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2020.6.17

スキルマップ導入とは?作り方と職種別作成例を紹介

スキルマップは、従業員の能力を一覧表にまとめたもので、計画的に人材育成を行うためには貴重なデータになります。また、会社組織は適材適所に人材を配置しなければ、生産性を上げることは難しいです。スキルマップは一目で従業員のスキルがわかるため、人材を抜擢する際の大きな判断基準になるでしょう。

この記事では、スキルマップの基本的な考え方や作成手順、管理・活用方法などを実例を交えて解説していきます。

サイダス社が提供する「CYDAS」は、「働きがい」を生み出すメカニズムが詰まったタレントマネジメントシステムです。人材情報を一元化し、目標管理や1on1、フィードバック機能など、さまざまな機能を組み合わせてサイクルを回すことで、一人ひとりのワークエンゲージメントを高め、組織を強くします。

スキルマップとは

スキルマップとは、会社の業務を遂行していく上で、誰が必要となる知識や技術を持っているのかを明らかにした一覧表です。同じ職場で働いていても、身につけているスキルやその習熟度は人それぞれ異なります。それらのことがスキルマップで明らかになることにより、一人一人の従業員ができることを一目で判断できるようになるのです。また、スキルマップでは職場のチームや部門単位での評価も可能となります。個人や組織で目標を立てたときに、どこまで達成したかが明確になるため、人材育成の面で効果が期待できるでしょう。

スキルマップにおけるスキルとは、資格や技術力、知識などを意味します。管理者であれば管理能力に加えてこれまでの経験値なども含まれることから、比較的広い範囲で個人の能力を把握する方法といえるでしょう。そのため、個人のスキルを正確に知るためには、スキルの判断基準をあらかじめ明確にしておかなければなりません。明確な基準を設けて判断することで、従業員のスキルや不足している点なども見える化されることになります。

トヨタ自動車での活用例

トヨタ自動車は、生産工程における複数の作業を遂行する「多能工」を育てることを目的として、スキルマップを取り入れました。今では「トヨタ生産方式」と称され、スキルマップ活用の成功例として幅広い業界でお手本とされています。

トヨタ生産方式では、スキルマップを用いて社員個人のスキルを可視化し、不足しているスキルを洗い出します。社員1人ひとりが習得すべきスキルが明確になるため、効率的かつ効果的な社員育成が可能です。

さまざまな技術を持つ多能工により、業務遂行のムラが軽減され、多くの製品を品質を維持して生産できます。また、多能工の管理は、チームワークによる生産性の向上につながります。

スキルマップを作る目的とメリット

スキルマップを活用することで、人材配置の最適化や社員のモチベーションアップといったメリットが期待できます。また、人材育成での無駄な時間やコスト軽減にもつながります。ここでは、スキルマップ導入の目的やメリットについて具体的に解説します。

【スキルマップ導入のメリット】

  • スキルの可視化
  • 人材育成・スキルアップ
  • 従業員のモチベーション向上
  • 人材配置の最適化
  • 評価基準の公平化
  • 採用ミスマッチの削減

スキルの可視化

スキルマップを作成することで、社員個人が持つスキルを可視化できます。「誰がどのようなスキルを持っているのか」「個人のスキルがどのような場面で活かせるのか」などを、経営者や管理者が簡単に把握できます。

「必要なスキルを持つ人が何人所属しているのか」といった部門やグループ単位でのスキルのもわかるため、組織内の将来的な課題に活かしていくことが可能です。

人材育成・スキルアップ

可視化された社員のスキル状況は、人材育成やスキルアップに活かすことが可能です。スキルマップにより、すでに持っている知識や一定レベルに達していないスキルが明確になるため、個人にとって無駄のない教育計画が確立でき、着実なスキルアップが見込めます。

また、部署ごとの効率的な教育体制を最適化することが可能です。社内教育を実践しているものの、結果や効果を追えているかあいまいな場合もあるでしょう。そこで、スキルマップを用いてスキル別の達成状況を記録すれば、効果的なフォローアップが可能です。

