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2021.3.29

ナレッジマネジメントとは?メリットや導入する手法について紹介します!

ナレッジマネジメントとは、一部で得た知識を全体で共有することによって企業の生産性を向上させる経営手法です。ナレッジマネジメントを導入し経営に活かす企業は増加傾向にあります。さまざまな働き方が求められるようになった現在において、ナレッジマネジメントの重要性が認められている証拠でしょう。この記事では、ナレッジマネジメントの基礎とそのメリットや手法について紹介します。

ナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは社員が個人的に得た知識や経験、ノウハウなどを社内全体で共有し、活用することによって生産性を向上させる経営方法のことです。ナレッジマネジメントは、経営学者としても著名な一橋大学名誉教授・野中郁次郎氏が提唱した「知識経営」を基礎とし、現在のような形になっています。

ナレッジマネジメントの考え方においては、いかに「暗黙知」を「形式知」に変えていくかという部分がとても重要です。暗黙知とは、個人が持つ知識やノウハウのことで、職人が長年の経験によって身に付けた技や勘のようなものもこれに当たります。それに対して、形式知とは知識やノウハウを言葉や文章で表現したものです。つまり、暗黙知を形式知に変えるとは、個人が経験によって身に付けた知識やノウハウを、全体で共有できる形にデータ化するということを意味します。

いくら個々が素晴らしい暗黙知を持っていても、社内で共有されていなければ、利用できるのはその本人だけです。その人が退職してしまえば存在しなかったのと同じになってしまいます。個人が長年にわたって蓄積してきた知識や経験、ノウハウを埋もれさせることなく、会社全体で共有し、経営に活かせるようにするというのがナレッジマネジメントの根底にある考え方です。

ナレッジマネジメントの基本モデルと4つのステップ

ナレッジマネジメントには基本のモデルがあり、4つのステップから構成されています。ナレッジマネジメントをきちんと理解するためには、これらについての知識が必要です。この段落では、ナレッジマネジメントの基本モデルと4つのステップについて解説します。

基本モデル

ナレッジマネジメントの基本モデルは、SECIモデルと呼ばれる枠組みです。経済学者で一橋大学名誉教授でもある野中郁次郎氏が他の研究者と共に提唱したフレームワークで、SECIと書いてセキと読みます。SECIモデルは、ナレッジマネジメント理論の根幹を成しているモデルです。最初にSECIモデルが提唱されて以降、ナレッジマネジメント理論は少しずつ幅を広げ、複雑化、精緻化してきました。そのいずれの根底にも存在するのがこのSECIモデルです。

SECIモデルは「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つのステップで構成されています。そして、これら4つの過程の中で知識を回すことにより、新たな知識を生み出す仕組みです。ナレッジマネジメントを語るうえでは、「暗黙知」と「形式知」という2つの重要ワードを無視することができません。個人が持っている暗黙知は、4つのステップを経ることによって、全体で共有できる形式知という新たな知識に変化するというのが基本的な流れです。

4つのステップ

SECIモデルを構成するのは、「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つのステップです。それぞれどのような過程なのでしょうか。SECIモデルを構成する4つのステップを1つずつ詳しく見ていきましょう。

共同化

共同化とは、暗黙知を暗黙知のまま他人に伝えるステップのことです。SECIモデルのSは、共同化を意味するSocializationの頭文字に由来しています。個人の暗黙知を別の個人と共有している段階なので、職人が親方と仕事をする中で経験や知識を蓄積していく状況を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。親方は弟子に実際の経験を知識として伝え、説明も口頭でおこなうのみです。マニュアル化されていない技術やノウハウなので、まだ形式知にはなっていません。弟子などが親方の知識や技を見様見真似で覚えていくのがこのステップです。

会社内であれば、先輩が後輩にセールストークのポイントや、資料作成のコツを伝授するようなものが共同化の範疇に含まれます。文書化されておらず、口伝えで知識やノウハウが共有されていくというのが共同化の特徴です。目に見える形でやり取りが行われても、たとえばビジネスチャットで知識を共有した場合には、社内で正式文書として残ることはまずありません。そのため、ビジネスチャットを利用して個人的に知識を伝授している状態は、共同化に当たるといえます。

表出化

表出化は、共同化された暗黙知が形式知へと変化する段階です。共同化された時点では文書化されていなかった暗黙知が、記録に残されるなどして誰もが見ることができる形式知に変化することを表出化といいます。SECIモデルのEは、表出化を意味するExternalizationの頭文字をとったものです。表出化とは、共同化された知識や経験、ノウハウなどを共有できる形にすることなので、言葉による記録でなくてもかまいません。図などで表現した場合でも、誰もが共有できる形になっていれば表出化に当たります。

表出化のポイントは、簡単に他の人と知識を共有できるという点です。ビジネスチャットで伝授されたノウハウを、メンバーの誰かがマニュアルとしてまとめていたとしましょう。マニュアル化は表出化の代表的な形です。それを使って勉強会が開かれれば、多くの人がその知識を知ることとなるでしょう。表出化することによって、知識は単に共有されるだけではなくなります。蓄積もされやすくなるため、グループのメンバーが変化しても、知識やノウハウが継承されていくことになるでしょう。ただし、文字や図などによって知識が見える形になったものがすべて次の段階に進めるわけではありません。表出化の段階で止まってしまうものもあります。

