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2021.6.4

休業手当とは?休業手当の種類・申請方法について紹介します

会社は、労働者が働ける状態であったとしても、会社側の都合で従業員を休業させることがあります。また、出産や病気などで休む場合もあるでしょう。こういった場合に、給料が支払われないと従業員は困ってしまいます。そのため、一定の休業の場合、会社は休業手当を支払うことが必要です。そこで、今回は休業手当の種類や申請方法について解説します。

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休業手当とは?

休業手当とは、労働者を雇用している会社が、使用者側の責任で労働者を休業させる場合に支払うことになる手当のことです。会社都合の休業の場合、労働者は働けるにもかかわらず働くことができず、収入が途絶えてしまいます。そういった事態を避けるために、労働基準法第26条で「会社都合の休業の場合、会社は労働者に対して100分の60以上の休業手当を支払う義務がある」と定めています。休業手当支払いの目的は、労働者の生活保障です。

休業手当の支払い対象となる休業は、会社都合による休業に限られるため、原則として災害等の不可抗力による休業などは休業手当の支払い対象にはなりません。会社都合の休業の例としては、経営悪化による仕事量の減少により工場などを稼働させられず休業する場合や、ストライキの発生により操業できない場合などがあげられます。

休業手当と休業補償の違い

休業手当とは別に、休業補償という給付もあります。休業手当と休業補償は、性質が似ている点もありますが、明確な相違点もあるため、違いを正確に把握しておくことが重要です。

上述した通り、休業手当は会社都合による休業時に従業員に対して支払う手当で、根拠法は労働基準法第26条でした。一方、休業補償は、業務中に従業員がケガや病気になったことが原因で働くことができなくなった場合に支払われるものです。労働基準法第77条では、業務上災害による休業について事業者が全額補償を行うことも求めています。

ただし、小規模事業者などの場合は全額補償を行うことが難しいケースも想定されるため、労働者災害補償保険により、業務災害が生じた場合の補償に対して保険金が支払われる制度が整えられました。実質的に、休業補償とは労働災害が発生した場合に労災保険から支給される給付金のことです。労災保険の休業補償は、休業開始4日目以降について、平均賃金の80%が支給されることになっています。

4日のカウントについては、休業が連続していなくても構わず、通算で4日目の休業から給付金が支払われる仕組みです。支給される休業補償は、所得ではなく補償であるため、所得税の課税対象外とされています。また、休業開始3日までについては会社が支給することになっており、支給金額は平均賃金の60%です。

関連記事:休業補償とは?【わかりやすく解説】担当者が押さえておきたい基礎知識

休業の種類

会社を休業するケースとしては、会社都合によるものだけでなく、ほかにもいくつかのケースがあります。ここでは、主に4つの休業の休業内容や根拠法などについて紹介します。

産前・産後の休業

1つ目は、産前・産後の休業です。産前・産後の休業については、労働基準法第65条と第66条に定められています。子どもを出産する場合、母子両方の健康などを考慮することが必要です。そのため、産前・産後に関しては、労働基準法で休業に関する一定の規定が設けられています。出産に関わる休業をした場合、収入が減少することがないように生活保障を行うことが大切です。

産前については、出産予定日の6週間以内に女性が休業した場合、手当が支給されます。多胎妊娠の場合は、出産予定日の14週間以内が対象です。休業するにあたっては、出産予定の労働者自らが申請する必要があります。また、産後については「原則8週間就業させてはいけない」とされている点も知っておくことが必要です。出産後の母体が回復するまでには、一定の期間が必要になるため、無理して働くことがないように、こういった規定が設けられています。ただし、働くことについて医師の許可がある場合は、6週間経過後から働くことが可能です。

育児休業

2つ目は、育児休業です。出産をする場合、産前・産後については1つ目ですでに触れた通り労働基準法で休業に関することが定められています。しかし、出産後は育児の負担もかかってくることを忘れてはいけません。育児のために、会社を休まざるを得ないこともあります。年次有給休暇を使う方法も考えられますが、育児のためにすべての有給を使ってしまうと、いざというときに有給を利用できなくなってしまうことが問題です。そのため、育児のための休業についても考慮する必要があるとして「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)が制定されました。

育児・介護休業法では、1歳未満の子どもを養育する労働者が会社に対して申請を行った場合、育児休業が認められるとされています。育児休業は、通常の年次有給休暇と別に取得することが可能です。また、産前・産後は出産する本人のみが対象ですが、育児休業は性別に関係なく取得できることも特徴といえるでしょう。育児をしながら仕事と家庭の両立ができる環境を整えることが、育児休業制度の目的です。