従業員のモチベーション向上

スキルマップの有効活用により、社員のモチベーションアップが期待できます。スキルマップを使って個人のスキルを正確に把握できるため、上司や管理職からの公平かつ正確な評価が実現します。

社員は「自分の仕事がきちんと評価されている」とわかることで、仕事へのやる気がにつながります。また、スキルマップを通して社員自身が現状を客観的に把握でき、求められているスキルや目標が明確になるため、意欲ややりがいを持って仕事に取り組むようになるでしょう。

スキルマップは、部署やチーム内で公開することも可能です。本人の許可を得た上で他人と共有すれば、健全な競争心が芽生え、仕事やキャリアに対する意欲向上や業績アップが期待できます。

人材配置の最適化

スキルマップは、人材配置の最適化にも役立ちます。社員個人の得意・不得意をスキルマップによって把握することで、各部署に必要な人材をピンポイントで配置することが可能です。

新規事業の立ち上げやイベント開催などの際に、必要なスキルや人材を的確に選定したい場合にも役立ちます。また、スキルマップを活用して適切な人員配置やローテーションが実現すれば、会社全体における業務効率化や離職率の低下にもつながります。

評価基準の公平化

スキルマップには、人事評価規準を公平化できるというメリットもあります。上司や管理者が社員のスキルを個別に把握し、正確な評価を出すことは容易ではありません。そこで、スキルマップにより、上司や管理者が正確に能力やスキルを把握できれば、個人的な感情や記憶に頼らず、明確な規準に基づく評価が可能です。

また、評価を受けた社員も、スキルマップを見ながら目標と現状を客観的に比較できるため、評価を受けた経緯や理由に納得した上で、主体的に業務に向かえるでしょう。

採用ミスマッチの削減

スキルマップは、人材採用においても大いに役立ちます。募集する部署や企業のスキルマップをあらかじめ作成することで、どんなスキルが足りないかが明確になります。そして、候補者の中から、補充すべきスキルや知識を持つ人材を見つけられるため、入社時のミスマッチを避けられます。

また、入社後に即戦力としてすぐに活躍してもらえる可能性が高まり、結果的に業績向上や生産性アップも見込めます。

スキルマップが活用されている業界・業種

多くのメリットが見込めるスキルマップは、さまざまな業種や職種で活用されています。ここでは、スキルマップの活用事例として、製造業界とITエンジニア職を取り上げます。人材育成や従業員満足度の向上にスキルマップを役立てるために、ぜひ参考にしてください。

製造業界

先述したトヨタ生産方式を含め、ものづくりの進化・成長を目指す製造業界では、スキルマップを導入する企業が多く見られます。特に高度な専門性や技術力が求められる製造部門や技術部門では、部署やチームにおけるスキルの偏りやムラがあると、生産性の低下を招く可能性があります。

そこで、スキルマップを用いて「誰がどのようなスキルを持っているか」「業務にどこまで技術が必要なのか」など正確に把握することで、社員個人や組織全体としてスキルの抜け漏れを回避できます。

また、ベテランが持つ熟練された重要な技術を、正確かつ確実な形で次世代に伝達する上でもスキルマップが効果的です。業務ごとの習得スキルをレベル別で把握して、適切な指導者と引き継ぎにふさわしい社員を選定することで、スムーズな継承が実現します。

IT・エンジニア

近年、IT業界でもスキルマップを取り入れる企業が増加しています。エンジニアをはじめとするIT業界の多くの職種は、専門知識や高い技術力が必要な上、年々求められるスキルは多様化しています。

スキルマップにより社員が持つスキルの種類やレベルを的確に把握できれば、プロジェクトに必要な人員を効率的に収集できます。また、プロジェクトを管理するマネージャーにとっては、メンバーの選定や案件ごとの技術管理がスムーズに行えるというメリットがあります。

