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2020.11.27

労働生産性を完全理解!定義・計算方法・向上のポイントなど解説

働き方改革が実施され始めたことで、労働生産性について注目が高まってきています。労働生産性が高まると多くのメリットが期待できますが、労働生産性について正しく理解している人は、まだまだ多くはないでしょう。そこで今回は、労働生産性について、その定義から計算方法、向上のポイント、さらに向上によるメリットまでを詳しく紹介します。

労働生産性とは

公益財団法人日本生産性本部が定義している生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いです。物を作るには原料だけでなく、土地や設備が必要で、人的コストも求められるでしょう。これらすべてを投入し、どれだけの物や売上が算出できたのかという割合、つまり、投資資源と産出の比率が生産性です。労働を投入し、とれだけの成果を上げられたのかは労働生産性と呼ばれています。
労働生産性は労働の成果を労働量で割ったものであり、労働者1人当たりが生み出す成果の指標となります。生産性は大きく分けると「労働生産性」と「資本生産性」の2つになります。資本資産性は、投入した資本に対し、どれだけの付加価値が生み出せたのかを数値化したものをいいます。資本生産性を高めるには、設備の利用頻度や稼働率を上げることが大切です。

労働生産性の種類

労働生産性は、「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」の2種類に分類されます。この2つは異なることを示す数値ですので、その違いについてしっかりと知ることが大切です。ここからは、労働生産性の種類について紹介します。

労働生産性の種類①物的労働生産性

生産性の2つの種類のうち、1つ目として物的労働生産性があります。2つの労働生産性の大きな違いは、労働によってどのような成果を産出するかという点にあります。物的労働生産性の産出の対象は生産量や販売金額であり、これらをもとに算出します。つまり、物的労働生産性は労働者がどのくらい効率的に製品やサービスを生み出しているかを示す指標となるのです。物的労働生産性を求めるときは、生産量と販売価格のどちらを当てはめるかが重要なポイントです。
生産量は市場の動向によって商品価値が変動する場合に使用します。例えば、同じ広さの畑で、何万円分の野菜を作ったということよりも、何個の野菜を作ったかを考えたほうが、一定の広さから算出できる生産量が比較しやすいでしょう。販売価格を使用するのは、市場の動向に関係なく商品価格(販売価格)が一定の場合です。工業製品などの販売価格が一定の場合には、この工場では年間でどのくらいの金額の商品が製造できるのかが比較できます。このように、物的労働生産性は生産効率を数値化しているため、品質管理や設備投資の判断材料となることが多くなっています。

労働生産性の種類②付加価値労働生産性

労働生産性の2つ目の種類は付加価値労働生産性です。付加価値労働生産性の産出の対象は付加価値額にあります。付加価値を国単位で考えると、GDPがそれに当たるでしょう。付加価値労働生産性の付加価値額は、企業が新たに生み出した金額的な価値をいいます。つまり、付加価値労働生産性は労働者1人当たりがどのくらい高い付加価値を生み出しているかを表す指標です。成果を物質的な量で表すのではなく、評価した金額による付加価値によって算出するのが特徴となっています。
詳しく説明すると、自動車の製造には鉄やアルミといった原材料が必要ですが、それだけでは自動車は作れず、念入りな商品企画や研究開発、加工、組立など多くの人手や手間が必要となります。それらすべてをひっくるめて生み出した商品やサービスが付加価値といえるでしょう。サービス業などでは付加価値労働生産性が用いられることが多くみられます。なぜなら、サービス業は物そのものを売るのではなく、知識や技術といった物以外のサービスを提供するからです。企業においては、利益最大化のための指標として付加価値労働生産性が利用されています。

