2020.06.09

人事評価シートの書き方と職種別のポイントについて

人事評価シートの書き方と職種別のポイントについて

人事評価シートは、公平かつ正確な人事評価を行うための手法として、多くの企業で用いられています。ただし、目標の達成度や改善点などを振り返るには、シートの内容を適切に記載しなければなりません。そこで、人事評価シートに期待できる効果や目標設定のポイント、職種ごとの書き方など、人事評価シートを活用するうえで知っておくべき基礎知識を紹介します。

人事評価シートとは

人事評価シートを導入している企業では、多くの場合「目標管理制度(MBO)」を取り入れています。MBOはアメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーが1954年に刊行した著書「現代の経営」の中で提唱されました。簡単にいえば、従業員自身に目標を設定させることで、モチベーションや業績の向上につなげていく仕組みです。一定期間内に達成するべき目標を決め、どの程度達成できたかを確認することで評価を行います。

日本でも1960年に一部の大手企業がMBOを採用していましたが、広く導入されるようになったのは1990年代からです。バブル経済が崩壊した後、多くの日本企業が年功序列制の雇用制度から成果主義や実力主義への転換を図りました。MBOは従業員が自分で設定した目標の到達度合いから評価を行うため基準がわかりやすく、年齢や勤続年数に左右されにくいのが特徴です。ただし、目標管理制度を正しく運用するためには、人事評価シートが不可欠です。

人事評価シートを構成する3つの項目

人事評価シートは成果基準と能力基準、情意基準という3つの項目により構成されています。成果基準とは、業務の実績に対する評価です。売上や利益などは数字で把握できるため、3つの基準の中で最も評価しやすいといえるでしょう。一方で、成績は本人の能力だけではなく環境に左右されるケースもあります。そのため、偶然成績が良かっただけなのか、再現性があるかを確認するのが難しいです。また、成果にこだわりすぎると、短期的な利益だけが重視され、中長期的な利益が損なわれてしまう可能性もあるため気を付けなければなりません。

能力基準とは、社員が有するスキルや資格などを、どれだけ業務に発揮できたかという評価基準を指します。専門性の高い資格やスキルなどは評価しやすく、従業員も結果に納得できるでしょう。ただし、自主的な努力により獲得した能力や資格は、必ずしも業務に活かせるとは限らないため、判断が難しいです。情意基準は、業務に取り組む姿勢や意欲を評価します。あらかじめ目標や成果に結びつく行動が定義されている状態なら、評価につなげやすいです。一方で、定義が決まっていなかったり、環境の変化などにより定義から外れた行動を取らざるを得なくなったりした場合は、評価が難しくなってしまいます。

人事評価シートを活用する目的

人事評価シートの運用には、大きく分けて2つの目的があります。1つは従業員自身が決定した目標に対する到達度を振り返ることです。年功序列制度が主流だった時代は、上司や人事部が一方的に部下の査定を行うのが一般的でした。つまり、企業に対する貢献度や能力が低い従業員でも、上司との関係が良好であれば高く評価されるケースが多かったのです。しかし、人事評価シートを導入すれば、目標と結果が明確になり、評価者と被評価者の双方が納得したうえで結果を受け入れられます。

2つ目の目的は従業員のモチベーションを向上させることです。人事評価シートにより評価基準を明らかにすることで、目標を達成するための課題や改善点などがはっきりとわかるようになります。従業員も効率化するための技術や、より大きな成果を出すための工夫を自発的に考えるきっかけになるでしょう。このように、人事評価シートは従業員の処遇を決定するためだけに活用するものではありません。ただし、目的を達成するには、適切な評価ができるよう人事評価シートの内容を定める必要があります。

人事評価シートを書くうえで重要な5つのポイント

人事評価シートに記載する際は、いくつか留意しなければならないポイントがあります。まず、評価内容に客観性と具体性をもたせることが重要です。ただし、実現できるラインで目標を設定しなければ、正確な評価は下せません。さらに、目標に具体的な数値と期限を設けることで、より実感が湧くでしょう。最後に、目標は企業の経営方針や事業方針にもとづいた内容でなければなりません。逆に、目的が抽象的すぎたり、明確な数値が設定されていなかったりすると具体的なイメージが湧かず、達成できたのかを明確に測定することもできないでしょう。

時間的な制約を設けることも必要です。いつまでに達成しなければならないという期限が定められていないと、従業員のモチベーションが上がらず、評価基準も曖昧になってしまいます。結果を報告する相手や評価者が決められておらず、個人の目標が部署ごとの目標や経営目標に結びついていないと、適切な目標が設定できず、人事評価シートの運用もうまくいかなくなる可能性が高いです。公平かつ正確な人事評価を行うためにも、次に紹介する5つのポイントを忘れずに確認しましょう。

