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2024.12.24

人材ポートフォリオとは?作成方法や人材要件の具体例をわかりやすく解説

こんにちは!働きがいを応援するメディア「ピポラボ」を運営するサイダス編集部です。

昨今、従業員の持つスキルや経験、潜在的な能力といった見えづらい情報を可視化し、戦略的に活用する取り組みに関心が高まっています。そこで注目されているのが 「人材ポートフォリオ」 です。人材ポートフォリオの作成を進める企業が増えている一方で、事業戦略と連動した運用や、取り決めることの多さに思ったように進められていないと悩む人事の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人材ポートフォリオとはどんなものなのかをおさらいし、人材マネジメントでの活用を見据えた人材ポートフォリオについて解説します。また、日々変わりゆく組織における動的なポートフォリオを効率的に運用するための注意点や作成方法をご紹介します。

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人材ポートフォリオとは?

人材ポートフォリオとは、組織内の人材を複数の観点で分類・整理した上で、「どこに」「どのような人材が」「どのくらい」いるのかを可視化し、適切な配置や育成、キャリアパスの設計を行うための人材マネジメント手法です。
一般的な構成要素は以下の通りです。

  • どこに:部署や部門等のポジション・役職
  • どのような人材:職種・スキル・能力・適性・キャリア志向
  • どのくらい:人数・在籍年数

人材ポートフォリオにより、組織内の人員構成を把握することで、理想や目標に対して、現状の課題を特定でき、人材確保や育成等の計画が立てやすくなります。人材ポートフォリオは、将来を見据えた戦略的な人材マネジメントを推進していく上で、重要な役割を担います。

動的な人材ポートフォリオの重要性

「動的な人材ポートフォリオ」とは、常に最新の状態にした人材ポートフォリオのことを指します。技術革新や市場の変化、競合他社の動向等、ビジネス環境は急速に変化しています。また、組織方針も中期経営計画に合わせて変化していきます。さらに、働く従業員のエンゲージメントも移りゆくため、このような組織を取り巻く変化に対して、継続的かつ柔軟に人材ポートフォリオも見直しをかけていくことが重要です。そうすることで、組織は環境変化に強い体制を構築しつつ、従業員個々のキャリア成長もサポートできます。

なぜ人材ポートフォリオが注目されているのか?

人材ポートフォリオが注目されている背景には、以下のような社会的な背景と企業の課題意識があります。

1. VUCA時代の到来と変化への対応

Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)を特徴とするVUCA時代において、企業はこれまでの延長線上にない変化に迅速かつ柔軟に対応していくことが求められており、変化に適応できる人材の確保と育成が不可欠です。人材ポートフォリオを通じて、自社の保有するスキルや経験を可視化することで、戦略的に人材の獲得や育成ができるようになります。

2. 人材不足の深刻化と人材の流動化

少子高齢化による労働人口の減少は、多くの企業にとって深刻な課題となっています。また、終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化により、人材の流動化も加速しています。このような状況下では、限られた人材を有効活用し、企業の競争力を維持・強化していくことが求められます。人材ポートフォリオは、最適な人材配置や育成計画の策定、採用活動の効率化等、企業の人材戦略を考える上で役立ちます。

3. 企業の人的資本への意識の高まり

従来、企業の価値は、財務状況や物的資産等によって評価されてきました。しかし近年では、従業員の能力やスキル、組織文化、リーダーシップといった「見えない資産」である人的資本が、企業の競争優位性を築き、持続的な成長を実現する上で重要な要素であると認識されるようになってきました。また、人的資本情報の開示も関連しており、ステークホルダーに対して納得感のある説明をするためにも、人材ポートフォリオは不可欠な存在になりつつあります。人材ポートフォリオは、人的資本を可視化し、その価値を最大限に引き出すためのツールとして、注目を集めています。

人材ポートフォリオとタレントマネジメントとの関連性

人材ポートフォリオは、タレントマネジメントとも密接に関連しています。なぜなら、ポートフォリオは組織全体での人材の最適な活用を目的としており、タレントマネジメントの中核である採用、配置、育成、評価等のプロセスを支える役割を果たすためです。人材ポートフォリオは、タレントマネジメントにおいて、以下のような役割を担います。

