2019.08.29

企業にも従業員にも大切な産休制度!概要と必要な手続き

企業にも従業員にも大切な産休制度!概要と必要な手続き

日本では、妊娠や出産を機に退職してしまう女性も多いです。このような状況の中、政府は働き方改革の一環として「産休制度」の整備に力を入れています。優秀な女性の離職を防ぐためには、企業としても産休制度の充実が必要不可欠です。今回は、そんな産休制度の目的や対象となる労働者などの基礎知識をはじめ、企業が行う手続きなどについて解説していきます。

産休とは?意味と目的について解説

産休とは「出産休暇」を省略した呼称で、出産するために得る休暇のことです。対象は会社で働く女性であり、たとえ妻が出産するとしても男性社員が取得することはできません。産休は労働基準法で定められた権利であり、妊娠・出産が母体に大きな負担をかけることから制定されました。長期の休暇を取ることにより、体力を回復させるのと同時に生まれてくる子どもの保護を図るのが主な目的です。産休とよく間違えられる制度として育児休暇が挙げられますが、この2つにはさまざまな点で違いがあります。まず、産休は働く女性が対象であるのに対し、育児休暇は原則として1歳未満の子どもを育てる働く男女が対象です。

また、育児休暇は雇用期間が1年未満の場合や、子どもが1歳を超えた後も働く意思がない場合は取得が認められません。さらに、産休は出産を挟んだ産前産後期間に取得し、育児休暇は産休が終わってから一定期間取得するなど期間も異なります。

労働基準法で定められている産前産後休暇とは

産休は、労働基準法で「産前産後休暇」として正式に定められています。産前休暇は出産予定日の6週間前から出産日まで、産後休暇は出産した翌日から数えて8週間にわたって取得できる休業期間のことです。双子以上の多胎妊娠の場合は、母体にかかる負担がより大きくなるケースが多いため、産前休暇が6週間ではなく14週間まで延長されます。産前休暇は女性本人が希望した場合に与えられるものであり、中には出産予定日ギリギリまで休暇を取得せずに働き続ける人もいますが、産後休暇は本人の希望の有無にかかわらず与えなければなりません。

なお、労働基準法でいう出産とは、「妊娠4カ月以上経過した場合の分娩」を指しています。妊娠4カ月以上になっていれば、たとえ死産や人工流産であっても産前産後休暇を取得することは可能です。

転職直後やパートタイマーでも取得できる産休!

「産休は正社員でないと取得できないのでは」と誤解されがちですが、決してそんなことはありません。産休は契約期間にかかわらず、働く女性であれば誰もが平等に取得できる制度です。入社・転職後にすぐ妊娠が発覚したとしても休暇を取得する権利が認められているので、産休の請求があれば応じなければなりません。雇用形態についても制限はなく、契約社員や派遣社員、パートタイマーなどの非正規社員でも産休を取得できると労働基準法で定められています。

産後休業は法律によって取得が義務付けられているため、たとえ女性本人が出産直後から働きたいと希望しても原則認められません。また、妊娠・出産を理由に企業側がパートタイマーを解雇するなど不利益な処分を下すことは、男女雇用機会均等法第9条によって禁止されているので注意しましょう。

妊娠・出産・産休による解雇その他不利益取扱いの禁止

妊娠・出産を機に、勤務先から退職を強要されてしまったという話も珍しくありません。会社や同僚に迷惑をかけたくないからと、素直に応じている女性も多いです。しかし、男女雇用機会均等法により、妊娠や出産、産休を取得したことを理由として、解雇したり不利益な取扱いをしたりするのは禁じられています。厚生労働省令で定められた妊娠中の時差通勤など、男女雇用機会均等法による母性健康管理措置を受けたために、解雇や不利益な取扱いをすることも同じく禁止となっています。さらに、労働基準法で定められた深夜業免除など、母性保護措置を受けたことで解雇や不利益な取扱いをするのも禁止です。

このほか、労働基準法第19条で産休の期間および産休取得後30日間の解雇も禁止されるなど、妊娠・出産や産休にともなう企業側の禁止事項は意外と多いので注意しなければなりません。

産休中の給料や手当てはどうなるのか?

