2020.8.5
インターンシップを実施したい!実施のメリットとポイントについて
学生だけでなく企業にとっても、インターンシップには大きなメリットがあります。しかし、どのような制度なのかよくわからないので、導入に踏み切れないという人事担当者も少なくありません。そこで今回は、インターンシップに関して疑問を持ちやすい点として、給料の支払いやアルバイトとの違いなどを説明し、実施する際のポイントも紹介していきます。
目次
インターンシップとは?アルバイトとの違い
インターンシップとは、企業が職業体験の機会を提供して学生が参加する制度を指します。ただし、厳密な定義が定められているわけではなく、実施の期間も企業によって異なるのが実情です。後で詳しく説明しますが、期間によって内容や目的も異なるなど、一口にインターンと言っても複数のタイプが存在します。ですから、やみくもに実施にするのではなく、まずはどのようなタイプがあるのか把握することが重要です。そのうえで、自社にとって恩恵が大きいと思うタイプを選択しなければなりません。
職業体験といえども学生は就労する形になるため、企業から報酬が支払われるケースもあります。単発の場合は無償が基本ですが、長期インターンの場合はアルバイトとしての雇用契約を結ぶことになるのです。契約や保険の詳細については後述するので、人事担当者は準備の段階で十分に把握しておきましょう。
企業と学生の双方にとって、インターンシップとアルバイトは目的が根本的に異なります。インターンシップにおける企業側の主な目的は、新卒採用の候補になる学生を探すことです。安い賃金で働いてもらうことを目的にしているわけではないので、学業と両立しやすいシフトを組んだり、スキルや業界知識の習得をサポートしたりします。学生側もインターンシップを単なる労働とは考えておらず、多くのことを吸収するために主体的なスタンスで取り組むのが一般的です。
インターンシップを実施する企業のメリット
新卒採用のシーズンになると、採用活動をスムーズに進められず苦労する企業が見受けられます。多くの企業が優秀な学生を求めて積極的に活動するため、競争のような状態になってしまうからです。インターンシップを実施すれば、能力を間近で確認できるので、競争が本格化する前に優秀な学生を見極められます。また、インターンシップに参加していること自体が、就労に対して意欲的な人材であるという判断材料にもなるのです。このような情報を事前に得ておくことで、自社にとって有望な学生を早期に確保しやすくなります。
また、ミスマッチを防げることも大きなメリットです。せっかく採用してもすぐに辞められると、企業にとって大きな痛手になってしまいます。採用活動や新人教育の費用が無駄になるだけでなく、代わりの人材を探すような負担も生じかねません。学生が企業に対して正しいイメージを持っていないと、このようなリスクが大きくなるので注意しましょう。職業体験をしてから応募する場合、実際の仕事や社風を知っているので、離職の可能性は低くなります。また、採用活動の競争で他社に勝つには、自社を積極的にアピールしなければなりません。インターンシップに参加してもらうと、事業の強みや設備の充実度など、いろいろな魅力をいち早く伝えられます。
1Dayインターンシップの内容・目的・メリット・デメリット
1Dayインターンシップとは、その名のとおり1日限定で行われるインターンです。時間が短いため、実際に職場で働いてもらうだけの余裕はありません。一般的なインターンシップではなく、ワークショップや会社説明会といった単発のイベントをイメージすると良いでしょう。1Dayインターンシップの具体的なコンテンツは企業によってさまざまです。人事担当者が企業や業界の情報を伝えるだけでなく、現場の社員があいさつや仕事内容の紹介を行い、先輩としてメッセージを伝えるようなケースもあります。ディスカッションやゲームなどのグループワークを取り入れたり、交流会や職場見学などを実施したりするケースも少なくありません。
