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2021.4.9

インテグリティについて知りたいあなたへ!その定義から企業の事例まで紹介

役員や管理職など企業経営に関わる人には、さまざまな要素を含むリーダーシップが求められる時代です。なかでも、インテグリティは、リーダーに求められる重要な要素として注目されています。このインテグリティの意味や重要視されるようになった背景について、よくわかっていないという人もいるでしょう。そこで、インテグリティの概要や定義、企業における事例などについて解説します。

インテグリティとは?

インテグリティは、ラテン語の「Integer」や「integritas」に由来する言葉です。インテグリティには、完璧性や完全性、清廉性という意味があります。日本語に訳すとすると、「誠実」「高潔」「真摯」といった言葉が近い意味になりますが、ぴったりとした言葉を見つけるのは難しい概念です。このインテグリティは、ビジネスの世界で使われることが多くなりました。
ビジネスにおいて、インテグリティは経営者などのマネジメント層が備えるべき重要な素質として使われるのが一般的です。企業における各層のリーダーにあたる人は、このインテグリティを念頭におき、社会的責任の遂行や倫理観の遵守を行っていくことが求められるようになってきています。この場合におけるインテグリティは、「倫理観を持って誠実にマネジメントを遂行するという信条」といった意味で使われていると考えられるでしょう。インテグリティという言葉がビジネスで使われるようになったのは、欧米企業において経営方針や各従業員が持つべき価値観に対して使われたことが始まりです。その後、インテグリティの意味に関する解釈が拡張されて、企業経営や組織マネジメントにおいても使われるようになってきたという経緯があります。

コンプライアンスとの違い

インテグリティには倫理観を持ってマネジメントを行うという意味があるため、「コンプライアンスとどう違うのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。インテグリティという概念を正確に理解するためには、コンプライアンスとの違いを知っておくことも重要です。コンプライアンスは、法令順守を意味するととらえられることがあります。ただし、コンプライアンスには、単に法律を守るということだけでなく、倫理観や規範という意味も含まれていることに注意が必要です。そのため、インテグリティとコンプライアンスは、似たような概念を言い換えた言葉だと判断してしまう人がいるのも無理はありません。
しかし、それぞれの意味するところには大きな相違点もあります。コンプライアンスは、組織や社会が求めることに応じるという他律的な規範を意識した用語です。一方、インテグリティは従業員それぞれにおける自律的な規範を表した用語であるという点が異なります。コンプライアンスは「悪いことをしないように意識する」「不祥事が起こらないように経営を進める」というものであり、インテグリティは「進んで良い行いをしようと意識する」「どうしたら社会に貢献できるかを探す」というものだと理解するとわかりやすいでしょう。

インテグリティの定義

インテグリティという言葉がビジネスの世界で使われるようになったきっかけは、著名人により提唱されたからだといわれています。インテグリティという概念の提唱者は、ウォーレン・バフェット氏とピーター・ドラッカー氏です。ピーター・ドラッカー氏は、インテグリティは個人それぞれが持つ価値観に相当するものであるため、定義を明確にすることは難しいと言っています。それでも、インテグリティという言葉が持っている抽象的な部分を排除していき「インテグリティがない人、状態」を理解できれば、意味が明確になってくるとも指摘しています。
ピーター・ドラッカー氏によれば、インテグリティがない人の特徴は以下のような人です。
・冷笑家
・人の強みを見るのではなく弱みに焦点を合わせる者
・有能な部下の登場に対して恐れを抱く
・部下を評価するにあたって、人格ではなく頭脳を重視する
つまり、インテグリティがない状態とは、企業の構成要素である人と、その人をつなぐ組織が尊重されておらず、不健全な経営状態です。インテグリティがない状態を踏まえると、インテグリティがある状態とは「人と組織が規範を持って尊重されながら健全に経営が遂行されている企業体制」だと逆説的に定義することができます。

