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2020.3.13

リファラル採用は難しい?トラブルを避けて成功させるコツ

新規採用を考える際、企業が求めるような人材が集まるとは限りません。採用手法といってもさまざまなものがあります。良い人材を得るために、リファラル採用に興味を持っている人事担当者は多いのではないでしょうか。ここでは、リファラル採用とは何なのか、メリットやデメリット、実行する際のポイントについて解説します。

リファラル採用とは・意味

リファラルには紹介という意味があります。つまり、リファラル採用とは人材を紹介してもらう採用方法のことです。この場合の紹介者とは主に自社の従業員を指します。従業員の友人や先輩、後輩、以前働いていた企業の元同僚など、人脈を活用した採用方法がリファラル採用です。リファラル採用以外には「社員紹介採用」「リファラルリクルーティング」という呼び方もされています。
リファラル採用に興味を持つ企業は日本で増えていますが、以前から取り入れられているのはアメリカです。リクルートワークス研究所の資料によれば、米国の採用コンサルティング会社CareerXroadsの調査で全体の28%がリファラル採用と回答しています。続いて多いのは求人求職サイトで、全体の20.1%です。この数字を見れば、リファラル採用がアメリカで主流の採用方法であることがわかるでしょう。日本で多い大学からの採用は、アメリカの場合はわずか6.6%と低いのも特徴的です。

リファラル採用が注目されている背景

日本でリファラル採用が注目を浴びるようになった背景の一つに、労働人口の減少があげられます。みずほ総合研究所によると、2065年には日本の労働人口は4割ほど減少するとしています。これは、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」と総務省の「労働力調査年報」をもとにみずほ総合研究所が算出したものです。労働人口の減少には少子高齢化が大きく影響しています。高齢者が増える一方で、労働が見込める年齢層が減少しつつあるのです。非労働人口の中には健康上の問題や育児などの事情で働けない人も含まれています。しかし、高齢化の影響のほうがはるかに大きく、労働者の確保は厳しくなりつつあるといえるでしょう。
さらに、人材確保を困難にしているのは採用市場の激化です。優秀な人材が採用できるかどうかは企業の明暗を分けることになります。しかし、他者との競争の中、少ない労働人口から優秀な人材を得るのはなかなか難しいのが現状です。採用イベントや求人求職サイトだけでは十分な人材確保は見込めません。このような背景から、通常の求人と併用して自社の従業員からの紹介を検討する企業は増えつつあるのです。

リファラル採用を行う目的

リファラル採用を行う目的は、社員の人脈を活かして企業と相性の良い人材を発掘することです。労働力不足や離職率アップなどの要因により採用競争率が高まっている現在、優秀な人材を即戦力として採用できるかどうかは、企業の将来を左右する重大な課題となっています。

人材紹介会社や求人サイトなど従来のチャネリファラル採用と縁故採用の違いに頼らず、企業と社員、社員同士といったつながりを活かしたリファラル採用によって、採用市場の影響を受けにくくなります。結果的に、質の高い人材の確保やマッチング精度の向上が期待できます。

リファラル採用と縁故採用の違い

リファラル採用と混同されやすいものに縁故採用があります。縁故採用も従業員など企業関係者の紹介による採用方法です。どちらも紹介という共通点があり、一見同じように感じるかもしれません。しかし、実際には大きな違いがあるのでよく理解しておきましょう。縁故採用の対象は家族や親族といった血縁関係が主です。中には大切な取引先の家族といった場合もあります。いずれにしても、企業に何らかの関係を持つことを条件とした採用方法のことです。
縁故採用はあくまで関わりがあることが条件であるため、スキルや能力は採用基準に含まれません。これに対してリファラル採用の場合は、十分な能力やスキルを持っているかどうかで判断されます。その人を良く知る従業員の紹介であれば、自社に必要な人材であるかどうか判断しやすいでしょう。リファラル採用には、自社が求める人材を身近な従業員から紹介してもらうという明確な目的があるのです。

リファラル採用のメリット

リファラル採用を利用するメリットとして、採用コストの削減やマッチング精度の向上に加えて、現時点ではまだ転職を考えていない潜在層にもアプローチしやすい点が挙げられます。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

採用コスト(費用)の削減につながる

リファラル採用により、採用活動にかかるコストの削減が期待できます。一般的な採用活動では、転職サイトや人材紹介会社へ依頼する広告掲載費用や仲介手数料などの費用がかかります。また、準備に時間がかかり、日常業務以外の作業が増えて負担となる可能性もあります。

一方、リファラル採用では、紹介者に対するインセンティブなど比較的少ないコストで済みます。また、採用活動が簡略化でき、採用担当者の負担軽減につながります。

潜在層へのアプローチが可能

リファラル採用では、転職に向けて能動的に動き出している人以外にもアプローチできます。一般的な採用活動では、転職活動をすでにスタートしている転職顕在層の人が中心ですが、リファラル採用では、「転職は予定していないものの、条件が良ければ検討したい」という、いわゆる潜在層にもアプローチしやすい傾向があります。

