2019.06.21

働き方改革を導入するためには?必要な施策・手順について解説!

働き方改革を導入するためには?必要な施策・手順について解説!

ニュースや新聞で何かと話題にのぼることも多いビジネス関連のワードといえば、政府が主導して進める「働き方改革」ですね。ただ、働き方改革の概要や推進しなければならないことは理解しているものの、具体的に何から手を付ければ良いのかわからない企業の経営者や人事担当者も多いのではないでしょうか。今回はそんな人々のために、政府が決めた働き方改革の方針を改めておさらいしたうえで、優先して導入したほうが良い具体的な施策や、導入の手順などについて紹介していきます。

働き方改革とは:国をあげた推進の背景と動向

政府が主導する目玉政策のひとつとして、テレビなどでも盛んに取り上げられている「働き方改革」。働き方改革とは、「一億総活躍社会」を実現するために、現在の日本が抱えている働く人々の労働環境問題について、国を挙げた課題解決を目指す施策のことを指します。そもそも、なぜ働き方改革が必要になったのか、その背景やこれまでの国の動きなどついて見ていきましょう。

働き方改革が必要になった要因

日本が国を挙げて働き方改革を推進しなければならなくなったのは、「人口減少」や「少子高齢化」という問題が深刻化したためです。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、生産年齢人口は1990年代の8500万人をピークに減少を続けており、2027年には7000万人、2060年には5000万人を下回ると予想されています。人口減少の加速により、現在対象となっている生産年齢人口だけでは将来的に労働力の確保が難しくなると明らかになったのです。

また、人口減少と同時に少子高齢化も進んでおり、介護と仕事の両立が必要な世帯が増えることや、女性の社会進出をサポートする環境作りが必要なことも影響しています。さらに、高度経済成長期から続く長時間労働を是とする企業体質が心の病や過労死の増加を招いたり、労働時間の長さが生産性の向上に結びついていなかったりする点も無視できない要因です。

働き方改革実現会議で検討された全9項目

働き方改革を実現させるために、総理を議長として労働界と産業界のトップ、および有識者が集まった働き方改革実現会議が開催されました。2016年9月27日~2017年3月28日までの間に10回開催されており、全部で9つのテーマについて協議されています。1つ目は長時間労働の是正、2つ目は雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、3つ目は柔軟な働き方がしやすい環境整備についてです。4つ目はダイバーシティの推進、5つ目は賃金引き上げや労働生産性向上、6つ目に再就職支援や人材育成が協議されました。

7つ目はハラスメント防止対策、8つ目は働き方改革取り組み事例や自己診断、9つ目は取引条件改善など業種ごとの取り組みについてです。いずれもスムーズな働き方改革のために欠かせないテーマであり、慎重な協議がなされました。

法律で決定した働き方改革の3本柱

総理や有識者らによる働き方改革実現会議の結果、次の3つのテーマを改革の柱とすることが法律で決定されました。1つ目は「長時間労働の是正」で、時間外労働の上限を月45時間、年間で360時間を基本とするというものです。2つ目は「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」であり、同じ業務や成果に対して平等な賃金(同一労働同一賃金)を支払うことを定めています。3つ目は「高度プロフェッショナル制度の創設(脱時間給制度)」というもので、少なくとも1000万円以上の一定の年収を得る労働者は、労働時間の規制から除外して成果給としています。

法律決定による中小企業への影響

働き方改革の実現に向け、国会で「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。いわゆる「働き方改革関連法」であり、施行にあたって中小企業にもさまざまな影響が考えられます。たとえば、時間外労働の上限規制が導入されることにより、以前なら間に合っていた納期に遅れたり、サービスの質が低下したりする恐れがあります。残業が月60時間を超えると50%割増の賃金を支払う義務が生じることに加え、同一労働同一賃金を実施すれば非正規社員が多い中小企業は人件費が大幅に上昇する可能性もあるでしょう。

また、中小企業は大企業のように社員数が少ないため、働き方改革を実行する社員や中間管理層へ業務のしわ寄せが起きる懸念もあります。

働き方改革を推進するための具体的な施策と成功事例

働き方改革の推進が必要なことはわかるものの、自社の場合は具体的にどのような施策を行えば良いのかわからないという人も多いでしょう。施策の参考となるよう、既に働き方改革を導入している企業の実際の施策や成功事例を紹介します。

