働きがいを応援するメディア

2020.4.27

マインドセットの意味や重要性とは?人材育成・ビジネスでの活かし方を解説

「マインドセット」は心理学の専門用語で、最近ではビジネスの世界でも使われるようになってきました。多くの企業が若い人材の育成でマインドセットを活用しています。また、キャリアを重ねた従業員がスキルアップするためにもマインドセットは重要です。この記事では、マインドセットの意味や種類、具体的な生かし方について解説をしていきます。

目次

マインドセットとは

「マインドセット」は物事の考え方や行動パターンの癖のようなものを意味します。先天的な性質や生まれ育った環境、過去の経験など、さまざまな要素によって形成されていきます。個人だけでなく、組織にもマインドセットは形成されます。この章では、心理学におけるマインドセットの考え方と、個人と組織それぞれでのマインドセットの形成要素について解説します。

心理学におけるマインドセット

人間の行動の根幹をなしている思考様式、心理状態を表す言葉が「マインドセット」です。マインドセットは、さまざまな要素によって構成されています。たとえば、生まれながらの性格や親から植え付けられた価値観などは重要なポイントです。ただし、マインドセットは時代とともに変化する概念です。そのときどきで出会った人、経験した事象などによって左右されます。むしろ、後天的な要因から受ける影響力のほうが強い場合もあるでしょう。マインドセットは個人によって違いがあるので、自分の心理状態を把握しながら改善していくことで人間的な成長につながります。

組織にも使われるマインドセット

人間だけでなく「企業・組織のマインドセット」という表現もなされます。人間と同じく、企業にも方針を決める際の価値観や基準はあるはずです。「経営理念」「ビジョン」「経営戦略」という言葉に置き換えられるケースも少なくありません。
また、企業が歩んできた歴史がマインドセットとして定着していることもありえます。つまり、マインドセットは企業ごとにまったく違う様相を示すのです。そして、マインドセットは周囲の人間へと感染していきます。ある組織に属している人間は、自然とその場所のマインドセットを共有するようになります。このように企業風土や組織文化として組織に浸透していきます。企業が健全な成長を遂げるためには、マインドセットの在り方を見直すことが肝心です。

個人におけるマインドセットの形成要素

マインドセットを形成している要素はひとつに絞り込めません。また、どのような部分にマインドセットが大きく占められているかは人それぞれです。人材育成でマインドセットを利用するには、それらの要素をしっかり理解しておく必要があります。

経験

個人の人生経験はマインドセットに反映されます。成功体験があれば当然、同じジャンルの行動をとるときにためらいがなくなるでしょう。一方、失敗体験のあるジャンルには躊躇を覚えるのが普通です。ただし、かつて失敗したジャンルで新たな成功を覚えれば、マインドセットを変化させられます。

先入観

人からの伝聞、メディアからのイメージなどによる先入観も構成要素のひとつです。時には「あの地方出身者は怖い」などの強い思い込みになっていることも珍しくありません。こうしたマインドセットは修正するのが難しくなることもありえます。

価値観・信念

親や教師など影響力の強い人間から植え付けられた価値観はマインドセットに大きく作用します。

暗黙のマナー

社会には明言されていなくても、雰囲気で察知するマナーがあります。いわゆる「暗黙の了解」もマインドセットの一部です。暗黙の了解は、組織や地域によって変わるので絶対的とは言えません。転職や引っ越しなどをするとマインドセットが別物になる可能性も出てくるのです。
そのほか、ささいな事象まで含めるとマインドセットの形成要素はきりがありません。重要なのは、対象者がどのようなマインドセットを抱いているのかを理解することです。従業員が組織に合ったマインドセットを抱いてくれるよう、人事担当者や経営者は相手を知ろうとする姿勢が大事です。

組織におけるマインドセットの形成要素

組織のマインドセットは3つの要素に分解できます。自社のマインドセットを深く理解するためにもそれぞれの特徴を把握しておきましょう。

製品・事業特性

企業の取り扱っている製品やサービスによってマインドセットが形成されているパターンです。たとえば、健康食品を販売している企業ならユーザーに「健全で信用できる」との印象を持たれなくてはなりません。当然、宣伝や接客態度もその方向で調整されます。テクノロジーを扱っている企業なら、知的で最先端のイメージを訴求するのが得策でしょう。このように、何をアピールしたいかによって企業全体の思考や価値観は固まっていくのです。

