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2021.10.12

NEETよりも深刻?社会問題となっているSNEPについて解説

SNEP(スネップ)というものをご存じですか。よく似た言葉にNEET(ニート)があり、こちらは社会問題としてよく知られています。しかし、SNEPは同様に社会問題になっているにもかかわらず、まだそれほど耳なじみがない人も多いのではないでしょうか。SNEPとは、孤立無業者とも呼ばれるものです。ここでは、SNEPについての概要を解説し、その社会への影響がどのようなものであるかを紹介します。

SNEPとは?

SNEPとは、「Solitary Nonemployed Persons」の略称です。和訳すると「Solitary」は「孤独や孤立している」、「Nonemployed Persons」は「無職の人たち」という意味となります。つまり、SNEPとは「孤立無業者」のことです。これはよく知られているNEETと意味合いが似ています。しかし、NEETは「働く意欲がない人たち」を意味しており、区別されているのです。

SNEPは、2012年に東京大学社会科学研究所教授の玄田有史教授が提唱しました。具体的には、「20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚無業のうち、ふだんずっと一人か一緒にいる人が家族以外いない人たち」を指すものです。総務省統計局の「社会生活基本調査」の特別集計によれば、SNEPは2000年代に急増し2011年には162万人に達しています。このうち、肉親と同居している場合には「家族型孤立無業者」、ずっと1人でいる場合には「一人型孤立無業者」と区別されることもあるようです。

SNEPは、旅行やスポーツなどの社交的な活動を一切行っていない人が多いばかりでなく、インターネットの利用も少ないことがわかっています。メールやSNSなどのツールを使って、人と交流をすることが少ない傾向があるのです。逆に、よく時間を割いているのはテレビ視聴や趣味、休養・睡眠などで、就職活動や就職のための勉強には消極的な傾向が見られます。NEETと同様に、SNEPが増加することが深刻な社会問題になってきました。将来、生活保護受給者がさらに増えることで、財政の負担が重くなることはもちろん、人材・労働力の不足など、社会が不安定になるさまざまな要因となっていくでしょう。

NEETとの違い

SNEPの概念を解説しましたが、「まだNEETとの違いがよくわからない」という人も多いのではないでしょうか。NEETとは、イギリス発祥の言葉です。「Not in Education, Employment or Training」の頭文字を取ったもので、「学生ではなく、働いておらず、職業訓練もしていない」を意味しています。つまり、「働く意欲がない人たち」を表しており、一般的に16~19歳までの若者を指すものです。

ただし、日本では厚生労働省によって「ニートとは15~34歳の非労働力(仕事をしていない、また失業者として求職活動をしていない者)のうち、主に通学でも主に家事でもない独身者」と独自に定義されています。対象を若者だけに限らず、不就業の人から失業者を除く概念としており、さらに家事労働をしていない人も含んだものとなっています。

日本の定義でもNEETは34歳までです。一方、SNEPは59歳までとされているため、NEETは若年層、NEETが年齢を重ねるとSNEPと化していくと見ることもできます。もちろん、年齢による違いもありますが、根本的な違いとして人をNEETだと見なすのは「就職している」「就職したくて就職活動をしているかどうか」という基準によるものです。一方、人をSNEPと見なすのは未就業者のうち「肉親・家族以外の人や社会との関係があるか」「孤独かどうか」を基準としています。

つまり、大雑把な言い方をすれば「働きたくないのがNEET」「他者との関わりがなく孤立しているのがSNEP」ということです。

SNEPに陥る原因

SNEPとNEETの分類基準は異なりますが、陥る原因には通じるものがあります。なぜなら、就業しないことで社会での活動に参加し損ね、そのまま孤立につながりやすいからです。就業できない原因は、かつては何よりも低学歴でした。そのため、昔はSNEPの原因は中卒ということが多かったのですが、現代は高卒、大卒や大学中退であっても就職に失敗することが増え、若者が就業できない原因は多岐にわたっています。具体的なパターンは、以下の通りです。

・就職に失敗して「自分は社会に必要とされていない」と考えて自分を追い詰め、そのままSNEPになってしまう
・大学中退して人との交流がなくなったり、友人が就職したりすることでその友人と疎遠になったりする
・不登校や病気で学校に行けないまま孤立する
・就業中に病気になって退職し、そのままSNEPになる

