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2020.8.14

愛ドリブンのエージェント伊藤朗誠が語る「哲学を持った人事の形」

就活生向けのキャリア面談・キャリアイベント・フリーカフェスペースの運営を軸に、学生と企業の橋渡し役として事業を展開するビヨンドカフェ。今回は、代表取締役の伊藤朗誠さんに「自分の働く意義に出会う」を事業コンセプトに掲げる理由、学生と近い距離で接するエージェントならではの視点等、お話を伺いました。

伊藤カルロス朗誠いとう かるろす あきのぶ

前職では教育×ITのベンチャー企業で営業と新卒採用を行う。 より直接的で、人生に深いキッカケを与えたいと、BEYOND CAFEの立上げに参画。 自身の原体験から”子供達のじりつする機会を創出し続ける”ことをミッションに掲げ、現在BEYOND CAFEの代表として、日本のキャリア教育をアップデートするために、事業を拡大している。

夢中に働く

伊藤:ビヨンドカフェの事業の根幹には、「人生を豊かに生きる人を増やしたい」という思いがあります。人生における時間の使い道を「食う・寝る・働く・遊ぶ」に分けた時、働いてる時間のウェイトってすごく大きいですよね。
だけど、現実には、熱中して働いてる日本人が6%しかいないという調査結果があって、働くことを前向きに考えられない学生も多い。ビヨンドカフェでは、社会に出る前の学生がどうやったら働くに夢中になれるか、働くことをネガティブに捉えないための「予防」の部分に、エージェントという立場から取り組んでいます。

事業を初めてもうすぐ4年になりますが、今までに利用してくれた学生さんの数は約3万人。現在は、仙台・大阪・福岡の支部と連携しながら、オンラインとオフラインの両面でキャリア相談やキャリアイベントを実施しています。

大手の就活イベントとビヨンドカフェのキャリアイベントはどう違うんでしょうか?

伊藤:ビヨンドカフェのイベントは「どうやったらいい企業と出会えるのか」「どうやったら就職できるのか」といったHow toを授けるためのものではありません。参加していただく企業さんには、「なんでその会社で働いてて、どんなことが楽しいのか」を語ってもらう。学生の立場からすれば、夢中で働く大人と出会い、その価値観に間近に触れるきっかけになる。僕の中では就活イベントというより、ロックフェスのようなイメージがあるんです。

ビヨンドカフェを利用する会社さんにはどのようにアプローチしているんでしょうか?

伊藤:最初はとにかく気になるところにアタックしていきました。最近は、繋がりのある会社さんから「ビヨンドさん合ってると思うよ」と紹介してもらうことが増えて、アウトバウンドでガンガンいくことは減ってきましたね。

実は、創業して4年の間にお付き合いしている会社の中から13社が上場していて。こういった数字が全てではないですが、良い会社さんに出会えているんだなと思います。僕らとしても、ただ「学生さんを紹介します」という付き合い方ではなくて、「今の採用状況がこうで、御社の魅力はこうで、そしたらこんな計画を立ててうちのサービスはこう活用してください!」という風に、中長期的な採用力を付けていくためにどうしたらいいかまで、一緒に考えています。

学生の数だけ特別なストーリーがある

伊藤:ビヨンドカフェに訪れる学生さんには、それぞれのバックグラウンドを尋ねるんです。「こういうことがしたい」が明確な人には、なぜその選択に至ったかを一緒に考えていくし、まだやりたいことが見つかっていない人には、今までの経験や価値観を一緒に深堀していく中で見えてくる軸がある。
就活という採用ゲームの中で聞かれる情報は本当に断片的なものですが、僕たちは採用面接では聞かないようなところまで過去を深く掘り下げていく。そうやって理解する人生のストーリーは、一見よくあるようなものでも絶対に一つ一つが特別で。学生さんと話すたびに、映画を見ているような感じですね。

学生さんとの印象的なエピソードを尋ねると、「全てが特別で…選べないですね」と返してくれた

伊藤:去年まではオフラインがメインだったので、東京で就活している地方の学生さんの中には、夜はシェアハウスで寝泊りをして、昼はビヨンドカフェで作業しているなんて人もいて。
人が場に集まる理由って色々あると思うんですが、ビヨンドカフェに来たら、頼れる大人がいて、一緒に頑張る同世代の人と繋がれる。そんな風に認識されているのは嬉しいことだなと思います。