経営戦略・ビジョン・理念

商品よりも経営戦略やビジョンが優先されている企業もあります。「何を売りたいか」ではなく「誰に売りたいか」「なぜ売りたいか」などの要素が大切にされているパターンです。また、経営理念もマインドセットに大きく関係しています。企業が設立された時点で「グローバルな事業を目指す」などの理念が掲げられていれば、従業員にも同じ意識が求められます。そのうえで、マインドセットに矛盾しない製品やサービスが考案されていくでしょう。

組織文化・経験

企業の中心にあったマインドセットは経験次第で変わることもあります。仮に「映像業界で最先端の技術を売りたい」と考えていた企業があったとします。しかし、実際には技術ではなく料金が大衆に受け入れられたとすれば、方向転換を考える余地が出てきます。その結果として「価格競争で他社に勝つ」という戦略に切り替わったとしたら、マインドセットが経験に左右されたということです。そのほか、過去に大打撃を受けて失敗した経験を繰り返さないよう、大きく舵を切り直すこともあります。

マインドセットの種類

マインドセットには2種類の志向タイプがあり、いずれもアメリカの心理学者であるキャロル・スーザン・ドウェックにより提唱されました。 個人や組織がいずれのタイプに属しているのかわかれば今後の方針を立てやすくなります。また、上司の立場からすると、部下の志向タイプを知ることで、人材育成や成長促進につなげることが可能です。

成長型マインドセット(成長志向型)

降りかかってくる問題を前向きに捉えようとする志向タイプが「成長型マインドセット」です。成長志向型にあるとき、個人や組織はモチベーションが高まっています。状況が困難だとしても「ここを乗り越えれば成功が待っている」といったポジティブな思考が働きます。不満を感じるよりも先に解決法を探るので、逆境で求められるマインドセットとも言えます。実際に、現状を打破して大きな成長を遂げられる企業の思考様式は成長志向型です。 経営側は従業員が成長志向となることを目指さなくてはなりません。個人のマインドセットはお互いに影響を与えるので、成長志向の従業員が多いほど組織の団結力は高まっていきます。特に、新しい挑戦を掲げている時期などには、ポジティブな価値観を企業全体で共有することが必須です。

停滞型マインドセット(停滞志向型)

問題に対して後ろ向きの考えばかり浮かんでしまう志向タイプが「停滞型マインドセット」です。固定マインドセットとも言います。基本的には現状維持に逃げるよう考えるので、成長を促進させるようなアイデアは生まれてきません。少しでも実現に支障のある夢、目標はあきらめる方向で考える思考パターンです。停滞志向の従業員が組織にいると、周囲に悪影響を与えることも珍しくありません。ほかの従業員が挑戦しようとしているのに批判や不安ばかり話すので、周囲も「そうかもしれない」と考え始めます。やがて、大半の従業員が思考を停滞させてしまえば、企業が前進できなくなってしまいます。一般的に、生産力を上昇させている企業では停滞志向型の従業員が少ないと言えるでしょう。

マインドセットがもたらす影響力

なぜマインドセットがビジネスシーンで言及されるようになったのかというと、成果に関係があるからです。マインドセットが充実している企業は、効率的に利益を伸ばすことが可能です。逆に、マインドセットが落ち込んでいる企業は、思うように成長できなくなる傾向が生まれます。

成長志向型の企業は低迷期を克服しやすい

どのような企業にも低迷期が訪れることはありえます。競合他社の商品にシェアを奪われたり、取引先との大きな契約が打ち切られたりしたら看過できないダメージを受けてしまうでしょう。そのような時期をどのように克服するかで企業力は高まると言えます。成長志向型の企業は、低迷期にも思考を止めません。また、過去の成功にしがみつくこともしないので、まったく新しいアイデアを生み出せる可能性が大きくなります。
そもそも低迷期そのものをネガティブに考えていないケースも少なくありません。「企業にはよくあること」「逆に進化のチャンス」などと前向きに考えます。そのため、従業員も仕事へのモチベーションを失いにくいのです。その結果、理想的な打開策を思いついて行動に移せます。組織全体で信念を共有しているので迷いが少ないのも強みです。

