2020.04.10

高齢者雇用安定法ってどんな法律なの?高齢者雇用をするときのポイントとは

高齢者雇用安定法ってどんな法律なの?高齢者雇用をするときのポイントとは

高齢化社会の日本において、高齢者雇用安定法を理解するのは企業にとって必要なことではないでしょうか。労働人口が減っているため、知識や経験が豊富な高齢者を雇うことができれば企業にとってプラスになるかもしれません。この記事では、高齢者雇用安定法がどういった法律なのか、また高齢者を雇用するときのポイントなどについて紹介します。

高齢者雇用安定法の定義

高齢者雇用安定法の正式名称は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律です。もともとあった高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部が改正され、2013年4月1日から施行されたのが改正高齢者雇用安定法です。この記事では、改正後の高齢者雇用安定法について紹介します。

急速な高齢化の進行が背景にあり、年金受給開始年齢が上がりつつあります。高齢者雇用安定法が改正された2013年4月1日は、厚生年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられたタイミングなのです。多くの企業が定年を60歳と定めているなかで、定年から年金受給開始年齢である65歳までの空白期間を埋める必要性が出てきました。このような社会的ニーズがあり、高齢者の意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的として高齢者雇用安定法が改正されたのです。

改正された主な内容は、60歳定年後にも希望者全員を65歳まで雇用するよう企業に義務付けるものです。勘違いされやすいのですが、定年を65歳まで引き上げることを義務付けるものではありません。定年の引き上げ、定年の廃止、定年を迎えた高齢者を改めて嘱託社員や契約社員といった雇用形態を変更して再雇用する継続雇用制度のうち、いずれかの制度を導入すれば良いというものになっています。実際に、定年の引き上げや定年の廃止を行っている企業は少なく、8割以上の企業が嘱託社員や契約社員など雇用形態を変更して再雇用する継続雇用制度を導入しています。

無期転換ルールとは

雇用期間が5年を超える有期雇用社員、つまり期間限定で雇用されている社員について本人からの希望があった場合には、無期限の雇用契約へ転換を強制される無期転換ルールというものがあります。無期転換ルールは、労働契約法という法律によって定められました。何かしら問題のある嘱託社員や契約社員との雇用契約であっても、5年経てば強制的に無期限の雇用契約に変更されるのです。

高齢者雇用安定法に従って60歳で定年になったあとも引き続き65歳以上まで雇用する継続雇用制度を導入した場合には、有期雇用契約に変更してから5年経つと無期転換ルールによって無期限の雇用契約に変更されてしまいます。これでは定年退職がない状態と変わりません。定年後の再雇用者を無期転換ルールから除外するためには、有期雇用特別措置法という法律に定められている第2種計画という制度を利用しましょう。企業が労務管理に関する計画つまり第2種計画を都道府県労働局に提出して認定を受けることで、定年後の有期雇用社員を無期転換ルールの適用外とすることができます。

有期契約社員の無期転換ルールに対してどのような方針をとるかは、企業によって異なります。5年以上契約社員として勤めている人全員を無期契約に転換する方針の場合には、就業規則の変更が必要です。自社になじんだ人を雇えるメリットがある反面、人件費がかさむデメリットがあります。無期契約に転換することを回避する方針の場合には、雇用契約書の変更が必要です。人件費が削減できるメリットがある反面、自社になじんだ人とも契約を切ることになるデメリットがあります。一部の人だけ無期転換する方針の場合は、5年を超える前に契約を切るか継続するかを必ず選択するようにしましょう。

高齢者雇用に対する助成金

積極的に高齢者雇用をする企業には、助成金が支払われます。助成金の金額は、2018年4月の時点で厚生労働省から発表されている数値となります。

1つ目は、特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースです。60歳以上65歳未満の高齢者をハローワークなどの紹介により雇い入れた場合に、中小企業に対して支給されるものとなっています。フルタイム雇用ならば60万円、パートタイム雇用ならば40万円です。

2つ目は、特定求職者雇用開発助成金の生涯現役コースです。65歳以上の高齢者をハローワークなどの紹介により雇い入れた場合に、中小企業に対して支給されるものとなっています。フルタイム雇用ならば70万円、パートタイム雇用ならば50万円です。3つ目は、65歳超雇用推進助成金です。65歳以上への定年の引き上げや定年の撤廃、66歳以上の年齢まで希望者全員を継続雇用する制度の導入などをした場合に、中小企業に対して最大160万円が支給されます。

高齢者雇用安定法の制度設計

自社の正社員を定年後、嘱託社員として再雇用する場合には、嘱託社員就業規則を作成しましょう。嘱託社員就業規則には、1年ごとの有期雇用となることや契約の更新は65歳までなど定める必要があります。正社員であったときと比べて不合理に低い基本給設定は、労働契約法違反となることに注意しなければなりません。60歳を超える人を外部から雇用する場合には、契約社員などの有期雇用契約とするケースが多いと考えられるため、契約社員就業規則を適用しましょう。