介護休業

3つ目は、介護休業です。介護休業とは、労働者が一定の親族を介護する目的で休業することをいいます。介護休業に関する法律は、育児休業と同じく「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)です。注意すべき点は、本人の介護が必要になった状態での休業が対象なのではなく、介護が必要な一定の親族がいる場合に介護の目的で休業する場合が対象になります。従業員の父母や配偶者、子ども、配偶者の父母が対象です。

育児・介護休業法の定めにより、一定の親族の介護を目的として休業を申請すれば、休業を認められます。しかし、この法律では介護手当を支給することまでは規定されていません。介護休業中は、会社規定で賃金支給が定められている場合、賃金を受けることができますが、それ以外の場合は手当などの収入がない休業となります。ただし、一定の要件を満たせば、雇用保険から通算で最大93日間介護休業給付を受けることが可能です。約3カ月で支給は終了しますが、介護が必要になってもすぐに会社を辞めずに済むように雇用を維持することが目的となっています。

負傷・疾病の休業

4つ目は、ケガや病気による休業です。業務上の負傷・疾病に関する休業については、労働基準法第75条に定めがあります。また、負傷・疾病に伴う休業時の補償に関する定めは、労働基準法第76条です。労働基準法で、負傷・疾病に関する休業時に休業補償を事業主が行うと義務付けることにより、安心して労働者が働けるようなセーフティーネットを整えることが目的で作られた制度となっています。また、労災発生時の補償を事業主に義務付けることにより、より安全な職場環境の整備を促すことも目的の一つです。

休業補償の金額については、平均賃金の60%を事業主が労働者に支払うこととされています。ただし、労働者を雇う事業主は、必ず労働者災害補償保険に加入することが義務付けられています。労災からの休業補償給付は、特別支給の金額まで加算すると80%です。そのため、結果的に労働者は平均賃金の80%までの支給を受けられます。なお、通勤時のケガや病気についても、一定の要件を満たせば、労災保険からの給付を受けることが可能です。この場合は、労働基準法による補償義務がないため、支給される手当の名称は、「補償」という言葉が抜けて「休業給付」となります。

休業手当の対象にならないケース

従業員は、さまざまな理由で休業をする可能性があります。紹介してきたように、多くのケースで休業手当を受けることが可能です。休業手当が支給される場合は、働かないことによって収入が得られなくなり、生活に支障が生じる影響を最小限に抑えることができるでしょう。ただし、すべての休業について休業手当が支払われるわけではないことに注意が必要です。

休業手当の対象とならないケースとしては、まず、遅刻・欠勤した場合があげられます。このケースでは、労働者本人の不注意などが働けないことの原因にあたるでしょう。そのため、自己責任となり休業手当の支給対象外となります。また、天災など会社側として避けられない事態が生じたことによる休業についても、会社としての休業手当支給義務はありません。病気やケガが故意であった場合も、支給対象外です。さらに、休業手当が支給されるケースであっても、条件によっては手当が満額から減額される可能性があることを認識しておきましょう。

休業手当の申請方法

休業手当について、申請方法を知っておくことも大切です。休業手当の多くは、会社が労働者へ支給することになるため、労働者は会社に対して休業手当支給の申請を行うことになります。特に、注意が必要になるケースは、労災の対象となる休業とコロナウイルス感染による休業についてです。労災給付については、企業申請書に必要事項を記入して申請することになっています。労働者側としては、治療している医療機関の証明書や委任状が必要となり、企業はこれらの書類を労働基準監督署に送ることによって申請を行う仕組みです。

コロナウイルス感染による休業は、原則として会社が休業手当を支給する義務はありません。しかし、雇用調整助成金特例措置や緊急雇用安定助成金を会社として申請すれば、休業手当の一定割合の相当する助成金を受けられることになっています。ただし、会社が申請せず休業手当も支払わない場合は、労働者本人が助成金の申請を行える制度も整えられました。申請は、郵送やオンラインで行うことが可能です。

休業手当を申請しよう

休業手当は、休業によって収入を失ってしまうことがないよう生活を保障することを目的としています。そのため、支給条件を満たす場合はしっかりと申請を行うことが大切です。休業手当には、いくつかの種類がありそれぞれに申請方法が異なっています。まずは、いずれの休業手当に該当するかを正確に把握したうえで、定められた方法で休業手当を申請するようにしましょう。

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