1.客観性・具体性をもたせる

1つめのポイントは、主観的な内容ではなく、客観的かつ具体的な内容を明記することです、評価の根拠があまりに独りよがりだったり曖昧だったりすると、正確な評価ができません。業務や業績にどのような影響を与えたかなどの客観的な事実にもとづいたうえで評価を下す必要があります。たとえば、目標を設定した時点では想定していなかった成果を上げられた場合は、あえて明記することで今後の目標を設定する際の新たな判断要素となるでしょう。

逆に、目標を達成できなかった場合は、今後の対策や改善策を併記すればモチベーションの向上やスキルアップにつながるはずです。結果だけではなく、良い部分はさらに伸ばし、足りない部分を改善するための計画を併記することで、意欲の高さを表すことができます。ただし、あまりにも自己評価が高すぎると、かえって評価者からの印象を悪くしてしまうおそれがあります。一方で、自己評価が低すぎても、企業からの評価も下がってしまう可能性があるため注意が必要です。自己評価は実際に自分が考えているよりも一段階高く評価する程度に留めておきましょう。

2.明確な数値目標にする

2つめのポイントは、目標に明確な数値を設けることです。たとえ自分がうまくいったと感じていても、評価の基準が曖昧では説得力に欠けます。たとえば、目標金額を設定したうえで実際の売上を明記すれば、到達度合いがわかりやすいです。総務や経理など、数値化するのが難しい業務内容の場合は、具体的な業務効率の上昇率や削減できた残業時間など、できる限り数値で表せる成果を明記すると良いでしょう。

最終目標だけではなく、中間目標を決定しておくのも効果的です。目標達成に至るまでのプロセスの中で、「いつまでに何をどの程度達成する」という小さな目標を何段階か設定します。中間目標の達成を目指すことで自動的に最終目標の達成へ近付くでしょう。また、中間目標に到達した時点で達成感を味わえるため、最終目標に到達するまでモチベーションを維持しやすくなります。

3.実現可能性のあるラインで設定する

3つめのポイントは、実現できるラインで目標を設定することです。目標が高すぎると到達できず、低すぎてはモチベーションの向上にはつながりません。実際に、評価を上げるために目標を意図的に低く設定するケースは少なくありません。人事評価の結果は昇給や昇進などの処遇に関わります。目標を低くすれば達成度を上がるため、高い評価を得やすくなるのです。また、目標があまりに高すぎると、目標達成に集中するあまりその他の業務は手に付かなくなり、かえってモチベーションが低下してしまうことがあります。

このような問題を回避するためには、個人の能力を加味したうえで、目標の難易度を設定することが重要です。また、目標を達成できるか否かだけではなく、現状で何が足りないのか、将来的にどのようになりたいのかを考慮したうえで目標を決めなければなりません。目標を設定する時点で「このときまでにこうなっていたい」という具体的なビジョンを描いておくことが大切です。また、正確な人事評価を行うためにも、上司と部下の間で目標達成時のイメージを共有しておきましょう。

4.具体的な期限を設定する

4つめのポイントは、具体的な期限を設定することです。いつまでに何を達成させるという具体的な目標を設定しなければ、何をすれば良いのかもわからず、意欲も湧きません。たとえば、現在取り組んでいる業務を維持したり、売上や販売量を増やしたりといった目標は曖昧すぎて、評価基準も設定できません。そこで、具体的な数値や期限を設定することで目標を達成できたかという判断基準が生まれます。さらに、期限を設けることで適度な緊張が生まれ、目標達成へ向かう意欲も湧くでしょう。

人事評価シートを導入している会社では、期限を1年間と定めているケースが多いです。ただし、中間目標を設定する場合は、四半期や上半期、下半期というように一つの目標を達成するまでの期間を細かく設けると良いでしょう。また、期間を短く区切ることで目標達成時のビジョンや最終目標に至るまでのプロセスを具体的にイメージしやすくなります。

5.経営方針・事業方針に基づいた目標にする

5つめのポイントは事業方針や経営方針にもとづいた目標を設定することです。人事評価シートの目的は、従業員一人一人の目標達成を通して、企業の成長や業績の向上に貢献することにあります。そのため、企業や部署の一員として、自身が果たすべき役割を踏まえた目標を設定しなければなりません。人事評価シートを導入するのであれば、企業や部署などの全体目標を従業員に周知する必要があります。全体的な目標を把握することは、社員全員の団結力を高める効果も期待できるのです。

ただし、事業方針や経営方針を踏まえた目標を立てても、途中で思うように進まなくなる可能性があるでしょう。その場合はまずはうまくいかなくなった問題点を把握し、臨機応変に対応しなければなりません。なお、改善策を検討する際は一つではなく、複数の選択肢を用意します。その中から最も効果的と思われる方法を実践することで、軌道修正が可能です。

