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2021.4.19

【まとめ】源泉徴収票の作成方法は?基礎知識や作成手順についてわかりやすく紹介!

雇用主は従業員に対して1年に1度、源泉徴収票を作成しなければなりません。源泉徴収票は従業員にとって大切な書類のため、作成する雇用主側が熟知していないと従業員とのトラブルに発展してしまう可能性もあります。

この記事では、源泉徴収票の役割と種類、作成時期から作成方法、また必要な計算方法までをわかりやすく解説します。

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源泉徴収票って何?

源泉徴収票とは雇用主が従業員に対して発行する書類で、1年間に支払った給与と納めた所得税の詳細が記載されています。所得税は1年間の所得に対してかかる税金ですが、給与所得者の場合は、給与を支払う雇用主が毎月、給与から天引きして納めるしくみになっています。このしくみを源泉徴収といい、源泉徴収票は所得税を納めたことを証明する書類になります。

雇用主が源泉徴収票を作成するタイミングは年末調整のとき、または、従業員が退職したときです。源泉徴収票は複写式になっていて、通常は従業員用、税務署用、従業員の市区町村用2枚の計4枚が必要です。なお、市区町村へ提出する書類は支払報告書となります。

源泉徴収票の種類

源泉徴収票には給与所得の源泉徴収票、退職所得の源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票の3つの種類があります。給与所得の源泉徴収票は、1年に1回、年末調整後に発行する書類です。1月1日から12月31日までの1年間に支払った給与や賞与の合計金額と、源泉徴収した所得税額を記載します。従業員が1年の途中で退職した場合は、1月1日から退職日までに支払った給与・賞与の合計と、源泉徴収した所得税を記載します。

退職所得の源泉徴収票は、退職する従業員に退職金を支払った場合に発行する書類です。退職金の額と源泉徴収した所得税額を記載します。つまり、退職者に対して退職金を支払った場合は、給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票の2つを発行しなければなりません。別々に発行する理由は、所得税の計算方法が異なるからです。公的年金等の源泉徴収票は、雇用主が従業員に発行するものではなく、日本年金機構が国民年金や厚生年金などの老齢年金を受け取っている人に発行する書類です。1年間に支払われた年金額と、源泉徴収された税額が記載されています。

その他の法定調書

源泉徴収票は法定調書と呼ばれる作成が義務付けられている書類のため、年末調整が終わったときや、退職金を支払ったときに作成しなければなりません。ただし、作成しなければならない法定調書は、他にも「不動産使用料等の支払調書」「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがあります。

源泉徴収票の作成義務者と作成時期

源泉徴収票の作成義務者は、給料や報酬を従業員に支払う側です。したがって、企業や官公庁などの支払者がその作成の義務を負っています。ここでは、企業が発行する給与所得の源泉徴収票と退職所得の源泉徴収票の作成時期と源泉徴収簿について説明していきましょう。

作成時期

給与所得の源泉徴収票は、元旦から大みそかまで1年間の支払合計額をもとに作成します。12月分の給料が確定しなければ、源泉徴収票を作成できないため、年末調整が終わった後から、翌年の1月31日までに作成する必要があります。ただし、1年の途中で退職する従業員に対する源泉徴収票は、退職日から1カ月以内に作成・発行しなければなりません。源泉徴収の対象になるのは、退職する年の1月1日から退職日までの支払合計額です。なお、退職金を支払った場合は、給与所得の源泉徴収票の他に、退職所得の源泉徴収票も作成しなければなりません。

源泉徴収簿について

源泉徴収票を作成するには、従業員の個人情報や扶養家族の情報など、プライベートな情報が多く必要になります。そのため、源泉徴収簿を作成しておくことをおすすめします。源泉徴収簿は、毎月の給料支払額や源泉徴収額・扶養親族など、従業員一人一人の情報を記録した帳簿です。提出義務や交付義務などはありませんが、源泉徴収票をスムーズに作成するのに役立ちます。

源泉徴収票の作成方法ってどんなものがあるの?

