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2020.4.17

人事や経営者が知っておくべき契約社員の5年ルール!条件や例外を徹底解説

契約社員の5年ルールとは、「契約社員を通算5年雇用すると無期雇用に転換しなければならない」というものです。経営者や企業の人事担当者は、対象者や条件などの法制度や運用実態について正しく理解しておくことが大切です。そのことを怠れば、将来、契約社員との雇用に関するトラブルが発生するかもしれません。そこで、今回は契約社員の5年ルールの具体的な内容のほか、勘違いしやすいポイントや例外について紹介します。

契約社員の5年ルールとは

契約社員の5年ルールは、2013年4月1日に改正労働契約法として施行された法律に基づくものです。有期契約労働者の無期契約化を図ることにより、有期労働契約で働く労働者における雇止めの不安の解消や処遇の改善をその目的としています。企業は、有期契約労働者を雇用する場合、通算5年を超えていて所定の条件を満たすならば「契約更改は期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されなければならない」ということになりました。このルールは、「無期転換ルール」とも呼ばれています。規模にかかわらずすべての企業が対象です。

たとえば、1年ごとの契約期間で働いている有期契約労働者の場合、5回目の契約更新を行った6年目の契約期間に無期転換への申込権が発生します。また、3年後との契約となっている場合、その有期契約労働者は最初の契約更新後の3年間で無期転換への申込権が発生します。このルールによって、有期労働契約で働く労働者は生活の安定が保障され、長期的なキャリアプランを描けるようになりました。企業にとっても、このルールによってその会社の実務に精通している無期労働契約の社員を比較的容易に獲得できるメリットがあります。また、無期転換した労働者に対する長期的な視点からの育成が可能となるでしょう。

対象となる契約社員とは

このルールは、機関の定めがあるすべての契約社員が対象です。しかし、契約社員という雇用形態に限るものではありません。有期契約労働者とは、ある一定期間、1年や6か月ごとに契約更新をする雇用形態で働くすべての労働者のことを指します。そのため、たとえばパートやアルバイトも有期契約労働者に含まれます。また、その企業が独自で準社員やパートナー社員といった正社員とは別の雇用形態を用いている場合は注意しましょう。その契約期間に〇年間といった期限があるのであれば、それらの労働者も有期契約労働者です。派遣社員の場合も有期契約労働者に含まれます。

ただし、派遣社員の場合、その労働者が契約しているのは勤務先企業ではなく派遣元企業なので、無期転換ルールは派遣社員と派遣元企業との間で発生するのが特徴です。総務省が行った「平成29年労働力調査」では、有期労働契約者は1,563万人となっています。

有期雇用から無期雇用への転換とは

有期労働契約が無期労働契約に転換されるということは、「基本的に労働契約の期限が無期限になる」ということでしかありません。「無期労働契約=正社員」ではないので注意が必要です。そのため、勤務時間帯や給与、賞与、退職金、福利厚生といった雇用期間以外の条件は、それまで交わされていた労働条件と同様であっても問題はありません。もちろん、無期労働契約への転換を機に労働条件が見直されるケースもあります。ただし、それは労働者側がそうした改善を求めることができるようになるわけではありません。無期労働契約に転換しても、契約期間以外の労働条件は会社側に決定権があるのです。

契約社員の5年ルールの適用条件とは

有期労働契約をしていて無期転換申込権が発生するのは、3つの要件すべてがそろったときです。要件の1つ目は、有期労働契約の通算期間が5年以上であること、2つ目は契約更新回数が1回以上となっています。そのため、仮に6年間という期間の契約を結んでいた場合には、5年目になっても無期転換申込権は発生しません。権利が発生するのは契約更新をした6年目からになります。要件の3つ目は、無期転換の申込時点で同一の使用者との間で契約していることです。そのため、派遣労働者の場合は派遣先企業ではなく派遣元企業との間に無期転換申込権が発生します。

