2020.04.24

信頼関係を築く!ラポール形成の意味とその実践方法

信頼関係を築く!ラポール形成の意味とその実践方法

ビジネスでは多くの人に接するのが一般的であり、良好な人間関係を築いていくことは重要な課題となります。しかし、他人と信頼し合える間柄になるのは簡単ではなく、悩んでいる人も少なくありません。その場合は、ラポールの形成を意識することで状況を打開できる可能性があります。この記事ではラポールについて紹介し、信頼関係を築くための実践方法も解説します。

ラポールとは

ラポールの概念を理解するためには、言葉の意味を正確に把握しておかなければなりません。そのため、一般的な意味と本来の意味の両方を知っておきましょう。フランス語では「橋をかける」という意味を持ち、日本においては「親密な関係」や「信頼関係」という意味で用いられるのが一般的です。つまり、複数の人間がいるときに、その関係性を示す際に使われる言葉の一つとして定着しています。それに対して、本来のラポールは「精神感応」を意味しており、関係性に着目したものではありません。

精神感応とは、相手の精神を感じとることです。すなわち、言葉や行動に表さなくても互いの気持ちが通じ合う現象や状態を指しています。友人に送るメールを書いている途中で、その友人からメールが届いたという経験はないでしょうか。これは精神感応の一例であり、コミュニケーションをとりたいという気持ちが2人の間で共有された状態です。精神感応は、「なんとなく相性が良い気がする」というように、漠然とした好印象につながります。このように、本来の意味で使われるラポールは、感覚的なニュアンスが強いものとなっています。

ラポール形成の重要性

良好な人間関係を築きたいなら、ラポールを形成していくことが重要です。ラポールの形成というのは、心が通じ合った状態になることであり、その過程でしっかりと信頼も育まれます。互いに警戒心しか持っていなければ、ビジネスはうまく進んでいきません。一方が相手のために素晴らしいアイデアを出しても、もう一方が「何か裏があるのではないか」と勘繰っていると、進展は遅くなってしまいます。そのような事態を回避して、円滑なコミュニケーションを実現するには、相手と十分な信頼関係を築くことが重要です。

ラポールの形成を成功させると、上記のような警戒心も解除できます。相手が自分に不利益をもたらす存在ではないと確信することにより、コミュニケーションは心理的に安全な状態で行われるようになるのです。その結果、互いの言葉を素直に聞き入れやすくなるため、双方にとって大きなメリットが生じます。自分の言葉は説得力が増しますし、相手の言葉から良い影響を受けやすくなるでしょう。このようにして、指示や提案に対する無駄なハードルがなくなることで、滞っていたビジネスが一気に進展することも珍しくありません。

ラポールが使われ始めた背景

ラポールという言葉のルーツはフランス語の「rapporter」です。日本語にすると「取り戻すこと」という意味ですが、この言葉には「一方がメッセージを伝えて、もう一方がそれを受け取って返す」というニュアンスも含まれています。ビジネスの世界でよく用いられるようになったので、ビジネス用語だと思っている人もいますが、もともとは精神医療の現場で使われていた言葉です。心理的な治療を成功させるには、セラピストと患者の健全なコミュニケーションが欠かせません。ラポールは、それを可能とする良好な関係性を指す言葉として用いられていたのです。

いくら精神医療の施術を施そうとしても、患者が心を許してくれなければ、高い効果を得るのは困難です。患者が来院しなくなったり、アドバイスを聞かなかったりするなど、治療が一向に進まないという事態も起こりえます。したがって、患者から信頼される存在になり、真剣に治療に向き合ってもらえる状況をつくる必要があります。そのため、早期にラポールを形成することは、セラピストにとって重要な任務でした。

ラポール形成に必要な3つの要素

やみくもに他人と親睦を深めようとしても、ラポールの形成にはつながりません。うまく形成していくには、次の3つの要素が必要になることを覚えてきましょう。

1.尊重

相手を尊重して、その価値観に共感しようとするスタンスが重要です。そう言われると、自分の価値観をねじ曲げてでも、相手に合わさなければならないと考える人もいるでしょう。しかし、そのようにネガティブに身構える必要はなく、相手が大事に思っている物事を把握して、それに敬意を払うことが基本となります。

2.類似性

相手の警戒心を解くうえで類似性は欠かせません。自分と姿形が異なるものを敵と見なして用心する動物は多いですが、人にもそのような防衛本能が備わっています。自分が理解できない相手に対して、人は多かれ少なかれ緊張して警戒心を抱くものです。しかし、自分と何らかの共通点を見つけると心境に大きな変化が現れます。緊張が解けて警戒心が緩むのと同時に、親近感を持ち始める傾向が見受けられます。