源泉徴収票を作成する方法は4つあります。

1. WEB上のエクセルテンプレート 

税理士や国税庁などのサイトで公開している、源泉徴収票作成専用のテンプレート(Excel)をダウンロードして使用することができます。無料で使えることが多く、必要事項を入力するだけで作成できるので便利です。楽に作成できる一方、エクセルの計算結果については合っている保証がないため、正しく計算されているかを自分で確認しなければなりません。また、古いテンプレートは最新の税制に対応していない可能性があるので、最新のテンプレートかどうかを確認する必要もあります。

2. 有料の給与計算ソフト

源泉徴収票の作成には、さまざまな計算が必要になるため、計算ミスをなくして効率を上げるためには、有料の給与計算ソフトを使用するのも有効な手段になります。ただし、導入費用がかかるので、事前準備を行い、作業時間とコストをよく検討した上で、導入するかどうかを判断しましょう。

3. e-tax 

国税庁がインターネットで提供しているe-taxと呼ばれる納税システムでも、源泉徴収票を作成できます。作成した源泉徴収票は国税局のサイトからダウンロードが可能です。利点としては直接Eメールで従業員に送ることができるほか、税務署に提出する際に税務署まで出向く必要がなく、最新の法令や税制に対応しているので安心できる点があげられます。

4. 税理士や専門業者 

外注費用はかかりますが、法令や税制の改正にも対応してもらえるほか、自身の業務としての手間を削減することができ、他の業務に集中できます。税理士に依頼すれば、源泉徴収票の作成代行のほかにも、税務に関して相談できるメリットもあります。 

源泉徴収票の作成手順

ここでは、実際に給与所得の源泉徴収票を作成する手順を説明します。記載する情報量は多いですが、年末調整の計算書類からの転記で済む作業がほとんどです。

1. 受給者と支払者情報を記載する

まずは、受給者(支払いを受ける者)と支払者(給与を支払う企業)の情報を記載します。受給者に必要な情報は住所、受給者番号、マイナンバー(個人番号)、役職名、氏名です。住所は翌年1月1日時点の住所で、中途退職者の場合は退職時の住所になります。受給者番号は、企業内の管理番号(社内番号など)で省略可能です。受給者に発行する源泉徴収票にはマイナンバーは記載しません。役職があれば、役職名を併記する必要があります。 

支払者に必要な情報は、個人番号または法人番号、所在地、氏名または名称です。企業の場合は法人番号、企業の所在地、法人名、個人事業主の場合はマイナンバー、氏名または屋号、事業所の住所を記入します。なお、受給者に発行する源泉徴収票にはマイナンバーまたは法人番号は記載しません。 

2. 支払金額を記載する

次に、受給者への1年間の支払金額を記載します。ここで記載する支払金額とは、控除や源泉徴収される前の純粋な報酬の総額(給与+賞与)のことです。源泉徴収票を作成する時点で未払いの報酬がある場合、左上に「内」と記載されている欄に、未払額を併記します。

3. 給与所得控除後の金額を計算する

そして、支払金額から給与所得控除額を差し引いた金額を給与所得控除後の金額欄に記載します。給与所得控除とは、給与所得者全員に適用される控除です。給与所得金額によって控除額が決められています。なお、この項目は年末調整をした受給者のみ記載が必要で、年末調整をしていない中途退職者の場合は空欄にします。

4. 所得控除の額の合計額を計算する

さらに、各種所得控除の合計額を計算して記載します。所得控除額の対象になる項目は数多くありますが、基礎控除で38万円、その他の控除要件を満たしていれば、その控除額を加算していきます。たとえば、配偶者控除の要件を満たしていれば13万~48万円、配偶者特別控除を受けられる場合は1万~38万円が控除可能です。また、扶養控除は段階に応じて38万円、48万円、58万円、63万円、寡婦控除では27万円、35万円、勤労学生控除は27万円です。

加えて、社会保険料控除は健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険の保険料の合計額で、生命保険料控除額は最大12万円までの生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料が控除できます。地震保険料控除は地震保険の保険料の金額で最大5万円までです。その他にも、小規模企業共済等掛金控除で個人型確定拠出年金、小規模企業共済等の掛け金が控除対象です。