スキルマップの作成手順

スキルマップを作成するには、3つのステップを順番に行っていかなければなりません。

まずは、スキル項目の作成です。スキル項目はスキル体系とも呼ばれますが、スキルを評価する項目を意味します。従業員のスキルを評価する上で、スキル項目はその大元です。適切なスキル項目を選ぶことができれば、スキルの管理を効果的に行うことができるようになるため慎重に進めていきましょう。

次に行うのは、スキル基準の策定です。スキル項目で選んだ従業員のスキルを、どのように判定するのかを決めます。スキルを持っているか、持っていないかの2つの選択肢で評価することも可能です。従業員のスキルをより詳しく把握したい場合には、数段階のレベルで評価するのもよいでしょう。

最後に、スキルの評価方法を決めます。上司が部下のスキルを決める方法や、最初に従業員がスキルを自己評価してから、上司や人事担当者が最終的な評価をする方法などがあります。それぞれの作成手順について、もっと詳しく見ていきましょう。

1.スキル項目の作成

スキル項目の作成は、スキルマップを作る際に最初に行う必要があります。会社での業務の流れを考慮に入れて、それぞれの業務を効率的に進めるためにはどのようなスキルが求められるのかをイメージしましょう。必要となるスキルの洗い出しを行い、項目ごとに並べていきます。スキルの分類がある程度終わったら、スキルに階層を設けて一覧にすると見やすいです。階層数はあまり多くせずに、2~4程度におさえると管理や評価がしやすくなります。

業務に必要となるスキルを挙げていくときに、どこまで細かくすればよいのかを迷ってしまうかもしれません。スキル項目の細かさをスキルの粒度と呼びますが、スキルの内容やスキル名をどう表現するのかなどについても悩みどころです。そういう場合には、スキルマップをどういった目的で作るのかを再確認しましょう。スキルの粒度や内容などをあまり細かくしてしまうと、わかりにくいスキルマップになるため注意が必要です。

2.スキル基準の設定

スキル項目の作成が終わったら、次にスキル基準を設定します。スキル基準とは、スキルをどのように評価するのかを決める基準です。従業員がそのスキルを持っているか、持っていないかで評価するのも一つの基準となりますし、習熟度などに応じて段階を持たせることもできます。スキルのデータを分析したり、他の観点から見直したりする場合に、スキルレベルは数字で表したほうがわかりやすいです。そのため、スキルに3~5段階のレベルを持たせる方法を多くの会社が採用しています。

スキル習熟度の段階をあまり細かくすると、後になって管理が難しくなることが予想されます。そのため、4段階程度に設定するのが一般的です。実際の評価基準を見ていきましょう。もっともスキルレベルの低いレベル1は、個人ではその作業を行えず、先輩社員の補助をするのが精一杯と設定します。そうすると、レベル2は先輩社員が見ていてくれるならば作業が行える段階としてはどうでしょうか。そして、レベル3は一人で作業が行えるだけの経験を積んだ状態。レベル4は、一人でできることに加えて、新人への指導も行えると設定すれば、従業員一人一人のスキルが明確になります。

3.スキルの評価

スキル項目とスキル基準を決めたならば、それぞれの従業員がどういったスキルを持っているのか、習熟度はどの程度なのかを最終的に評価しなければなりません。スキル評価を終えることで、スキルマップが完成します。スキルの評価方法は大きくわけて4種類です。それぞれのメリットとデメリットを見比べていきましょう。まずは、スキルの評価を上司が行うケースです。評価の公平性を確保するには、第三者に確認させるのが理想的でしょう。しかし、コストなどの問題から、上司が最終的な評価をする場合が多いようです。余分な時間やコストがかからないことはメリットといえます。その一方で、デメリットは公平性の確保に難があることです。