3.ペーシング

コミュニケーションに関するスキルのなかに、ペーシングと呼ばれるものがあります。相手の仕草に自分の動作を合わせたり、相手の無意識な声色に自分の声を合わせたりするテクニックです。うまく活用することで、相手の心理面に大きな影響を与えられるでしょう。こちらを実践することも、ラポールを形成するうえで不可欠なステップとなっています。

ペーシングの4つの基本テクニック

ラポールを形成にペーシングが必要だと分かっても、具体的な方法がよく分からないという人も多いでしょう。実際には、いくつかのテクニックで構成されているので、それぞれを適したシーンで使用していくことが大切です。そのようなテクニックのうち、基本的なものを4つ紹介します。

1.ミラーリング

ミラーリングは、ペーシングの中心ともいえるテクニックです。相手が何か行動をしたら、その動きをコピーするつもりで自分も同じように動きます。自分のことを鏡に写っている相手だと考えて振る舞うと良いでしょう。好意を抱いている相手といると、無意識のうちに行動を似せようとする心理が働くといわれています。ミラーリングはこれを応用したもので、行動を似せることにより好意を持ってもらうのが狙いです。相手が目立った行動をしていないときも、気を緩めてはいけません。呼吸のタイミングや姿勢なども合わせていく必要があるからです。ただし、これらを不自然に行っていると、相手に気付かれてしまう恐れがあるので注意しましょう。

コミュニケーションの一環として、違和感なく実施できるようになることがポイントです。たとえば、相手がドリンクを飲もうとしてペットボトルを手に取ったら、自分もさりげなくペットボトルを手に取ります。そして、相手がふたを開けて飲んだら自分も同じように飲みましょう。また、座っているだけの場合も足の様子をまねするという手段があります。足を組んだのが見えたら、どちら側の足を上にしたのか確認し、自分もそれに従うことがミラーリングとなるのです。このように、仕草や姿勢を合わせることにより、心理面において互いの距離感が縮まることを期待できます。ラポールが形成されるにつれ、自然なコミュニケーションを行えるようになるでしょう。

2.マッチング

ペーシングのなかには聴覚に働きかける方法もあり、マッチングと呼ばれています。マッチングには視覚情報が不要であるため、コールセンターや電話営業において非常に重視されていますが、実際に対面して話している場合にも利用が可能です。いずれの場合も相手の雰囲気に合わることが基本であり、相手の声に合うように自分の声のトーンやボリュームを調整します。また、相手の話し方に合わせて、自分の話すテンポやリズムを調整することも大切なポイントです。会話の主導権を取って自分のペースで強引に進めようとする癖がある人は、コミュニケーションのスタンスを自分本位から相手本位に切り替える必要があります。

たとえば、相手が静かに話す人であれば、こちらも落ち着いたトーンの声で話すようにしましょう。反対に、熱心に語りかけてくる人には、情熱的なトーンの声で対応するのが適切です。このように相手に合わせ続けることで、次第に親近感を持ってもらえるようになります。一方、会話のテンポが遅い人に早口で接するなど、相手と対照的な声の出し方や話し方をすると、不快感や嫌悪感を持たせることになりかねません。その場合は、話している内容自体に問題がなくても、受け入れがたいと思わせてしまい、信頼関係を築くのは難しくなるので気を付けましょう。自分が言葉を発するときは、相手の耳や心に心地よく届くように配慮することが大事です。

3.キャリブレーション

相手の情報をしっかり把握しておいたほうが、良好な人間関係につながる対応を行いやすいです。キャリブレーションとは相手の詳しい情報を入手する方法であり、ミラーリングやマッチングなどを実践する準備としても役に立ちます。具体的には、相手の仕草や表情、姿勢など、いろいろな面を細かく観察して、多角的に情報を得るというものです。それらの情報をヒントにすることで、普通にコミュニケーションをとっているだけでは分からない心理状態を推察できるようになります。ビジネスの世界では本音と建前を使い分けるのが常識となっているので、建前に惑わされずに相手の本音に寄り添えることはとても重要です。

こちらの提案に対して「素敵なアイデアですね」と言われても、それは単なる建前かもしれません。本当はそう思っておらず、別の提案をしてもらいたいと考えている場合もあるでしょう。相手をよく観察することで、提案に満足していないことを見抜ければ、こちらから次のアイデアを出すことも可能です。そうすれば、相手は心情を察してもらえたことをうれしく思い、こちらを頼りになる存在だと認識してくれるので、ラポールの形成に大きく近づきます。ただし、キャリブレーションは誰にでも適している方法ではありません。ある程度の信頼関係があったほうが心理状態を読み解きやすく、初対面の相手には効果を発揮しにくい点に注意が必要です。