このように、若年層だけでなく中年期でもさまざまな原因によりSNEPに陥ってしまう危険があります。一度SNEPに陥って孤立してしまうと、人づきあいがより難しくなることから再就職のハードルが上がってしまうのです。SNEPの性差をいうと、男女比では一貫して男性の割合が高くなっています。これは、ひきこもりも同様でどちらも男性のほうが陥りやすい傾向です。特に、60代未満で無職になった独身男性はどうしても友人や知人が少なくなりがちで、社会から離れて孤立しやすくなります。

なぜなら、男性は女性よりも就業、特に正社員として就業することで自立することを迫られる傾向があるからです。そのプレッシャーのために、社会への参加がより一層困難になっているといえるでしょう。

SNEPの実態

2000年代初頭、金融不況やアジア通貨危機などの不況の影響を受けて完全失業率が上がり、60歳未満未婚無業者が増加しました。しかし、不況が収まっても60歳未満未婚無業者は増加を続け、2006~2011年にはその中でも孤立無業者(SNEP)が急激に増加したのです。その結果、2011年には過去最大の162万人に達し、過去10年では45万人も増加したことになります。これは、20~59歳の総人口の2.5%、そして60歳未満の未婚無業者では約60%を占める数です。

かつては、学歴が中卒のためにSNEPに陥る人が多い傾向でしたが、現代は学歴に関わらず就職に失敗する人が増えてきました。新卒での就職の失敗だけでなく、年齢を重ねてからも、病気などで退職し、その後も再就職に失敗してSNEPに陥る人も多くなっています。また、リーマン・ショックや東日本大震災など、誰もが避けられない未曾有の事態が起きたことも要因の一つです。SNEPは、ひきこもりとは違って半数の人が外出をしますし、ニートと比較してもネットやゲームへの依存が原因で働きたくないのではありません。

SNEPは、他者や社会との関わりがなく孤立していますが、インターネット上でも同じことがいえるのです。インターネット上でも他者と交流をしたり、情報を収集したり、オンラインでゲームをしたりすることを苦手としています。このことは、ひきこもりやニートとSNEPとを区別する大きな特徴です。ひきこもりやニートよりも、SNEPが危機的状況にあるといわれるのはこのためです。

SNEPとこれからの社会

NEETは、SNEPに比べて若年層なことが特徴の一つです。就職活動や就業の経験がない人も多く、就職さえ成功すれば将来自立できる可能性が高まります。しかし、SNEPは「就職活動の失敗」「就業経験があってもリストラに遭う」「レールを外れて退職にいたった経験がある」など、何かしらの失敗経験がある場合が多い傾向です。未婚で配偶者が存在せず、肉親もいないために孤立しがちで、自分のためだけに働くとなると勤労意欲も湧きにくい人も少なくありません。

再就職が非常に困難となるため、放置したまま年齢を重ねてしまうと孤独死やホームレス予備軍になってしまうのです。SNEPが増加することで、社会には生活保護が増えることによる財政の負担増や、働き手の不足などの悪影響が心配されます。SNEPの根本的な原因の一つは、他者や社会との関わりに対する深刻な苦手意識です。この状況を打破するためには、苦手意識を克服できる就労支援などの取り組みが必要になります。

SNEPを抜け出す第一歩は、他者と交流を持つようにし、少しずつ悩みなども話せるようになることです。例えば、厚生労働省では他人との交流に慣れるための支援を行う「地域若者サポートステーション」などで支援を行っています。SNEPの問題を解消するには、事前にSNEPが生まれないような社会にし、生まれてしまっても復帰しやすい仕組みを用意することなどを検討することが必要です。

誰にでもなってしまう可能性はある

毎日仕事に追われて生活している人なら、まさか自分がSNEPになるとは思ってもいないでしょう。しかし、人はいつどこで思いがけない出来事に遭遇するかわかりません。孤立して初めて自分がいかに人と本当に交流できていなかったかが身にしみる可能性もあります。そのため、SNEP問題は決して他人事だと思わず、いざというときに孤立しないような対策を日ごろから行っておきましょう。

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