次に、本人の報告をもとにして、上司が最終的な評価をするケースです。従業員は業務のなかで自分のスキルレベルがどの程度なのかをだいたい把握しています。補助がなくても自分一人でできると無理をしてしまう人もいるかもしれませんが、そのときは上司が訂正すれば問題ありません。この方法のメリットは、上司が判断するための情報が増えることや、本人が自分のスキルレベルを見つめなおすきっかけになることです。デメリットとしては、本人の報告やその確認に時間と手間がかかることでしょう。
スキル評価の公平性を重視するならば、本人と上司の報告をもとに第三者が最終判断をするべきでしょう。ただし、第三者の選定が難しいことや、コストが余分にかかることがデメリットとして挙げられます。公平性や正確性の面でいえば、試験結果をもとにスキル評価を決めるのも一つの方法です。しかしながら、スキルマップの項目には試験で測定するのが難しいものが少なくありません。また、試験問題を作ったり、採点をしたりするにもコストがかかることを考慮しなければならないでしょう。

スキル項目の作成ポイント

スキルマップを作る上で、最初に取り掛かることになるのがスキル項目の作成です。スキル項目をきちんと選ぶことができなければ、必要な情報が不足したスキルマップになってしまいます。そのくらいスキル項目の選択は重要です。スキル項目作成のポイントとしては、通常の業務フローを頭に思い浮かべて、それを適切な細かさで分解すると作りやすくなります。製品や商品別に分解する方法もあるでしょう。粒度をあまり細かく設定すると管理が大変になり、スキルマップそのものが形骸化するおそれがあります。そのため、スキルの項目数は30以下、階層数は2~4程度におさえるのが一般的です。

スキルの種類

1.コンセプチュアルスキル

スキル項目を作成するときに、ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツによって分類された3種類のスキルを参考にしてみるのはどうでしょうか。スキルについての知識を広げることで、これまでよりも多い選択肢のなかからスキル項目を選べるようになります。それは従業員のスキルを正確に評価するためには重要なことです。まずは、会社の経営層であるトップマネジメントに求められることが多い「コンセプチュアルスキル」を見ていきましょう。

コンセプチュアルスキルとは、論理的な思考である「ロジカルシンキング能力」や、既成概念にとらわれない発想ができる「水平思考」、物事を分析するために有用な「クリティカルシンキング」などのスキルで構成されています。抽象的な概念から本質を見抜く力とされ、経営層だけでなくて一般社員においても応用が利くスキルです。たとえば、コンセプチュアルスキルのレベルが高いと、合理的な思考や行動ができるようになり、ビジネスの現場で中心的な役割を果たすことも可能でしょう。課題の発見や解決に寄与できるすぐれたスキルです。

2.ヒューマンスキル

ロバート・カッツが提唱したスキル分類法の2つ目は「ヒューマンスキル」です。ヒューマンスキルは、他者との関係を構築する「コミュニケーション力」や、話を聞いて相手を理解する力である「ヒアリング力」といった、他者との関係性のなかで発揮される能力です。また、商談などの場における「プレゼンテーション力」や「交渉力」、周囲の人間を引っ張っていく力である「リーダーシップ」なども構成要素に含まれます。会社内においてどの立場の従業員にも求められるスキルですが、とくに中間管理職であるミドルマネジメントには欠かせない能力です。

3.テクニカルスキル

ロバート・カッツによる分類法の3つ目は、業務遂行能力である「テクニカルスキル」です。テクニカルスキルは大きく2種類にわけられます。業界や職種によって必要となる専門性の高いスキルと、さまざまな職種に応用が利くスキルです。前者は「プログラミング」などのITスキルや、人事や労務などに関する専門性の高い手続きが行えるスキルが該当します。その一方で、後者は、会社の商品や市場に対する幅広く深い「商品知識」や「情報収集力」、すぐれた資料作成などが行える「文書作成能力」などが挙げられるでしょう。テクニカルスキルは、一般社員であるロワーマネジメントにもっとも求められる能力といわれています。

スキルマップの作成例

作成例:営業系のスキルマップ

これまで解説してきた手順を用いて、営業職のスキルマップを作成してみましょう。営業職は、自社の商品やサービスのメリットをアピールして、契約につなげることが基本的な仕事です。自分に自信がない人では、積極的に売り込むことは難しくなります。そこで、スキル項目に「自己分析力」を加えてみてはどうでしょうか。自分という人間を知り抜くことができれば、自分の活かし方もわかってきます。自信が持てないのであれば、準備を綿密に行うなど、自分に合った方法を探ることが大切です。また、実際に契約まで結びつけるには、「交渉力」のようなスキルも求められます。大型の案件に着手することになれば、プロジェクトチームのなかで力を発揮できる「プロジェクト管理能力」も必要になるでしょう。