PDCAサイクルがきれいに循環する

成長志向型の企業では、PDCAサイクルも循環し続けます。PDCAとは「Plan(計画)」「 Do(実行)」「 Check(評価)」「 Act(改良)」の頭文字です。ビジネスでは、PDCAをサイクルとして繰り返すことが重要とされています。ただし、それぞれの精度が高くないと意味はないため、長期的にサイクルを循環させていくには相当な活力が必要です。成長志向型のマインドセットを保てばPDCAサイクルを苦痛に感じず続けられるでしょう。

マインドセットが必要な理由

なぜマインドセットが重要なのか、経営側も従業員も正しく理解することが大事です。同じ目的を共有できれば組織の連帯感は高まり、人材育成も円滑になります。

マインドセットで物事への向き合い方が変わる

仕事上のさまざまな物事へ取り組む姿勢として、マインドセットはかなり大切です。なぜなら、マインドセットによって与えられた業務の捉え方が変わってくるからです。通常、仕事が発生したときに人は「面白そう」「面倒だ」といった感情を働かせます。このように心が動くのは、制御しにくい部分でもあります。それでも「面倒な仕事だけど頑張ろう」と実践前に思考を挟むことでやる気を生み出せるのです。もしも前向きなマインドセットが育まれていれば、苦手分野や手間のかかる仕事も積極的に取り組もうと考えられます。また、感情に左右されないで対局を見つめられるようになり、物事への見解も大きくなるでしょう。

成功に自分から近づける

ビジネスパーソンがマインドセットを変えて前向きな姿勢を保てるようになると、チャンスも増えていきます。今までは「嫌いだ」と避けて通ってきた業務や人間にも真剣に向き合い始めるからです。そのぶんだけ、スキルアップの機会は多くなります。また、そのように頑張っている姿を上司や取引先も無視はしません。つまり、マインドセット次第で成功を引き寄せることができるのです。
しかも、彼らは努力をつらいことだとは認識していません。今の自分を高めてくれる当然の行為だと考えています。そのため、他人から見ると厳しそうなスケジュールも楽しんでこなすことが可能です。結果的に、後ろ向きの思考が習慣化した人にはできない経験を重ねて成功を収められるのです。

マインドセットの違いによる事例

良い面と悪い面の両方がマインドセットにはあります。成功へのステップやチャレンジ精神など、それぞれの違いを事例から説明していきます。

アフリカでの事例

成長志向型のビジネスパーソンがアフリカに靴の市場調査へと向かった際、多くの人々が裸足で生活をしていることを知りました。そこで彼は「みんなが裸足ということは売れる商品が多い。市場をいくらでも開拓できる」と考えたのです。そして、靴のメリットを伝えるためのマーケティング活動を始めました。アフリカの人々は靴の便利さを知ったとたん、企業のお得意様に変わったのです。
これが停滞志向型の人だと、市場調査の時点でネガティブな考え方をしてしまいます。「誰も靴を履いていない。アフリカでは靴を売れないのだ」と決めつけ、プロジェクトをあきらめてしまうでしょう。同じ出来事でもマインドセットが違うだけで、成功と失敗がはっきり分かれてしまいます。

ネットビジネスでの事例

停滞志向型の人は、ネットビジネスを「楽で手間がかからない仕事」だと考えます。家でプライベートを謳歌しながら簡単に稼げる事業だと認識しているのです。そのため、ライバルが現れるなどの困難に直面すると、立ち向かう気力を振り絞れません。「これほど苦しい仕事とは思わなかった」とあきらめ、別の楽に思える仕事を探し始めます。
しかし、成功志向型の人は、ネットビジネスを「楽しくて将来性のある仕事」と捉えています。心から自分の仕事を愛しているので、マーケティングなどの努力を惜しみません。困難が起きても解決するための方法を必死で考えます。根気強く努力するのでスキルアップを遂げられます。そして、長期的な成功を手に入れられるでしょう。

マインドセットの重要性を唱える著名人

すでに多くの著名人がマインドセットの重要性を理論的に訴えかけています。マインドセットは解釈を間違うとただの精神論に聞こえてしまいます。著名人の言葉に耳を傾けて、正しい形で従業員に伝達しましょう。