導入する企業が多い5つの施策

企業が実際に導入している施策については、厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」でチェックすることができます。導入している企業が多い施策を5つ例に挙げるので、それぞれ内容を参考にしてみましょう。

1つ目は、フレックスタイム制度です。従業員が毎日の始業時間と就業時間を自由に設定できる制度のことで、各従業員の都合に応じて柔軟に対応できるため高い満足度を得られる制度といえます。

2つ目は、情報通信技術(ICT)を活用することで、自宅やカフェなどでも業務ができるテレワークです。通勤時間やコストの削減にもつながり、生産性の向上が期待できます。

3つ目は長時間労働の削減で、「ノー残業デー」や「朝方勤務・ゆう活」など、できるだけ残業をしない環境作りが推進されています。

4つ目は、年次有給休暇の計画的取得です。取得が進まない有給休暇を積極的に消化できるよう、全社的に取得促進を行います。

5つ目は、育児や介護に関する社内制度の制定です。育児や介護を必要とする従業員に対し、短時間勤務制度や育児休暇制度などの環境を整備します。

成功事例1:トヨタ自動車

トヨタ自動車では、在宅勤務制度の新設や年次有給休暇取得促進の取り組み、柔軟な勤務時間制度の導入や女性の活躍推進などの施策が実施されています。ほかにも心身の健康維持や障害者雇用機会の拡充、人材確保制度充実にいたるまでさまざまな取り組みが積極的に行われており、特に女性の活躍推進について顕著な成果が得られました。2002年に取り組みが始まって以降、2017年1月時点で課長以上の女性基幹職数が7名から155名、2016年時点で一般職が500名から1750名、退職率が5.8%から1.9%へと大幅に改善しています。

成功事例2:NEC

NECでは、フレックスタイム制度や育児介護時短勤務、労働時間短縮などの勤務時間に関する施策を積極的に行っています。さらに、在宅勤務や勤務時間インターバル制度などにも取り組んでおり、特にテレワークの活用で一定の効果が得られました。テレワーク導入前と比べ、生産性では実施者の業務効率が11.4%、チームの生産性が7.9%アップし、通勤時間では1人当たり約40分の削減につながっています。残業時間では6.4%減、短時間勤務社員の労働時間の向上においては1人当たり43分プラスとなりました。この成果を受けて、2018年度よりテレワークの活用を全社的に拡大しています。

働き方改革の施策を成功させるための4つの手順

知名度のある大企業が働き方改革を成功させているとはいえ、同じような施策を実施すれば100%成功するとは限りません。最適な施策内容は自社の課題によって異なるため、成功させるにはいくつかポイントを押さえる必要があるのです。ポイントとして主に4つの手順があるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1:「見える化」から始める

自社にどんな施策を導入したら良いか悩んでいる場合は、まず自社が抱える課題を把握しなければなりません。このため、実際の労働環境や業務について、「見える化」を始めることが大切です。たとえば、残業や休日出勤なども含めた各従業員の労働時間の正確な把握や、有給休暇の取得状況、部門やチームごとの業務状況に加えて各従業員が抱える業務まで詳しく調査しましょう。各業務にどれだけの時間をかけているのか、具体的な数字で表すことで課題を見つけやすくなります。

2:「まずは何から始めるべきか」を検討する

労働環境や業務の「見える化」が進んだら、次に何から取り組むべきかを検討しましょう。複数の施策をまとめて進めたほうが効率的に思えますが、一気に進めると現場が混乱して収益を悪化させるリスクもあります。無理なく導入するためにも、施策ごとに優先順位をつけて着手していくことが大切です。そのためには、働き方改革関連法で施行される時期が近い項目からに始めていくという方法があります。

2019年4月から義務化されるものとしては、年次有給休暇の取得や高度プロフェッショナル制度の創設、フレックスタイムの清算期間の見直しに労働時間の適正把握などが挙げられます。義務となる以上、これらに関する施策から優先して検討したほうが効率的です。ちなみに、中小企業に対しては猶予がある項目もあります。たとえば、残業時間の罰則月上限規制は2020年4月からですし、同一労働同一賃金の制度化は2021年4月までです。60時間超の残業代引き上げは2023年4月からとなっているので、これらは後回しにしても良いでしょう。

