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2019.8.30

副業を解禁する企業は増えている?企業がすべきことと注意点とは

企業で働いている人の中には本業のほかに副業をしている人も増えていて、政府による働き方改革の推進が良い方向へと動くきっかけになった企業はいくつもあります。現在はまだ副業を規制している企業の中でも、緩和を考えている企業も多いことでしょう。この記事では、実際に副業の規制緩和をする場合、どういったことをすべきか、注意点はどんなところなのかなど詳細を紹介します。

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副業を解禁する企業が増えている背景とは?

副業

2018年に行われた「兼業・副業に対する企業の意識調査」によると、兼業や副業を認めたり・推奨したりしている企業は全体のおよそ28.8%です。以前と比較して、少しずつ副業の規制緩和をする企業が増えつつあります。この背景には、政府の「副業・兼業の推進に向けたガイドライン」の見直しが2017年に行われたことが影響しています。その中でも大きな理由は、政府により副業の規制緩和のメリットが伝えられたことでしょう。副業の規制緩和をするメリットは、優秀な人材を自社に引き止めることができることや従業員の満足度アップ、スキルアップにつながることなどが挙げられています。

働き方改革の多面的な推進によって残業時間が減少し、時間的な余裕を作ることができます。それによって従業員のストレス軽減となり、満足度アップが期待できるのです。さらに、心の余裕ができる分、無理をすることなく働くことができるようになります。また、副業をすることで、従業員のスキルアップにもつながる可能性があることも規制緩和をする企業が増えている理由です。

副業制度に関する実態調査や、スキルアップを図るための副業選びはこちらの記事で紹介されています。あわせてご覧ください。

実際に副業を積極的に認めている企業はどこ?

副業を従業員に推奨もしくは規制緩和している企業は増えていますが、実際に積極的に副業を認めている企業はどんな会社があるのでしょうか。どのような企業があるのか、例として10社について紹介していきます。

【副業の規制緩和が進んでいる企業10社】

  1. ロート製薬株式会社
  2. サイボウズ株式会社
  3. ヤフー株式会社
  4. 株式会社新生銀行
  5. ソフトバンクグループ
  6. 株式会社クラウドワークス
  7. シックス・アパート株式会社
  8. 株式会社ドン・キホーテ
  9. コニカミノルタ株式会社
  10. 株式会社HIS

ロート製薬株式会社

「ロート製薬株式会社」は、2016年から2つの制度を取り入れています。1つは「社外チャレンジワーク」で、通常の業務後や休日を利用して副業することを認める制度です。もう1つは「社内ダブルワーク」といい、普段勤務している部署のほかに複数の部署や部門を担当できる制度になっています。社内ダブルワークでは新たな別の部署で働くことで、さまざまなスキルや経験を得ることができるのです。本業の業務に支障がないことを条件にしている以外は、特に細かな条件が決められていません。ロート製薬株式会社の試みについて一般社員の反応は概ね好意的であり、より社員が副業をしやすい環境となっています。

サイボウズ株式会社

「サイボウズ株式会社」は、社員の自立を目的に副業を認めています。ただし、副業をするときには「サイボウズ」の名を出すなどブランド力を使用することを禁じており、業務に支障がないように行うことが条件です。万が一、通常の業務に支障が出た場合、サイボウズ内での評価に影響することも併せて注意喚起しています。また、副業に関しては自己責任で行うことや他社に雇用される際には必ずサイボウズへ報告をすることも注意事項としてあげられています。副業をする際に会社の情報やブランド・役職名・製品名を使いたい場合は、業務遂行上必要なのか、会社の資産を毀損しないかなどを判断するために、必ず事前報告して許可を取ることも必要とされています。

ヤフー株式会社

「ヤフー株式会社」のコンセプトは「才能と情熱を解き放つ」であり、そのために必要なことの1つとして副業を認めています。ヤフー株式会社は創業当時から副業することを認めていました。ただし、副業をする場合は事前に申告して許可を得る必要があります。申告するときにはどのくらいの期間働くのか、副業する先ではどういう仕事をするのか、収入はどの程度になるかなど詳しく伝えなければいけません。申請後に許可を得ることができれば、業務に支障をきたさないことを条件に副業を行うことが可能となります。

