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2020.11.9

今さら聞けない!RPAの概要と導入のメリット・デメリットを徹底解説

人事システムの導入を検討している担当者や経営者のみなさんは「RPA」をご存じでしょうか。RPAは業務を効率的に進められる新しい方法として、さまざまな企業から注目を集めている仕組みです。そこで、この記事では業務効率化を図るためのシステム導入を検討している担当者に向けて、RPAの概要からメリットおよびデメリットまで徹底的に解説していきます。

RPAとは

RPAは英語で「Robotic Process Automation」と表記される言葉の頭文字をとった用語です。簡単にいうと、事務作業を行うホワイトワーカーたちがPCなどを用いて行っている一連の業務を自動化できる「ソフトウェアロボット」のことです。日本国内でRPAという言葉が使われ始めたのは2016年ごろからで、システムの分かりやすさや効果がすぐに現れる利便性の高さから2017年には早くもブームになりました。
かつては単純作業と呼ばれる業務は、職人たち(いわゆるブルーワーカー)が手作業で行っていたものです。しかし、産業革命によって機械化が進み、近代になると溶接や圧着などといった組み立てなどの仕事は産業用ロボットが代替するようになってしまいました。しかも、産業用ロボットの性能は向上し続け、ついには熟練した職人の手にも劣らないほどの質まで保ったうえで、生産性向上に貢献しています。RPAは「ホワイトワーカーのための産業用ロボット」をイメージすると分かりやすいでしょう。

RPAには三段階ある

一口にRPAといっても、具体的には三段階の種類があります。そこで、それぞれの特徴について解説していきます。

ルーティンワークの自動化に役立つRPA

一般的にRPAと呼ばれるシステムは、class1と呼ばれています。class1では基本的にルーティンワークや定型業務をミスなくこなすことを目的にしているのが特徴です。ただし、一つのアプリの業務にしか対応していないわけではありません。システムによってはclass1であっても、単純作業であれば複数のアプリを連携させた業務に対応している場合もあります。対応している業務は幅広く、人事や経理、総務、情報システムといったバックオフィスの事務および管理業務の対応が得意です。販売管理や経費処理といった業務の自動化を目指す場合の第1歩目のシステムという位置づけになります。

より高度な作業を任せられるEPA

EPA(Enhanced Process Automation)はRPAよりも高度な業務に対応したシステムでclass2と呼ばれています。具体的には定型業務をこなすだけでなく、データ収集や分析といった業務にまで対応しています。システムによっては自由記述式アンケートの集計とログ解析を行ったうえで、そのほかの要因も加味した売上予測を示すことも可能です。データ分析を自動化したいというユーザーのニーズに応えてくれるシステムだといえます。

データ分析を行って自主的な判断までできるCA

class3と呼ばれるCA(Cognitive Automation)は、RPAにAIのような自律的な判断力を加えたシステムです。プロセスの分析や改善、意思決定までを自動化することで定型的な業務だけでなく、突発的な業務にも対応してくれるため業務効率化に大きく役立ちます。また、システムによっては「ディープラーニング」や「自然言語処理」まで対応できるものまであるのも特徴です。システムに蓄積された膨大なデータを活かして経営改善などに活用できるケースもあります。

AIやVBAとの違いは?

RPAはときにAIやVBAと間違われることがよくあります。たしかに似ている部分もありますが、システムの導入にあたっては違いについてよく理解しておきましょう。

AIとの違いは「意思決定の有無」

RPAは基本的に標準化されたルールどおりにミスなく正確に業務をこなす目的で導入されます。そのため、あくまでも人間が指示をしなければ業務をこなすことはありません。それに対して、AIは自ら学習して人間が与えた以上の動作をすることが可能です。指示した以上の業務をこなせるかどうかが大きな違いだといえるでしょう。指示したことしか行わないRPAと違って、AIは蓄積されたデータを自ら分析して見直し、業務改善のためのルールを判断して実行できます。

VBAとの違いは「複数のアプリで同時に利用できる点」

VBAもシステムの自動化に役立ちます。しかし、VBAはあくまでもOfficeアプリケーション内で行われる処理にしか対応していません。そのため、Officeアプリケーション以外のアプリと連携させようと思っても上手くいかないケースがあるのです。それに対して、RPAにはそのような制限はなく、PC内で行われる作業を全般的に自動化できます。ただし、RPAは定型業務の効率化を主眼とするシステムなので、VBA がExcelで実行するような複雑な統計加工処理を行うのは得意ではない点に注意しましょう。