仕事の楽しさを知った学生時代

伊藤:関西の大学に通っていた2011年頃、光回線の訪問販売の仕事を始めたんです。周りのお家を一軒一軒回って、「すみませ〜ん、1、2分お時間くださ〜い!」と脚で稼いでいくバリバリの営業仕事。その頃、関西の学生の間では、営業でフルコミで稼ぐぞみたいなのが流行ってたこともあって、僕が所属していた代理店の営業組織は全員が大学生でした。その時の僕らは、社会人に対して「学生でもやれるんだぞ」というのを見せたい、「大学生の新しいロールモデルになりたい」と本気で思っていたので、とにかく頑張ってましたね。結果、関西にあった50店舗でトップの営業成績を取ることができて。表彰に来た本社の人も全員が学生なので驚いてました。

お客さんに営業して、納得してもらって、時には仲良くなって家にあげてもらってコーヒーをご馳走になったりして。そんな風にお客さんから喜んでもらえる楽しさもあれば、チームで数字を追いかけてこの目標を達成するぞ!といった楽しさもある。その頃の経験は、今のビヨンドカフェの活動に直接的に繋がっていると思います。

人事の仕事のマクロとミクロ

エージェントという立場上、人事の方と近い距離で接する機会が多いと思います。伊藤さんの考える理想的な人事について教えてください

伊藤:人事の仕事には、「5年後の理想の会社の状態がどんなもので、それを作るためにどうすべきか」のマクロな視点が大切です。
その上で、目の前の候補者に真摯に向き合うミクロな姿勢も欠かせません。
例えば、採用活動に社内の人全員を巻き込むことができれば、カルチャーにマッチする人に出会える確率は上がっていきますよね。そのための関係構築は、人事のミクロな仕事の一つと言えます。
ミクロとマクロを使い分けられる人事は素敵だと思います。

教師ではなく先生でありたい

伊藤:僕が、人事に対して持っている課題感の一つに、「人事の教師化」があって。前提として、僕は「教師」と「先生」って言葉を使い分けているんです。教師は「自分の知識を切り売りして教える人」のこと。先生は、「持っている10の知識を常に15、25、30とアップデートし続けられる人」のこと。そんな風に考えた時、僕は、学生に対して教師ではなく先生でありたいと思っているんです。
ですが、こと新卒の採用においては、教師化している人事が多いんじゃないかなと。例えば、学生さんと面接する時、自分の持っている知識のなかで「君はこうだからここがダメでここが良くない」と判断して終わりではなく、他の企業や業界、社内の他部署の話も含めて、学生さんと一緒に勉強しながら考え、学び続ける、まさに「先生」として自然体にいられることが、理想的な人事の姿だなと思っています。

伊藤:でも、この時に難しいのが、学生さんを「人事個人の魅力に引きつけてはダメ」という点。
人事の魅力は、あくまでその人個人に紐づくものなんです。人事の仕事はあくまで求職者の人に会社を魅力的に感じてもらうこと。でも、個が際立ちやすい時代だからこそ、求職者の人が「この人と一緒に働きたい」という理由で入社を決めてしまうことがあって、結果としてミスマッチを引き起こすことがあります。もちろん、まだ創業初期のフェーズにある等、会社の魅力として伝えられる手札が少ない中で、とにかく採用を進めなきゃって時に「人事の個を押し出すこと」は戦略としてあり得ます。しかし、全部がそうなっていくのはやっぱり良くない。
マクロとミクロの話に立ち戻ると、マクロな視点で会社の魅力になるものを育てながら、それを個人のSNS等のミクロな視点で伝えていける力が、人事に求められているのかなと思います。

愛を持ったエージェントとして

-エージェントとして伊藤さんが大事にしていることを教えてください

伊藤:僕は、エージェントに対する「変な会社を紹介されるんじゃないか」みたいなイメージがすごく悔しくて。
エージェントの仕事は、学生さんを会社に紹介することだし、そこに金銭のやり取りが発生している。だから、一歩間違えると、学生さんをあの手この手で企業に売り渡す人身売買になりかねないんです。
でも、僕たちは、「会社と学生の未来を作る」のがエージェントの仕事だと信じていて、そこには愛があると言い切れる。愛があるから、無理やり会社を紹介しないとか、本人が納得してないんだったら行かなくていいという正義も持っている。

学生と会社の双方の未来に不誠実な態度って、絶対に滲み出てしまうと思うんです。
僕らは愛を持ったエージェントとして、学生さんと、会社さんと一緒に変わり続けたいと思っています。

(文:郷田いろは)

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