1日だけなので、学生にとってはスケジュールを立てやすく、参加のハードルが低いというメリットがあります。企業側のメリットも同様で、時間を多く取られないため、企画や開催をスムーズに行いやすいです。参加者の選考にかける手間も少なく、就活解禁前であるにもかかわらず、採用の候補となる母集団を効率的に獲得できます。開催しても参加者と雇用関係は成立しませんし、報酬を支払う必要もありません。一方、企業側のデメリットとして、職業体験が行われないので、深く理解し合える関係に至りにくいことが挙げられます。
短期インターンシップの内容・目的・メリット・デメリット
学生の長期休みには、短期インターンシップがよく開催されます。期間は数日~1週間ほどであり、プロジェクト型で進めていくのが一般的です。企業側が出した課題に対し、学生は個人やチームで試行錯誤しながら取り組んでいきます。ビジネスコンテストのように、新規性や独創性を焦点として競い合うことが多いです。企業によっては、短期インターンシップを選考の一部と見なしている場合があります。報酬の有無は企業によって異なり、報酬がない場合でも交通費などを支払うケースが増えました。
学生側のメリットは、短い説明会だけでは把握できない要素について確認できることです。企業内部の雰囲気を肌で感じられますし、企業の考え方や求めている能力なども把握できます。一方、学生の能力や人柄などを詳しくチェックできることが企業側のメリットです。リーダーシップなど、面接では判定しきれない要素が浮き彫りになるので、有望な人材の囲い込みに役立ちます。企業側のデメリットは、多数の応募があると選考の手間が膨大になることです。また、報酬や交通費などを支払う場合は、開催のコストが大きな負担になりかねません。長期インターンシップと比べると、学生の企業理解が浅いレベルに留まりやすい点にも要注意です。
長期インターンシップの内容・目的・メリット・デメリット
長期インターンシップは、学生をアルバイトとして雇うことで実施されます。そのため、労働力を求める形で募集している企業も多く、雇用の期限は特に定められていません。時給が発生する点なども一般的なアルバイトと同様です。業務内容は新入社員とほとんど同じなので、長く働くほど実践的なスキルを磨き、業界理解をしっかりと深めていけます。報酬を受け取りながら、そのような成長の機会を得られることが学生側の大きなメリットです。
企業側のメリットとして、学生を労働力とみなせることが挙げられます。インターンシップである以上、職業体験をさせることが主な目的です。とはいえ、仕事をこなしてもらうことは、社員の負担軽減などにつながります。また、時間をかけて相互にわかり合うことで、採用時のミスマッチを防止できます。一方、企業側のデメリットは、面倒な手間や配慮を要することです。アルバイトとして就労させるには、雇用契約のために相応の手続きをしなければなりません。担当業務について長期の計画を考える必要がありますし、機密情報へのアクセスを防ぐ対策なども求められます。問題が起こらないように、受け入れの期間中は気を配り続けることが大切です。
インターンシップに参加する学生の目的とメリット
企業側の目的だけでなく、学生がインターンシップに参加する目的もチェックしましょう。期待されていることを把握しておけば、満足度の高い対応を行いやすくなります。学生の主な目的は、就職に向けて業界や職業に対する理解を深めることです。就活の予行演習と捉えているケースもありますし、自己分析の参考にするために参加する学生も見受けられます。いずれの学生に対しても、業界や仕事を十分に理解できるように企業はしっかりフォローしなければなりません。単純に就労を体験させるだけでなく、改善が必要だと感じた点をフィードバックしてあげるなど、誠実に向き合っていくことが大事です。
ただし、どれだけ誠実に接しても、自社が行う新卒の募集に応募してくれるとは限りません。もちろん、入社したいと考えてインターンシップに参加しているケースも多いです。しかし、経験を積むためだけに参加していたり、途中で別の企業に興味が移ったりする学生もいます。その可能性も踏まえたうえで、広い心を持って学生の人生を手助けするつもりで対応しましょう。
インターンシップのプログラムの作成方法