3:部門単位で施策を実行する

働き方改革は企業全体で取り組む必要がありますが、その施策がすべての部門で有効というわけではありません。仮に残業削減を目指して施策を実施するにしても、部門ごとに業務や職種が異なるため、どこも同様の結果が得られるとは限らないのです。一方の部門では目覚ましい成果が得られても、他方の部門ではほとんど成果が上がらなかったり、しわ寄せで業務が増えたりする可能性もあります。より正確な問題点や改善方法を見つけるためにも、部門単位で施策を実行し、細かく記録や分析をしていくことが大事です。

4:結果を検証して全社へ拡大していく

部門ごとに最適な働き方改革の施策を決めたら、まずは1部門のみで試験的に実践してみましょう。最初から施策がうまく機能することはまれで、何かしらの課題が見つかるケースが多いでしょう。このため、「施策を実行~問題発生~軌道修正」というPDCAを回し、一定の成果を得られるまで試したほうが良いでしょう。成果が得られるようになったら情報や施策を社内共有し、全社へと拡大していきます。施策を実行する場合、問題点は各部門で異なるため、常に労働環境や業務の「見える化」を継続して課題を明確にすることが大切です。

働き方改革推進の留意点と最初に整備すべき制度

働き方改革を始めたものの、形ばかりでなかなか成果が上がらずに悩んでいる経営者も少なくありません。改革を効果的に推進するために留意しておきたい点と、最初に整備したほうが良い制度について紹介します。

明確な課題解決意図のない長時間労働の是正

帝国データバンクが行った調査によると、働き方改革における企業の施策でもっとも多いのが「長時間労働の是正」であることがわかっています。多くの企業が最初に導入する施策でありながら、なかなかうまくいかないことも珍しくないので注意が必要です。しかし、現状の生産性を維持したまま残業だけを削減するのは難しく、従業員が隠れて残業をしたり、仕事を自宅に持ち帰ったりするなど根本的な解決に結びつかないケースも多くあります。長時間労働の是正に取り組むなら、明確な課題解決意図を持ち、業務のスリム化など業務内容を徹底的に見直すことも欠かせません。

推進する側と実行する現場とのギャップ

中小企業ならではの留意点として、現場が経営者や役員からのトップダウンで動きがちという点が挙げられます。働き方改革の推進の場合にも、実際に改善に取り組む現場の状況を確認しないまま、上層部が会議で決めた内容をそのまま降ろしてしまうケースが少なくありません。現場から見れば「そんなことできるわけない!」とわかりきった施策でも、全社で取り組まなければならないような状況があるのです。こうしたことにより、本来は労働環境を改善するための施策のはずが、実際に働く従業員にとっては大きな負担になるというギャップが生まれやすくなります。

施策を実行する前に整備すべき社内制度

働き方改革を推進してもうまくいかない企業では、経営者や改革を推進する管理者が現場の状況を正確に把握できていないという共通点がある場合が多くなっています。これこそが、働き方改革で期待したような成果を得られない原因のひとつでもあります。このため、施策を実行する前に現場の人材や労働環境を「見える化」して実態を把握することや、上層部が従業員とコミュニケーションを取れる場を社内制度として整備することが何より重要です。

とはいえ、働き方改革に先駆けてこのようなシステムを用意するのは簡単ではないでしょう。時間とコストを節約するためにも、たとえばCYDASで提供されているITツールを活用するとスムーズに改革へ進めるようになります。各従業員の人材情報を一元管理できる「Profile Manager」や、従業員の最新情報を把握できる社内専用のSNSツール「Stream」など、便利なITツールもあるので検討してみると良いでしょう。

自社の課題を早く見つけることが働き方改革成功のカギ

働き方改革とひと口にいっても、改革を推進するための施策は各企業によって異なります。それぞれの企業の課題をカバーする施策でなければ、大きな成果は期待できないでしょう。まずは、業務の「見える化」を徹底して自社の課題を明確にし、厚生労働省が提供するポータルサイトなどを参考にして効果的な施策事例を調査することがポイントです。各部門ごとに最適な施策を試し、留意点にも気を配りつつ働き方改革を進めていきましょう。課題を早く見つけることができれば、それだけ早く施策を実行に移せます。そのためにも、従業員の情報や業務の状況などを管理できるITツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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