2020.9.29
【必見】準委任契約とは?他の契約との違いや締結のコツを大公開!
業務を他社へ依頼する場合、仕事の受発注で必要になるのが業務委託契約書です。ただし、業務委託契約にはさまざまな契約形態があります。準委任契約もそのなかのひとつで、契約の特徴や違いを知ることで業務委託契約が円滑に進み、無用なトラブルを回避できるでしょう。そこで、この記事では委託契約のなかでも誤解されがちな準委任契約に焦点を当てて解説していきます。
準委任契約とは
準委任と他の契約形態との違い
準委任契約のメリット・デメリット
準委任契約と他の契約形態の使い分け方法
準委任契約書の作り方
準委任契約・請負契約の印紙について
トラブルの事例と予防するためのポイント
準委任契約を正しく把握してスムーズなやり取りを!
目次
準委任契約とは
準委任契約のメリットやデメリットについて知る前に、まずは概要について理解しておきましょう。この段落では準委任契約の内容を詳しく解説していきます。
準委任契約の概要について
準委任契約の内容を正確に理解するためには、委任契約についても知っておかなければいけません。詳細については後述しますが、委任契約は簡単に言うと「法律に関係する事務業務を当事者以外の人に代行してもらうときに必要な契約」です。たとえば、弁護士に裁判所の手続きを代行してもらったり、税理士と顧問契約を結んだりする場合などが該当します。一方、準委任契約は、「法律に抵触しない事務作業を委託するときに必要な契約」です。つまり、委任契約と準委任契約の違いは「法律に抵触する業務かどうか」が大きなポイントだといえます。準委任契約を結ぶケースとしては、たとえば高齢者介護サービスや医師の診察における事務処理など、日常生活に深くかかわる業務に幅広く該当するのが特徴です。
なお、準委任契約の規定は、委任契約のものが基本的にそのまま適用される場合が多くなっています。そのため、「法律行為に該当するか否か」以外の点において、委任契約と準委任契約にそれほど大きな違いはないということも理解しておきましょう。
準委任契約の4つの特徴
前述したように、準委任契約の特徴は委任契約にも当てはまります。
1つ目の特徴は、「瑕疵担保責任がない」ことです。瑕疵担保責任は不動産取引でよく使われますが、取引の目的物に隠れた欠陥がある場合、一定期間は売主の責任になるという意味を持つ用語です。たとえば、個人が不動産売却を検討している場合、一般的に不動産会社と契約を結んで仲介を依頼するでしょう。その場合、仲介をした不動産会社には瑕疵担保責任は発生せず、あくまでも売主である個人に責任があるということです。準委任契約では受注した側が損害賠償や法的責任が課されることはないという点について覚えておきましょう。
ただし、2つ目の特徴として「善管注意義務が発生する」点には注意が必要です。善管注意義務とは、簡単に言うと「常識の範囲内で善意を持って委任された業務を遂行する義務」のことです。たとえば、上述の例では仲介を依頼された不動産会社が隠れた欠陥を見つけているにもかかわらず、依頼主である売主にその事実を告げずに売却交渉を進めた場合が挙げられます。瑕疵担保責任は発生しないものの、一般常識の範囲内で責任のある行動をしなければいけないという、ある意味で当たり前の義務だと言えます。
3つ目の特徴は、「契約の解除は任意でいつでもできる」点です。契約の解除ができるのは、受任者と依頼者の双方で可能なので、かなり柔軟性に富んだ契約だと言えます。ただし、契約を解除すると相手にとって不利になることを避けるために、「やむを得ない事由がある場合に限り契約解除は有効」となっています。たとえば、アパートの管理を任された管理会社が依頼主が遠方に住んでいて管理できない事実を知っておきながら、一方的に契約を解除することは基本的にできません。この場合、依頼主が代わりになる管理会社を見つけることが契約解除の条件となります。
4つ目の特徴は、「再委託は原則的に不可能」という点です。準委任契約の場合は、建築業者が行っているように孫請けへ業務を委託することは原則的にできません。受注した側は依頼された業務を自身の力でやり遂げることが求められます。ただし、「再委託しなければいけないやむを得ない事由がある場合」「依頼者の許可を得た場合」はこの限りではありません。基本的には再委託できないという認識を持っておきましょう。
準委任と他の契約形態との違い
他の契約形態との違い①【委任】
委任契約と準委任契約はよく混同されがちですが、前述したように共通する部分も多いため、大きく区別する必要はありません。違いだけを重点的に覚えておくとよいでしょう。委任契約と準委任契約の違いは、「委託する業務が法律行為に関係するかどうか」です。法律行為に該当する場合は委任契約を結ばないといけません。たとえば、弁護士への訴訟代理依頼や、不動産業者への土地売却依頼などです。一方、法律と関係のない業務を委託する場合は、概ね準委任契約になります。準委任契約は、一般的に日常生活における事務処理の煩雑さを解消する場面でよく用いられる契約です。
他の契約形態との違い②【請負】
請負契約は、企業などが業務を委託する場合によく活用する契約形態の一つです。受任者は依頼された仕事を完成させて納品までの業務を請け負います。それに対して、依頼主は完成した仕事や納品物といった成果に対して報酬を支払う仕組みです。そのため、「仕事を完成させて報酬を支払う」という部分においては、準委任契約と基本的に変わりません。