4.バックトラッキング

相手に向けて話をしたときに、自分の言ったことを理解してもらえたことが分かると安心感を得られます。バックトラッキングはその性質を利用したペーシングの方法です。返事をする際に相手の発した言葉を使いながら、コミュニケーションを進めていきます。日本語では「オウム返し」と呼ばれており、できるだけ相手の言葉をアレンジせずに用いることがポイントです。たとえば、「私は健康管理に気を付けています」と言われたら、「そうなんですか」などのシンプルな相づちだけで済ませるのは良くありません。この場合は、「Aさんは健康管理に気を付けているんですね」と同じ内容を繰り返す形で返事をするのが望ましいです。

「Aさんは体調の管理に注意しているんですね」もほとんど同じ内容ですが、置き換えた言葉が多い分だけ、相手はわずかに受け止めにくくなる場合があります。言葉に手を加えないことにより、こちらが相手の立場に立って考えていることを表現できますし、相手は自分の気持ちに寄り添ってもらえていることを実感しやすいです。また、話の内容を理解して共感している様子をアピールできます。その効果により、相手は引き続き快く話をしてくれるので、コミュニケーションが活性化していくことも期待できるのです。このテクニックは、カウンセラーなどの聞き上手といわれる人たちによく用いられています。

タイプ別のペーシングテクニック

ペーシングの実施の仕方には複数のタイプがあり、選び方によって効果に差が生じる場合があります。相手のタイプに合わせて選択することで、ラポールは形成されやすくなるでしょう。以下に、それらの合わせ方に関するポイントなどを挙げていきます。

情報処理方法(五感タイプ)に合わせる

人間は5種類の感覚器を通して外部から情報を得ています。情報収集において主要なのは「視覚」と「聴覚」であり、残りの「触覚」「味覚」「嗅覚」は「身体感覚」として一括りにされることも多いです。そのため、5種類の感覚器は、視覚と聴覚、身体感覚の3つの英単語の頭文字をとって、VAKという総称で呼ばれています。日常生活では、これらをすべて駆使することで、得られる情報は豊かになっていくでしょう。しかし、ビジネスシーンでは、味覚や嗅覚から情報を得られることは少ないため、視覚と聴覚、触覚の3つを重視して考えるのが一般的となっています。

人によって、脳が優位に処理する情報に差があることも覚えておきましょう。見た情報を優位に処理する人もいれば、聞いた情報を優位に処理する人もいるのです。したがって、相手がどのような処理のタイプなのかを見極めて、それに合った方法でペーシングを行っていくことが重要になります。よく観察するのが基本ですが、見極めるのが難しい場合は、会話の中にヒントを探してみると良いでしょう。たとえば、雑然とした文章を目にしたときに、「文章がうるさい」というような表現をする人なら、聴覚を優位に処理するタイプである可能性が高いです。

思考フィルターに合わせる

相手の思考フィルターがどのようなものか把握して、それに合わせていくという手段もあります。人は情報を入手すると頭の中で解釈や分析を行いますが、それとは別に無意識下で実施される処理も少なくありません。そのような自覚のないまま行われる情報処理のパターンを決めるのは、思考フィルターと呼ばれるものです。たとえば、方向性も思考フィルターの一つであり、目的志向型と問題回避型に大きく分けられます。目的志向型の場合は、目的を成し遂げることが重要だと捉えており、それを実現する行動をとるために情報を処理することが多いです。問題回避型の場合は、悪い事態を招く要因から逃れるために情報の処理を行う傾向が見受けられます。

相手の思考フィルターに合わせることで、良好な関係を構築するための効果的なアプローチが可能です。たとえば、製造機器の導入を提案する場合、相手が目的志向型なら「生産性が高まります」のように伝えれば良く、問題回避型の相手には「納期の遅れを防げます」などと説明すれば良いでしょう。そうすれば、それぞれの思考フィルターの処理によって、提案が自分にとって有益なものだと無意識下で判断されるのです。このように、相手の無意識に対してポジティブな影響を与え続けることで、自分にとって好ましい人物であるという印象も持ってもらえるようになります。

価値観に合わせる

人によって大切だと考えていることは異なります。その判断基準や考え方が価値観であり、それを相手に合わせたペーシングを実践することは、信頼関係を深めていくうえで非常に有効です。自分にとって価値の高いものがぞんざいに扱われていると、多くの人は悲しさや腹立たしさを感じてしまいます。一方、貴重なものとして扱われていると、喜ばしい気持ちになるのが一般的です。したがって、心証を損なうリスクを避けたり、「気が合う」という親近感を与えたりしたいなら、まずは相手の価値観がどのようなものか知ることが重要です。

