2019.09.26

企業にさまざまメリットをもたらす就業規則!概要と作成方法

企業にさまざまメリットをもたらす就業規則!概要と作成方法

労使間のトラブルを未然に防ぐために、就業規則を整備しておきたいと考えている経営者は多いのではないでしょうか。就業規則があることによって、法令遵守している企業というイメージがつくことも期待できるでしょう。しかし、法律に則った就業規則を作成するためには、知識を身につけておく必要があるのです。この記事では、就業規則の概要や作成するメリット、作成方法などについて解説します。

就業規則とは?労働基準法に基づく労働条件を定めた規則

就業規則とは、被雇用者の労働時間・賃金・服務規程などの労働条件を定めた規則です。労働基準法という法律に基づいて、定められます。簡単に言いかえるならば、使用者と労働者が共通認識としてもっている職場全体のルールのことです。労働者を募集するときに労働者にとって有利な条件を提示しておきながら、実際には不利な条件で働かされるようなことがあってはなりません。使用者と労働者との間でトラブルが起こらないようにするためにも、しっかりと明文化されたルールがあることが望ましいでしょう。

会社の事業規模はどの程度か、どのような業種・業態なのか、労働者の数はどれくらいか、経営状態は良好かどうかなどによって、ルール化するべき事項は異なります。また、いくつもの支店をもっているような大きな企業では、企業単位ではなく事業場単位で就業規則を定めることが可能です。すべての事業場を本社のルールに準ずるとすることも可能ですが、それぞれの事業場に合った就業規則を作っておくと細やかな対応が可能になるのではないでしょうか。

法律で就業規則の作成義務がある会社

労働基準法によって就業規則の作成が義務づけられている会社の条件は、常時10人以上の労働者を抱えている会社であることです。常時10人以上の労働者がいるにも関わらず、就業規則を作成せず行政への届出を怠っている場合には、 30万円以下の罰金という処分が科せられます。常時10人以上という条件には、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーも含まれています。正社員が少数しかおらずパートタイマーがメインとなって多く働いているような職場では、就業規則を作らなくてもいいと勘違いしがちであるため注意が必要です。派遣社員は派遣元の会社に雇用されているためカウントされませんが、派遣社員以外の雇用形態では基本的に人数にカウントされると考えておきましょう。

雇用関係の助成制度を利用したい場合には、就業規則の提出が必要になるケースもあります。このような場合には、労働者が常時10人に満たなくても就業規則を作成しなければなりません。また、労働基準法による作成義務がなかったとしても、労働条件などを明確にしておくことはトラブル防止につながるためメリットがあります。

就業規則を作成することで規定できることとは

就業規則を作成するということは、社内ルールを整備するということです。社内ルールを整備することによって得られるメリットとは、どのようなものでしょうか。

1つ目は、人事労務管理の効率化です。人事労務管理担当者が業務を行うときに、就業規則がしっかりと整備されていれば、決められたルール通りに業務を遂行するだけでよいため効率的です。

2つ目は、経営者の理念や方針を従業員に伝えられることです。就業規則には、経営者がどのような思いを抱いて創業したのか、どのような方針で経営していきたいと考えているのかなどを盛り込むことができます。自分の働いている会社が何を目指しているのかわからないと、不安になったり仕事のモチベーションがあがらなかったりするものです。経営者が何を考えているのか従業員に伝えられるのは、大きなメリットだといえるでしょう。

3つ目は、労使間のトラブルの防止です。労働条件などが面接時の口約束だけだと、労使間に行き違いを生じる危険性やもめる原因になりかねません。トラブルを未然に防ぐツールとして、就業規則は非常に有効です。

4つ目は、優良な会社としてアピールできることです。就業規則は法律に則って作成されるため、就業規則がある会社は法令遵守していると考えてよいでしょう。労働基準監督署や年金事務所などによる調査があっても、常日頃から法令遵守がなされていれば慌てる必要はありません。

5つ目は、助成金対策です。助成金を申請するときに、就業規則の提出が必要になるケースがあります。助成金を申請するために間に合わせで就業規則を作成するのではなく、しっかりとした内容の就業規則をあらかじめ作っておくことが望ましいでしょう。

就業規則がないことによるデメリット

就業規則がないことによるデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。

1つ目は、会社の都合で有給休暇を付与することができないことです。労働基準法の改正によって、年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、5日は確実に取得させなければならないという制度が2019年4月から始まりました。これにより、計画的に会社の都合で有給休暇を付与する制度を導入する会社があるでしょうが、就業規則に計画的付与制度について明記しておかなければ導入することはできません。

2つ目は、社員の欠勤に対処できないことです。社員が欠勤した場合に、就業規則に定められていないと賃金を差し引くなどの対応ができません。長期にわたる休業をしたときに、どのような条件で退職扱いにするかなども難しくなります。

