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2020.4.6

職能給ってどうやって取り入れれば良いの?職能給を運用するポイントとは

職能給は能力やスキルに応じて賃金を決定することができますが、職能給のメリットを生かすためには職務給との違いを理解しておかなければなりません。また、職能給を取り入れるうえで押さえておくべきポイントがいくつかあります。この記事では、職能給にはどのようなメリットやデメリットがあるのかを解説し、上手に取り入れるにはどうするべきかを紹介していきます。

職能給の定義

職能給とは、賃金をどのような能力やスキルを持っているかで決める制度です。「職能」とは、職務をやり遂げる力がどのくらいあるのかということを指しますが、職能給を導入するためには遂行能力をきちんと客観視する必要があります。しかしこの職務の遂行能力に対して、的確な評価を下すのは決して簡単なことではありません。職能を決める基準は正しく設定しなければなりませんが、実際は「勤続年数はどれくらいか」あるいは「社内や業界でどれだけの影響力があるか」など、個人本位な情報によって決定している企業がほとんどでしょう。成果を出さずとも、年齢が上がればおのずと賃金も上昇していく傾向が多いようです。
職能給は年功序列や終身雇用が基盤となっており、日本型雇用に適した賃金制度であるといえるでしょう。その点、職務給の給与は勤続年数ではなく成果や責任によって変わるのが特徴で、働き方によって同じような賃金評価を導入するという考え方となっています。

職能給を取り入れるメリット

職能給にはさまざまなメリットがあります。一つ目のメリットとして挙げられるのは、「離職を防止できる」ということでしょう。職能給は、年齢や勤続年数に応じて自動的に給与が上がっていく性質を持っている賃金制度です。そのため、従業員は長期間勤続して高い給与をもらえるよう会社に残り続ける傾向があります。そのほか、「従業員のスキルや能力が向上しやすい」という点も大きなポイントといえるでしょう。スキルや能力、資格があれば若くても高い賃金を得られるケースがあるので、採用現場でも希望を持った人材が集まりやすくなります。
「高い水準の技術を確保できる」のも魅力の一つです。幅広く知識を持った人材や、1つの技術に習熟した人材を育てられるため、新入社員は将来にいいイメージを抱きやすく安心感を持つことができます。「企業の成長につながる」という点も忘れてはなりません。技術やスキルを持つ人材がたくさん集まってくることで、企業も成長しやすい環境を築き上げることができます。
「従業員の意欲を向上させることができる」という点も職能給のメリットです。スキルや能力によって評価されるため、モチベーションを高く維持しながら業務に取り組むことが可能になります。

職能給を取り入れるデメリット

職能給にはメリットがある反面、デメリットがあるのも事実で、職能給を取り入れる際はきちんと理解しておかなければなりません。まず考えられるデメリットとして、「若手社員から不満が生まれる」ことがあります。高齢の従業員は相対的に高い給与をもらえるので不満が生まれることもありませんが、若手の従業員は成果に見合った給与をもらいにくくなりがちなので、どうしても不満を抱きやすくなります。
「業務内容と給料に矛盾が生じるケースがある」という点についても理解が必要です。難しい業務を遂行していても能力やスキルがなければ給料が安くなってしまうため、正当な評価を給与で示すことができません。「職能給は毎年上がるものではない」というのも職務給のデメリットといえるでしょう。職能給は能力やスキルで給与が決まるというのが特徴であるため、給与が上がるきっかけがそこまで多くありません。なかなか給与が上がらなければ、従業員の不満が高まってしまうケースもあるでしょう。
さらに「従業員は離職すると職能給の恩恵を受けられなくなる」ということもデメリットとして挙げられます。職能給は、スキルアップや結婚、出産などのライフスタイルの変化で離職した際に職能給の恩恵が受けられなくなるという特徴があります。そのため、なかなか離職することができず、長い間同じ職場に縛られてしまうという人も少なくありません。「高齢層に過払い気味になる」という点にも注意が必要で、離職を防止できるのが職能給のメリットである一方、高給な従業員を多く抱えるようなことがあれば企業経営を圧迫する恐れがあるでしょう。

