合は、離職の理由を洗い出しと、在職中の従業員が企業にどんな思いを抱いているかの把握を早急に進める必要があります。前述のアンケート調査や「パルスサーベイ」「エンゲージメントサーベイ」を活用して、従業員エンゲージメントを測定しましょう。

エンゲージメント測定を行うためには、さまざまな設問を用意する必要があります。設問の意図や測定指標に基づいてきめ細かな分析も必要となるため、人事部門だけで行うのは大変です。人事部門の負担を減らしながら客観的な視点も取り入れるという意味で、社外のサポートを受けることも有意義だといえます。

ステップ2:組織の課題を特定する

社内で当たり前の習慣の中にエンゲージメントを低下させる原因はないか、一歩引いて客観的に確認することも大切です。

例えば、早朝から夜遅くまで働いていることが好意的に評価される社内風潮によって、長時間の残業が慢性化しているケースがあります。長時間の残業が慢性化してしまうと、従業員は心身ともに疲弊し、ワークライフバランスを重視する従業員などのモチベーションは下がってしまうでしょう。また、育児・介護との両立が難しいと感じて離職者が増加する可能性も高く、企業全体の生産性を下げる場合もあります。組織内の悪い習慣を洗い出し、課題を正しく特定することがエンゲージメント向上の第2ステップなのです。

ステップ3:従業員のモチベーションとなっている要因を探す

企業から一方的に価値観やビジョンを押しつけるのではなく、従業員と話し合いながらモチベーション要因を探す姿勢が大切です。
仕事のやりがいやモチベーションを感じるポイントは、従業員の人となりや価値観、年代・ライフスタイルなどで異なります。

例えば、給与が上がることに喜びを見出す人もいれば、休暇がきちんと確保されることを重視する人もいるでしょう。また、期待以上の成果を出したときの達成感で自信がつく人もいれば、お客さんから感謝されることがモチベーションになる人もいます。

企業は、個々の従業員のやる気を高める要素を把握して、多様な価値観を実現するための施策を考えなくてはなりません。顕在化した課題ばかりに気を取られず、従業員一人ひとりと対話しながら、さまざまな価値観やライフスタイルに沿ったモチベーションの源泉を見つけていきましょう。

ステップ4:施策を検討・推進する

現状の組織課題を把握し、従業員のさまざまなモチベーション向上の背景を整理できたら、具体的な施策を検討していきます。
エンゲージメント向上の施策を進めるにあたり、ときには経営戦略の変更が伴うなど、大きな判断が必要となる場合もあります。エンゲージメントが高い他社の真似をすればうまくいくわけではないので、自社にとっての必要性やメリット・デメリットを見極めながら、継続してエンゲージメント施策を推し進めましょう。

課題の解決を急ぐあまりに施策内容ばかり考えてしまうと、実態の課題や従業員の気持ちと施策に距離ができてしまうので、定期的なエンゲージメントサーベイなどを実施して客観的な視点を見失わないよう注意が必要です。

エンゲージメントを高めるためのポイント

エンゲージメントを高めるためには、企業の経営戦略やビジョンを従業員にしっかり伝えることが大切です。企業が目指す方向性が明らかになれば、従業員も目標達成のプランを立てやすくなり、自発的に仕事の意欲や能力を高めることができるでしょう。

従業員のワークライフバランスを考える

働き方が多様化する中、従業員のワークライフバランスへの配慮も企業には求められています。
特に20~30代の若手は、残業時間が少なく有給休暇をきちんと取れるといったワークライフバランスを重視する傾向があります。仕事とプライベートのメリハリがついていれば、仕事へのやる気も高まるでしょう。

さらに、十分に休息できることで心身の健康が保たれ、より一層仕事に取り組みやすくなります。ワークライフバランスへの配慮は仕事の生産性向上にも直結するため、前向きに取り組むと良いでしょう。単に残業を削減するだけでなく、従業員が有給休暇をとりやすい環境を整備したり、福利厚生制度を拡充したりすることもエンゲージメントを高めるポイントになります。

エンゲージメントを高める!3つの施策例を紹介

ここからは、画期的な取り組みでエンゲージメント向上を実践している企業の施策例を3つ紹介します。先行してエンゲージメントの向上に成功している企業の例ですので、参考になるのではないでしょうか。エンゲージメント向上の実践に活用できる、サイダスのタレントマネジメントシステムについてもあわせてご紹介します。

1:組織が一体となるための目標を作る

まず、「OKR(Objectives and Key Results)」を導入している株式会社ココナラの事例です。OKRとは、企業と従業員個人の目標を連動させる目標管理メソッドのことです。

