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2020.6.11

基幹システム?業務システムやERPとの違いを理解しよう

企業が効率よく合理的な運営をするのを助けるためのITシステムには、さまざまな種類があります。例に出せば、「基幹システム」「業務システム」「ERP」などが挙げられます。それらシステムの内容について、一体どの程度知っているでしょうか。それぞれの特徴と役割を知ることで上手に使い分けられれば、企業活動の効率化に役に立つ最強のツールとなります。

基幹システム、業務システム、ERPとは何か?

企業が導入しているシステムにはいくつか種類があります。例を挙げると、「基幹システム」や「業務システム」に、「ERP」と呼ばれるものが使われています。しかし、それぞれのシステムが何を担当するシステムであるのか、また、どのようなことができるのかについては、あまり知られていないことが多いのではないでしょうか。そこで、各システムの特徴について説明していきます。

基幹システムとは

企業が導入するITシステムのうち、基幹システムと呼ばれるものは、在庫、生産、財務会計、サプライチェーン、購買などのように、企業経営の「基幹」となる部分を、ITの力で管理するシステムのことです。本来であれば、単純作業の繰り返しによって成り立つ種類の仕事を、ITシステムで自動的に処理すれば、ミスや滞りがなくスムーズに仕事を回していくことが可能になります。
昔の基幹システムがない時代には、帳簿などに手作業で記載して大切な情報を管理していました。振り返ってみれば、決して効率が良いとは言えない状態でした。基幹システムに任せてしまえば、基本的な仕事を効率化でき時短につながります。そして、時短で浮いた時間をほかの仕事に回せる、というメリットがあります。また、在庫管理を例にとってみると、アナログ管理で、万が一管理が杜撰であれば、会社として大きな損失が出てしまう場合だってあるでしょう。このように、ミスをせず損失が出ないようにするのも基幹システムの役割のひとつなのです。
企業経営において、正確且つ効率よく仕事を進めるためには、基幹システムは欠かせないITシステムとなっています。

業務システムとは

業務システムを説明するに当たって、基幹システムと混乱してしまいがちになることが多々あり、区別のわかりにくいシステムかもしれません。「業務」のシステムとは具体的に言って、細かな業務をこなすのに便利なシステムのことです。では、基幹システムと比較してみましょう。基幹システムは、企業の大きな骨組みとして機能し、企業経営にはなくてはならないシステムのことです。それに対して、業務システムというのは、会社の業務をさらに細分化した範囲で使われるシステムのことです。
業務システムは、故障などで万が一機能しなくなっても、会社の経営に直接的な影響がないのが特徴だと言えます。例えば、社内の書類を管理するシステムが故障したり、社内連絡のためのチャットソフトが故障したりする場合、または、バックアップのあるデータが消失してしまう場合、会社の経営には直接の影響があるとは言えないでしょう。
ただ、業務システムである顧客管理データなどは、企業経営が傾くことこそはありませんが、信用問題においては重要かもしれません。そういった意味では、顧客データは基幹システムではないものの、それと同等に扱われるべき重要な業務システムなのかもしれません。一般的には、業務システムは、機能せずとも会社の経営が可能であるシステムのことをいいます。

ERPとは

ERPと呼ばれるシステムは、Enterprise Resource Planning(経営資源計画)の略語です。元来この用語は、経営効率を上げるための手法で、マネジメントに関する用語でした。因みにERPは、MRP(Material Resource Planning)から発展してきた手法です。MRPとは、トヨタの優れた生産管理手法LPSに対抗すべく、1960年代に作られた生産管理手法でした。経営をするにあたって、製造から流通までの流れを広く見渡せるのがERPの強みです。ITシステム化されるにあたって、システム自体がERPという名前で呼ばれるようになりました。
ERPは、前述の基幹システムと業務システムを搭載しているシステムだと言ってよいでしょう。しかし、単純に2つのシステムが相互関係なしにひとつになったものという意味ではありません。ERPシステムの強みは、モノ・金・人の動きが俯瞰的に見えるようにバランスよく管理できるため、ベストな経営の意思決定を下すのに最適な情報を与えてくれるシステムなのです。通常はバラバラに存在するはずのさまざまな部署に存在するデータを、一元管理してまとめたソフトウェアだと言えるでしょう。

基幹システムの主な役割と機能

基幹システムは、障害が発生することで企業経営に直接的な支障が出て、業績にも影響が出やすいシステムのことです。では、具体的には基幹システムで何ができるのでしょうか。おおまかに分けて、次のようなシステムが基幹システムに該当します。在庫管理システム、仕入管理システム、販売管理システム、生産管理システム、会計管理システム、人事給与システムなどがあります。次項から各基幹管理システムについて焦点を当てて説明していきます。