ただし、無期転換ルールのところで説明した第2種計画は、もともと自社の正社員だった人が定年後に有期契約になった場合のみ無期転換ルールの適用外とするものです。外部から60歳を超える人を有期契約雇用した場合には、5年経てば無期転換ルールが適用されることに注意しなければなりません。正社員の就業規則に、60歳を超えてから正社員になった人については別に定年を設けるなどの工夫をしましょう。そのうえで正社員登用したあと定年になって再雇用すれば、第2種計画として有期契約を続けられることになります。

高齢者雇用をするときに何から始めれば良いか

高齢者雇用をするときには、何から始めれば良いのでしょうか。まずは、パソコンが使えるようフォローすることです。業務にパソコンの使用が必要な場合、パソコンができない高齢者に対して使い方をフォローする必要があります。さらに、間違えやすい部分をマニュアル化することです。高齢者だけでなく覚えるのが苦手な人や新入社員にとっても、間違えやすい部分などを盛り込んだマニュアルがあることで作業効率の向上につながるでしょう。

労働時間や勤務日数を柔軟に変更することも重要です。年齢を重ねれば、どのような人でも体力的な衰えは出てきます。必要に応じてワークシェアリングや短時間勤務、テレワークなどを活用することも視野に入れましょう。さまざまな勤務形態を導入しておくと、産休や育休から復帰した社員の働き方としても活用できるのではないでしょうか。また、視力や聴力の低下を補うことも大切です。照明の照度を向上させて手元が見えやすい環境作りをしたり、配布する印刷物の文字を大きく太くしたりするなどの配慮が考えられます。

判断力や注意力の低下を補い、物忘れやミスなどのヒューマンエラーを簡単な操作で回避できる対策を講じておきましょう。ミスが少なくなるようにできるだけ手順を簡単にすることは、高齢者以外の社員にとっても有益です。

高齢者雇用安定法を導入するときに起こりやすいトラブル

高齢者雇用安定法を導入するときに起こりやすいトラブルのひとつに、若手社員の不満感が高まることが挙げられます。業務をうまくこなせない高齢社員がいる場合には、仕事のしわ寄せが若手社員へいってしまうケースもあり不満につながりやすくなります。若手社員が不満を募らせやすい環境下では、離職率も高くなりやすいでしょう。継続雇用後の仕事の確保もトラブルになりやすいです。業種にもよりますが、高齢の社員へ任せられる仕事が少ないケースがあります。雇用する側としてもやってもらう仕事が少ないと人件費がもったいないですし、雇用される側としてもやりがいのある仕事がないのはモチベーションの低下につながります。

また、世代交代が停滞することがあります。もともとは上司だった人が定年になり再雇用されることで部下になるというケースがあり、年上の部下というだけでも接し方が難しいのに元上司であればなおのことでしょう。本来権限を持つはずの現役世代が遠慮したり萎縮したりして、ベテラン高齢者の発言力が強くなる傾向にあります。

高齢者雇用安定法を導入する問題点

高齢者雇用安定法の問題点1つ目は、導入の手段です。企業が自発的に高齢者を雇用するための規制改革ではなく、雇用の義務付けという規制強化を手段として用いている点に問題があるでしょう。

2つ目は公平性です。正規社員と非正規社員との間の格差拡大や、大企業で働く人と中小企業で働く人との間の格差拡大によって、公平性の視点から問題が指摘されています。

3つ目は、高齢者の仕事能力と給与面に関してです。高齢者に限った話ではありませんが、仕事能力には大きな差があります。高齢者であっても、衰えを感じさせないほど正確に業務をこなす人もいるでしょう。しかし、仕事能力の高い低いに関わらず、定年退職後の給与は定年退職直前よりも2割から3割少なくなります。有能な人にとっては、低すぎる給与だといわざるを得ません。逆に、業務がうまくこなせない人に対しては、高すぎる給与となります。

4つ目はポストについてです。定年後は嘱託社員や契約社員などの非正規社員として再雇用するシステムをとっていると、有能な人を責任のあるポストにつけられないといったことが起こります。かといって、定年退職を廃止してしまうと、退職金が受け取れなかったりやめてほしい人にやめてもらえなかったりなどという別の問題が生じます。5つ目は、解決金の水準が低すぎることです。中小企業は少ない解決金の支払いで社員を解雇できるため、十分な補償金を受け取ることなく解雇されている人がいます。労働契約法には、企業は解雇権を濫用してはならないという考え方が示されていますが、裁判を起こさなければ救済されません。

高齢者をフォローできる職場作りを目指そう

高齢者を雇用するときには、身体的にフォローできるような職場作りを目指す必要があります。しかし、高齢者が働きやすい職場を作ることは、ハード面でもソフト面でも他の社員にとってメリットになることも多くあります。雇用するときに起こりやすいトラブルなどを知って踏まえたうえで、高齢者雇用を導入してみてはいかがでしょうか。

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