営業職が目を向けなくてはならないのは、自分が担当しているクライアントです。商談の勝率を上げていくためには、「顧客理解力」や「顧客獲得能力」を向上させていかなくてはなりません。顧客を獲得するには、ターゲットアカウントセリング(TAS)などの手法もどんどん取り入れていきましょう。自社の競合相手を視野に入れておくために「競合理解力」も加えると、バランスのとれたスキル項目になります。

スキル基準は、3~4段階のレベル設定がわかりやすいです。先輩社員について補助を行うことができるレベル1から始めて、自分一人で業務をこなしていくことができるレベル2、習熟度の低い後輩にやり方を教えることができるレベル3とステップを設けましょう。スキル評価は、上司による評価を基本として、余裕がある場合には本人の報告をもとにした上司の評価を考慮に入れておきます。これでスキルマップが完成しました。

作成例:技術系のスキルマップ

技術系の職種に関するスキルマップについて、ITエンジニアを例に見ていきましょう。ITエンジニアと一口にいっても、システムエンジニアやサーバエンジニア、プログラマーなど、その業務に応じてさまざまな仕事にわかれています。しかし、会社によっては、通常であればプログラマーが行うプログラミングなども、システムエンジニアがサポートに入らなければならないこともあるようです。スキル項目を作る際には、その会社の規模や方針、業務の種類などを考慮に入れる必要があるでしょう。

ITエンジニアのスキル項目は、業務を遂行するために求められるテクニカルスキルが多くなります。「要件分析力」や「設計力」、「コーディング力」に加えて、業務に応じたテストケースを作れる「テスト力」や、プログラミングでエラーが出た場合に解決できる「エラー対応力」なども必要です。また、システムエンジニアは、クライアントと打ち合わせをしながら、システムの設計から開発にまで携わります。そのため、「顧客理解力」や「コミュニケーション力」などのスキルも求められるでしょう。

次に、スキル基準は、資格やプログラミング言語単位のスキルについては、スキルを持っているか、持っていないかで記述したほうがわかりやすいです。レベルに応じた段階を持たせるならば、技術力などにもとづく細かい設定を作ってもよいでしょう。実務経験が1年未満がレベル1、1年以上3年未満がレベル2、3年以上がレベル3といった具合に、年数で決めてしまうのもわかりやすいやり方です。

作成例:事務系(経理)のスキルマップ

事務系の仕事に就いている人のスキルマップも見ていきましょう。一般事務に必要なスキル項目にはどのようなものがあるでしょうか。一般事務の仕事は、書類の作成や管理、データ入力などに加えて、来客や電話、メールの対応など多岐にわたります。業務を円滑に行うには、「コミュニケーションスキル」や「PCスキル」は必須といってもよいでしょう。とりわけPCのスキルに関しては、知識だけでなくてPC作業の正確性やスピードも求められます。

一般事務のスキル項目は、会社の規模によって大きく変わります。分業が進んだ大企業の場合には、一般事務の仕事はある程度決まっており、他の社員が行っている仕事の進捗状況を確認しながらスケジュールを調整する必要はほとんどありません。その一方で、規模の比較的小さい会社の場合には、一般事務にさまざまな仕事が振られる可能性が高いです。そのような現場では、高いレベルでの「スケジュール管理能力」が必要になります。専門でない業務の事務を任されることもめずらしくないことから、そのための知識や資格の有無もスキル項目に加えるのもよいでしょう。

スキル基準については、資格の有無以外はレベルに応じた段階を持たせるのがわかりやすいです。営業職で解説したように、先輩の補助から仕事を始めて、一人で業務をこなせるようになり、新人に指導できるレベルにまで習熟度を上げていくのがよいでしょう。スキル評価では、自分にできることと今後の目標を本人に報告してもらうのがおすすめです。そうすることで自分に足りていない点が明らかになります。上司や先輩社員が適切なサポートを行えば、本人のモチベーション向上にもつながるでしょう。