株式会社新生銀行

情報管理などのセキュリティ面の問題があるため、金融機関の社員が副業をすることは難しいとされていました。しかし、2018年に株式会社新生銀行は副業を規制緩和しています。解禁となった理由は、「業界外の人間と交流することでイノベーションの創発につながる」という点が重要視されたからです。副業を解禁するメリットとして、株式会社新生銀行は社員の専門知識やスキルの向上・経済的な補填や労働力不足を補うことにつながる点もあげています。株式会社新生銀行は、副業や兼業をすることと情報管理は別問題であるという考え方をしているのも特徴的です。つまり、会社の情報管理については社員の副業や兼業に関係なく、厳重に行うべきであるという考え方です。情報管理を厳重に行うことは副業解禁以前からすでに行われていたことであるため、いざ解禁をしたとしても問題になることではないとしています。

ソフトバンクグループ

ソフトバンクグループで副業が解禁されたのは、2017年11月のことでした。副業として認められるものは通常業務に支障をきたさず、社員自身のスキルアップや成長につながるものです。副業として認められていないものは、他社と雇用契約を結ぶもの・休養がとれずに本業に支障をきたすもの・社会的な信用や秩序を乱すもの・同業の会社・公序良俗に違反するものとなっています。副業を行うことができる期間は、許可が出されてから1年間です。それ以上継続したい場合はもう1度申請して許可を得る必要があります。
副業を認めることで、社員が仕事にやりがいを感じながら働いてもらうことを目的としていることが良い方向へ向かっています。副業解禁後のトラブルはなく、会社を辞めずにやりたいことをできてよかったというような声もあり、社員の退職の抑制にもつながっています。

株式会社クラウドワークス

「株式会社クラウドワークス」では、2016年7月から多様な働き方を実践・研究するための「ハタカク!」という制度が取り入れられています。第一弾として始まったのが、副業・リモートワーク・フレックスタイム制度でした。副業を解禁することで、社員の経験やスキルを磨くことへとつなげているのです。また、副業として自社サービスを使用することにより、さらにサービスの改善や検証にもつながると考えられています。「株式会社クラウドワークス」では、個人が自由に働き方を選べるようになることを目指しています。

シックス・アパート株式会社

「シックス・アパート株式会社」では2016年から、メンバーひとりひとりに合った幸せに働きつづけることができる方法を考えて実践していくために、「SAWS」という働き方を取り入れています。「Six Apart(SA)らしい、Working Style(WS)を実践する」という意味です。リモートワークやフレックスタイム制度を取り入れることで、家族との時間を増やしたり自分の働きやすい環境で働いたりといったメリットを得られるようになりました。社員の満足度アップにつなげることができたのです。働きやすい環境になると集中して働くことができるので、業務の効率も上がることが期待できます。

株式会社ドン・キホーテ

「株式会社ドン・キホーテ」が副業を解禁するきっかけとなったのが、待機児童問題の解決を目指したことでした。株式会社ドン・キホーテには事業所内保育施設がありますが、そこでも働きたいと希望する社員から相談を受けたのです。保育施設では人手が不足しており、保育士として働く人が増えれば受け入れ可能な児童が増えることがわかりました。受け入れ児童が増えれば、待機児童をもつ主婦層が雇用されることにもつながり、社会課題の解決のための有効な取り組みとなっていくのです。

コニカミノルタ株式会社

「コニカミノルタ株式会社」では、2016年2月から副業を解禁しています。ただし、副業をする許可を得るためには3つの内容について申告しなければいけません。会社名や勤務日数・時間、業務詳細内容と雇用形態、副業をしようと思ったきっかけ、副業をすることでコニカミノルタ株式会社にどういった貢献ができるのかなどです。この中でも特に重要視されているのが、自社への貢献度とその内容となっています。また、細かな点として機密保持や競合社は避けること・健康に配慮することの3つについて誓約書を提出しなければいけません。さらに、副業をすることでコニカミノルタ株式会社にどのようなイノベーションを起こせるのかも、副業許可の条件となっています。

株式会社HIS

「株式会社HIS」では2018年から「楽しい職場づくり」というコンセプトのもと、副業の解禁をしています。同時に、在宅勤務・フレックス勤務などについても制度の拡大が進められており、勤務しやすい環境作りを推進しているのです。株式会社HISでは、訪日外国人旅行者と地域の地元ガイドの仲介サイト「Travee」を運営しています。この運営の中で、副業として社員が通訳ガイドとして働くことも認められました。社外で働くことで、社員のスキルアップやサービスの改善にもつながることが期待されています。ただし、副業として行うことができるのは「業務委託による個人事業主としての労働」です。HIS以外の企業に採用されて勤務することに関しては、認められていません。

副業規制を緩和する際にすべきこととは?