これまでに述べたように、企業が目指している方向性がわかりにくいと、従業員も自分に求められている役割を明確化しづらいです。結果として、エンゲージメントの低下につながってしまうため、このような状況を避けるためには、企業と従業員の目標とをリンクさせることが大切です。

まず企業の目標を決め、次に目標を達成するために必要となる要素を3つ程度の成果指標に分け、そして各指標の進捗を追跡していくという流れでOKRが推進されていきます。

OKRをより効果的に推進、浸透していくために、ココナラでは、期初に部下と上司が1対 1で面談を行い、設定したOKRの進捗と達成状況を確認しています。1対1であれば相談しやすく、深い話し合いをすることも可能です。従業員としても自分の業務の意味や目的が理解できることで自身の目標も明確になり、目標の達成により、次の目標達成もできるという関係性も理解できます。このようにOKRを活用して従業員のエンゲージメントが高まったのです。

2:従業員のパフォーマンスを正当に評価する

従業員のパフォーマンス評価の方法を見直した株式会社VOYAGE GROUPの例を紹介します。自分の仕事が不適切に評価されている、または従業員の仕事を公平に評価する指標がないといった状態は従業員のモチベーションを下げます。こうした不満の蓄積は企業への信頼の低下にもつながり、エンゲージメントを下げる要因となります。こうした点に着目したVOYAGE GROUPでは、従業員と上司などの評価者で90分にもおよぶ対話を実施しました。

VOYAGE GROUPの評価制度の特徴は、点数評価がないことです。しかしその分、評価内容はしっかりと文章で書かれており、単なる点数だけの評価よりもより根拠がわかりやすくなっています。
また、対話の際にも、従業員が評価に納得できるように、評価軸を明確に伝えるように配慮しています。VOYAGE GROUPの取り組みにおいて大事な2つのポイントが、まず企業側から従業員への一方的な評価を行うのではなく、対話の形をとっていることです。そして、従業員に口頭と文章でわかりやすく伝えることに重点を置いていることです。結果として、取り組み前よりもエンゲージメントが高まっています。

3:上司と部下の関係をよくする

エンゲージメントの高い企業を目指すためには、社内の人間関係が良好であることも大切です。職場の人間関係を良くすることでエンゲージメントを高めることができたアドビシステムズ株式会社の例を紹介します。

アドビシステムズでは、社内の人間関係を改善する施策として、「チェックイン」制度を導入しました。内容としては、上司と部下が1対1の面談を定期的に行うというものです。面と向かった1対1の場であればお互いに話をしやすく、普段考えていることへの理解も深まります。

また、こうした面談を繰り返し行っていったことで、従業員は、「サポートされている」「期待されている」というポジティブな感情が芽生えやすくなります。この結果、エンゲージメントが高まり、業務への積極性やアウトプットの向上につながりました。

4:タレントマネジメントシステムを有効活用

エンゲージメントを高めるためには社員の働き方やモチベーションなどをきめ細かく観察することが大切です。サイダスでは、CYDAS PEOPLEというタレントマネジメントシステムを提供しています。

CYDAS PEOPLEの目標管理機能では、社員一人ひとりの目標設定をサポートし、達成までのプロセスを見える化。モチベーションアップにつながります。

また、「1on1 Talk」では上司と部下の対話のきっかけを提供し、ともに成長してパフォーマンス向上を目指せるのが特徴です。システム上で社員のコンディションを伝えられるので、部下の心理的安全性にも配慮されています。目標や課題を定期的にチェックしながら、上司と部下の関係性を深められます。

社員のエンゲージメントという定量的に把握しづらいデータも、システム上で扱っていくことで、社員一人ひとりに寄り添うことが可能になります。

エンゲージメントを高めて離職率の低下につなげよう

従業員のエンゲージメントが高まると仕事に対するモチベーションが上がり、業績向上にもつながります。働くことに満足感が得られれば、売上アップや離職率の低下など、企業にも大きなメリットがもたらされるでしょう。

労働人口の減少が深刻化している中、企業が持続的に成長していくためには、エンゲージメントを高めて優秀な従業員の確保と離職防止に力を入れることが重要です。
エンゲージメントを確実に高めていくためには、パルスサーベイツールなど社外のリソースを活用するなどして現状把握を行い、課題を明らかにしましょう。そして、従業員のエンゲージメントを下げている要因を把握し、それを解決するための施策を速やかに実行していくことで企業・従業員双方が信頼関係を軸にした良好な関係性を持ち続けられるでしょう。

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