さらに、重要なことは「無期労働契約が適用されるのは現在の契約が終了してから」ということです。そのため、上述した6年契約の場合、無期労働契約が適用されるのは2回目の労働契約が終わったとき、つまりその労働者が働き始めてから12年後になります。3年契約の場合には、最初の契約更改の後に権利が発生するので、その労働者と企業との無期労働契約が適用されるのは7年目からです。

通算5年に含まれない?クーリング期間とは

無期労働契約申込権が発生する要件の一つに「5年間同一の使用者との間で契約していること」というものがあります。たとえば、ある労働者を3年間雇っていたとしましょう。その後6カ月の無契約期間があり、再び2年契約を結んだとします。この場合、この6カ月間は「クーリング期間」として5年間には含まれません。また、クーリング期間以前の雇用期間も5年間の雇用期間には含まれないため、この労働者には無期労働契約申込権は発生しません。クーリング期間として扱われる無契約期間は契約期間によって異なります。

有期契約期間が2カ月以下の場合は、1カ月以上の無契約期間でクーリング期間です。また、4カ月超~6カ月以下の場合は3カ月以上、6カ月超~8カ月以下の場合は4カ月以上でクーリング期間となります。契約期間が10カ月を超えると、6カ月以上の無契約期間がクーリング期間です。

定年後継続雇用等の所定の条件を満たすと特例措置が適用される

特例措置の対象となった場合、通算5年のルールが適用されません。具体例としては、たとえば定年後の継続雇用があります。定年後の継続雇用として労働契約を結ぶことになる場合には、その契約期間が5年以上となっても労働者に無期転換申込権は発生しません。また、専門的知識などを持つ有期契約労働者と一定期間内に完了することが予定されている業務に関する契約を結ぶ場合、上限10年での有期雇用契約が認められます。この専門的知識等を持つ有期契約労働者とは、たとえば公認会計士や弁護士、システムエンジニア、デザイナーなどです。その場合も、10年以内の有期労働契約を結ぶことができます。

これらの特例措置を受けるためには、あらかじめ都道府県労働局長の認定を受けなければなりません。また、認定を受けた後は労働者に対する特例に関する労働条件の明示が必要です。

契約社員の5年ルール制度の導入4ステップ

5年ルールを導入する際には、4つのステップを把握したうえで、あらかじめ準備をしておくことが大切です。

#ステップ1.自社勤務の契約社員の現状把握

最初のステップとして、まずは自社で働いている契約社員などの現状把握を行いましょう。自社の就業規則で有期契約労働者の定義が明確になっているかどうかを確認することも必要です。また、正社員と有期契約労働者の労働条件などが自社の就業規則や給与規定においてどのように定められているかについてもチェックしておきましょう。

#ステップ2.社員ごとに仕事の分担を再検討

次に、社内の仕事を整理して社員区分ごとの仕事分担が適切かどうかを再検討しましょう。有期契約労働者が無期契約に転換した場合、その社員の仕事内容はこれまでとどう変わるのかをあらかじめ定めておく必要があります。そうしないと、有期契約労働者が無期転換した際にトラブルが発生してしまうかもしれません。無期契約ではなく正社員へと転換することも含め、中長期的な視点で人事管理を行いましょう。

#ステップ3.就業規則の再確認および作成

その際、正社員と無期社員との間の労働条件や待遇で混乱が起こることのないよう、改めて就業規則を作成しておくと安心です。その場合には、有期契約労働者の就業規則だけでなく正社員の就業規則に関しても見直しておく必要があります。無期転換者と正社員との間に仕事内容や責任の範囲、労働条件などで差異がないにもかかわらず処遇や評価に差異がある場合、無期転換者からの不満の声が挙がるかもしれません。そうならないよう、それぞれの社員がしっかり納得できるような処遇や評価制度を定めることが求められます。

#ステップ4.制度運用および改善の継続

最後に、制度の運用を開始して改善を継続していきます。その際には、あらかじめ労使と密なコミュニケーションをとっておきましょう。就業規則の設計段階から協議を行っておくと、労使双方にとって納得のできるものが仕上がるでしょう。そうして無期転換申込権が発生する有期契約労働者に対しては、事前に権利が発生する旨を連絡しておくことも忘れてはならないポイントです。

