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2020.10.26

ビジネスパーソン必見!ピーターの法則の恐ろしさとその対策方法を紹介

ビジネスパーソンが知っておくべき基礎知識の一つに、ピーターの法則というものがあります。優秀な人材でも昇進を重ねることで無能化するというピーターの法則は、組織における人材の評価や有効活用と密接に関係する法則です。そこで、この記事ではピーターの法則を成立させてしまうリスクや、個人および組織レベルでできる対策方法などを紹介します。

ピーターの法則とは

ピーターの法則とは、南カルフォルニア大学の教授であり教育学者でもあるローレンス・J・ピーターと、脚本家や劇作家として活躍していたレイモンド・ハルが1969年に刊行した「ピーターの法則(The Peter Principle)」という著書で提唱されました。その内容は、簡単に言えば企業などの組織を構成する人材は、もれなく全員が自己の能力を伸ばすための試みを続けなければ組織全体が無能化し、十分に機能しなくなってしまうというものです。たとえ有能な人でも昇進を重ねれば、いずれ能力の限界に達してしまいます。これが「無能」と呼ばれる状態です。
有能な人はさらに出生していく可能性がある一方で、無能になった人はそれ以上の昇進ができず、現在のポストに留まり続けるしかありません。また、昇進前は有能だった人も、昇進後のポストで無能の状態に陥ってしまう場合があります。最終的には、どの階層も一定のポストに留まるしかない無能な人材ばかりになってしまうのです。結果として組織は、まだ無能といえるレベルに達していない人の働きにより機能しているといえます。ピーターの法則は、階層社会のからくりを理解するヒントとなる考え方として、今日においても注目されているのです。

ピーターの法則が起こる原因

ピーターの法則が起こる原因① 昇進・昇格制度

ピーターの法則にあるように、組織が無能な人材であふれてしまう原因として、昇進や昇格制度が挙げられます。企業や会社においては、昇進することで一定の地位を与えられ、給料も上がります。当然、出世を目指す社員も多く、業績を上げるなど自分の能力を組織から認めてもらうための努力をする原動力となるのです。仕事ができるという評価をもらい、順調に出世を重ねれば、いずれは管理職の立場につくこともできるでしょう。
しかし、外資系企業のように厳格な成果主義を導入していない限り、昇進の具体的な目安はあっても、降格の要件が決まっている企業はほとんど見られません。たとえば、中間管理職からさらに出世していく人もいれば、そのポストで落ちついてしまう人もいます。一定のポジションで落ちついてしまった人は、たとえ業績を上げていなくても、その地位から降格させられることはありません。こうして無能な管理職がさまざまなポジションを占めていくことで、組織全体の無能化が少しずつ進行してしまうのです。

ピーターの法則が起こる原因② 人事評価制度

ピーターの法則が成立するもう一つの原因が、人事評価制度です。どの業界や業種においても、人材を適切に評価するのは非常に困難といえるでしょう。売上や利益のように成果を数値化できるなど、客観的な評価を下すための基準がない場合は、管理職の主観で評価が決まってしまうことも多いです。ただし、無能な管理職が評価を行う場合、必ずしも有能な人材が正しく評価されるとは限りません。
上司と部下の個人的な関係が主観に影響を与え、バイアスがかかった状態で評価されてしまう可能性もあります。大きな成果を上げていなくても、組織の規律を守り上司を立てながら無難に仕事をこなしている人のほうが、有能な人より人事評価を得てしまうことも珍しくありません。結果として、無能な人材が管理職のポストを埋めた状態で組織が落ち着いてしまうのです。

