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2020.8.21

創業以来離職ゼロ採用2.0を実現する「HERP」のカルチャーに迫る

『HERPHire』は、各求人媒体からの応募情報を一元化、現場社員へのリアルタイムな進捗共有機能など、社員主導型のスクラム採用*に必要な機能がギュッと詰まった採用管理プラットフォームです。今回は、株式会社HERPの代表取締役CEO庄田一郎さんに、自身がHR業界での起業を志した経緯から創業以来離職率ゼロのHERPのカルチャーまで、お話を伺います。

*スクラム採用…株式会社HERPが提唱する社員主導型の採用方式

庄田一郎さん

京都大学法学部卒業後、リクルートに入社。SUUMOの営業を経て、リクルートホールディングスへ出向。エンジニア新卒採用に従事する。その後、エウレカに採用広報担当として入社し、同責任者に就任。2017年3月、HERPを創業。

エンジニアの新卒採用を担当したリクルート時代

ー庄田さんが、人事の仕事に携わり始めたきっかけを教えてください

庄田:新卒でリクルートに入社して、1年半ほど営業を経験してから、新卒エンジニアの採用担当としてアサインされました。それまで外注だったシステム構築を内製できる組織を作るため、エンジニアの採用を強化する、というタイミングでした。
といっても、自ら人事をやりたいと名乗りを上げたわけではなかったので、営業として同期と切磋琢磨する中でもっと頑張っていきたいのになぜ…という気持ちがありましたね。

ーそもそも新卒でリクルートを選ばれたのはなぜでしょう?

庄田:僕が新卒で就活していた頃は、DeNAやGREEといったITベンチャーが台頭してきて世界をとるぞ、みたいな時代でした。 僕もインターネット業界に関わりたい思いがあったので、スタートアップからメガベンチャーまで幅広く見ていました。最終的に当時スタートアップとメガベンチャーで迷って、入社を決意しようとしていたのですが、自分の人間的な成長を考えた時に、自分の尺度で測ることができないくらい優秀で「やばい!」って思える人がいる企業の方がいいのでは?と思うようになった。スタートアップには若くてコミットの高い人はたくさんいたのですが、「理解できないくらいすごい!」というよりは、「同じような年齢でこんなにコミットして仕事ができてすごいな……」という感覚だった。そんな時にリクルートの役員の方々にお会いして、「これは意味がわからないくらいすごいな」って感じたんですよね。

全体としても、リクルートには自分と似ている人が全然いなかったんです。僕の知らない僕になるために、リクルートへの入社を決意しました。

採用担当としての素朴な葛藤

ー人事の仕事はどうでしたか?

庄田:新卒採用の仕事では、色々な企業から引っ張りだこの魅力ある学生に「いかに自社に魅力を感じてもらって入社してもらうか」の営業力とも呼べるような力が必要なのですが、それが僕にはしっくりきていませんでした。「この学生にはもう第一志望があるのに、どうして僕たちの会社に入社してもらうために頑張らないといけないのだろう」と、採用担当としての素朴な葛藤を抱えることもあって。

でも、僕はリクルートが大好きだったんです。だから、学生と話す時は、「僕の好きなリクルートについて話をしているだけ」って考えるようにしてみたら、やりやすくなった。「リクルートにはこんな魅力があって、入社してもらえたらこういう活躍をしてもらえると思う、そしてリクルートはこうやって良くなっていくと思う」という風に、自分の気持ちに素直に向き合って話せるようになってくると、人事の仕事はどんどん楽しくなっていきました。

何度でも起業すればいい

庄田:新卒採用で出会う学生の中には、すでに起業している人も珍しくありませんでした。「あ、みんなこんなライトに起業してるんだな」と、それまで漠然と持っていた起業の選択肢にリアリティが出てきて。リクルートの次のステップとして、toC領域のスタートアップでビジネスサイドとして経験を積みたいと考え、転職活動を開始しました。といっても当時のスキルは採用のみだったので、まずは人事としてジョインしてから経営や企画の面に携わっていこうと。