インテグリティが重要視される理由

インテグリティがビジネスにおいて重要視されるようになってきた主な理由は、3つあります。1つ目は、成果主義の行き過ぎによる反省です。成果主義が行き過ぎることによって、成果を無理にでも生み出そうと企業活動が行われた結果、不祥事が頻発したという事態になりました。その後、コンプライアンスを重視して法令順守を徹底することも意識されましたが、それだけで事態を改善することは難しいという認識も生まれます。法令順守という一面だけでなく、幅広く社会的責任を果たす姿勢や企業倫理を実践する姿勢がなければ、不祥事が頻発する状況を改善できないと考えられるようになったのです。その結果、社会的責任と企業倫理を重視するインテグリティ・マネジメントと呼ばれる概念が生まれました。
2つ目は、働き方改革のなかで従業員にも社員にも不足している要素としてインテグリティが注目されるようになったことです。政府主導で働き方改革が進められたことがきっかけとなり、雇用問題が頻発するようになりました。問題が生じる原因は、倫理観などの不足、つまりインテグリティが足りていないことだと認識されるようになったのです。インテグリティを重視した経営を行うことは、顧客からの信頼を得ることにもつながります。結果として、自社を健全な企業であるとブランディングすることも可能になるとして、インテグリティが重要視されるようになったのです。
3つ目は、経営層がインテグリティを率先して実践することが従業員それぞれも健全に企業経営を意識することにつながるからです。経営陣が率先して実践する姿を従業員が見ることによって、それぞれの従業員も同じように行動したいというモチベーションが生まれます。その結果、全社あげてインテグリティ・マネジメントが実践されるようになると考えられるようになったのです。

インテグリティを意識している企業の事例

インテグリティに対する理解を深めるためには、企業内でどのように導入・実践されているのかを知ることが有効です。ここでは、実際にインテグリティがどのように企業経営に生かされているのかがわかる事例を紹介します。

花王

日本を代表する企業の1つである花王では、「花王サステナビリティ」というオリジナル冊子を作成しています。サステナビリティとは、持続可能、持続可能な社会などを意味する言葉です。自社が持続可能な社会の実現に取り組むということをわかりやすく冊子にまとめることで、従業員だけでなく社外にも周知しています。また、実際にも持続可能な社会実現に向けた取り組みが積極的に行われています。こういった行動を通じて、法律順守の精神と高い倫理観のもとで誠実な経営を行っていることをブランディングしているのです。
また、これらの活動以外にも注目する取り組みが行われています。たとえば、コンプライアンスに関する通報や相談に対して従業員に真摯に向き合う取り組みです。こういった取り組みが徹底されることを通じて全社員に平等な職場の環境を作り上げることも、花王では重視されています。花王の事例から、実際にインテグリティを実践することと合わせて、ブランディングを行うことが重要であることがわかります。ブランディングに成功することは、さらならインテグリティの実践にもつながり、好循環が生まれるでしょう。

伊藤忠グループ

日本の大手商社の一角を占める企業である伊藤忠でも、インテグリティ推進に関する取り組みが行われています。伊藤忠では、大々的に「ITOCHU Misson」「ITOCHU Values」を打ち出している点が特徴です。それぞれ「伊藤忠がやるべきこと」「伊藤忠の本質的な価値」と訳すことができるでしょう。企業としての「ミッション」や「バリュー」を明確に打ち出し、経営陣がそれに向かって行動をすることによって、各従業員も自らが目指すべきことが明確になってきます。結果的に、インテグリティ・マネジメントが積極的に推進されることにつながるのです。
また、企業行動基準として、誠実・情熱・多様性・挑戦・先見性をあげていることも見逃せません。これも、経営層から従業員に対して明確にインテグリティを示す手法の1つだといえます。企業内でインテグリティを徹底して進めていくためには、経営層が率先して行動することが重要です。あわせて、各従業員がどこに向かえばよいのかを理解することも欠かせません。伊藤忠の取り組みは、その両方をどのように進めればよいかがわかるよい事例といえるでしょう。

ダイムラー

インテグリティは、日本企業よりも欧米企業で早くから導入されてきた経緯があります。なかでもダイムラーは、積極的にインテグリティの考え方を導入してきた企業の代表格として知られている存在です。ダイムラーでは、インテグリティを業務活動の基本と位置付けています。また、インテグリティの実践は、会社としての最重要課題だとも示しています。インテグリティを経営の中心、よりどころとしているのです。
また、ダイムラーは、「公正だと認められる倫理理念に従って企業活動がなされる場合にのみ、経済的な成功が永続して可能になる」という考えを持ち、行動指針として従業員に対して示しています。さらに、各従業員は義務感ではなく意思を持つように促しており、職場で実践されることを方針として定めている徹底ぶりです。ダイムラーは、インテグリティ・マネジメントを実践しているモデル企業ともいえるでしょう。

インテグリティを大事にして健全な企業を作り上げよう

健全性を保ち公平にビジネスを行って成功するためには、インテグリティが欠かせません。対外的にインテグリティを示すことは、企業のブランディングにもつながります。ただし、まずは積極的にインテグリティを体現した経営を実践することが重要です。そのためには、経営層やリーダーが率先してインテグリティを理解・実践し、従業員への浸透を図るようにしましょう。

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