在庫・仕入れ管理

在庫管理システムが使われる製造業では、製品自体が収益を上げるための大切な資産だと考えられます。製品の生産数を徹底して管理しなければ、キャッシュフローのバランスが崩れて、経営に悪い影響を与えてしまうこともあるのです。余剰在庫が出ないよう、損失に備えねばなりません。このような業種では、在庫が経営状況を左右する大事な要素であるからこそ、在庫管理システムが大切なのです。
仕入管理システムは、小売業で使われるものです。小売業では、市場のトレンド、顧客のニーズや動向などを見極めてから、どれくらいの量が売れそうか予め予測し、仕入れ数や仕入れるものを決めます。在庫を適切にコントロールできるシステムを導入することで、仕入れから在庫管理までを一括で管理できると、仕事が効率化しやりやすくなります。そのため、仕入れ管理のためのITシステムを導入すると、スムーズで先を見据えた長期的な経営が可能です。

販売・生産管理

販売管理システムは、販売業において必要なあらゆる情報をまとめるためのシステムです。例えば、販売に伴う見積もり書の管理、受注の管理、商品やサービスの提供に関する情報の管理、納品や検収の管理、請求や入金などの情報の管理などがあります。これらを総合的に統括することで、販売業務を効率的なものにしてくれます。
生産管理システムとは、製造業にて製品の需要を予測しつつ生産する数量を管理し、尚且つ生産スケジュールをコントロールしながら、予定通りに生産を進めるのに便利なITシステムです。製品は通常、QCD(品質、コスト、納期)基準を満たさねばならず、生産管理システムなしでのQCDのレベルの実現は容易ではありません。生産管理とは、まさにこのQCDを維持しながらよりよいレベルに上げていくためのものであり、ITシステムで管理することで効率よく実現することができます。
多くの製造業がグローバルに生産拠点を持つなか、生産管理システムは、なければ業務の運営が成り立たないほどの存在感を増してきています。このシステムのメリットとして、納期までにベストな状態で製品を納品できるようになります。原価を踏まえつつ、スケジュール調整しながら工程や品質をバランスよくマネジメントすることが可能です。

財務会計管理

財務会計管理システムは、金銭のやりとりが発生する企業活動には欠かせないITシステムです。企業の経営者や役員クラス、あるいは部門責任者などが、会計データを参考にするために使われます。役割としては、企業の経済活動がスムーズにいくよう、支えてくれる機能があります。従来的には大企業が行う会計業務といったイメージでしたが、中小企業でも財務会計管理システムの導入をしていることが多いです。これは、経営を多角的に分析し現状把握するためです。
財務会計管理システムで、何ができるかというと、経営状況がわかりやすく見えるような可視化です。例えば、機能のなかには財務諸表を作成し、企業の財務状況を可視化するものがあります。そのほかにも、さまざまな角度から会計データを分析することが可能です。いろいろなデータの切り取り方が可能なため、予算を正確に管理したり、未来の経営状況について予測シミュレーションをしたりすることもできます。こういった機能により、経営判断に役に立つ資料作成が可能です。
また、呼び方としては、「財務会計管理システム」だけではありません。企業によっては「財務管理システム」と呼ばれたり、「経理システム」と呼ばれたりすることもあります。

人事給与管理

人事給与システムは、企業において経営のための大切な資源である人材と給与について管理できるシステムです。人事給与システムは、名前が指し示す通り、企業の人事部で使用されるシステムです。人事業務に必要なあらゆるデータ、例えば従業員の採用から退職までのあらゆる情報を管理しています。また、従業員の情報だけでなく、人事評価や人事異動の情報を管理するために使用することもできます。
給与情報についての管理は給与システム単独で管理するよりも、人事関係のシステムと連携させることで効率が上がります。人事情報と給与情報を一元管理することができる便利なシステムで、給与計算などをするに当たって、スムーズで快適な業務環境が整えられます。現代社会における複雑化した業務環境のなかでも、この人事給与管理システムにより、業務を改善しこれまでよりも効率的な人材管理が可能になりました。
これまでの人事給与管理システムは、十分に必要な機能を果たしてきました。しかし、新しい経営手法の潮流では、人材に関するデータに新たなニーズが生まれてきているのです。新たな経営手法の考え方では、人材は人的資源であるとの見方をすることが多くなってきています。そのため、人材を経営戦略に組み込む企業が増えてきています。よって、人事給与管理システムで使用してきたデータを、有効活用した経営戦略ができると、効果的で効率的な経営の実現に繋げることが可能になります。そこで、活躍してくれるのが次項以降で焦点を当てていく、ERPの存在なのです。

