2021.2.8
ホワイトカラーとは?ブルーカラーとの違いや給与と求められるもの
職業を表す用語として、「ホワイトカラー」「ブルーカラー」というものがあります。よく耳にする言葉ですが漠然としたイメージがあるだけで、正確な意味はわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで、本記事では仕事というものを考える際の参考になるように、ホワイトカラーとブルーカラーの違いをあらゆる角度から検証していきます。
ホワイトカラーとは?どのようなイメージ?
ブルーカラーとは?
ホワイトカラーとブルーカラーの給与や就業環境の違い
ホワイトカラーに求められるもの
ブルーカラーに求められるもの
「ピンクカラー」や「グレーカラー」などもある
ホワイトカラーの過重労働とメンタルヘルス問題
「ホワイトカラーエグゼンプション」とは
どの仕事もロボットやAIと仕事の奪い合いになる恐れ
自分に合った仕事で市場価値を高めよう
ホワイトカラーとは?どのようなイメージ?
誤解されがちですが、ホワイトカラーのカラーとは、英語で訳すとcolor(色)ではなく、collar (襟)です。つまり、白い襟という意味になります。襟の白い服といえばワイシャツです。要するに、ホワイトカラーとは「白いワイシャツやスーツを着て仕事をする頭脳労働」と定義することができます。もう少し具体的にいえば、屋内で行う事務系の仕事がそれにあたります。たとえば、事務職、企画職、研修職などです。また、事務系の仕事とは異なりますが、白いシャツを身につけ、屋内で仕事を行っているという意味で販売業務やサービス業務などもここに含まれており、生産性に直接的な関係のない職種が多いのも特徴です。
同様に、医師、コピーライター、プログラマなどといったものもホワイトカラーの仕事です。特に、現代ではネットやアプリなどの発展に伴い、プログラマの需要は急速に高まっています。
ブルーカラーとは?
ホワイトカラーが白い襟ならブルーカラーは当然、青い襟ということになります。この青い襟というのは作業着のことを示しています。つまり、作業着を着て行うような仕事の総称をブルーカラーと呼称しているわけです。元々は1920年代のアメリカで労働者と監督者の区別をつけるために違う色のシャツを身につけ始めたのが語源だといわれています。そのことからもわかるように、ブルーカラーの仕事というのは主に物づくりにかかわる肉体労働です。代表的なものとしては工場作業員、建設現場作業員、土木作業員などが挙げられます。
その他にも、清掃、運輸業、産業廃棄物処理、あるいは国の基幹産業である電気・ガス・水道業といったインフラサービスもこの中に含まれます。ちなみに、ブルーカラーと呼ばれている仕事の中で日本において特に問題となっているのが農・林・水産業です。労働人口の減少、高齢化、後継者不足などによって、仕事に従事する人材がいなくなる可能性が危惧されています。
ホワイトカラーとブルーカラーの給与や就業環境の違い
ホワイトカラーはブルーカラーに比べて年収が高い傾向にあります。これは事務職の給与が肉体労働よりも高いというよりも、ホワイトカラーのなかには高度な専門知識を必要とするITエンジニアや医師、あるいは企業の中枢を担う管理職などといった具合に、給与水準の高い職業が数多く含まれているからだと考えられています。また、ホワイトカラーのほうが高い給与を受け取っているというのは同じ会社に長年勤務していることを前提としており、初任給を比較した場合はブルーカラーのほうが高く設定されていることも珍しくないのです。特に、高卒就職者や大企業ではその傾向が顕著です。
さらに、就業環境に関しては一見、オフィスで椅子に座って仕事ができるホワイトカラーのほうが優れていると思われがちですが、実際は必ずしもそういうわけではありません。まず、長時間のデスクワークは内臓や内分泌系に負荷をかけてしまうので、糖尿病や高血圧、あるいは脳梗塞や心疾患といった重篤な病気の引き金となるリスクがあります。それに、残業やパワハラなどが問題視されているのも主にホワイトカラーの職場です。もちろん、ブルーカラーであっても、急ぎの仕事が入るなどで残業をすることはありますが、基本的には現場で働く時間はあらかじめ定められています。たとえば、工場などは決まった日時しか稼働しないので、それ以外の時間で休みをしっかり確保できるというわけです。