転職活動をしていた2014年ごろは、エンジニア採用のできる人事担当者の数も少なく、ITベンチャー企業の増加による需要の高まりもあって、たくさんの企業からオファーをいただきました。でも、最終的にどの企業に入社するべきか悩んで決められなかった。そこで、内定をいただいた企業にご相談して、順番に各社で数ヶ月単位で働いてみることにさせていただきました。

その3社目がエウレカで、「ここに入社しよう」と決意してその他の企業に辞退を申し出ました。

理由は、経営層メンバーとの感覚や考え方が心地良かったのと、当時の社員数がまだ60人くらいで規模感としてもちょうど良かったこと。また、エウレカの主軸事業が『Pairs(ペアーズ)』という恋愛・婚活マッチングサービスだったので、toC領域という点でもマッチしていました。今でこそ、オンラインのマッチングサービスはたくさんありますが、当時は、『Pairs』と『Omiai』くらいしかなくて、まさにこれから盛り上がっていく段階のマーケットだったんです。

庄田:エウレカでは人事として、新卒採用だけでなく中途やバックオフィス含めた採用全般を担当しつつ、広報にも関わって。経営にとても近いところで組織や事業のあらゆる面に関わっていました。エウレカで1年ほど働いた頃、起業しようと決意しました。

転職した当初は2〜3年ぐらいエウレカで働いて、その間に起業の準備をしようと考えていたのですが、そこまで時が経つのを待たなくても次に進んでいけるのではないかなという気持ちが自然に生まれていきました。

そうした感覚的なタイミングに加えて、当時すでに自分が経営側にいるような意識を持って土日も自発的に働いていたので、そんな風に全力でコミットするなら自分の会社でチャレンジしたいと思ったのも理由の一つです。

そして、いざ起業すると決めたけれど、思いつく事業は自分がそれまで携わってきた人事領域ばかりで。 エウレカの創業者である赤坂さんには、「失敗しても成功してもまたやればいい。人生5回起業するとしたら1回目は成功確率高い方がいいんじゃない?HRの会社として始めて、その後でtoCの事業を始めてもいいし。」とアドバイスをもらって、最初は自分が最も解像度高く物事を考えられるHR領域で、自分が本当に欲しいと思えるプロダクトを作ろうと人事領域での起業を決意しました。

採用の民主化へ-現場メンバーが参加する採用プラットフォーム

庄田:HERPが開発・提供している『HERPHire』は、現場のメンバーが採用の意思決定に主体的に関わっていく「スクラム採用」に必要な要素をギュッと詰め込んだ採用プラットフォームです。

日本における採用は、人事と経営陣でそのプロセスや意思決定が完結することがほとんどです。でもそれが成り立っていたのは、これまでの日本がセクショナリズムのきいた既得権益ありきの時代にあったから。今は、「このビジネスをやったら儲かり続ける」なんて領域はどこにもありません。「終身雇用」や「新卒一括採用」といった、長らく国内で続いてきた雇用に関するいわゆる“暗黙のルール”も崩壊してくる。そんな変化の激しいビジネス環境の中では、どれだけ柔軟な企業でいられるかが重要です。だから、大企業も副業を認めたり、中途採用を増やしたり、デジタルツールを取り入れたり、変わろうとしているわけですが、採用においても同じで「人事と経営陣で完結するのではなく、その時の状況に応じて現場メンバーが必要とする適切な人材を採用するために組織全体で採用活動に取り組んでいく」、そういったやり方に変わっていく必要があります。

庄田:僕たちは、全社員が主体的に採用活動にコミットする「スクラム採用」が日本のスタンダードになっていくことで、日本企業がもっと良くなっていくと信じています。

人事と経営陣だけで進める採用って、トップダウンマネジメントの典型的な形でヒエラルキーの再生産をしているようなものですよね。採用の意思決定を現場主導で進めるようにすれば、ビジネスのスピードは自ずと早くなるし、組織にとってより良い意思決定になる。まさに「採用の民主化」と言えるのではないでしょうか。採用活動を通じて、経営陣が「どんな基準で人材を評価しているのか」、「組織に求めていることは何か」といったポイントがリアルタイムで現場メンバーに伝わることもスクラム採用のメリットだと思います。

庄田:リクルートで新卒採用を担当していた時は、現場で働く経験豊かな人材が、「どんな学生を欲しいのか」「どんな基準で人を見ているのか」をあまり分かっていませんでした。人事としては、「この人が良い」と思って自信を持って送り出すけど、それってどこか“賭け”みたいなところもあって。採用のプロセスを人事と現場メンバーとの間でプッツリ分断してしまうのではなく、社員全員で一緒に働くメンバーを決めていくことができれば採用した人材が企業にマッチする可能性はより上がりますよね。

創業以来退職者ゼロの組織

-2017年に創業してから現在に至るまで退職者がゼロと伺ったんですが、そうした組織のカルチャーはどのように作られていったのでしょうか?