5. 源泉徴収税額を計算する

最後に、源泉徴収税額を計算して記載します。課税対象になるのは、給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計額を差し引いた金額(課税所得金額)です。源泉徴収税額は、この課税所得金額に所得税率を掛けて、さらに東日本大地震の復興財源となる復興特別所得税(2.1%)を掛けた金額になります。
詳しい計算式は後述しますが、所得税率は課税所得金額によって決まり、所得税率と控除額は給与所得の金額が上がるにつれて増加していきます。支払金額、所得控除の額の合計額、源泉徴収税額は別途算出が必要ですが、控除対象扶養家族の数、社会保険料の金額、生命保険料の金額は確定していることが多いので、算出する機会はそう多くないでしょう。

6. 控除対象配偶者の有無等 / 配偶者(特別)控除の額

配偶者の有無によって控除の対象が変わるため、配偶者特別控除の適用条件や配偶者特別控除の額を記入します。配偶者が収入を持っている場合など、特別控除が適用される場合には、右側の欄にその金額を記入します。 

7. 控除対象扶養親族の数 

控除の対象となる扶養親族の人数を記入します。扶養親族の中に障害がある人がいる場合は、「障害者の数(本人を除く)」として、外国などに居住している人がいる場合は「非居住者である親族の数」として、それぞれ該当する人数を記入してください。 

8. 社会保険料等の金額 

給料から差し引かれる厚生年金保険料や健康保険料などの総額を記入する欄です。 

9. 生命保険料の控除額 / 地震保険料の控除額 / 住宅借入金等特別控除の額 

社会保険料とは別に、個人で加入している生命保険や地震保険の金額を記入する欄です。 住宅ローン控除に関しては、初年度については源泉徴収票に記載されず、確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で住宅ローン控除を申告することができます。 各控除額については、国税庁のウェブサイトで確認することができます。 

源泉徴収票に書くべき所得税の計算方法

源泉徴収票に書くべき所得税(源泉徴収税額)は、課税所得金額に対して、所得税率と復興特別所得税を掛けて求めます。計算式は以下の通りです。

課税所得金額=給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計額
源泉徴収税額=課税所得金額×所得税率×復興特別所得税(2.1%)

給与所得控除後の金額は、年収(支払金額)から給与所得控除を引いて計算します。ただし、給与所得控除額は年収ごとに変動するため、税務署のHPを確認しながら計算しましょう。所得控除の要件も各年度によって異なることが多いので、最新年度のものを確認してください。所得控除の中で雑損控除、医療費控除、寄付金控除の3つは会社で年末調整をせずに、受給者自身が計算して確定申告する必要があります。課税所得金額に掛ける所得税率は、給与によって異なるので、国税庁の税率表を確認しましょう。最後に復興特別所得税を掛ける必要があります。復興特別所得税は上述した通り2.1%になるので、忘れずに計算してください。

源泉徴収票を作成するときの注意点

数値を間違えない

源泉徴収票は社員に配布するだけでなく、税務署や市区町村にも提出するため、内容に誤りが内容念入りにチェックしましょう。 特に、支払金額や源泉徴収額は年末調整の基礎になる数字なので、作成後に確認作業を行なったり、必要に応じてダブルチェック体制を整えましょう。 

通勤手当は支払金額に含めない 

給与や賞与など、従業員に支払った金額が源泉徴収の対象になります。ただし、通勤手当には非課税限度枠が設定されており、限度枠内なら源泉徴収する必要はありません。例えば、交通機関を利用した通勤の場合、通勤手当が1ヶ月に15万円までは非課税の対象となります。この場合は、通勤手当を支払金額に含めないように注意しましょう。 

参考: 国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」

源泉徴収票を正しく理解して従業員とのトラブルを避けよう

源泉徴収票は従業員にとって大切なだけでなく、雇用主側にとっても重要な書類です。計算が間違っていたり、書類の取り扱いに不備があったりすると、企業の会計や税務処理の信頼性が低下してしまうからです。源泉徴収票を発行する企業側は、その扱いに対して責任を持ちながら、作成に取り掛からなければなりません。源泉徴収票を正しく理解してトラブルを避けましょう。

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