人材の特定

人材ポートフォリオを活用することで、高いパフォーマンスを発揮している人材や、特定のスキルや経験を持つ人材を容易に特定できます。

育成計画の策定

個々の従業員のスキルや経験、キャリアプランを踏まえ、最適な育成計画を策定することができます。

配置計画の策定

企業の戦略目標達成に貢献できる人材を、適切なポジションに配置することができます。

後継者計画

将来的な事業展開に必要な人材を予測し、計画的に後継者を育成することができます。

スキルや経験を明確にする人材要件

人材要件とは、自社のビジョンや事業戦略を達成するために必要な人材を具体的に定義したものを指します。定義した人材要件に照らし合わせて採用や配置を検討することで、ミスマッチを減らせるメリットがあります。

また、要件は「MUST(必須)」「WANT(持っていてほしい)」「NEGATIVE(避けたい条件)」の3つの基準で分類しておくとスムーズな運用が可能になります。

人材要件で定義する項目

  • 経験
  • スキルや能力
  • 性格(主体性や協調性等)
  • 志向
  • 期待する行動、役割

具体例:DX推進担当の人材要件

経験

  • 製造業におけるDX推進の実務経験2年以上
  • DXコンサルタントもしくはシステムコンサルタント2年以上

スキルや能力

  • ビッグデータや分析ツールを活用する能力
  • コミュニケーション能力(技術者と経営層の双方に対して適切に説明でき共感を得る力)
  • 現状の課題を分析し、解決策を提案する能力
  • 変革マネジメントスキル
  • 英語スキル

性格

  • 柔軟性
  • リーダーシップ

志向

  • チーム志向
  • 成長志向
  • 顧客志向

期待する行動、役割

  • チームや関係者との連携を図り、改善提案や実行を推進

このように人材要件を明確化することで、組織のそれぞれのポジションに対して最適な人材の採用・配置、効率的な育成につながります。

人材ポートフォリオの作成方法

人材ポートフォリオを作成する際は、以下の手順に従い、組織の目標や戦略に合わせた分析と行動計画を立てます。

【人材ポートフォリオの作成手順】

Step1:目的の明確化
Step2:人材の軸・パターン・必要数を定義する
Step3:定義した人材タイプに従業員を当てはめる
Step4:理想とのギャップ(過不足)を確認する
Step5:ギャップへの対策を考える

Step1.目的の明確化

経営戦略等から、どのようなことを成し遂げたいのか、何の事業を成長させたいのかを明確にします。

下図のような事業ポートフォリオを構築している企業では、例えば「5年後までにE事業の売上を40%拡大する」ための人材ポートフォリオを作成することが目的になります。

図1:事業ポートフォリオの現在と5年後(目標)を示したイメージ図

目的を明確にすることで、ポートフォリオにおける「どこに」の大枠が決まります。

Step2.人材の軸・パターン・必要数を定義する

次に、明確になった目的から人材ポートフォリオで扱う人材を分類する基準を定義します。

Step1の例では、5年後までにE事業の拡大を目指しており、その目的を達成するためには、「どのような人材」が「どのくらい必要か」を定義する必要があります。

今回は分類分けの方法を2種類ご紹介します。

例① 人材を4象限に分類する方法

一般的な方法として、以下の2軸のマトリックスを使用して4つのタイプに分ける方法があります。

  • 個人×変革・創造:新しい技術の開発や技術を活用し新サービスを生み出すような「クリエイティブ人材」
  • 個人×運用・定型業務:専門的な技能や知識を活かし業務を遂行する「エキスパート人材」
  • 組織×変革・創造:事業戦略の立案や構築を行う「変革リーダー人材」
  • 組織×運用・定型業務:組織の戦略に沿って部署やチームを統率する「マネジメント人材」

分類を定義する際には現在の状態ではなく、Step.1で明確にした目的を達成するために必要となる人材がどれくらい(人数)必要かを定義することが重要です。

図2:人材を4象限に分類する方法のイメージ図

例② 職務やスキルで要員を計画する

主に中長期的なプランニングで用いられる方法が、職務やスキルに基づいて従業員を分類・計画する方法です。職務やスキルを明確にした上で必要な人材を適切なタイミングで配置・育成することで、無駄を削減し、生産性を向上にもつながります。