そのため、将来的に優秀な人材を確保できる可能性が高まります。企業にとっては、高いスキルや経験を備えた人材を集めて、母集団形成につながるというメリットも見込めます。

マッチング精度が向上する

リファラル採用では、人材のマッチング精度や定着率の向上も期待できます。従来の採用活動では、求人広告を出しても応募が来ない、応募が多数あってもマッチする人材がいない、などの可能性もあります。

一方、実際に企業で働いている社員の紹介を受けられるリファラル採用では、入社前に具体的な業務内容や社内文化などをリアルに伝えられるため、入社後のギャップが生じにくく、ミスマッチを防ぐことが可能です。

また、リファラル採用で入社した人にとっては、顔見知りが同じ職場にいるという安心感があり、仕事に関するストレスを緩和しやすく、早期離職の予防にもつながります。

リファラル採用のデメリット

リファラル採用はメリットばかりではなく、デメリットもあります。同じような価値観の人が集まりやすい点や紹介ゆえの不採用時のケアが必要な点、求める人材が見つかるまで時間がかかる点などが挙げられます。ここでは、リファラル採用のデメリットについて詳しく解説します。

人材が同質化しやすい

リファラル採用では、マッチング精度が高い反面、社員と価値観や志向が近い人が集まり、人材が同質化してしまうリスクがあります。「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、社員個人のつながりを利用したリファラル採用では、紹介者と似通った人材が集まる可能性があります。

企業における円滑な事業成長や生産性向上には、人材の適度な多様化が欠かせません。社員の特性が偏りすぎないように、紹介を募る際の要件提示などに配慮が必要です。

不採用時のケアが必要

社員に紹介してもらった候補者を不採用にする場合、社員と候補者の人間関係に影響を及ぼす可能性があることも考慮しなければなりません。リファラル採用は、入社が確定している訳ではなく、紹介とはいっても一般的な採用活動同様に選考を受ける必要があります。

社員の後ろ盾があって応募してくれたにもかかわらず不採用となれば、最悪の場合、両者の関係に亀裂を入れてしまうこともありえるでしょう。

メールや電話での一方的な連絡だけでなく、カジュアルな面談の場を設け、応募者に対して不採用となった経緯を丁寧に伝える必要があります。また、協力してくれた社員にも詳細を説明し、フォローを入れることも大切です。

成果が出るまでに時間がかかる

リファラル採用は、短期的な効果が期待しにくい点もデメリットといえます。リファラル採用を通じて優秀な人材と出会っても、即入社は難しい場合があります。

転職潜在層は、現職で活動しているため、転職を決意するまでに時間を要します。人によっては1年以上かかるケースも少なないため、社内での継続的な広報活動や社員に紹介してもらう仕組みを含めて中長期的な運用を考慮し、計画的に採用活動を進めることが大切です。

リファラル採用の方法・流れ

1.求める人物像を明確にする

リファラル採用を行う際、もっとも重要なポイントは欲しい人物像を明確にしておくことです。単に「誰か良い人を紹介して欲しい」という漠然としたものでは、従業員も困惑します。それでは、どのような知人に声をかけたらいいか判断できません。まずどのような人材が必要なのかというところから考えていきましょう。必要な資格は何か、どのような実績を持っていると好ましいかをあげていくのです。例えば「営業実績が豊富で即戦力になる人物」と絞るだけでも具体性を出すことができます。
人物像を明確にすることが難しい場合は、はじめに社内の問題点を追求するという方法もあります。顧客からの要望やクレームなどを参考にするのもいいでしょう。業務を拡張する場合には、新しい事業に必要な内容をあげていくのです。そうすることで、自社にどのような人材が適しているのか具体的になってきます。人物像が見えてきたらそれらの条件をまとめて従業員に周知しましょう。

2.報酬制度を設計する

報酬は必須ではありませんが、紹介してくれた社員へ何らかの形でインセンティブが出る制度があれば、採用活動の促進につながります。企業によって異なるものの、インセンティブ制度は1回の紹介あたり数万円〜20万円の報酬が目安です。

企業の中には、採用決定時ではなく応募者を獲得したタイミングで、食事補助制度などのインセンティブを設定しているところも見られます。

ただし、あまり高額なインセンティブを設定すると、報酬目的での紹介が増え、マッチング精度が下がる可能性があるので注意が必要です。また、労働者の紹介に対して自社社員に報酬を与えることは、職業安定法第40条に関わります。自社だけで容易に決めず、法律の専門家や管轄の労働局、または労働基準監督署に相談しましょう。

3.従業員を巻き込む体制を構築する

リファラル採用で一番頼りになるのは自社の従業員です。従業員の協力がなくては、この採用方法は成功しません。経営側だけで準備を進めていくより、早い段階から従業員を巻き込むこともポイントです。そのためには、紹介による採用を実施することをまず従業員に発信していきましょう。人事担当者から発信するのも良いですが、経営者自らメールや動画などで発信するのも良い方法です。または、社内報にインタビューとして掲載するという方法もあります。
経営側からの積極的な働きかけがあれば、従業員の関心を高めることが可能です。注意点としては、従業員に向けて発信する際に企業理念も同時に浸透させることです。従業員を巻き込むことで、採用について社内全体で話題にしやすくなります。従業員の関心が高まれば、紹介で入社してきた従業員に対して誰もが親近感を持ちやすいかもしれません。特定の従業員だけに紹介を依頼するのではなく、全社員を対象にすることもポイントです。