連結化

SECIモデルのCは、結合化を表すCombinationの頭文字から来ています。連結化とは、表出化した形式知と別の形式知を組み合わせることによって、新たな知識を作り出すステップのことです。個々に存在している形式知を、他の形式知と比較したり結びつけたりして、組織全体で使える形に変化させていきます。実践の場で活用できる形に知識をブラッシュアップしてく段階なので、論理的な分析が欠かせません。

連結化というと単純に複数の形式知を結びつけることだと捉えがちですが、形式知をただ合体させることととらえるのは間違っています。たとえば、自身のグループで作成したマニュアルを他のグループが作成したマニュアルと比較する場合を考えてみましょう。比較することによっていずれかのマニュアルに矛盾点が見つかり、修正のきっかけになるかもしれません。2つのマニュアルのよい部分をピックアップして、多くの部署で共同して使える包括的なマニュアルに作り直すこともできるでしょう。どちらも2つのマニュアルを組み合わせたことによって新たな視点を得て、別の形式知が発生しているので連結化といえます。

内面化

内面化とは、連結化によって新たに得た形式知を、各自が実践して自分の知識や経験としていくステップです。コツやノウハウとして自分のものとする段階なので内面化といいます。内面化を意味するInternalizationの頭文字がSECIモデルのIです。連結化によって新たに得た形式知は、表出化の過程を経て得られた知識が連結化によってまとめられたものでもあります。表出化の段階を経た知識の元になっているのは、共同化された暗黙知です。内面化に至った形式知は、元々個人が持っていた暗黙知だったということです。

実は、内面化によって個人の内面に蓄積される形になった形式知は、個人的な暗黙知に変わっていきます。内面化とは形式知が暗黙知に変わっていくステップでもあるのです。連結化で得られた形式知を実践するうちに、自分なりのやり方をつかみ、新たなノウハウやコツが生まれる可能性があります。こうして生まれた暗黙知は、また共同化、連結化、内面化というステップを繰り返し、他の人に伝わっていくことになるというわけです。

これら4つのステップがSECIモデルで、このステップを繰り返すことで、知識の質が高まってきます。ナレッジマネジメントにおいて、内面化のステップを有効化するためには、全体で知識を共有できる環境の整備が欠かせません。内面化を経た知識を次のサイクルに乗せるという点でも、社内のデータベースを検索・閲覧できるシステムの導入が必要です。

ナレッジマネジメントのメリット

会社の経営にナレッジマネジメントを取り入れると、どのような点が変化するのでしょうか。具体的なメリットがわかれば、導入の検討がしやすくなるでしょう。この段落では、ナレッジマネジメントを導入して得られるメリットについて解説します。

業務効率が向上する

ナレッジマネジメントを導入するメリットとして第1に挙げられるのが、業務効率の向上です。ほとんどの場合、企業に所属している社員のキャリアや年齢層はバラバラです。若手社員からベテラン社員までさまざまな人が所属しているのが普通だといってよいでしょう。経験値に差がある人の集まりになるため、同じ作業をする場合でも、人によって使える暗黙知の量や質が異なります。ベテラン社員ならこれまでに蓄積した知識やノウハウなどを利用してすぐに片付けられる仕事でも、若手社員が行うと時間がかかってなかなか終わらないということもあるでしょう。

効率を重視して、ベテラン社員だけが行う作業としてしまうと、そのベテラン社員が退職したときにはその仕事を引き継げる人がいなくなってしまいます。かといって、若手社員が見様見真似で技を習得するのを待つというのも、企業経営の面では非効率と言わざるを得ません。情報やデータを1カ所に集め、管理できるようにすることにより、業務効率を向上させることができます。ナレッジマネジメントを進め、知識やノウハウをマニュアルや研修によって共有できるようにすれば、組織の業務効率の向上につながるでしょう。

属人化を避けることができる

ナレッジマネジメントを進めることが属人的業務の回避につながるということも、ナレッジマネジメントを導入するメリットの1つといえます。特定の人だけが担当し、その人以外はまったくやり方がわからないという属人的業務は、いくら経験を積んでも個人に暗黙知が蓄積するだけです。組織内に暗黙知が存在することは、大きなリスクとなり得ます。たとえば、属人的業務を任されていた社員が突然辞めてしまったとしましょう。その際に失うのは人材だけではありません。これまで蓄積されてきた知識も同時に失うことになります。

ナレッジマネジメントの導入によって属人化を防げるのは、個々が持っている暗黙知を全体で共有できる形式知に変換する作業を行うためです。知識やノウハウなどの情報が共有化されると、特定の社員に任せられていた業務の内容も可視化されます。属人的業務によって培われた経験やノウハウも、組織にとっては長い年月をかけなければ獲得できない貴重な財産です。ナレッジマネジメントを進めることにより、貴重な財産が失われるリスクを減らせるのですから、導入には大きなメリットがあるといってよいでしょう。