基幹システムをERPに置き換えるメリット

前述の基幹システムを、ERPに置き換えることによって、さらなる価値あるITシステムの導入が可能になります。では、どのようなメリットが享受できるのか、見ていきましょう。ERPを導入することで得られるメリットは、情報の一元管理ができるということです。1つのソフトにすべての機能が入っているため、これまで基幹システムのときに情報を管理していた人員が少なく済みます。また、複数の部署で同じ種類のデータをバラバラに管理していた場合などには、一元管理することにより、二度手間やデータの重複なども省けるようになります。情報が一箇所に集まることで、情報を網羅し俯瞰的にとらえられるので、経営戦略の際に正確でスピーディな判断が下せることがメリットです。
また、既存の基幹システムを複数導入していた場合、それらを統合してしまえばよいのではないかといった考えもあるでしょう。しかし、この方法では、連携させるだけで大変なため、逆に膨大な手間とコストがかかってしまいます。また、すべての情報を含んだデータベースを作成する必要もあることと、長期にわたるシステムテストも必要になってくるため、現実的ではありません。
ERPのように一元管理できるデータは、さらなる可能性を秘めています。情報の可視化によって、的確なデータ分析できることがERPの強みでしたが、さらに発展させた活用方法もできるのです。企業が活動するなかで、ERPにあらゆる種類の情報が集まってきています。その情報を、最新技術であるビッグデータ分析を使って、さらにダイナミックで詳細な分析をすることも可能なのです。
これにより、今まで経営陣などが気づくことのできなかった知見を発見できる可能性もあります。緻密な分析データを活用することにより、新たなニーズの発見、インスピレーションとなる視点に出会える可能性が考えられます。また、業務をさらに効率化するためのヒントとして活用することも可能です。ERPから抽出した分析データは、経営者の創造性によってさまざまな可能性を秘めています。このように、ERPの導入は、経営戦略を練ることにも役に立つのです。
さまざまな使い方をすることができるERPは、業務の最適化や効率化に強いだけではありません。現代社会において、企業が生き残りをかけて戦う際には、緻密な分析に基づいた経営戦略が必要です。だからこそ、効率化のみならず正確なデータ分析をも可能にしてくれるERPは、企業が取り入れるべきITシステムだと言えるでしょう。

人やモノに紐付いたお金の動き(生産性)が見える

ERPの導入によって、企業が管理するデータを一箇所にまとめると、経営にとって役に立ついろいろな要素が明確に見渡せるようになります。管理する情報を多角的に分析もできるため、経営状況を常に可視化でき把握した状態でいることができます。人や製品を生産性という側面で捉えたとき、従業員のデータや製品管理データが一箇所に集まっていれば、管理がしやすくなるのは明白なことです。つまりは、人やモノの情報がデータとしてERPを通して出揃っているため、無駄な部分などがあれば把握しやすくなります。このようにERPは、常に企業の各部署の作業効率を最適化することができ、無駄を省いた企業経営が可能です。
また、経営に有益なデータを可視化できることにより、多角的分析が容易になります。それによって、人の動きやお金のフローが見えてくるようになります。生産性の悪さが可視化されれば、データを元にしてその都度的確に状況を把握・改善し、常に最適化された状態で企業経営していくことが可能になります。

業務プロセスにおける業務効率の向上

ERPは、複数の情報システムの連携に優れているため、以下のような業務効率の向上が実現可能です。製造業の場合、製品の生産過程には、前後にほかの業務プロセスがあります。材料の購買から入荷、在庫管理、販売、出荷といったように、仕入れから製造の流れと製造から出荷に至るまでの流れというものがあります。経営においては、各業務プロセスが最適化された状態でスムーズに流れていくのが最も効率的だと言えるでしょう。このような状況での上手な連携が、ERPの得意とするところです。
ERPは、データの重複や無駄を省き、すべてのプロセスを上手く繋げることができます。何らかの滞りやロスが出ないようにすることは、スピードが重要な現代社会において、企業にとっての死活問題でもあります。ERPは業務の流れを最適化し各業務の間をシームレスに繋いでいくことに大変優れています。

在庫や仕入れなどの無駄な費用の削減

ERPの導入により、在庫データの管理も簡単になります。データが重複することなく、常に一元管理できるということです。例えば、別の部署で別のシステムにより在庫管理していれば、在庫の最新データを反映しにくくなるため、誤って余分に仕入れてしまったり、足りなくなってしまったりといったミスや不便が起こることも考えられるでしょう。しかし、ERPでは一括管理できるので、そういった無駄が一切ないということがポイントです。無駄な状態を極力減らせるため、経営的な観点からも、確実なコスト削減につながるのです。

基幹システムを理解しさらなる生産性の向上を

基幹システムは、企業の基本的な業務を効率化するもので、なければスムーズな経営が成り立たないITシステムのことです。また、スピードの求められる現代社会において、企業の生き残りをかける方法のひとつとして、すべての基幹システムや業務システムを統合し、データの一元化をすることが効率的だということがわかりました。そのような、情報の可視化による的確な分析に強みのあるERPの導入が、経営の質に違いを生み出すでしょう。

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