とはいえ、価値観を漠然と尋ねるだけでは相手は答えにくいですし、そのような質問は不自然に思われてしまうかもしれません。自然な形で把握したい場合は、それが分かりそうなエピソードに注意深く耳を傾けるのが得策です。努力をして報われた成功体験など、大きな感情の変化が生じた話を聞くことで、大切に思っていることを引き出せる可能性があります。価値を見いだすポイントを把握したら、それを尊重したコミュニケーションを心がけましょう。相手がこちらに共感を覚えることが増えると、心を開いてくれるようになり、本音で話せる仲に近づいていけます。

ラポール形成を行う上で肝心なこと

ラポールを形成するにあたり、具体的な方法を知っておくことは非常に重要です。しかし、テクニックばかりを意識するのではなく、まずは自分が相手に対して好意を持つことも同じぐらい大切になります。苦手意識を持っていると、隠しているつもりで言動に出てしまい、それを察知した相手に敬遠されかねません。そうなると、どのような方法を使っても、良好な関係を築きにくくなるので注意しましょう。また、最初はうまくいかない場合もありますが、諦めずに実践を積み重ねていくことも大切なポイントといえます。多くの人に対して試みていくうちに、思考フィルターの調べ方など、いろいろなコツが分かってくるからです。

いずれせよ、相手をしっかりと観察して、それに合ったペーシングを行うことが基本となります。ただし、適切な方法を選んだ後も、言い回しなどの細かい部分に気を使わなければなりません。たとえば、否定的な発言を控えることもその一つです。「しかし」「だけど」といった逆接の言い回しは、会話の内容だけでなく、相手を否定しているような印象を与える恐れがあります。相手の述べた内容が自分の考えとは異なっていても、いったん肯定して理解を示してから、自分の意見も添えるというスタンスをとりましょう。

営業におけるラポール形成の例

多くのトップセールスマンに共通する特徴として、クライアントと信頼関係を構築するスキルの高さが挙げられます。言い換えると、ラポールの形成をスムーズに行うテクニックを習得すれば、営業のパフォーマンスが著しく上がることを期待できるのです。実践の例としては、関係を深めたい相手の接待として高級レストランに行くケースが挙げられます。本来はテーブルマナーを守って上品に食べるのが常識ですが、相手がテーブルマナーを気にせずに食べていれば、あえて同じ食べ方をするのも一つの手です。この方法はミラーリングであり、食事の満足感も手伝って親近感を持ってもらいやすくなるでしょう。

また、売上を重視する営業では、相手に商品やサービスを提供することばかり考えがちです。しかし、そのような一方向のやりとりが良い結果に結びつくことは多くありません。まずは、相手のことを知りたいと考えて、しっかりと話を聞くことが重要です。そこから、ラポールの形成につなげていく必要があります。たとえば、「壊れたから苦労しています」と言われたら、すぐに修理や買い替えの提案するのは良くありません。バックトラッキングを意識して、「壊れたから苦労しているんですね」と繰り返し、相手の気持ちに寄り添うことが大切です。

上司・部下におけるラポール形成例

上司と部下のコミュニケーションも、ラポールを形成することで円滑なものになります。なぜなら、単なる上下関係を信頼関係にまで高められると、お互いを尊重し合いながら話せるようになるからです。職場でそのような関係が広がっていけば、自分本位に仕事をする人が減り、チーム全体のパフォーマンスが上がっていくでしょう。また、上司側の実践の例としては、キャリブレーションをしっかり行うことが挙げられます。部下に業務を命じたときに「頑張ります」と返事をされても、別の業務をしたいと考えているかもしれません。よく観察してその気持ちを見抜き、本当にしたい業務を任せれば、部下は自分が理解されていると感じ、上司を信頼しやすくなります。

また、部下側の実践の例としては、上司と五感の情報を共有してコミュニケーションを効率化するケースがあります。たとえば、部下が口頭で説明しているときに「論点が見えてこない」と指摘を受けたら、その上司は視覚を優位に処理するタイプであると判断が可能です。次回からはグラフやイラストを用意して、視覚情報を共有するように心がけると良いでしょう。内容を理解してもらいやすくなり、コミュニケーションがはかどりますし、その配慮が信頼関係の構築にもつながっていきます。

ラポールを押さえて実践してみよう

ビジネスの現場では、社内外のどちらにおいても信頼関係をうまく築けることが理想です。ラポールの形成を意識したコミュニケーションが、それを可能にするポジティブな作用をもたらしてくれます。いろいろな方法があるため、相手に合わせて選べるように、それぞれのポイントを押さえることが大事です。慣れることで使いやすくなるので積極的に実践していきましょう。

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