日本の労働生産性の現状

日本生産性本部がさまざまなデータに基づいて発表している労働生産性の国際比較をみると、日本の1時間当たりの労働生産性は47.5ドルです。これは、OECD(経済協力開発機構)に加盟している36カ国中20位という結果であり、先進国の中で最下位に位置しています。日本の労働生産性が低い理由には、日本独自の人事評価制度が挙げられるでしょう。日本では時間当たりの報酬を出す仕組みが採用されているのが特徴で、社員の勤続年数などが考慮されるケースも多くみられます。
しかし、こうしたシステムを導入していると、社員自らが効率よく働こうという意識を持ちにくくなる傾向があります。その結果、労働生産性が低下しているのです。また、日本には働き方に関する独自の慣習があることも要因の1つです。残業をして当たり前という考え方も多いことから、残業ありきで業務時間を過ごすケースは珍しくありません。定時までに業務を終了させるという意識が低いことも、労働生産性を低下させている要因の1つだと考えられるでしょう。そのほか、日本の企業では社員がチームとして働く意識が強いことも懸念されています。チームを考えすぎるあまり、自分の業務に集中できないことも要因となっているかもしれません。

労働生産性の計算方法

労働生産性は産出された成果物をコストで割ると計算が可能です。これが基本的な計算式となりますが、物的労働生産性の場合には、生産量を労働者数で割って計算します。物的労働生産性で求められた数値は極めて客観的なものであるため、社外にも提出されることが多くなっています。
一方、付加価値労働生産性は、付加価値の値を投入した人数や時間で割ったもので計算します。労働者1人当たりの労働生産性を知りたい場合には、労働者の人数で割りましょう。1時間当たりの労働生産性を知るには、労働者の人数と労働時間でかけた値で割って求めます。さらに、付加価値の額は、人件費・企業運営費・経常利益・減価償却費に分かれるそれらの和となります。人件費は付加価値から人件費以外の費用を引くと求めることが可能です。

業界別の労働生産性

労働生産性は業界ごとに異なるのが特徴です。労働生産性の数値が高い業界には金融、電気・ガス、不動産業などが挙げられます。これらの業界に共通するのは、資本生産性が高いことでしょう。また、従業員1人当たりに対する、企業の資本となる企業集約度が高いこともポイントです。一方、労働生産性が低い傾向にある業界は、飲食サービス業、医療・福祉、宿泊業などとなっています。これらは、サービスの提供と同時に消費が行われることが多くみられます。生産するものに形がなく、在庫が持てないことも理由の1つだといえるでしょう。
さらに、サービスの提供場所が消費場所と同じというケースも珍しくなく、このような理由から、労働生産性が低くなってしまうのです。そのほか、飲食サービス業や宿泊業の従業員にはパート労働者が多いことも要因の1つとなっています。例えば、常時スタッフがひとりで営業するコーヒースタンドがあるとして、同一人物がずっと働く場合と、パートを含めて何人かの人が交代で働く場合とでは、この店の1人当たり労働生産性は異なります。分母となる就業者数が少ない方が、労働生産性が高い、という結果になるのです。サービス業を中心に「1日1~3時間」というような短時間の求人も増えています。結果としてパートタイム労働者が増え、以前はひとりでやっていた仕事量を複数の人でシェアするという方向にあります。これは1人当たりの労働生産性を押し下げることになるのです。

労働生産性を向上させるポイント

労働生産量について説明してきましたが、実際に労働生産量を向上させるには、どのような工夫をすればよいのでしょうか。ここらからの段落では、労働生産量を上げるためのポイントを紹介していきます。

労働生産性向上のポイント①ITツールの導入

労働生産性の向上に必須となるのが業務の効率化です。効率よく業務をこなす手段として知られているのがITツールの活用です。ITツールの導入には、業務の方法や組織の在り方を見直し、効率よく業務を遂行する方法を考えるといった目的もあります。なぜなら、生産性の低い企業は労働時間が長い傾向にあるからです。そういった問題を本質的に解決することで、労働生産性が上げられるようになるでしょう。初めてITツールを導入する企業でも、社内コミュニケーションや情報管理系のツールであれば導入しやすくなっています。これらを手始めとして、IT化を進めてみましょう。
具体的にはRPAと呼ばれるシステムがぴったりです。これは、パソコン上で行う作業をロボットが実行してくれるもので、業務の単純化や自動化が図れます。例えば、エクセルなどから別のシステムへの入力をロボットに任せるのです。その間に、社員は商品の企画・開発など人間にしかできない業務ができるようになります。その結果、稼働時間が短くなり、生産性を上げることが可能です。