自社で副業規制を緩和しようと考えた際に、どういうことをすべきなのかをまず考える必要があります。副業といってもさまざまな職種や働き方があり、その中には自社と競合している会社もあるわけです。社員が副業を行うことでどんな状況が起こるかを想定し、副業を許可する条件を細かに定めておくことが重要になります。さらに、企業である以上は国が定める労働基準法も遵守しなければなりません。ここからは、副業規制の緩和をする場合に具体的にすべきことについて紹介します。

副業を認める範囲・業種を決定する

社員の副業内容によっては、自社に不利益がでてしまう可能性があります。これを防ぐためには、副業できる範囲を決めておく必要があります。たとえば、副業自体を認めるか・特定の業種のみ許可をだすかについて考える必要があるでしょう。社員の副業によって自社の機密事項が競合する他社に漏れて、会社が大きな損害を被り、裁判が行われた例もあるので、判決などを参考に国の動きや法的根拠などについても把握しておくことが重要です。逆に、自社にとって利益がでる副業を認めることにした場合、新たなイノベーションが自社で生まれる可能性があります。

副業をするための手続き方法や準備することを決定する

副業を解禁したときに無許可でしてはいけないと定めておくことは、自社の不利益を防ぐためにも必須です。副業をすることを求める社員には、必ず届け出て手続きするようにルール化しておきましょう。手続き方法は2種類あり、届出するか許可を得るかのどちらかです。届出の場合、事前に必要事項などを書類に書くなどしたうえで申請をする方法となっています。一方で、許可制は副業をするためには企業が定める条件をクリアしたうえで、承諾を得なければいけない方法です。副業をすることで情報が漏洩するケースもあり、このリスクを避けるための対策として自社に合った最適な方法を決めておく必要があるのです。

副業の申請内容を検討する

副業希望者の手続き方法をどういったものにするかが決まったら、次にすべきことはどのような内容を申請してもらうかを決めることです。申請すべきポイントは副業について、可能な限り詳しく申請してもらうことで、副業の業務内容はもちろん、勤務時間・勤務場所・勤務条件などです。企業は、労働基準法を必ず守らなければいけません。遵守するために知っておくべきことは申請するように求めるのが良いでしょう。許可制の場合は、担当者が希望者が申請した内容を精査して最終的に許可するかどうかを判断することになります。

就業規則の変更を行う

副業の解禁に伴い、就業規則についても必要に応じて変更しなければなりません。解禁後もこれまでと同じ就業内容のままでは、社員が副業は本当にしてもいいのか戸惑ってしまう場合があるからです。特に、それまでの就業規則に副業を禁止する事項があった場合には、その内容を変更しなければいけません。例えば、許可制か申請制かによって、「一律許可制とする」もしくは「一律申請制とする」という内容に差し替えておくとわかりやすいでしょう。それまで副業に関する事項がなかった場合も、新たに規定を設けることで社員も安心して副業をしやすくなります。

副業規制を緩和する際の注意点とは?

副業を規制緩和することで、いくつものメリットを得られることが期待できます。しかし、副業の規制緩和はメリットばかりではなく、注意すべき点もいくつかあるのも確かです。では、どういう点を注意すべきなのか、具体的に注意点についていくつか紹介していきます。

副業解禁に向けて柔軟に検討する

副業の規制緩和をする際に大切なことには、これまでの就業規則や企業のあり方に囚われない点が挙げられます。企業のこれまでのあり方にこだわることが良い方向へとつながるものもあります。しかし、副業の規制緩和に関しては、それまでの規則やあり方にこだわることで考え方を縛ってしまうことになりかねません。つまり、新たな改革へとつなげることができにくくなってしまうのです。これまで副業を禁止していた企業は、まずそれまでの規制内容をフラットに考えたうえで、改めて副業のメリットを考えてみる必要があります。柔軟に考えてみることで、どういった緩和をするべきか、判断しやすくなるのです。また、企業側と社員側の両方が納得できる最終結果を出すためにも、社員の声を積極的に聞く体制を整えることも必要です。