キャロル・スーザン・ドウェック教授

スタンフォード大学の教授であり、マインドセット提唱者の一人です。ドウェック教授は人間の思考が固定的なものではなく、可変的であるという説を立てました。そして、訓練によって思考法を大幅に変えることも可能だと考えたのです。思考法を変えるにあたっては、本人の意識が非常に重要だとの結論に至りました。たとえば、子供が勉強をしているときに「大人にやらされている」と感じていては効率性が上がりません。しかし、自分から「勉強をしている」と感じられれば学習が進みます。こうした理論は、成長志向型のもたらすメリットとしてまとめられていきました。
原則として、思考法を変える訓練は決して簡単ではありません。ただ、成長志向型に切り替えることができれば物事の捉え方が劇的に変わることもあるとドウェック教授は述べています。

エレーヌ・フォックス教授

オックスフォード大学感情神経科学センターの教授です。彼女は脳内物質であるセロトニンの研究者でした。セロトニンはポジティブシンキングを引き起こす作用があることで知られています。そして、彼女は「セロトニン運搬遺伝子」の存在を発見し、遺伝子配列で人間の思考法は決まると提唱するようになりました。ただ、基本的な性格は遺伝子で定められていても、本人の努力があれば思考法は変えられます。そして、楽観的な考え方のできる脳を育てるのは、大人になってからでも遅くないとの結論に達しました。

成功者のマインドセットの特徴

以下、成功者のマインドセットで共通している点を述べていきます。

失敗に対して深刻にならない

チャレンジには失敗がつきものです。失敗自体は必ずしも悪ではありません。むしろ、その向き合い方で今後が決まります。停滞志向型の人は失敗を重く受け止めて精神的に疲弊してしまいます。苦しい思いをするくらいなら、もう挑戦をしたくないとさえ考えることも珍しくありません。しかし、成功者は失敗を成功へのプロセスだと前向きに捉えています。失敗を基にして改善点を洗い出し、成功へとつなげるのです。そのため、失敗に対して深刻にならないのが特徴です。

ありのままの自分を認めている

成功者は自分の能力を正確に把握しています。それを認めたうえで傲慢にも卑屈にもならず、淡々と学習を続けます。なぜなら、自己の過大評価も過小評価も、ビジネスシーンではあまりプラスにならないからです。自分の実力を過大評価すると、不相応なプロジェクトに手を出して大打撃を受けてしまいかねません。しかし、過小評価し過ぎていては挑戦する心を失っていきます。ありのままの自分を知っているからこそ、できる範囲のプロジェクトを見極められます。そして、より大きなプロジェクトに進むための課題を素直に受け止められるのです。

目標設定をして必要な努力ができる

失敗を繰り返す人はなんとなく仕事を続けているので、明確な目標がありません。そのため、何をどのように学習すればいいのかも見えていないので努力もしない傾向が顕著です。しかし、成功者は目標を立ててから仕事を始めます。目標設定をすることで、辿り着く場所が分かり、つらい時期も含めて仕事を楽しめます。そして、ひとつの物事を達成しても次の目標を立てられるのです。さらに目標達成することにより成功体験が増え、マインドセットが変化していきます。

ビジネスにおける組織のマインドセット

大きく分けると、ビジネスにおける組織のマインドセットは「グロース」と「フィックスト」の2種類です。

このうち、組織が目指すべきなのはグロースマインドセットです。グロースマインドセットは要するに強い意志のことです。イメージとしては、しなやかで柔軟性に富んでいる思考様式で「しなやかマインドセット」とも言います。グロースマインドセットが身についている組織は努力を惜しみません。仮に失敗してもそこから教訓を見出そうとします。それを次の挑戦に生かそうとするので、挫折から素早く立ち直れるのも特徴です。

グロースマインドセットに対して、組織の望ましくない状態はフィックストマインドセットです。「硬直マインドセット」とも言います。こうなってしまった組織では、自分の評価だけを気にしている従業員が続出します。自己愛から実力を証明しようと先走る人間が出てくるので、連携が取れていません。逆に、自己肯定感の低い従業員も大勢います。彼らは失敗を極度におそれる傾向にあるので、新しい分野に挑戦しようとしません。その結果、企業は同じ仕事を繰り返すだけになり成長を止めてしまいます。それでもめぼしい打開策は生まれにくく、競争力を弱めていくのです。