ただし、請負契約は受任者が委託された業務に対して、瑕疵担保責任を負うという点で大きく異なります。また、請負契約では第三者への再委託契約が自由に認められている場合が多い点も特徴です。つまり、請負契約は依頼された業務を納期までに完成させることに重点が置かれており、「責任を負う代わりに実際に業務を行う対象者は受任者側の自由にできる契約」だといえます。受任者が責任を持って委託された業務を完成させて、成果物を依頼主に引き渡すという部分で準委任契約とは異なります。
他の契約形態との違い③【派遣】
派遣契約とは、派遣会社が企業に労働者を派遣する際に結ぶ契約のことです。派遣会社は要望を受けた企業へ派遣社員を派遣する義務を負い、その対価として報酬を得ます。一方、派遣先は派遣社員を受け入れる権利を得て、その対価として報酬を支払わなければいけません。派遣契約の特徴は、依頼主が受任者に対して指揮および監督権限を有している点です。派遣先の企業に受任者側の派遣社員を指揮する命令権限が認められているため、依頼主が派遣社員に対して直接指示を下せます。受任者が自分のペースで仕事ができる準委任契約とは、「指揮命令権限がどちらにあるか」という点で異なるのが特徴です。
準委任契約のメリット・デメリット
準委任契約とそのほかの契約形態の違いについて理解できたでしょうか。この段落では受任者として準委任契約を結ぶメリットおよびデメリットを紹介していきます。
準委任契約のメリット
受任者の立場として準委任契約を結ぶ最大のメリットは、「瑕疵担保責任がない」ことでしょう。もちろん、瑕疵担保責任がないからといって手抜きをして良いわけではありません。しかし、成果物に対して多額の損害賠償請求をされる恐れがない点については、精神的に大きなメリットになります。特に資金面であまり体力のない企業が大型案件を受ける場合において、大きなメリットです。また、準委任契約では民法の規定によって、一定の期間契約後であれば契約途中であっても報酬を請求できる権利があります。仮に目的達成のために費用を支払っていた場合は、その費用まで含めて請求可能です。事務処理の途中であっても収入を得ることができる点もメリットだと言えます。その他にも、準委任契約では派遣契約と異なり、裁量権を持ったまま仕事ができます。そのため、自分のペースで自分の好きな仕事を取捨選択しながらこなしていける点も魅力です。
準委任契約のデメリット
受任者側の準委任契約のデメリットとしては、「契約が切れたら仕事がなくなる」「案件の方針を決めるような大きな仕事ができない」点が挙げられます。準委任契約に限ることではありませんが、契約による案件は定められた期間が満了したら、仕事がなくなってしまいます。次の案件がすでに決まっている場合は問題ありませんが、一時的に仕事がなくなってしまうリスクがある点には注意しましょう。また、準委任契約では基本的に依頼主からの要望を受けて仕事をこなすことになります。与えられた業務につい受任者側から意見できる場合もありますが、最終的な意思決定を下すのは依頼主です。案件によっては自分のスタイルで仕事ができない可能性もあります。
準委任契約と他の契約形態の使い分け方法
準委任契約にはメリットもありますが、デメリットもあります。そのため、委任する業務の内容によっては、それぞれ異なる契約形態にしたほうがよい場合があるのも事実です。工程ごとに個別契約を締結する方法を「多段階契約」と呼び、実際に多くの業務で利用されています。
多段階契約を結んだ事例として参考になるのが、経済産業省によるパターンモデルです。経済産業省のパターンモデルによると、まず「方向性策定や要件定義」の部分を準委任契約で締結します。その後、「システム外部設計」を委託する場合は準委任契約または請負契約を結び、「システム内部設計結合」の段階では請負契約に限定します。「システムテスト」では再び準委任契約または請負契約に戻して、最終的な導入支援や受け入れ支援、運用テストは準委任契約だけで結ぶというスタイルです。段階ごとに適した契約形態を選択することで、それぞれのメリットを最大限活かせるようになります。
準委任契約書の作り方
準委任契約を結ぶ場合は、契約書の作成が必須です。そこで、準委任契約書の作り方について紹介していきます。
契約書に盛り込む内容
準委任契約書に盛り込む内容としては、他の契約でも必須項目である「業務目的および内容」「業務の遂行方法」「契約期間」「報酬の金額と支払い期間」などは当然必要です。これらの項目がはっきり明記されていないと、業務内容や報酬金額などでトラブルが生じる恐れがあるので注意しましょう。また、委託する業務によっても異なりますが、「知的財産の帰属」「禁止事項」「秘密保持」「損害賠償の有無」などの項目も明記しておくとよいです。作成するコツは誰が見ても分かりやすい書類にすることだといえます。後々のトラブルを避けるためにも、分かりやすくリスト化するなどの工夫をしましょう。
テンプレートを利用すると便利