RPAブームの背景

RPAブームの背景① 働き方改革

RPAがブームになった背景としては働き方改革が大きく影響しています。働き方改革の実践にあたっては従業員一人ひとりの業務効率化が欠かせません。今まであった仕事を時間短縮して残業を減らすためには、従来通りのやり方を続けていたのでは難しいでしょう。業務の簡素化をしなければ残業を減らしたり、有給を取りやすくしたりすることはできません。
RPAなら人間が行っていた業務を代わりに実行できるので、残業の削減にも貢献できます。人材を増やして一人当たりの仕事量を減らすという考え方ではなく、仕事の簡素化を図ることで働き方改革を実践していけます。

RPAブームの背景② 労働環境の変化

働き方改革にも関係していますが、現代の日本では超高齢化社会による慢性的な人手不足が大きな社会問題となっています。総務省が試算したところ、このままのペースだと日本では2053年に人口が1憶人を割り、2065年には8808万人にまで減少すると推計されています。こうした将来的な労働力の低下を防ぐために期待されているのが、人間に代わって仕事をしてくれるRPAです。
また、ネットワークの進化によって多くの企業でIT化が進んでいるのも背景として強く影響しています。IT化が進み、システムが複雑になると即戦力として新人を採用するのが難しくなってしまうからです。パソコンやシステムの知識がない新人には、ビジネスマナーだけでなくITスキルを学んでもらうことから始めなければいけません。しかし、RPAに業務を任せていれば、そのような心配をする必要はないでしょう。新人教育にかける費用や労力をカットできるという面でもRPAの需要は高まっています。

RPAブームの背景③ 第四次産業革命

1990年代中盤以降急速に普及したインターネットによってIT革命が始まりました。その後、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの技術開発がすさまじいスピードで続き、現代は第四次産業革命が起こっていると言われています。特に技術革新が著しい先進国では少子化に悩んでいる国も多く、今後RPAなどのシステムによる労働力の補完が進むと考えられます。2030年代前半には労働人口の49%まで自動化が進むと予測しているデータもあるぐらいです。業務の完全自動化が進む世界にあって、その前段階としてRPAの導入が始められています。

RPAが効果的な業務

RPAに向いている業務の一つ目は「決められたルールに則って行われる仕事」です。RPAはルーティンワークに強いシステムなので、一定のルールに従った業務であれば比較的簡単に効率化が図れます。たとえば、「受信したメールの添付ファイルを自動的に特定のフォルダに格納する」といった業務です。また、「あらかじめ定められている提出書類の不備チェック」や「書類のデータを社内の基幹システムへの登録や報告」なども得意な業務に含まれます。
向いている業務の二つ目は「同じ作業を反復する仕事」です。決算処理など、特定の年月だけにRPAを利用するのはあまり効率的ではありません。それよりも、定期的に作成する必要のある情報リストなどの業務に活用したほうが効果的です。たとえば、「ネット上にある自社の口コミ情報を収集する」「簡単なデータ入力およびコピーアンドペースト作業」などが挙げられます。
向いている業務の三つ目は「PCだけで完結する仕事」です。RPAでは複数のアプリを連携させることも不可能ではありませんが、PCを使わずにこなす業務を命令することはできません。そのため、パソコンだけで完結する仕事を任せたほうが業務の効率化に役立ちます。たとえば、「営業活動情報を集計して、翌日朝に実績を速報値として部署の人間に情報共有させる」といった仕事です。

導入事例

RPAについて具体的なイメージはつかめたでしょうか。導入にあたっては実際の事例を参考にしたいと考える人もいるでしょう。そこで、この段落では実際の導入事例を3つほど紹介します。

RPAの導入事例1:購買事業

このケースでは「注文情報の取りまとめ」「発注先メーカーの受付システムへリンクする」「注文情報を登録」「注文状況を担当者に報告する」という4つの命令を自動化しています。資材などの発注にあたっては注文数や注文頻度が多ければ多いほど、手間がかかるので入力ミスが起こりがちです。しかし、RPAで自動化すれば入力ミスのような人為的なミスが発生することはありません。結果的に作業時間と人為的なミスの削減に効果を発揮できます。