3つ目は、社員の突然の退職に対処できないことです。法律上では、退職の2週間前に申し出れば社員は退職できることになっています。しかし、実際には引き継ぎなどが必要になるため、2週間前の申し出では準備が間に合わない会社も多くあります。就業規則では、退職の1カ月前に申し出ることなど、退職について自社の実情に合った取り決めができるのです。

4つ目は、懲戒免職を行うことができないことです。懲戒免職処分を行うためには、どのような条件で懲戒免職になるのかを就業規則に定めておく必要があります。就業規則に定めがない場合は、会社の都合で懲戒免職処分を行うことはできません。

5つ目は、助成金の申請ができない場合があることです。助成金を申請するための要件として、就業規則の作成や内容変更が含まれている場合があるため、就業規則を作っていないと助成金の申請ができないケースが出てきます。

就業規則を作成する方法

就業規則を作成する方法の1つ目は、モデル就業規則などのテンプレートを利用することです。厚生労働省のホームページ上には、モデル就業規則という就業規則のテンプレートが掲載されています。項目ごとに遵守するべき法律の内容や定める目的が解説されているため、理解を深めながら就業規則を作成することができます。

2つ目は、社会保険労務士などの専門家に依頼することです。遵守するべき法律の内容や定める目的を理解したとしても、実際にどのようなトラブルが多いのかなどの知識は専門家に聞くのが確実でしょう。費用がかかったとしても、質の高い就業規則を入手することができます。

3つ目は、自社で作成することです。テンプレートを利用せずに就業規則を作る場合は、オリジナリティが出せるというメリットがあります。しかし、事前に決めておくべき項目が抜けてしまうなどの危険性があるため、専門家などの第三者の視点から内容を確認してもらう必要があるといえるでしょう。

就業規則の絶対的記載事項とは?

就業規則の絶対的記載事項とは、必ず記載しなければならない事項のことです。

1つ目は、始業・終業時刻です。何時から何時までが労働時間なのか、記載しなければなりません。

2つ目は、休憩時間・休日・休暇についてです。年次有給休暇を会社の都合で付与する場合には、その旨を記載する必要があります。

3つ目は、就業時転換についてです。交代制、つまりシフト制を導入している事業場の場合は、就業時転換についても定める必要があります。

4つ目は、賃金や昇給についてです。労働賃金や昇給の条件などが明確になっていないと、使用者と労働者との間でトラブルになりやすいといえるでしょう。
5つ目は、退職手続きや解雇条件です。退職したいという希望がある場合に、どのくらい前に退職の意思を伝えなければならないのか定めることができます。また、就業規則に定められていない理由で解雇した場合には、労働者側から不当解雇として訴えられる危険性があります。合理的な理由であり、なおかつ就業規則に定められている条件にあてはまらなければ、解雇することはできません。

就業規則の相対的記載事項とは?

就業規則の相対的記載事項とは、社内の制度として定めるのならば記載しておかなければならない事項です。

1つ目は、退職手当や賞与・最低賃金額についてです。退職手当や賞与を設けないのであれば記載する必要はありませんが、設ける場合にはどのような算出方法がなされるのか明示しなければなりません。

2つ目は、食費・作業用品等の負担についてです。

3つ目は、安全衛生についてです。食品を扱う業種などでは設けられることが多い項目でしょう。

4つ目は、職業訓練についてです。仕事で必要な訓練を受けるための費用を出してくれる会社もあれば、労働者の負担としている会社もあります。

5つ目は、災害補償・業務外の傷病扶助についてです。

6つ目は、表彰・制裁についてです。懲戒免職処分は制裁の一種にあたりますので、処分をする場合には就業規則に記載しておく必要があります。

7つ目は、その他当該事業場の労働者すべてに関する事項です。休職や配置転換、出張費などについて定められることがあります。

就業規則の任意的記載事項とは?

就業規則の任意的記載事項とは、会社の任意で記載する事項です。前文や企業理念などは、記載しなくても構わない項目です。しかし、創業者がどのような理念で会社を立ちあげたのか、現在の経営者がどのような方針で運営しているのかなどを労働者に伝えることは、愛社精神や帰属意識を育てることにつながります。高いモチベーションを維持しながら仕事をしてもらうためにも、企業理念を伝える内容は設けることが望ましいでしょう。

また、セクハラやパワハラなどのハラスメントが注目を浴びるようになり、ハラスメントの禁止に関して記載する会社もあります。開発部をもつような業種では、業務の過程で発明したものや著作物を作成した場合の知的財産権の帰属に関する規定が設けられることもあります。就業規則は、トラブルを未然に防ぐ効果が期待できるものです。自社の業務のなかでトラブルに発展する可能性が考えられる事柄に関しては、できるだけ前もってルールを設けておくとよいでしょう。