厚生労働省のキャリアマップをテンプレートに活用

スキルマップは1から作成する必要はありません。厚生労働省のホームページで提供されている「職業能力評価シート」を活用すると便利です。

キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード

厚生労働省が用意している「職業能力評価シート」は、人材育成を目的とした個人の評価に役立ちます。上記ページから各業態の「一覧」をクリックすると、職業能力評価シートのExcel用テンプレートをダウンロードできます。自社の業界・職種に合わせてカスタマイズするだけで、すぐに使い始めることが可能です。

シートは、スキルを習得するまでにかかる期間の長さによって、レベル1から4まで4つの階層と目安となる役職に分けられています。階層や役職の定義やシートの活用方法については「職種別の職業能力評価シートの導入・活用マニュアル」で解説されているので、参照しながら作成するとスムーズです。

スキルマップ作成の注意点

スキルマップを作るときの注意点は、最初から完璧なものを作ろうとしないことです。スキルマップのよくある失敗の一つに、スキル項目をできるだけ細かくして、従業員のスキルをもらさずに評価しようとしているものです。その意図は理解できますが、あまりにスキルが細かいと管理や評価が難しくなります。スキルマップは、会社の業務内容や従業員の状況などに合わせて、その都度作り直していくのが正しい在り方です。会社上層部はそういった方針を従業員にしっかりと伝えて、スキルマップの作成を進めていきましょう。

スキルの管理方法について

スキルマップの作成が終われば、そこで得られた情報をもとにして従業員のスキルを管理していかなければなりません。その場合、スキルマップの管理方法には3つの方法があります。

1つ目は、担当者を決めて組織を横断的に管理する方法です。適材適所に人材を振り分けたり、スキルの足りていない従業員を教育したりするには、職場全体を広く管理することは効率的です。デメリットとしては、人材の異動を部署から反対されたときに、スキルマップの担当者がどれほどの実行力を発揮できるのか、という問題があります。第三者の目がない場合には、公平性の問題も挙げられるでしょう。

2つ目の管理方法は、スキルマップの評価をする上司が管理するものです。上司は従業員の近くにいることで、部下のスキルについてはよく知ることができます。人材育成の観点からも、上司がスキル管理を行うのは望ましいでしょう。しかし、工期などに追われて、まだスキルが足りていない従業員を仕事に就かせてしまうといったことも懸念されます。こうしたことが発覚すると、会社全体の信用問題になるため注意が必要です。

3つ目の管理方法は、本人が管理するものです。本人はスキルの達成度と目標をその都度修正しながら、スキルの向上を図ります。担当者や上司は定期的にスキルマップを確認し、必要があれば助言や注意を与えます。本人が自発的にスキル向上に取り組んでいるときは、自主性にまかせたこの方法は効果的でしょう。ただし、本人がスキル向上に消極的な場合には、どのくらいの頻度で上司などがスキルマップをチェックするのかを議論しなければなりません。その間隔が長すぎれば中だるみしそうですし、間隔が短すぎれば従業員は信用されていないと考えてモチベーションを落としてしまう可能性があります。

スキルマップの管理にはマネジメントツールを活用

スキルマップを活用することで、公正かつ正確な能力評価や人材配置の最適化、効率的な人材育成といったメリットが期待できます。また、社員個人にとっては、求められるスキルや不足している能力が明確になり、適切なゴール設定やモチベーションアップにもつながります。

スキルアップの効率的な管理には、操作しやすいマネジメントツールが役立ちます。CYDAS (サイダス)は、社員の人材情報を一元管理できる人事システムです。社員の評価やスキルだけでなく、意思や価値観などの個人情報を1つにまとめており、キャリアプラットフォームとして活用できます。スキルマップの効果的な活用方法についてもご提案可能ですので、下記よりお気軽にお問い合わせください。

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