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2021.4.2

家族手当について徹底解説!概要から支給の条件・相場までまとめ

企業は、社員に対する福利厚生の一環としてさまざまな手当を支給しています。その手当について、社員や経営陣はよく理解しておく必要があるでしょう。特に、法律上支給が義務付けられておらず企業が任意で支給できる家族手当は、位置づけなどに関して社員側・企業側で捉え方に相違が生まれやすい手当です。そこで、家族手当の概要や支給金額の相場、支給条件、廃止が広がっている理由などについて解説します。

家族手当の概要と扶養手当との違い

家族手当とは、配偶者や子どもなどの家族がいる社員に対して、その家族構成や人数などに応じて一定の金額を支給する手当のことです。家族の人数が多ければ、家計の負担も大きくなります。その経済的な負担を軽減することは、働きやすい環境を整えることにもつながるといえるでしょう。家族手当は、そういった目的で支給される手当です。家族手当の支給は、基本給とは別の加算項目になります。基本給については、労働基準法に定めがあるため支払い義務がありますが、家族手当については法律上の支払い義務はありません。企業が独自に定める就業規則に基づいて支払われるという点が、家族手当の特徴です。

似たような性質がある扶養手当との違いについても、確認しておく必要があります。扶養手当は、支給対象となる家族を実際に扶養していることを条件として支給する手当です。そのため、配偶者が一定の収入を得ていたり、両親が一定額以上の公的年金支給を受けていたりすると、扶養手当は支給されないケースがあります。家族の収入についての基準は、それぞれの企業が決めるため、一律ではありません。家族手当は、扶養しているかどうかよりも家族がいるかどうかを中心に支給可否の判定を行う点が扶養手当と異なります。

家族手当はどれくらいもらえるの?

家族手当は企業が独自に支給するかどうかを決める手当です。また、支給されている場合も、その手当金額は企業によって異なります。家族手当を導入している企業は全体の77.9%であり、多くの企業で導入されている状況です。支給している企業の平均支給月額は、1万7282円となっています。ただし、企業規模によって家族手当の支給額が異なるということも知っておきましょう。従業員数が多い大企業になればなるほど、家族手当の支給額は増加する傾向があります。また、家族手当は、そのほかの諸手当と比較して大きな金額が支給されるケースが多いことも特徴です。

家族手当は、配偶者に対していくら、子ども1人に対していくらと定めて支給することが多くなっています。配偶者に対する手当の平均支給月額は1万~1万5000円、子どもに対する手当の平均支給月額は3000~5000円です。ただし、この手当金額は法的な制限がありません。そのため、企業の経営状況などによって変動する可能性はあります。

家族手当が支給される条件は?

家族手当の支給は、支給対象となる家族の構成によって決まる仕組みをとっているケースが多いです。配偶者や子ども、両親が対象となるケースもあれば、両親を除く配偶者と子どものみを対象とするケースなど、企業によって対象となる家族としてどこまでを含めるかは変わってきます。また、子どもの人数を考慮する企業もあれば、考慮しないで支給する企業もあります。

さらに、扶養手当の支給基準のように、家族の収入を考慮するケースもあり、企業によっては家族の収入が一定額を超える場合は家族手当の対象外となります。たとえば、家族の収入が所得税の配偶者控除が受けられる収入や社会保険料の被扶養者となれる収入に収まっている場合のみ、家族手当を支給するといった基準で運用されるケースもあるのです。支給基準として、社員と同居している家族だけを対象にする、同一生計の家族について支給対象としている企業も存在しています。同居が条件となると、共働きで別居している配偶者や、すでに一人暮らしを始めた子どもなどについては対象外と判断されるでしょう。

家族手当は税制上どのように取り扱われるの?

家族手当に関する税制上の取り扱いについても、知っておくことが重要です。企業が社員に対して毎月支払う給与や、一定期間ごとに支払うボーナスは、所得税法における給与所得に該当し、課税対象となります。家族手当も企業が社員に支払うものに該当するため、原則として所得税の課税対象です。

家族手当が、社会保険料の対象となるかどうかも大切なポイントだといえます。社会保険料は、受け取っている給与収入に基づいて標準報酬月額を算定し、その額に対して一定率を乗じて決まる仕組みです。家族手当は、社会保険料を算定する際の報酬額に含まれる手当に該当します。各種手当のなかには、一部給与所得とはみなされないものもあります。しかし、家族手当は、一定期間継続的に社員が受け取ることになるため、給与所得を算定する際の収入に含まれ、課税対象となるのです。税法上は具体的に家族手当に関する規定は定められていません。しかし、交通費のように、明確に非課税とされているわけでもないのです。そのため、支給の実態を踏まえて給与の一種として課税対象になると理解するのが一般的だといえます。

家族手当の廃止が進んでいる要因

家族手当は、多くの企業で導入されている代表的な手当の1つです。しかし、廃止を検討する企業が増えているという実態もあります。家族手当を支給する企業は、昭和57年時点では全体の約83%となっていましたが、平成26年には約58%まで減少しているのです。ここでは、家族手当の支給を廃止する企業が増加している要因について説明します。