就業規則を作成するときの注意点

就業規則は、必ず法律に則った内容にしなければなりません。法律に定められているものよりも低い賃金にすることや長い労働時間を設定するような内容は、許されないのです。法律に違反する内容を就業規則に定めた場合は、違反している内容が無効とされます。また、絶対的記載事項は必ず記載しなければならない事項です。相対的記載事項に関しても、社内のルールとして確立されているものは記載しなければなりません。人によって退職手当の算出方法が異なるといったような曖昧な運用をしていては、労働者との関係性も悪くなりますし、企業としての信用を失う危険性もあります。

すべての労働者が安心して働けるように、明文化されたルールを作ることが大切です。解雇に関しては、就業規則に記載してあったとしても合理性がないと考えられる場合には、解雇理由としない場合もあります。社会保険労務士などの専門家に相談して、就業規則を点検してもらうことを視野に入れてはいかがでしょうか。

別規定とはどんなもの?

別規定とは、就業規則の内容を分野別に、より詳細に定めたものを指します。別規定には、パートタイマー規定、賃金規定、育児・介護休業規定、退職金規定などの種類があります。パートタイマー規定を作成していない場合には、正社員や契約社員とパートタイマーが同じ条件下で働くことになりかねません。異なる労働条件を設定したい場合には、パートタイマー規定を作るようにしましょう。賃金規定には、残業の割増賃金などが記載されます。記載通りに残業代を支払っていない場合には、労働者とのトラブルになる危険性があります。賃金規定がなかったとしても、法律で定められている割増賃金を支払っていない場合にはトラブルになりますので注意しましょう。

育児・介護休業規定については、しっかりと定められているほうが労働者は安心して休業することができます。退職金は法律上の義務ではなく、会社が任意に設定するものです。ただ、退職金を支払うのであれば、勤続年数や金額などを明記した退職金規定を作成することが望ましいでしょう。

就業規則作成・変更時必要な労働基準監督署への届出について

就業規則を新たに作成した場合、就業規則や別規定の内容を変更した場合には、労働基準監督署への届出が必要になります。就業規則を作成・変更した後、労働基準監督署への届出までの期間は特に定められていません。ただ、常時10人以上の労働者を抱えている会社は就業規則の作成が義務づけられていますから、早めに届出をすることが望ましいといえるでしょう。

届出に必要な書類は、就業規則一式と就業規則届・意見書などです。意見書とは、労働者代表の意見を記載したものです。労働者の過半数で構成された労働組合があればその代表、労働組合がなければ労働者の過半数のなかから選ばれた代表者が意見書を作成します。就業規則を作成するときに、労働者の意見を聴取していることを示すためのものです。会社役員や管理監督者は労働者代表になることができませんので、注意しましょう。意見書の内容が就業規則に反対するものであったとしても、それによって就業規則の届出が拒否されることはありません。しかし、労働者が安心して働くためにも、合意の得られるような内容にしたいところです。

就業規則の従業員への周知

就業規則を従業員へ周知することは、労働基準法で義務づけられています。

周知方法の1つ目は、常時それぞれの事業場の見やすい場所に掲示することや備えつけることです。大まかな規定に関しては、掲示してあるものを朝礼で読みあげるようにしている会社もあるでしょう。労働者の休憩スペースなど、共有部分に備えつけてある会社もあります。

2つ目は、書面で労働者に交付することです。事業場でゆっくりと目を通す時間がとれないような場合には、書面で労働者に交付することが望ましいのではないでしょうか。

3つ目は、DVDやブルーレイなどの記録媒体に記録し、それぞれの事業場に労働者が記録の内容をいつでも確認できる機器を設置することです。どのような方法であっても、労働者が常に就業規則を確認できる状態にしておくことが必要となります。就業規則に変更があれば、速やかに従業員に対して周知しなければなりません。上記の方法はすべて、労働基準法施行規則で定められています。

法律に則った就業規則を整備しておこう!

就業規則は、労働基準法に則った内容で作成し、従業員にしっかりと周知する必要があります。就業規則を整備しておけば、使用者と労働者との間のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。問題が起こったときにその場しのぎの解決をしていくのではなく、あらかじめルールを決めておくことで業務の効率化をはかることもできます。法令遵守をアピールできるなど企業にとってもさまざまなメリットがあり、労働者にとっても安心して働くことができる材料になります。

法律は最低限のことを広い範囲で定めていますが、就業規則は自分の会社の現状に合った内容で作ることができるというメリットもあるのです。就業規則がないことによって、年次有給休暇における計画的付与制度の導入ができないことや懲戒免職処分ができないなどのデメリットもあります。労働基準法によって就業規則の作成が義務づけられている規模の会社であるかどうかに関わらず、法律に則った就業規則を整備しておきましょう。

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