インターンシップが企業にもたらす恩恵の大きさは、プログラムの良し悪しに大きく左右されます。「採用したくなる学生と出会う」という目標を念頭に置いて、実現の可能性が高いプログラムを考えてみましょう。そのためには、自社がどのような学生を求めているのか明確にしなければなりません。ターゲットとする人物像を定めたうえで、関心を持ってもらえる内容を企画することが大切です。その際、自社の個性をリストアップする作業が必要となります。
リストを見ながら、ターゲットが魅力を感じそうな個性がないかチェックしましょう。たとえば、ターゲットが主体性の強い学生の場合、社員ごとの裁量が大きいという個性に興味を示す可能性があります。また、職場配属やグループワークといった実施の形式から、そのような個性の表現に向いているものを選ぶことも重要です。それが終わったら、業界理解やスキルアップなどの実現も視野に入れ、理想的なプログラムの詳細を立案していきましょう。提供に適した期間や時期を考えることも忘れてはいけません。
インターンシップ受け入れ準備のポイント
プログラムを作成したら、受け入れに向けて効率よく準備を行いましょう。まず、インターンシップに関わる主要な社員として、実施の責任者やメンターなどを任命します。指導する内容や開催の時期なども考慮して、適切な社員を選択しなければなりません。学生が企業になじみやすい雰囲気をつくるには、全社にインターンシップの実施を周知しておくことも大事です。社内通知によって理解を促すのと同時に、関連部署への協力の要請なども進めていきます。
参加する学生とのスムーズなやり取りを可能にするため、事前に連絡手段も決めておきましょう。電話やメールが基本ですが、SNSを利用する企業も多くなりました。また、実施する場所を決めて、そこで利用する道具や備品の調達も済ませる必要があります。インターンシップは最初にオリエンテーションを行うのが一般的なので、企業紹介の資料などを早めに準備しておくこともポイントです。
インターンシップ参加者を新卒採用に繋げるために
せっかく有望な学生がインターンシップに参加しても、新卒の求人に応募してもらえないと採用のチャンスは訪れません。チャンスを得る条件は、インターンシップ中に自社に強い興味を持たせることです。そのためには、働きやすいと思わせることが重要で、参加者が不安を感じているなら払拭する必要があります。したがって、業務に関係のある話だけでなく、いろいろな相談ができる相手としてメンターをつけると良いでしょう。
また、指導を済ませたからといって放置してはいけません。就業中は常にフォローアップを心がけ、問題なく実施できている状態を維持することが大切です。仕事のやりがいや面白さを体感させるなど、モチベーションを向上させるための工夫もしましょう。そして、優秀な参加者に目星をつけたら自社への就職をオファーするのです。ただし、モチベーションの状態などを考慮して、こちらの話を受け入れやすいタイミングで行わなければなりません。
インターンシップの契約や保険について
長期インターンシップを実施するときは、参加者とアルバイト契約を結ぶのが一般的です。ただし、アルバイト契約ではなく、業務委託契約を締結するケースも見受けられます。時間給とは異なり完成した物品に対して報酬を支払うため、成果主義を体験させたい場合などに選択すると良いでしょう。なお、基本的にインターンシップでは雇用保険に加入しません。学業を本分とする学生には、失業手当の給付は必要ないと考えられているからです。社会保険も基本的には不要ですが、就労時間が長いと加入が義務づけられるケースもあります。労災保険に関しては、インターンシップが有償の場合は加入しなければなりません。
また、学生を就労させるので、通常のビジネスシーンでは起こらないようなトラブルが生じることもありえます。リスクを避けるために、インターンシップの内容を記した契約書や誓約書を交わしておくのが無難です。できるだけ慎重な姿勢で取り組むように心がけましょう。
インターンシップで学生と接点を持とう
インターンシップは種類が多く、プログラムも多岐にわたります。ですから、自社に適したものを選択することは難しいと感じるかもしれません。その場合、獲得したい学生の人物像を明らかにして、そこから逆算していくと理想的なインターンシップをイメージしやすくなります。契約に関しては、違法性がないことをしっかり確認しながら進めましょう。