社員が産休を取得したとき、支払わなければならない給与や手当があるのか気になる経営者も多いでしょう。産休中は無給としている企業がほとんどですが、就業規則の規定などによっては一定の給与を支払うところもあります。労働基準法により産休制度や休暇を取得する権利などは整備されているものの、休暇中の給与について明確な定めはないのです。その代わり、無給とする場合は、企業で加入している健康保険から出産手当金が支給されるのが一般的です。出産手当金は、出産のために会社を休んだ被保険者が受給できるお金で、健康保険に加入してさえいれば雇用形態に関係なく受け取れます。

このほか、出産した子ども1人につき加入している健康保険から一律42万円支給される出産育児一時金や、社会保険料の全額免除など、さまざまなサポートが準備されています。

産休で会社が行うべき手続き

1.住民税の徴収方法の確認

社員が産休を取得した場合、企業はさまざまな手続きを行わなければなりません。まず必要となるのは、「住民税の徴収方法」を確認しておくことです。産休中でも、住民税を納める義務は免除されないため、引き続き給与から差し引かれることになります。産休中も給与を支払う場合は問題なく徴収できるのですが、無給としている場合は注意が必要です。産休に入る前に徴収方法を決めておかないと、徴収と納税がスムーズに行えず、社員が住民税を滞納してしまうことにもなりかねません。

徴収方法としては、企業が一時的に立て替えて支払い、社員が復職してから徴収する方法や、産休に入る前に給与から一括徴収する方法、普通徴収に切り替える方法の3つが挙げられます。就業規則などに規定があればそれに従い、ない場合は企業側と社員でよく話し合って決めるようにしましょう。

2.社会保険料免除の手続き

社員の産休中に企業が行う手続きとしては、「社会保険料免除の手続き」も挙げられます。社会保険料は、国民が病気や介護状態になったり失業したりした際、支援するために支払われる給付金の財源となるものです。企業は、自らが負担する保険料と、雇用する社員が負担すべき保険料を合わせて納付しなければなりません。普段は社員の給与から差し引かれている社会保険料ですが、産休中は保険料の支払いが全額免除されています。ただし、産休を取得したからといって自動的に全額免除になるわけではありません。企業が「産前産後休業取得者申出書」を管轄の年金事務所へ提出する必要があるので、忘れないようにしましょう。

書類提出した後に産前産後休暇の期間が変更になった場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」を確定した日付で提出しましょう。

3.社会保険料改定の手続き

社員が産休を終えて復職した際、場合によっては育児のために勤務時間の短縮などの措置を受けることもあるでしょう。この場合、当該社員の給与が産休に入る前と変わってしまうケースもあります。社会保険料は給与の額に基づいて決定するものなので、給与が下がった場合は新たな社会保険料を算出しなければなりません。この手続きにより、産休が終了した日が属する月以降3カ月間の給与平均額に基づき、4カ月目以降の社会保険料の額を改定することができます。

産休が終わった後、これまでの給与などの報酬に1等級以上の差が生じる社員は、社会保険料改定の手続きをしなければなりません。また、産休が終わってから3カ月の間に、1カ月の支払い基礎日数が17日以上となった人も対象となります。給与が変更になるとわかったら、できるだけ早く「産前産後休業終了時報酬⽉額変更届」を年金事務所に提出しましょう。

4.扶養追加の申請

健康保険組合に加入している社員の場合、出産したら出生届を提出して子どもの戸籍を取得し、企業経由で「扶養追加の申請」を行わなければなりません。これより、加入している健康保険から保険証などが発行され、病院を受診したときの費用負担が軽減されます。扶養追加の手続きがすぐに終わる国民健康保険と違い、健康保険組合は手続きから保険証の発行までに約2~3週間ほどかかることも珍しくありません。子どもは生まれてから1カ月後に病院で健康状態のチェックを受けるため、それに間に合わせるためにも生まれてから5日以内には扶養追加の申請を済ませておきましょう。