勘違いしやすいポイント

1.必ず正社員登用となるのか

5年ルールでよく勘違いされやすいポイントとして、まず挙げられるのが「契約更新で無期転換するとそのまま正社員になる」という誤解です。無期雇用とは、あくまでも契約期間だけの話なので、「無期雇用=正社員」ではありません。必要要件を満たした有期社員に対しては5年目に契約期間を有期から無期にすることが義務とされています。もしも無期転換の条件を満たす有期契約社員などから転換の申し出があれば、企業側はその労働者を無期雇用にしなければならないのです。

しかし、無期転換後の労働条件については会社側に決定権があります。ただし、無期転換における労働条件の変更は労使双方の合意が必要です。無期雇用となることで有期雇用の労働条件よりも不利になってしまう場合は、その労働条件が無効となる可能性もあります。

2.自動的に無期雇用となるのか

また、有期社員として働く労働者の多くが勘違いしているポイントとして挙げられるのが、「5年経てば自動的に無期雇用となる」という誤解です。有期雇用から無期雇用に転換するには、労働者本人からの申し込みが必要です。そのため、もしも5年目の契約時に労働者本人が申し出なければ、有期契約のまま契約終了となります。企業側には、無期転換申込権の発生を労働者側に知らせる義務はありません。しかし、計画的な人事管理を行う観点からすると、企業側は事前に該当する労働者に対して無期転換申込権が発生する旨を伝えておいたほうがよいでしょう。

もしも労働者が無期転換を臨む場合には、口頭での申し込みであっても問題はありません。しかし、後でトラブルになる可能性を考えると書面での申し込みのほうがよいでしょう。厚生労働省のホームページに「無期労働契約転換申込書」のひな形があるので、それを利用するのも一つの方法です。

3.5年満期直前で雇止めできるのか

企業側が勘違いしやすいポイントとして挙げられるのが、雇止めです。企業側は、有期雇用期間5年満了直前に有期社員を雇止めすることはできません。そうした判断は、労働契約法第19条の「雇止め法理」により無効になります。また、有期雇用期間5年満了にならないよう会社が契約更新に関する上限ルールを定めても雇止めは許されません。そのほか、有期社員の解雇や契約更新の拒否が無期労働契約の解雇と社会通念上同視できる場合や、労働者が契約更新されることを期待することについて合理的な理由がある場合にも雇止めは無効となります。

早期の対応で中長期的な人事労務管理を

改正労働契約法は2013年4月1日に施行されました。そのため、5年が経過した2018年4月より多くの契約社員に無期転換申込権が発生している可能性があります。無期転換ルールを円滑に導入するために、まずは労使双方にとって納得できる制度の構築が必要です。制度を構築する際には、無期転換後の労働者の役割や責任をどう設定するかが重要なポイントとなるでしょう。転換後に労働者と企業や現場の社員同士でトラブルが発生しないようにしておくことが大切です。そのためにも、余裕を持って就業規則などの書類整備や社員へ周知しておきましょう。

なお、定年によらずに無期転換後の労働者を解雇する場合には、労働契約法第16条の解雇権濫用法理が適用されます。もしも司法においてその解雇に「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない」と判断された場合には、その解雇は権利濫用に該当するものとして無効となるので注意が必要です。とりわけ、無期転換後に就業規則が変更される場合には、どこがどう変更されるのかをしっかり労働者側に説明しなければなりません。また、その際、就業規則の変更に合理性がないと司法に判断されると変更が無効になることもあります。合理性の判断基準は、個別具体的な事案によって異なる傾向です。

契約社員5年ルールの条件や例外を正しく理解しよう

契約社員の5年ルールには勘違いしやすいポイントが多くあります。そのため、法制度や運用実態を理解し実務に活かせるよう、例外となる条件があることや勘違いしやすいポイントに注意しましょう。そのうえで、契約社員の5年ルールについて社員から申し出があった場合には正しく運用できるよう雇用契約法などを確認しておくことが大切です。雇用契約法をしっかりと確認したうえで、事前の準備を実務に活かしましょう。

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