企業がマインドセット教育を行う必要性

時代の移り変わりとともに、マインドセット研修を実施する企業が増えてきました。この段落では、マインドセット研修の意義を紹介していきます。

従業員の自信につながる

健全なマインドセットが育まれれば、従業員は自信を持てるようになります。もちろん、過剰な自信はミスの元です。しかし、正しい研修を行えば従業員は実力に見合った適切な自信を抱いてくれます。能力を疑わずに仕事と向き合うので積極性が増します。また、新しいアイデアもおそれずに発表する勇気へとつながるのです。

キャリア志向が強まる

成功志向型のマインドセットでは、大きな責任を担うことを受け入れやすくなります。むしろ、経営陣から評価される状況を素直に喜び、モチベーションを高めてくれます。その結果、男性よりも離職率の高い女性もキャリアに対して前向きになれます。女性の管理職が少ないという問題の解決策にもなりえるでしょう。実際、マインドセット研修によって女性のリーダー職が増えたという大手企業もあります。

ポジティブシンキングが広がる

マインドセットが整うことで、社内の雰囲気にも好影響が生まれます。なぜなら、マインドセットとは周囲の人間同士で影響し合う考え方だからです。誰かが画期的な意見を出したとして、ほかの従業員も好意的に受け止めてくれるので議論が活性化します。上司や先輩に気をつかって発言できないような事態も少なくなります。また、成功志向型のマインドセットでは失敗を過剰に責め立てたりしません。誰もが優しく接してくれて余計なプレッシャーが減るので、伸び伸びと仕事ができます。ポジティブシンキングが社内に広まり、またマインドセットが改善されていくという理想的な循環が続くのです。

マインドセットの研修方法

多くの企業が研修方法を確立させ、マインドセットの大切さを従業員に伝えています。研修はしかるべきタイミングと手順で進めれば、より効果を発揮します。

環境が変わるタイミングで実施する

昇進や新卒入社時など、本人が環境を大きく変えたタイミングで研修を行うのが得策です。新入社員は、まだ社会人としての意識を理解できていません。基礎の段階で理想的な思考様式を覚えてもらえば、今後の成長率が高まりやすくなります。また、現場では優秀な人間だったものの、管理職に就いてからは成長が止まってしまうのもマインドセットに原因があります。人に使われる立場と使う立場では気持ちの持ち方がまったく違うからです。それにもかかわらず、同じ意識のままでいると役職が変わっても業務内容の差に苦労をします。
何より、多くの従業員が「自分が新しい環境に馴染めるか」という不安を抱えています。こうした不安は能力の枷になりかねません。実務を始める前に必要なマインドセットを整えることで、潜在能力を邪魔する要因を取り払えます。

メタ認知と修正が研修の肝

マインドセット研修では、受講者に自分のメタ認知をしてもらいます。メタ認知とは、自分自身を客観的に分析する作業のことです。状況や立場に応じて、受講者がどのような思考を働かせるのかを確認させましょう。いわゆる「思考の癖」です。そして、癖を認知できた後はワークショップによる修正を図ります。仮想の上司や取引先などを設定して、ビジネスのやりとりを練習させるなどの方法があります。もちろん、短期間のワークショップだけで癖を完全に克服できるわけではありません。ただ、自分の癖を自覚して行動できるようになれば、その後の生活で少しずつ改善されていきます。

マインドセットを成長志向型に変える方法

組織が生産力を高めていくには、成長志向型のマインドセットを目指す必要があります。そのためには、具体的な手順を従業員に浸透させなくてはなりません。

PDCAサイクルで思考の癖を変える

従業員には日頃からPDCAサイクルを意識させましょう。まず「なりたい自分」をできるだけ細かく文章化させます。「否定的な言葉を口にしない」「自分のためになる勉強をする」など、行動しやすい内容を書かせるのがコツです。そして、実践に移させます。その度にフィードバックを行い、理想までに何が足りないのかをはっきりさせましょう。大切なのは、フィードバックの内容を修正させてサイクルを一から繰り返すことです。これを完璧な自分に慣れるまで続けます。
ここで大切なのが「思考の癖」を克服することです。「いつでも選択肢を悩んでしまう」「自分から意見を言えない」などの癖が見えてきたら、修正点が分かりやすくなります。はじめは難しく思えても、継続しているうちに志向性は変化していきます。