日本の能力主義とピーターの法則

年功序列と能力主義が浸透している日本社会は、ピーターの法則が成立しやすい土壌が整っているといえます。年功序列を取り入れた人事は、年齢や勤続年数により昇進が決定されてしまうため、個人の能力は評価の対象にはなりません。そのため、無能な人材が能力に見合っていない地位まで昇進してしまうケースも多く、組織の無能化により拍車をかけてしまうのです。さらに、日本における能力主義は、あくまでも個人の経験や能力に基づく評価基準です。評価対象となる人材が具体的にどのような成果を生み出したかという点については、それほど重視されません。
たとえ昇進後のポストで成果を出せなかったとしても、降格させられてしまうケースは稀です。ピーターの法則は能力主義の評価制度に当てはまりやすいという特徴があります。能力主義の企業が多いうえ、年功序列制度も根強く残っている日本において、無能化しやすい人材が多いのは事実です。一方で、欧米諸国の組織は成果主義や職務主義を導入している場合が多く、個人に与えられた職務や成果によって待遇が決定されます。ポジションごとに能力を発揮しやすい人材を配置することでピーターの法則を回避し、組織の無能化を予防できるのです。

関連する法則

関連する法則① ディルバートの法則

ピーターの法則には、いくつか関連する法則があります。そのうちの一つがディルバートの法則です。アメリカの漫画家であるスコット・アダムズが生み出したキャラクターにちなんで名付けられました。ピーターの法則から派生したディルバートの法則は、ピーターの法則が前提とする条件を覆すような内容が特徴的です。ピーターの法則では、各々の人材は能力の限界まで出世できることを前提としています。一方、ディルバートの法則は、無能な人材に地位を与えることで、組織の存在を最小限に抑えられるという説を提唱しているのです。
実際に組織の運営を担っているのは下層部の人材です。生産性という点において、上層部の人間が深く関わることはありません。そのため、上層部が無能な人材で埋められていても、組織の運営にはそれほど大きな影響を及ぼすことはないというのがディルバートの法則の基本的な考え方です。ピーターの法則とディルバートの法則が同時に成り立つ組織も珍しくありません。

関連する法則② パーキンソンの法則

パーキンソンの法則も、ピーターの法則に関連しています。パーキンソンの法則は、イギリスの政治学者である歴史学者でもあるシリル・ノースコート・パーキンソンが1958年に刊行した著書「パーキンソンの法則:進歩の追求」で提唱された法則です。パーキンソンの法則には大きく分けて、第1の法則と第2の法則があります。第1の法則は、納期や締切など一つの仕事を完成させるために与えられた時間を全て満たすまで、仕事の量は増え続けていくという内容です。
第2の法則では、支出は収入と同程度の額まで膨れ上がるとされています。たとえば、夏休みの直前まで宿題が終わらなかったり、給料日が近付いてくると家計のやりくりが厳しくなったりするのは、パーキンソンの法則が成立する典型的な例です。また、パーキンソンの著書では、業務の量に関係なく役人の数は増え続けるという点についても言及されています。

個人の対策

個人の対策① ピーターの予防薬

ピーターの法則が示す無能という状態にならないためには、いくつかの対策があります。その中の一つがピーターの予防薬です。これは、無能レベルの人材が、能力以上の地位へ昇進しないよう防ぐための方法を指します。まず、自分が出世することでどのようなデメリットが生じるのか、今のポジションよりもさらに高い目標をもって仕事にあたれるのかを自問自答しましょう。マイナス思考を持つことで、現在のポジションで満足だと、自らを納得させます。同時に、創造的無能を活用するのも忘れてはいけません。昇進の打診が来ないよう、あらかじめ自分の欠点を周囲へアピールしておきます。結果として、現在の地位で存分に能力を発揮し、充実した社会生活を継続できるのです。

個人の対策② ピーターの痛み止め

昇進後に能力の限界を迎え、無能といわれるレベルに達してしまう人もいるでしょう。そのような場合に役立つのがピーターの痛み止めです。ピーターの痛み止めは、無能レベルに達した後も、健康と幸福を維持しながら社会生活を営むことを目的としています。たとえ無能と見なされたとしても、研修を活用して能力を伸ばしたり、同じ課題に再度挑戦したりすることで、無能の状態から脱出できる可能性があるのです。このように、本人の努力と周囲のサポート次第では、無能と見なされた痛みを乗り越えることもできます。