職種別書き方

職種別書き方1:営業・コンサルティング職

営業職やコンサルティング職は、目標や改善点を比較的はっきりと設定しやすいのが特徴です。人事評価シートにも目標や数値、どの程度達成できたかなどの情報を明確に記入しましょう。達成度合いに限らず、目標を達成するためにどのような取り組みを行ったかを記載することも忘れてはいけません。たとえば、
「今年度の目標である100万円に対し、売上は120万円となった。中間決算での達成率は約40%だったものの、最終的には120%まで挽回している。
これは営業チーム内の連帯感向上を目標に、情報共有と声掛けを徹底した成果といえるだろう。ただし、新規顧客の獲得については、目標12件に対し8件である。原因として、既存顧客への対応とフォローに追われ、新規顧客の獲得に注力できなかったためと考えられる。また、今年度中に顧客対応に関するクレームが10件発生した。今後は新規顧客への営業活動と、顧客満足度の改善が重要な課題となる」
というように、目標の達成率と結果の分析、今後の取り組みや対応策を具体的な数字とともに明記します。また、組織内でのチームワークにどのような形で貢献したかを書くことも大切です。

職種別書き方2:事務職

事務職の業務内容はルーティン化している場合が多く、数値化するのが難しいです。達成度合いについて報告する際は、数値ではなく完成度や正確さについて適切に記載しましょう。たとえば、
「今年度の目標である消耗品費削減を達成するため、事務用品のリサイクルキャンペーンを実施した結果、3%の削減に成功した。また、1日3回の集荷作業を2回にまとめ、集荷料金を10%削減している。
さらに、引き継ぎ業務のマニュアルを作成し、1週間の業務引き継ぎを3日まで短縮し、業務効率化を達成した。加えて、書類のテンプレート化、入力ミスを通知するマクロの作成により事務過誤を3割減少させている。業務の属人化を解消するため見える化を徹底した結果、チーム内の有給取得日数が平均10日、昨年度比200%まで上昇した」
というように、前年度比を記載するなどの工夫を行い、具体的にどの程度改善されたのかが伝わる内容を心がけると良いでしょう。

職種別書き方3:企画・マーケティング職

企画職やマーケティング職では、企画を立ち上げる際にデータの調査や分析を行うことが多いです。そのため、自分が携わったプロジェクトの実績や数値だけではなく、企画を立ち上るための取り組みについても記載すると良いでしょう。たとえば、
「これまでメインターゲットを若い女性に定めていた商品について、アンケートや口コミによる調査結果から若い男性に対する需要が見込めると判明したため、男性ユーザーに向けた販促を企画した。
企画発足当初は難色を示されたが、根拠となるデータをもとにプレゼンを行い採用に至る。結果、男性ユーザーが30%増加した。現在進行中のプロジェクトについては、情報の収集と分析、資料作りなどの作業を担当している」
というように、メインで企画に携わっていないプロジェクトについても、具体的なポジションを書いておくと良いでしょう。

職種別書き方4:クリエイティブ職

デザイナーや編集者などのクリエイティブ職は、知識やスキルが重視される仕事です。そのため、人事評価においても能力基準の評価が大きなウエイトを占めます。また、納期通りに仕事ができているかという点も、重要な評価基準の一つです。たとえば、
「女性に人気が高いキャラクターの特徴と統計を分析した結果、女性ユーザーは癒しを求める傾向が強いことが判明した。
特に、女性人気を集めているキャラクターの共通点をもとに、丸みを強調したデザインのキャラクターを作成している。また、納期達成を目的としたブレインストーミングを行うと同時に、新たな着想を得るために周りのスタッフにアイデア出しの協力を要請した」
というように、チームワークを高めるための取り組みや納期を守るための工夫についても明確に記載しましょう。

職種別書き方5:エンジニア職

技術貢献が求められるエンジニア職は、具体的な成果物や削減コストなどを示すことにより、定量的な評価をしやすいです。たとえば、
「商品の設計手法の見直しを実施したことにより、トータルで8%のコスト削減に成功した。また、作業効率の向上のため6件の改善案を提出し、5件が採用されている。また、ルーティンワークの内容についても不要な作業がないか検討し、最適化に成功した。同時に、効率よく作業を行うための役割分担と配置転換を実行している」
というように、技術を通して企業の利益や業績に貢献した旨を明確に記載しましょう。数値化しにくい業績についても、確実に成果がわかる内容であれば評価につながります。

人事評価シートの書き方をマスターしよう

人事評価シートの書き方をマスターすれば、正しい評価を受けられるだけではなく、能力やモチベーションの向上も期待できます。さらに、自己評価を通して業務を振り返り、課題や改善点を発見することもできるでしょう。ここで紹介した情報を参考に、自分の能力に見合った目標を設定し、正しい人事評価シートの書き方を実践しましょう。

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