職能給の支払われ方

一般的に、職能給は基本給に含まれているものです。しかしボーナスには適応されない場合もあります。ボーナスの額は職能給を基本給に含まれているかいないかで大きく変わってくるため、職能給を基本給に含みたくないと考える企業も少なくありません。その場合、職能給は手当として支払われ、給与の計算方法も変わってきます。
また、賃金制度には「仕事給」「属人給」「総合決定給」の3種類に分けられますが、職能給や職務給は「仕事給」として支払われるのが一般的です。職能給を採用するのであれば、仕事に対する貢献度で給与を計算しなければなりません。そして、職能給には昇給や減給する場合もあることを覚えておきましょう。会社に成果が認められ等級が上がれば給与も上がり、勤務年数や年間の評価によっても給与が上がることがあります。その一方で、勤務態度が悪くなるなど、何らかの理由で評価が下がった場合には減給することもあるのが職能給の特徴といえるでしょう。
残業代が基本給の一部であれば、職能給の対象として支払われるということも忘れてはなりません。職能給が基本給に含まれているかいないかによって変わってきます。基本給に含まれていれば計算対象になり、含まれていなければ計算対象にならないので、ルールに従って正しく給与を算出しましょう。

職能給の基準となる等級と号俸

職能給は「等級」と「号俸」により計算されます。基本的に従業員の「等級」と「号俸」をどう組み合わせているかで職務給は決まります。「等級」とは役職が上がるに従って上がる仕組みで、昇進や降格などで基準が決められています。一方、「号俸」とは査定で高い評価を得ることによって上がる仕組みとなっています。勤続年数や上司の評価などで決まる基準で、等級より細かい基準が設けられているのが一般的でしょう。変更される時期はそれぞれの企業によって異なりますが、年度初めの4月に変更することが多いようです。
職能給で給与を計算する際は、「職能給表」を用いるのが効果的です。職能給表とは、等級と号俸を組み込んだ表のことを指します。職能給表はそれぞれの企業によって異なる基準で制作されていますが、号俸や職能給のフォーマットを開示してしまうと従業員の給与額が察知されたり、不満を抱かれたりするリスクがあるので、一部の人しか確認できないようになっているケースも少なくありません。特に民間企業では開示されることは少なく、その内容を把握できるのは人事だけというのが一般的となっています。
それぞれの等級の中には数十段階の号俸があり、等級は昇進によって、号俸は在職年数や年間の評価によって定められています。これらの基準を表の中に細かく組み込んでおけば、給与の算出も簡単に行うことができます。

職能給を運用するときのポイント

職能給を運用する際は「重複型範囲職能給」で設計することを意識しておきましょう。移行原資が少なく済み、無理なく実務的に運用できるようになります。また、「2等級下位で定めている上限金額が上位等級の下限金額を上回らないようにすること」や「職能給号俸をできるだけ少なくすること」も意識しておかなければなりません。職能給の最大の特徴は、能力やスキルによって給与が決まるという点にありますが、下位等級の上限金額が上位等級の下限金額を上回るようなことになれば、職能給の持つ能力主義的な持ち味が発揮されなくなってしまいます。職能給号棒が多くしてしまうと、定昇率に影響が出てしまい経営を圧迫しかねないので気をつけましょう。
総合決定給方式に切り替えることを念頭に置いておくのもポイントです。職能給賃金は職能資格制度に代表されるように制度そのものに年功部分を持っているので、より精度の高い能力主義賃金制度を実現するためには、属人給部分をなくした総合決定給方式に切り替えるべきでしょう。
なかには年功的基本給に職能給を組み合わせる運用を行ったり、各種技能手当や各種資格手当に含めたりするケースも少なくありません。どの方法が適しているのかは各企業によって異なるので、自社のスタイルにあった運用方法は何なのかしっかり見極めることが大切です。

多様化する働き方における職能給の変化

時代が進むにつれ、職能給から職務給への移行が促されるようになりました。日本においても国内企業の雇用形態はもともと職能給にマッチしていましたが、働き方が多様化してきたこともあり、職務給へ賃金制度を移行する流れが活発になっています。業務もどんどんグローバル化していったことで、能力で評価するのではなく成果に応じて評価を下す「成果主義」の考え方が広まったことも一つの要因といえるでしょう。
以前は多くの企業が採用していた終身雇用も、時代の変化とともに当たり前ではなくなってきました。将来的な給与の安定が期待できるという職能給のメリットが失われたことも、職務給へ移行を推進するきっかけとなっています。
転職者が増えたことも大きいでしょう。雇用は流動的になったことで転職者も増えてきたため、勤続年数で的確な評価を下せなくなりました。働き方改革による変化も重要な要素の一つです。長時間労働が抑制されたことで、評価の際は職務の内容が重要視されるようになり、給与の算出にも少なからず影響が出てくるようになりました。

職能給は従業員のやる気も向上させる

働き方改革が導入されたことにより、給与額の決定方法にも変化が見られるようになりました。企業経営者は、これからの時代職務内容に沿った職能給を支払うことが期待されています。正しい評価を下して職能給を支払うことができれば、従業員のモチベーションも向上させることができるでしょう。そのためにも、職能給を導入する際はメリットやデメリットをきちんと把握することが大事です。

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