ナレッジマネジメントの運用手法

ナレッジマネジメントの導入を検討しているけれど、導入後の運用がきちんとできるかどうかが不安だという人もいるでしょう。しかし、ポイントを押さえて運用すれば、それほど難しいことではありません。この段落では、ナレッジマネジメントの運用手法について解説します。

目的を決める

ナレッジマネジメントを導入するにあたり最初にしなければならないのは、導入の目的を明確にすることです。ナレッジマネジメントを導入することによってどのような課題を解決したいのか、どのような効果を期待しているのかをはっきりさせることによって、運用の方向性も見えてきます。また、導入の目的が具体的なら、社員からも同意も得られやすいでしょう。逆に、目的が曖昧なまま導入しても、ナレッジマネジメントは上手く立ち回りません。なぜなら、ナレッジマネジメントは経営手段の1つでしかないからです。

経営上の課題を解決するための手段なので、運用にはこのような課題を解決したいという具体的な目的が必要になります。単に情報を共有して経営力を高めたいというような曖昧な目的では、どのように運用していくべきか、方向性がつかめません。また、業界で注目されているナレッジマネジメントだから自社でも導入したいというような導入の仕方をすると、運用の段階でつまずきます。導入すること自体が目的になってしまわないように注意しましょう。

どのような情報を可視化・共有したいのか決める

導入の目的を決定したら、次にどのような情報を可視化し共有したいのかを決めます。欲張ってすべての情報を対象にしようとすると対応しきれません。データベース化して検索できるようにするのですから、集める情報も管理できる範囲に収める必要があります。共有を可能にする情報の範囲を絞ることも、データベース化するうえでは大事な作業です。ナレッジマネジメントではこれまでにない新しいシステムを導入するのですから、一気に移行しようとすると運用する側だけでなく、実際に利用する社員にも大きな負担がかかります。

手間や労力の割にあまり効果が出ないというのでは、現場からの協力も得られにくくなってしまうでしょう。効果的に運用するために、まずどの範囲の情報を可視化、共有すべきかといった優先順位を付けることも必要です。また、どこまでの範囲で情報を共有化するかによっても運用方法が違ってきます。FAQ形式、イントラなどのグループウェアなど可視化の方法はさまざまです。目的や用途に合うように対象とする情報の範囲や可視化の手段を考える必要があります。

業務に落とし込む仕組みを作る

可視化する範囲を決定したら、導入によって変化する内容を、実際の業務に落とし込むための仕組みを作ります。たとえば、ナレッジマネジメントを導入する以前は、社内で共有すべき情報を朝礼で発信していたとしましょう。でも、導入後にはもはや朝礼で情報を発信する必要はなくなるので、朝礼を廃止するというのも1つの方法です。いきなりすべてのシステムを変更してしまうと、急な変化についていけない社員が出てしまう可能性があります。社員の多くに不安や不満が募ると、情報の共有がうまくいかなくなってしまうでしょう。

ナレッジマネジメントの導入で失敗しやすいのは、トップダウンで形だけシステムを構築して、導入後は現場任せにしてしまうケースです。ナレッジマネジメントは運用をスタートさせてからも、ところどころ修正の必要な点が出てきます。せっかく導入するなら、効果の出るやり方をしなければなりません。どのように業務に落とし込めば受け入れられやすいかをよく考え、周りの声に耳を傾けながら徐々に新たなシステムに切り変えていくことが大切です。

プロセスなどの見直しを細かくする

ナレッジマネジメントは導入をしたらそれで終了というものではありません。運用がスタートしたら、データがきちんと回っているかなど、定期的に確認する必要があります。ログの集計や解析をしっかり行うことで、情報がきちんと集まり、活用されているかということがはっきりわかるはずです。その際問題点が見つかったら、原因を洗い出しその都度改善していきます。運用開始後の確認や修正作業は誰が行うのか事前に決めておくことも大切です。担当者をきちんと決めておくことで、適正な運用が維持されやすくなります。

ナレッジマネジメントでは、現場からの声を聞き、PDCAを回していくことがとても重要です。せっかくシステムを構築し導入しても、社員の意識が低いままでは情報が集まらず、利用もされません。現場からの声を聞くことによって、運用がうまくいっていない場合は原因に気付くことができ、どのような修正が必要なのかもわかるでしょう。ナレッジマネジメントがうまく機能するようになるにはある程度の時間が必要です。導入しただけで完成するものとは思わず、細かく見直しながら少しずつブラッシュアップして自社に合うものに変化させていくものだと捉えましょう。

ナレッジマネジメントを導入して効率化を図ろう

ナレッジマネジメントは組織開発の一手法です。導入すればそれだけで成果が出るというものではありませんが、自社に合う形で導入し、定期的な見直しをしながら運用すれば、大きな成果につながるはずです。ナレッジマネジメントの導入により、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。社内に存在する暗黙知を形式知に変化させ、情報を共有できるようにして業務を効率化させましょう。

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