労働生産性向上のポイント②人事評価制度の見直し

先ほども紹介した通り、日本の労働生産性が低い理由は、慣習化されている人事評価制度が影響している場合が多くなっています。そのため、労働生産性の向上には、人事制度の見直しが必要とされています。日本では社員の勤続年数が重視される傾向にあり、業績が考慮されている場合でも、長く働いた人ほど高く評価されるケースが多いものです。その結果、若く成績の優れた従業員が、長年勤務してきた従業員より低く評価されてしまうことが珍しくありません。これでは、正しい評価が受けられないことで、仕事へのモチベーションは低下してしまうでしょう。
すべての従業員に効率よく仕事をする意識を持たせるためには、勤続年数に関係なく、公正な評価を受けられる仕組みを作る必要があります。年功序列や終身雇用といったこれまでの制度は、一から見直すのがよいでしょう。労働時間にかかわらず、社員の生み出した付加価値を正しく評価できる制度を作らなければなりません。そうすることで、社員の働き方に関する意識改革につながり、労働生産性が向上するでしょう。

労働生産性向上のポイント③ノンコア業務の外部化

業務の効率化を目指すのであれば、ノンコア業務を外部化するのもよいでしょう。ノンコア業務というのは企業にとって、直接利益につながらない業務をいいます。提携業務や事務作業などがノンコア業務に当たりますが、これらに時間を割くと、企業の利益へと直接結びつくコア業務に割ける時間が物理的に少なくなってしまいます。コア業務に少しでも専念できるよう、ノンコア業務を外部化していきましょう。そのためには、すべての業務を丁寧に仕分けすることから始めます。仕訳が終わると、ノンコア業務はアウトソーシング(外注)に回し、社員それぞれがコア業務を担当できるようにしましょう。コア業務が強化できるようになると、労働生産性の向上だけでなく、企業の成長にもつなげることができます。

労働生産性向上のポイント④働き方改革の推進

働き方改革を推進することで、労働生産性の向上は可能です。これまでの働き方とは異なる、リモートワークやフレックス制度などを積極的に導入すると、従業員にとって働きやすい環境が整えられます。柔軟なワーク環境を支援すると、ワーク・ライフ・バランスが充実でき、高いモチベーションを持って仕事に打ち込めるでしょう。また、満員電車に揺られるストレスが軽減されると、労働生産性が向上することも期待できます。さらに、出社にかかる時間が労働に充てられるようになる点においては、労働生産性は確実に向上するでしょう。
そのほか、働き方改革を進めると、労働時間が短縮できます。その結果、従業員が自主的に業務時間内に仕事を終える意識が持てるようになり、効率のよいアウトプットが可能になるでしょう。そのほか、育児や介護などが仕事と両立できる環境が整えられることでも、優秀な人材が集まりやすくなります。働きやすさを上げることで、従業員の満足度も高まり、生産性の向上が期待できるのです。

労働生産性を向上させるメリット

労働生産性を向上すると、いくつかのメリットがありますので知っておくのがよいでしょう。まず、労働生産性の向上が認められた企業は、政府から優遇措置が受けられるようになります。具体的には、労働関係の補助金や助成金の割り増しなどがあります。厚生労働省が定める基準を満たした企業にだけ、この恩恵は与えられるのです。また、労働生産性の向上によって、企業の利益増加も期待できます。その結果、従業員の給与が増える可能性もあり、高いモチベーションを持って働けるようになるでしょう。そうなることで、さらなる労働生産性の向上が見込めます。

会社に合ったやり方で労働生産性を向上させよう

労働生産性について理解できたでしょうか。労働生産性を上げると、企業にとってさまざまな面でメリットがあります。しかし、労働生産性を上げるにはさまざまな工夫が必要となります。ITツールの活用や働き方改革など、その方法はたくさんあります。まずは、自社の現状をしっかりと認識し、必要な施策を打ちながら着実に労働生産性を上げていくことが大切です。

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