図3:職務やスキルで要員を計画するイメージ

Step3.定義した人材タイプに従業員を当てはめる

Step2で定義した人材タイプに基づき、従業員を分類します。ここでは、客観的かつ公平な評価が求められます。タイプを判別できる適性検査の項目やスキル習得を把握できるアセスメント結果等、客観性の高いデータを活用することが重要となります。

Step4.理想とのギャップ(過不足)を確認する

現状の人材ポートフォリオと、Step 1で設定した目標や理想の人材像を比較し、ギャップを明確にします。

例えば、製造部門において、新製品を開発するクリエイティブ人材が30人必要なところ、現状は20人しかおらず、内10人は50歳以上の場合、次世代を担う人材が不足していると捉えることができます。反対に、製造工程の業務にあたるエキスパート人材が90人必要なところ、100名在籍している場合、10名ほど余力がある状態と言えます。

Step5.ギャップへの対策を考える

このステップでは、把握した人員の過不足を解消するための対策を考えます。Step.4の例では、クリエイティブ人材が不足している状況にあり、エキスパート人材に余剰がある状態でした。対策の一例ではありますが、エキスパート人材に分類された従業員の潜在的な特性や能力を確認した上で、ポテンシャルのある人材の異動を検討し、クリエイティブ業務に必要なスキルを身につけるための研修を実施する方法があります。

また、他の部門に所属する従業員の中に、ポジションにマッチするスキルやキャリア志向を持つ従業員がいたら、異動を検討することも一つかもしれません。

このように、現状と理想のギャップを可視化することで、組織力の底上げや生産性の向上につなげることができます。

人材ポートフォリオの運用業務と運用における注意点

人材ポートフォリオを活用することで、事業戦略に沿った人材戦略を立てることができますが、運用にはステップが多く、注意点もいくつかあるため、運用業務の全体像を事前に確認しましょう。

主な運用業務

人材データの収集と整理

  • 人材の属性やスキルや能力、経歴等の情報の整理します
  • 適性検査や評価結果等の収集します

フォーマットの作成

  • マトリックスを作成するテンプレートやシンプルな表形式の一覧表等、組織の運用にあった形式でフォーマットを用意します
  • 個別のプロファイルシートも用意します

分類と分析

  • 従業員を作成したフォーマットや表形式の一覧を更新します
  • 人事部門長や部門リーダーが適切なポートフォリオとなっているかを議論し、改善を図ります。

定期的な更新

  • 更新頻度を決定し定期的に見直します(評価時期に合わせて実施する等)

運用における3つの注意点

作成するための時間・労力がかかる

人材ポートフォリオは、評価制度や等級制度等、人事制度と連動した運用が不可欠です。

人事の専門的な知識やノウハウが必要で、何もないところから人事制度設計、フォーマット作成、データ収集となると時間や労力が掛かります。

そのため、専門的な知識やノウハウを持った人材が組織にいない場合は、外部のコンサルタントに協力してもらうことも考えましょう。

また、各部署との柔軟なコミュニケーションが不可欠なため、連携体制を整えておくことも重要です。

従業員のスキルや能力を定期的に把握する必要がある

人材ポートフォリオの運用では、従業員の属性情報はもちろん、資格やスキル、適性検査の結果、評価情報等、必要な情報を適切に収集し、定期的に更新する必要があります。

管理できていない情報や、継続的に更新される情報等の更新フローの整備、適切な把握ができる運用を検討しましょう。

形骸化を防ぐため効率的な運用を考える

人材ポートフォリオは、組織と個人の多種多様な情報を活用するため、継続的な運用を見据えた運用を構築することが重要となります。

事業規模や従業員数が拡大するほど管理も煩雑になるため、データ管理の限界や運用リソースを認識した上で管理方法を決めましょう。

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まとめ

人材ポートフォリオは、企業にとって重要な「人材」を可視化し、最大限に活用するための有効なツールです。特に、タレントマネジメントを効果的に実践していく上で、欠かせない要素と言えるでしょう。人材ポートフォリオを活用することで、効率的かつ戦略的な人材マネジメントを実現し、企業の競争優位性を築き、持続的な成長を実現することができます。

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