RPAの導入事例2:財務業務

財務業務にRPAを導入したケースとしては、OCRと組み合わせて相乗効果を発揮した事例が挙げられます。RPAを導入するまでは、財務担当者が発注システムにあるデータを印刷して請求書と付け合せを目視で確認している状況でした。しかし、OCRで請求書にある文字を読み取ってデータ化し、RPAで発注システムにあるデータと自動的に突合わせをさせることで、不一致のものだけ目視で確認すればいいようになりました。

RPAの導入事例3:人事

人事では従業員のプライベートな情報を扱うことも多く、外注できる業務も限られます。しかし、財務などと同じくルーティンワークも多いので、RPAの導入によって業務効率化が進んだ事例も多くなっています。たとえば、「特定の社員管理システムの情報を更新したら影響する他の社内システムのデータも自動的に変更する」というような活用方法が挙げられます。導入することで工数が減り、情報の更新忘れといったミスもなくすことができます。”

RPAのメリット

RPAのメリット① 業務の効率化

RPAの導入によって業務の効率化が図れます。実際に削減できる業務量は各企業によって異なりますが、なかには自動化によって半日以上かかっていた業務をわずか数分まで短縮できたという事例もあるぐらいです。また、RPAはシステム上で処理を行ってくれるため、ペーパーワークの削減にも効果的です。資料作成に要する時間が削減できるため、業務効率化において間接的なメリットもあります。

RPAのメリット② 人的ミスの防止

データ入力などを人間が行う場合、どうしてもミスが発生してしまいます。一般的に作業量が多くなれば多くなるほどミスは増えてしまうので、無理に従業員一人あたりの仕事量を増やすわけにもいきません。ところが、RPAなら決められたルール通りに正確に作業をこなしてくれるので、どれだけ作業量を増やしてもミスすることなく仕事をしてくれます。人的ミスはときに大きな問題に発展することもありますが、RPAを導入すればミスをするリスクを限りなくゼロにできるのです。

RPAのメリット③ コスト削減

RPAの導入にあたって経費はかかりますが、従業員に支払う人件費よりも費用対効果では優れているケースが多いです。企業経営で必要なコストとして大きなウェイトを占めているのが人件費だと言われています。RPAならどれだけ仕事量を増やしても基本的にミスをすることはなく、ましてや残業代が発生することもありません。複数の従業員が担当する必要のあった業務をRPAに任せれば、一般的に25~50%程度の人件費が抑制できると言われています。

RPAのメリット④ コア業務への注力

コア業務とは、企業のなかでもより大きな利益を産み出す業務や、高度な判断が必要な業務のことです。手間のかかる単純作業をRPAに任せて、余った人的リソースをRPAには任せられないコア業務へ注力させれば、より大きな経営的メリットが得られるケースがあります。また、従業員の業務の幅を広げることにつながり、社員の成長を促せる点もメリットです。RPAは単純作業、従業員はコア業務といった業務の区分けをすることで、さらなる効率化が図れ、結果的に企業の成長に好影響を与えてくれるでしょう。

RPAのデメリット

RPAのデメリット① システム障害の問題

RPA導入にあたって必ず考えておかなければいけないのは、「システム障害が発生したときにどうするか」ということです。単純作業をRPAに任せきりにしてしまうと、いざシステム障害が発生したときに人的リソースが足りなくなってしまうでしょう。すると、企業経営に支障が生じ、全体に悪影響を与えてしまうかもしれません。また、長期間にわたって特定の業務をRPAに任せていると、いざ従業員が業務を代行しようとしても対応できない可能性があります。RPAを活用する業務であっても、いざというときに備えてマニュアルを整備しておくなどの対策が必要です。

RPAのデメリット② ITセキュリティガバナンスの問題

ITセキュリティガバナンスとは、RPAの活用にあたって「どの情報までアクセスを許すか」といった権限などを統括することです。RPAの導入にはオンライン化が欠かせませんが、オンライン化には情報漏洩リスクがつきものです。万が一、顧客情報の流出などがあった場合には、取り返しがつかないような問題に発展する可能性もあります。セキュリティ対策を万全にしたうえで、RPAの導入について検討しましょう。

これから注目が高まる!

ここまでRPAについて解説してきましたが、概要について理解できたでしょうか。RPAは働き方改革や技術革新が進むこれからの時代に向けて、非常に重要なシステムです。少子高齢化による人手不足やIT化が進んでいくことが予想されている現代においては、さらに注目が高まることが予想されます。ビジネスパーソンとして、RPAのメリットやデメリットなどはしっかりと押さえておきましょう。

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