ライフスタイルの変化により共働き世帯が増加したから

家族手当の廃止が進む理由の1つ目は、ライフスタイルの変化です。時代の流れとともにライフスタイルは多様化しています。その変化の過程で、各世帯において男性が単独で収入を得て家計を維持するシングルインカムの形態をとる世帯の減少が進みました。その流れと歩調をあわせて、夫婦が共働きで家計を維持するダブルインカムが主流となってきています。こういった状況が定着してくると、配偶者を対象として家族手当を導入する必然性がなくなり、家族手当の廃止が進んだというわけです。

また、働き方の多様化が認められるようになった結果として、女性が結婚や出産、育児で仕事を辞めずに働き続けられる環境が整いつつあります。そのため、配偶者の収入が家族手当を支給する収入基準を超え、手当が支給されないケースが増えたことも、家族手当廃止が進む要因の1つです。働き方の多様化は、夫婦両方が稼ぎ頭になれる環境を作っています。家族手当廃止が進んできた理由は、家族手当が時代の流れに合わない古いものになってきたと考える企業が増加したからだといえるでしょう。

成果主義との共存が難しいから

家族手当の廃止が進む2つ目の理由は、成果主義との共存が困難になってきたからです。家族手当は、仕事の成果とは無関係に支給されます。仕事の成果が上がっていようがいまいが、支給基準に該当する家族がいれば一定の収入として誰でも受け取ることができる手当なのです。社員を家族のように扱うことに通じるこの家族手当制度は、手厚く社員をサポートできるメリットがあるといえます。

しかし、成果を重んじる企業や優秀な社員にとっては、成果の有無にかかわらず支給される手当の存在は、不公平感を生む原因にもなりえます。成果主義は、能力が高く大きな成果を上げた社員がより多くの報酬を受け取る制度です。欧米では成果主義が社員に対する給与の支給基準として浸透していましたが、日本企業も徐々に成果主義の導入を進め、成果主義によって決まる給与の割合は増加してきています。そういったなかで、社員の能力や成果とは無関係に決定される手当の支給はそぐわないと考える企業経営者も増えてきました。その結果、家族手当を廃止するという決定をする企業が増加したのです。

配偶者控除が改正されたから

3つ目の理由は、配偶者控除の改正です。配偶者控除とは、所得税法が定める所得控除の1つであり、納税者本人の所得や配偶者の収入を考慮して一定額を所得から減額できる控除制度のことをいいます。この制度は、かねてから女性の就労意欲を低下させる要因の1つとなっていると指摘があった控除項目です。配偶者側の収入が税法の定める一定額を超えると、会社員本人側での配偶者控除適用を受けられなくなって税負担が増加することになります。そのため、配偶者が、配偶者控除の適用を受けられる範囲内に収入を抑えるといったことが行われてきたという実態があったのです。

配偶者の労働抑制要因をなくすため、配偶者控除は改正が行われました。具体的には、控除対象となる配偶者の収入を上げる改正が行われたのです。改正前は、パート収入などであれば、年収103万円を超えると配偶者控除適用外となっていましたが、改正後、年収の上限は引き上げられました。家族手当の支給について配偶者控除の適用を条件としていた企業は、この改正によって家族手当の支給対象者が増加することになってしまいます。そういった事態を避けるため、税制改正に合わせて家族手当を廃止した企業が増えました。

家族手当の見直しを行った企業の具体例

家族手当の見直しを検討する場合、さまざまな点に配慮をして制度の変更を行っていくことが大切です。変更によって手当がなくなったり金額が減ったりすることは、子どもの教育費や両親の介護費用などに手当を使っていた社員に大きな影響を与えることになります。社員に対する影響を最小限に抑えながら適切に制度を変更するためには、実際に見直しを行った事例を知っておくことも有効でしょう。

トヨタ自動車は、家族手当を見直した企業の1つです。見直しの内容としては、2つの点があげられます。1つは、配偶者に対する手当を廃止したことです。共働きの増加や配偶者控除見直しなどを踏まえて廃止が行われました。もう1つは、配偶者の手当を廃止した分を原資として子どもへの手当を増やしたことです。子育てをする家庭を支援することにつながるとして、子どもへの手当を充実させました。また、大王製紙は、配偶者手当の廃止と同時に、子育て世代の育児・教育に関する経済的負担の軽減を目的として子女手当増額と子女教育手当を新設することを発表しています。各社、見直しの方法はさまざまですが、一方的に家族手当を廃止にするのではなく、廃止によって生まれる原資をよりニーズに合った手当に充当する事例があることは、認識しておく必要があるでしょう。

企業の内情をよく知り社員が満足する形での支給を目指そう

家族手当を導入していた数多くの企業は、ライフスタイル多様化などの環境変化に合わせ、手当を廃止したり変更したりする流れになっています。変更にあたっては社員に与える影響を確認し、会社内部の実情を踏まえたうえで、不利益が生じないように配慮して制度を設計することが重要です。他社の事例なども踏まえて、より良い制度になるように検討してみましょう。

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