周辺の環境や人間を変えていく

マインドセットは周辺環境や同僚にも左右される概念です。本人が努力しているのに周りの悪影響でなかなか成長できないことも珍しくありません。そこで、自分から周囲を変えていくための努力をしてみましょう。相手から何を言われようと気にせず、自分が良いと思っているマインドセットを貫きます。それで仕事の結果を残せば、周りは何も言えなくなっていくはずです。むしろ、自分も心理状態を変えたいと考え始める同僚も出てくるでしょう。こうやって成功志向型の人間が増えていけば、ますますマインドセットへの取り組みがしやすくなります。そして、全員でスキルアップをしているという恵まれた職場が出来上がるのです。

マインドセットを定着させる方法

これまでマインドセットを意識してこなかった人が突然大きな目標を掲げても長続きしません。小さな目標をコツコツと達成していき、最終的に大きな目標へとたどり着くよう計画しましょう。そのためには、いくつかのテクニックがあります。

ささやかな成功体験を重ねる

最初は「忘れ物をしない」「目を見て話す」といった小さな成功体験を念頭に置きます。他人からすれば些細な変化でも、当の本人は十分な充実感を得られるはずです。そうやってやる気を出せれば、理想とする状態に近づいている感覚を持てます。マインドセットを整えるプロセスが楽しくなり、苦痛に思わず努力を続けられます。

自己肯定感を高める

小さな目標をこなしていくうち、人は自己肯定感を得られるでしょう。自分で自分を認められるようになれれば、能動的に仕事へと取り組めます。チャレンジをおそれず、先輩や上司を過剰に怖がらずに働けるのです。こうした態度を周囲は歓迎してくれるので、ますます自己肯定感が強まるというサイクルに突入します。やがて、成功志向型のマインドセットが定着してくるでしょう。

自分の変化を客観視する

マインドセットの改善に取り組んでいるあいだに、日記やレポートを書いてみるのもひとつの方法です。自分の変化を言語化することで客観的に状況を把握できます。マインドセットは少しずつ整っていくものなので、分かりやすい実感を持つことが難しいときもあります。しかし、日記で過去の記録が残されていると「確かに自分は変われているのだ」と自信を持てるはずです。そして、今後もマインドセットのもたらす影響を疑わずに努力を続けられます。

場面別のマインドセットの活用例

目標設定

成長志向型のマインドセットで目標設定をすることで、キャリア希望やモチベーション向上にもつながります。自らの経験がマインドセット形成に影響すると前述しましたが、現状の問題を認識した上で、達成可能な目標設定をすることは、成長型マインドセットの形成にもつながります。

人材育成

停滞型マインドセットを持つ人は、物事をネガティブに捉える傾向にあります。仕事の面では「上司からの指示がなく仕事がうまくいかない」「努力しても何か変わるのだろうか」というような考え方につながりやすく、人材育成の取り組みでも効果が得にくい傾向にあります。人材育成の場面で、成長型マインドセットを獲得することができれば人材が持つ能力を強化することができます。組織においては、経験によりマインドセットを成長型に転換していけるような取り組みも取り入れていくといいでしょう。社員が「その経験で何を得たのか」向き合うための上司と部下の1on1実施も効果的です。

人材育成の目標設定方法については下記記事で詳しく解説しています。

人材採用

採用面接の場面で、マインドセットを確認する質問を取り入れることも有効です。成長マインドセットを持つ人材や、会社のマインドセットと合う人材であれば、入社後に活躍できる可能性が高く、早期離職の防止にもつながります。成長型マインドセットを持ち、困難な状況を打破していける人材は獲得したい人材像の一つといえます。組織の既存社員にとっても刺激になり、組織が活性化するきっかけになる可能性もあります。

マインドセットをビジネスに活かす

停滞志向型のマインドセットから成功志向型に切り替えれば自分に自信を持てます。そして、周囲にも成功志向型の人間が増えれば組織力は高まります。ビジネスシーンにおいてマインドセットは無視できない要素となってきました。企業の成長を目指すには、研修などの方法で従業員の意識を改革しましょう。そして、努力の成果をフィードバックするなど、長期的な努力が必要です。

Category

ビジネス用語全般

Keyword

Keywordキーワード