個人の対策③ ピーターの気休め薬

能力が限界を迎えてしまうと、人によっては終点到達症候群という状態に陥る場合があります。この終点到達症候群の予防や軽減に有効なのが、ピーターの気休め薬です。無能レベルに陥ってしまったときの好ましくない症状を抑え、悪化を防止する効果が期待できます。万が一、昇進後に実績を上げられない場合は、昇進に対して前のめりになる姿勢を改め、現状であたっている労働の価値や尊さについて語るようにします。結果として、組織の運営に貢献する有能な人材の邪魔をすることなく、無害な存在として組織に留まることができるのです。

個人の対策④ ピーターの処方薬

昇進後に無能の烙印を捺されることを未然に防ぐための予防薬、無能と呼ばれる状態になったとしても程度を軽減できる痛み止め、完全な無能に陥る手前になったとしても対処ができる気休め薬の3つを、ピーターの処方薬といいます。これらの対策を行うことにより、無能な人材が発生するのを食い止められるのです。なお、これらの処方薬は無能な人材に限らず有能な人材であっても、知っておけば生活の質を向上させる際に役立ちます。それは、ピーターの法則が成立する状態は、日本社会だけではなく世界中に蔓延しているからです。そのような症状を治療するうえで、これらの処方薬は非常に有効な方法といえるでしょう。

組織の対策

組織の対策① ハロー効果に注意

ピーターの法則が当てはまらない組織を作るためには、個人レベルの対策だけではなく、組織レベルでの対策も必要です。たとえば、ハロー効果に注意することで、成果や能力に見合った人事評価を行い、優秀な人材に適切なポジションを与えられるようになります。ハロー効果とは、簡単にいうと、人から受ける印象に対する認知バイアスのことです。個人の能力とは直接関係のない特徴に影響を受け、正しい評価を下せなくなってしまう現象を指します。
ハロー効果により能力以上の評価を与えられてしまうと、能力に見合わないポジションまで昇進させられてしまう可能性もあるのです。結果として、与えられたポジションで実力を発揮できず、無能化してしまいます。人事評価など組織の判断において、できるだけハロー効果を除外するためにも、個人の成果や努力を適切に評価できる制度を整えましょう。

組織の対策② 昇進させずに昇給

昇進はさせずに昇給のみを行うのも、組織の無能化を防ぐ方法の一つです。まず、現在の職務において実力を発揮している人材については、そのままのポジションで成果を上げられる状態にします。しかし、昇進もできず、給料も待遇も変わらない状態が続けば、業務へ向かうモチベーションは著しく低下してしまうでしょう。そこで、ポジションはそのまま、昇給のみを行うことで、個人のモチベーションを維持しながら組織の無能化を回避できます。

組織の対策③ 昇進前に訓練

昇進後のポジションに見合った能力が身につくよう、事前に訓練を施すのも一つの方法です。訓練を通して一定水準を満たす能力を身につけた人材のみ昇進させることで、組織の無能化を予防できます。日本においても、管理職への昇進にあたり資格の取得を条件としていたり、昇進前に研修を行う機会を設けていたりする企業が増えつつあるのです。このような対策を行うことで、昇進前に管理能力が欠如していたり、無能化する可能性があったりする人材を見極めやすくなります。

組織の対策④ 降格制度も設ける

昇進後に無能と呼ばれる状態に陥ってしまった人材がいた場合を考慮して、降格制度を導入するという方法もあります。無能という状態は、自分の能力を十分に発揮できないということです。たとえ給料が上がったり、待遇が改善されたりしても、能力に見合わない地位にいること自体が本人にとっては苦痛に感じられるでしょう。また、本人だけではなく周囲にも悪影響を及ぼすリスクがあり、組織の無能化を助長してしまうおそれがあります。ピーターの法則を成立させないような環境を整えるためにも、一度昇進させた人材も、その後の状態や成果次第では降格させるという手段が取れる状態にしておきましょう。

活躍し続ける人材になるために

ピーターの法則はビジネスパーソンとして必ず身につけておくべき知識の一つです。ピーターの法則が成立すると、組織の成長を妨げてしまうだけではなく、組織を構成する人材が成長する機会やモチベーションまで奪ってしまう可能性があります。ここで紹介した情報を参考に、組織レベルの対策はもちろん、個人でもしっかりと対策を行いましょう。

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