4.候補者に自社の悪い所は隠さない

優秀な人材を紹介されれば、何としても入社して欲しいと考えるのは当然といえます。しかし、だからといて自社の欠点を隠してしまうと後で問題になるかもしれません。従業員の知人に自社を紹介してもらうときは、良い部分と悪い部分の両方を伝えてもらいましょう。たとえ良い面だけを見て入社してくれた場合でも、勤務しているうちに自然にわかることは多いものです。話が違うと判断されれば早々に離職することもあります。紹介してくれた従業員との関係も悪化するかもしれません。
しかし、実際に企業が抱えている問題を第三者に伝えるのは難しいことです。上手に伝えるには、問題点に加えて改善されつつあることも伝えておきましょう。悪い部分があったとしても、企業がそれにきちんと向き合っていることを理解してもらうのです。仮に取り組んでいない場合であっても、社内全体で改善していくきっかけにできます。

5.他の採用手法も並行して活用する

従業員から紹介してもらうことは、自社に合った人材にダイレクトにアピールできる手段です。しかし、必ず求めている人材が確保できるとは限りません。他の採用方法も並行して実施していくこともポイントです。そうすることで、紹介に加えて多くの応募者を増やすことができます。ここで注意したいのは、採用にかけるコストです。できるだけコストを抑えていく方法を考えていきましょう。
コストを抑えながら応募者を募る方法としては、SNSの活用が有効です。SNSを利用したソーシャルリクルーティングなら、不特定多数の人に呼びかけることもできます。SNSなら応募者の情報を把握することもでき、事前に自社に合う人物かどうか判断しやすいでしょう。選考にかける時間短縮にもつながります。ダイレクトに働きかけたい場合はイベントを実施するという方法もあります。イベントなら企業の雰囲気を知ってもらうこともできますし、開催日程をSNSで呼びかけることも可能です。他には、人材データベースを利用するという方法もあります。

リファラル採用に成功した企業事例

1.株式会社メルカリ

株式会社メルカリは、リファラル採用を実施して成功させた企業事例の一つです。株式会社メルカリでは6割もの従業員がリファラル採用で入社しています。これは広い人脈を持つ従業員が多いということでもありますが、企業努力も成功の要因です。株式会社メルカリでは社内外の交流イベントを積極的に実施しています。こうすることで、従業員の友人や家族にとって企業が身近なものになるのです。企業側が欲しい人材にアプローチしやすいのも、メリットではないでしょうか。もう一つの成功要因は、上手に従業員を巻き込んでいることにあります。採用活動のスケジュールを従業員にも公開しているため、経営側が採用活動に関わっていることをアピールできます。こうすることで、従業員のモチベーションアップにつなげているのです。

2.freee株式会社

freee株式会社の場合は、全体のおよそ5割がリファラル採用で入社を果たしています。freee株式会社の成功要因は、従業員の友人が気軽に足を運びやすい環境作りに力を入れたことです。友人や知人の勤務先を訪問することに気が引けてしまう人は多いでしょう。緊急の用事でもない限り、なかなか訪問する機会はないかもしれません。freee株式会社では、夕食に無料でお弁当を出すことで、友人を気軽に呼べる体制作りをしています。さらに、自社が求める人物像を明確にし、従業員に伝えることにも積極的です。実際に紹介をしてくれた従業員に感謝の気持ちを伝えることも忘れません。リファラル採用をするうえで従業員は大切な協力者です。その基本的な考え方を大切にしていることが、freee株式会社の成功要因といえます。

3.株式会社LIG

株式会社LIGは、ユニークな方法でリファラル採用を成功させています。「LIGスカウトキャンペーン」と題した紹介キャンペーンの実施によって通常の4倍に当たる採用を実現しました。「LIGスカウトキャンペーン」はチーム単位で友人などの紹介に向けて競うというものです。「LIGスカウトキャンペーン」ではもっとも紹介者数が多かったチームを優勝とし、プレゼントの贈呈を行っています。「LIGスカウトキャンペーン」は1カ月間実施されました。チーム単位で行うことで社内が一体となり、同時にモチベーションアップにつなげることも可能です。株式会社LIGのような取り組みを実施することで、自社の従業員を自分たちで探すという意識が高まるのではないでしょうか。

リファラル採用で潜在層にアプローチしよう!

リファラル採用は求人募集にかけるコストを節約できるというメリットがあります。しかし、それ以上に市場に出ない優秀な人材確保につながることも大きなメリットです。従業員の友人や知人であればミスマッチのリスクも防ぎやすくなります。今回紹介した注意点やポイントを踏まえて、リファラル採用を上手に活用してみましょう。

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