契約書を最初から作成するのは手間がかかります。そのため、特に書式にこだわりがない場合にはテンプレートを活用するとよいでしょう。ウェブ上には無料のテンプレートが数多く存在するのでとりあえずそれを利用し、業務内容に応じてアレンジしたほうが作業時間を短縮できます。ただし、アレンジした結果、実際の業務と契約書の整合性が取れない書類になってしまっては意味がありません。アレンジする場合は、法律や労働環境の専門家に確認してもらったほうが無難です。
準委任契約・請負契約の印紙について
契約書の作成にあたっては印紙を貼らなければいけません。印紙とは租税の支払いや行政へ手数料を支払う際に利用する証票で、正式な契約書として認められるためには添付する必要があります。そこで、準委任契約と請負契約を締結する際の印紙の概要について理解しておきましょう。
準委任契約の印紙と金額
結論から言うと、準委任契約の契約書には原則的に収入印紙を貼付する必要はありません。ただし、業務内容が第1号文書や第7号文書に該当するケースでは、例外的に印紙の貼付が必要となります。第1号文書とは、印紙税法に規定されている「無体財産権(特許権や商標権など)」に関する契約書のことです。たとえば、システム開発に関する業務などが該当します。一方、第7号文書には「売買の委託」に関する契約書が該当し、具体的には代理店などが販売を代行する業務が対象となります。準委任契約の場合、第1号文書と第7号文書以外では契約書に印紙税が不要ということはよく覚えておきましょう。
請負契約の印紙と金額
請負契約の場合は、該当する業務が第2号文書または第7号文書のいずれに該当するかで必要な印紙税が異なります。第2号文書とは仕事の完成や成果物の納品によって業務が完結する契約書です。第2号文書に該当する場合は、契約書に記載されている金額によって納める印紙税が異なるのが特徴だといえます。たとえば、契約書に記載されている金額が「1万円以上100万円以下の場合は200円」「100万円を超え200万円以下の場合は400円」といった具合です。それに対して、第7号文書に該当する場合は、印紙税は一律で4000円となっています。
トラブルの事例と予防するためのポイント
準委任契約は基本的に依頼主と受任者の双方にとって有意義な契約形態ですが、トラブルがまったくないわけではありません。そこで、過去に起こってしまったトラブル事例とその予防策について紹介していきます。
準委任契約で起った2つのトラブル事例
準委任契約で起ったトラブル事例の1つ目は「コンピュータソフトウェア代金請求事件」です。受任者は依頼主からあるプログラムの開発を委託されました。しかし、開発が遅れてしまい、開発不能となったために依頼主は受任者に対して契約解除を通達し、報酬や開発にかかった費用を支払いませんでした。そこで、受任者は依頼主を相手取って裁判を起こしたという事例です。この事例では委託された業務が開発に要した費用を受け取れるはずの準委任契約か、仕事の完了をもって報酬を支払う請負契約のどちらであるかが争点になりました。結果的には請負契約であるという依頼主の主張が認められたため、受任者の主張は却下されたとのことです。
2つ目のトラブル事例は、「業務委託報酬請求事件」です。元受け企業からソフトウェアの開発を依頼されたソフトウェア開発企業は設計書を基に見積書を提示しました。交渉を重ねた末に契約が締結され、所定のソフトウェアを開発し、なんとか納品したのですが、工数が当初の想定を超えてしまったため報酬の増額を請求したところ、依頼主が拒否したという事例です。裁判の結果、契約形態については請負契約であるとしたものの、追加報酬については認められました。
契約の締結でトラブルを起こさないために気を付けたいポイント
契約を結ぶにあたって気を付けたいポイントとしては「提供行為の明記」「報酬の明確化」「費用負担の内訳」が挙げられます。まずは、委託する業務内容を明確にしておきましょう。業務内容が曖昧な契約書だと、受任者側が不要な業務まで行ってしまい、報酬支払でトラブルになるケースもあるからです。もしも顧客とトラブルが発生した場合には責任問題にもかかわってくるので気を付けましょう。
報酬については「固定報酬なのか歩合制なのか」や「支払期日」「支払方法」など、詳しく定めておきましょう。報酬は契約書のなかでも特にトラブルを招きやすい項目なので、細かく決めておくことが求められます。また、費用負担については、上述したトラブル事例のように、業務遂行途中で経費が想定よりかかってしまった場合も考えておかなければいけません。報酬と同じく、お金が関わる項目なので慎重に対応しましょう。また、業務の進捗具合などを報告してもらうことも大切です。委任したからといってすべてを任せっきりにしてしまうと、依頼主のイメージとズレてしまう恐れがあります。トラブルを避けるために、受任者側に適切なタイミングで報告を徹底するように求めましょう。
準委任契約を正しく把握してスムーズなやり取りを!
この記事では準委任契約をはじめ、さまざまな契約形態の特徴や締結までの詳しいポイントなどを紹介してきました。契約の種類はさまざまで複雑ではありますが、これらの違いを正しく理解することが、トラブルのない円滑な契約ややりとりにつながります。適切な契約を結んで業務をスムーズに行うためにも、この記事を参考にしてみてください。
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