庄田:HERPは社員の約半数が新卒入社の組織です。中途入社の人がなんとなくしている忖度のようなものが新卒メンバーにはなくて。納得できないことにはしっかりと意見を言ってくれるので、こちらが今までの会社員生活で当たり前だと思ってきたことを振り返るきっかけになります。彼らのピュアさこそが組織のフラットな雰囲気を作っていると思います。

例えば、朝10時に会社に来るという決まりに対して「なぜ10時なんですか」と言われたら、確かに僕自身もよく分からない。特にエンジニアは、何時間働くかではなく、その行動が生む価値を事業に提供しているので「10時に仕事を始める」規則は無くしてしまった方が理にかなっているね、となる。会社のバリューを変えた時には「このバリューとこのバリューは、こういうことがあったときに衝突し合うし、どちらを優先すべきか瞬時に判断できない時が出てくると思います」と言われたりして。

とにかくみんな真剣なんですよ。まだ社会人1年目だけど組織と事業を僕と一緒に作っているという意識を持ってくれていて、あらゆる意思決定にしっかりと関わってくれる。だから、このメンバーと一緒に相互理解を深めるためにどう頑張ったらいいかを僕自身も考え続けて、「当たり前」を見直し続けてきたんです。

そうやって社員と向き合う中で培ってきた信頼関係が、“退職者ゼロ”というわかりやすい結果となって現れているのかなと思います。

役割がなくなっていく幸せと緊張感

-働いていて楽しいなと思う時について教えてください

庄田:毎日こんなに楽しいことないなって日々感じています。
大学生だった頃は、サークルでしこたま飲んで次の日授業をサボるのが楽しかったけど、今はそれとはまた違った種類の楽しさを知っている。たった一人の小さな人間が最大限のリスクをとって世の中のために意味があることをし続けられるという状況、なかなかないじゃないですか。しかも、自分が勝手にリスクを取って始めたことに、今はたくさんの人が関わってくれて一緒になって考えてくれて、取っているリスクも絶対に一人じゃ負えないようなところまで大きくなっていて。

だからこの瞬間が楽しいとかはなくて、毎瞬間が楽しさと苦しさの連続ですね。
あえて言うなら、社員の成長を感じると嬉しい気持ちになります。
インターンから社員として入社したメンバーだと、最初は議事録すら取れなかったのに今では営業を全部任せられるようになっていたり。僕の意思決定に対して、僕側の視点で「こうしたらいいと思う」とか「代わりにやっておきますよ」って言ってくれるようなことも度々あります。そんなふうに、僕がこれまで当たり前のようにやってきたことや、僕しかできないと思っていたことが、どんどん無くなっていくのって幸せなことだと思っています。同時に会社の非連続な成長をリードする役割にフォーカスできるようになって、自分の役割定義の難しさを感じつつ、短期ではない長期の成長へのバリューを強く意識するようになりました。

大企業の採用のあり方を変える

庄田:今は、ITベンチャー企業だけでなく、大企業においても採用のあり方が変化している時期だと感じています。「中途採用でジョブ型雇用を始めます」や、「オフィスを半分無くして原則リモート勤務にします」など。新型コロナウイルスの影響でますます加速している流れですよね。

僕たちのプロダクトを大企業の方々にも使っていただくことによって、日本の採用のあり方が根本から変わっていくことに繋がっていくと思うので、今はまさにそれをやりたいなと考えています。それが我々のミッション達成にダイレクトに通じる道であることは間違いないですし、人生の時間を賭すにあまりあるチャレンジだと心から感じています。

(文:郷田いろは)

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