副業解禁についての詳細事項を社員に周知する

副業の規制緩和を決定したら、社員にもどんな副業をすることが可能なのか、注意すべき点はどういうことなのかなど詳しく通知しなければいけません。通知することは、副業によって情報が漏洩するなどのトラブルを防止するためでもあります。そのため、特に副業をする際の範囲や注意事項については、細かな点まで社員と共有することが重要です。副業の規制緩和をする場合、企業側のリスクをできるだけ減らすことが大切なポイントとなります。
たとえば、競合会社で副業をしないことはリスクを避けるためにも有効です。競合会社の場合、社員が悪気なく軽く口にだしたことだったとしても、内容によっては大きな損失へとつながりかねません。そういった意味では、競合会社で働くことは副業できる対象から外すべきだといえます。競合会社で副業することは一例で、ほかにも顧客の個人情報漏洩防止など注意すべき点はいくつもあります。その内容を社員と共有して、規定を遵守してもらうことが大切なのです。

社員の労働時間や健康状態を把握する

副業は、本業をしながら行うものなので、本業と副業のバランスを考えておくことは非常に重要です。たとえば、勤務時間についてはしっかりと決めておくほうが良いでしょう。長時間働きすぎることで健康状態が悪化し、本業に支障が出るのは避けるべきことです。健康状態が悪化することでモチベーションが下がったり、体の状態によっては入院や休業しなければいけなかったりすることがあります。そのため、副業を行うことを許可するときには、企業側も対象となる社員の勤務時間について、徹底的に把握しておくことが重要となります。もし、勤務時間に問題がある場合は見直しを行ってもらうなど、注意を促すことが大切です。

定期的に社員の副業状況を確認する

副業の規制緩和をした後も、社員が企業の決めた規定をきちんと守っているかを把握しておく必要があります。その手段として、副業の許可を出した後も、対象となる社員に定期的に報告書を提出するように義務づけするか、定期的な面談を行うなどが有効です。どういった方法で把握するのかは、企業のやり方に合ったものを選ぶのが良いでしょう。報告書や面談によって、社員の本業と副業のバランスを確認することが重要です。
あくまでも社員の本業は自社における勤務であり、副業はスキルアップや経験値を増やしたり、働きやすい環境を作ったりするためのものなのです。もし、副業の規定を遵守できていない社員がいた場合は、その許可を取り消すなどの対応が必要となります。規定を遵守しないことは、労働基準法を自社が守れなくなることにもつながる可能性があるためです。ほんの些細なことだからと見逃すと、さまざまな問題が起きる原因になります。

就業規定の副業禁止は本当に有効?職業選択の自由との関連性とは

日本国内では憲法に「職業選択の自由」があります。勤務時間が終わった後に何をするかは本人の自由であり、その中には副業を行うことも含まれているのです。つまり、本来であれば、勤務先の企業が社員の副業について理由もなく禁止するのは難しいことといえます。この憲法の条項の例外は、公共の福祉に反していた場合のみです。公共の福祉とは、自分自身と他人の人権の衝突調整をするための決まりごとをあらわします。簡単にいえば、自分と誰かの人権が衝突した際にお互いに妥協して歩み寄るという考え方のことをいいます。人権に関して言えば、いつでもどこでも100%保証されるものではないということです。場合によっては、規制を受けるケースもあります。
会社側が副業を禁止することを認められる条件として、3つほどあります。社員が副業の疲れによって本業を疎かにしてた場合・競合関係にある企業で副業していた場合・公務員である場合です。企業側が無許可で社員が副業することを認めてしまうと大きなリスクを伴う可能性があり、職業選択の自由を考慮しながら検討することが必要です。許可制や届出制を採用し、規定違反があれば許可を取り消すといった対策は企業側として最低限しなければいけないことだといえるでしょう。

副業規制の緩和は積極的に検討してみよう!

副業の規制緩和を考えている企業の人事担当者は、実際に緩和する際の注意点を十分に理解しておかなければいけません。場合によっては、自社の大きな不利益につながってしまう可能性があるからです。また、どういった条件で許可するのか、届出制にするか許可制にするかなど、細かな点についても検討のうえ決定する必要があります。

規制緩和をしたいと考えているけれど、どう行動を起こしていいのか悩んでいる場合は、タレントマネジメントシステム「CYDAS(サイダス)」の利用を考えてみるのもおすすめです。「CYDAS」では人材データに特化したシステムを用意しており、副業の規制緩和に関しても役立てられるので検討してみてはいかがでしょうか。

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