手続きの流れは加入する健康保険組合の種類によっても異なりますが、基本的には社員の出産後に「健康保険被扶養者(異動)届」に必要事項を記入し、管轄の年金事務所に提出します。

5.養育期間標準報酬月額特例

復職後に勤務時間短縮などで給与が下がった場合、社会保険料と同様に注意が必要な点といえば老齢厚生年金についてです。老齢厚生年金も給与の額に応じて納めるべき年金保険料が算出され、それにしたがって将来受け取れる年金額も変わります。給与が下がってしまうと、将来の年金が減ってしまう可能性があるのです。このような場合に備え、「養育期間標準報酬月額特例」の申請手続きを行わなければなりません。養育機関標準報酬月額特例を受けることで、下がった給与ではなく、産休に入る前の給与を「みなし報酬月額」として年金額の算出に用いることができます。

特例を受けるためには、社員自らが「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を作成し、企業経由で年金事務所へ提出しなければなりません。社員がこの特例を知らないことも多いので、企業側から制度の概要や申請の有無について確認してあげると良いでしょう。ただし、対象となるのは、3歳未満の子どもを養育する厚生年金保険の加入者のみなので注意が必要です。

出産時に従業員が行う手続き

1.出産育児一時金

出産には、入院費や分娩費などさまざまな費用がかかります。産休中は無給であるケースが多いので、社員にとっては経済的に大きな負担になってしまいます。このため、各健康保険組合が出産にともなう費用負担の軽減を目的として準備しているのが、子ども1人あたり42万円が支給される「出産育児一時金」「家族出産育児一時金」という制度です。出産費用が42万円を上回ったときは社員が不足分を負担し、下回れば差額を受け取れます。社会保険の被保険者だけでなく、被扶養者や国民健康保険の被保険者と出産する人、全員が対象です。

出産育児一時金には「直接支払制度」と「受取代理制度」の2種類があり、それぞれ申請方法が異なります。直接支払制度を利用する場合は医療機関が処理するので特別な手続きは不要ですが、受取代理制度を利用するなら社員が申請書を健康保険組合に提出しなければなりません。

2.出産手当金

社会保険に被保険者本人として加入している女性社員であれば、出産育児一時金とは別に「出産手当金」というお金を受け取ることもできます。出産手当金とは、産休中に給与の支払いがない、または少なくなった場合の所得保障のための給付金で、給与の約3分の2を受け取れます。産休に入った後で申請することになるため、事前に社員へ申請書類などを渡しておきましょう。なお、出産手当金は出産予定日以前42日、および出産後56日までの期間のうち、実際に会社を休んで給与を受け取っていない期間が対象となります。出産日が予定日とずれていた場合、受け取れる出産手当金の額が増減することもあります。

また、対象期間分をすべてまとめて申請する、産前と産後にそれぞれ申請するなど、都合に応じて申請期間を選ぶことも可能です。2回に分けて申請する場合は申請書も2枚必要になるので、社員が産休に入る前に忘れずに渡しておきましょう。ただし、出産手当金の申請期限は産休が始まった日から2年と定められており、2年経過すると時効扱いとなって請求できなくなります。産前と産後に分けて申請する社員の場合、産後分の申請をうっかり忘れてしまうケースも多いので注意が必要です。

産休制度の充実で多用な働き方ができる企業へ

産休を取得することを後ろめたく感じる女性も多いですが、産休は労働基準法で義務付けられた正式な制度でもあります。企業としてはさまざまな手続きが発生したり人材の確保などで困ったりもしますが、社員の労働環境をより良く整備することも大切な役目です。産休制度が充実していなければ、優秀な女性社員が次々に離職し、生産性が低下するだけでなく常に新しい人材を探さなければならない事態になりかねません。そうなれば、余計なコストや手間、時間がかかってますます生産性が低下するおそれがあります。

この点、産休制度を充実させておくと、働きやすい環境で社員のモチベーションも高く保てるだけでなく、優秀な人材が退職してしまうことを防ぐ効果も得られるのです。充実した環境が魅力となり、求人に対して応募も増えるでしょう。政府が目指す働き方改革にもつながるため、積極的に産休制度の整備を進めていきましょう。

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