それに対して、ホワイトカラーの場合、ブラック企業と呼ばれているところなどでは休日出勤が当たり前に行われています。以上のように、ホワイトカラーの職場では肉体的及び精神的な負荷が高いところも多いため、必ずしも就業環境が良いというわけではないのです。
また、転職に関しても違いがあります。ホワイトカラーの業務内容は、現在の職場内で評価されることが多く、転職して他の環境に移った際に通用しない場合が多いと言われています。その一方、ブルーカラーの職種は経験を積むほど高い現場スキルを得られ、他の現場で活かせることが多いだけでなく、人手不足の問題が深刻化している場合もあります。そのため、ホワイトカラーよりもブルーカラーのほうが比較的転職がしやすいと言われています。
ホワイトカラーに求められるもの
ホワイトカラーと一言でいってもその職業はさまざまで、それぞれ求められる能力は違ってきます。しかし、多くの場合に必要とされているのがコミュニケーション能力です。特に、ホワイトカラーの代表的な職種である営業職の場合は必須能力だといえます。その他の職種でもホワイトカラーの仕事は複数の人間が協力し合って進めていくケースが多いので、チームを組んでプロジェクトを進めるコミュニケーション能力は欠かせません。
また、多くの職種でパソコンなどのスキルは必須ですし、就職後もその能力を磨き続ける必要があります。なかでも、デザイナーやプログラマなどといった専門職の場合は相当量の勉強を行い、常にスキルを磨き続けなければなりません。そうしなければ、時代に取り残され、目の前の仕事をこなせなくなってしまいます。このように、職種によって要求されるものやその度合いは異なるものの、ホワイトカラーは高度な頭脳労働や精神労働に耐えうるスキルや精神力が求められるのです。
ブルーカラーに求められるもの
ブルーカラーは基本的に体を動かす仕事なので、なによりも体力が必要です。それに加えて、夏は熱中症に気をつけるなどといった体調管理も求められます。また、ブルーカラーの仕事はときとして危険が伴います。たとえば、高所での作業や重い荷物を扱ったりする場合です。そういったケースではちょっとした油断が大事故につながりかねません。そのため、管理者の指示に従って、安全第一で行動することが大切です。少なくとも、日頃からぼんやりしていることが多い人はブルーカラーの仕事には向いていないといえます。
また、ブルーカラーはホワイトカラーと比べてコミュニケーション能力の必要性は低いと思われがちですが、一概にそうともいえません。なぜなら、対外的な交渉能力などはあまり必要としない反面、チームで現場をスムーズに回すためのコミュニケーション能力はやはり大切だからです。さらに、職種によっては専門知識や資格、経験が必須となるケースが少なくないため、目指す職業に応じてそれらを習得する必要があります。
「ピンクカラー」や「グレーカラー」などもある
「ホワイトカラー」や「ブルーカラー」というのは比較的よく耳にする言葉ですが、他の色を用いた同様の表現があるのはご存じでしょうか。たとえば、「ピンクカラー」という言葉です。これは社会評論家のルイーズ・カップ・ハウによって提唱された用語で、女性が従事することが多く、それ故に女性の仕事だとみなされがちな職業全般を示しています。代表的なものとしては託児業務や看護業務などが挙げられます。ピンクカラーは女性にとっては間口が広く、華やかそうにも見えますが、実際は低賃金で雇用も不安定であるケースが多いのが特徴です。
また、ホワイトとブラックの中間色を示すグレーカラーという言葉もあります。これは文字通り、ホワイトカラーとブルーカラーの中間に位置する職業を示しており、頭脳労働なのか肉体労働なのか分類が難しい場合にしばしば用いられます。工場の生産管理者などがその典型例です。一方、ブルーカラーに近い存在ではあるものの、より専門性が高くて創造的な仕事に携わっている人はメタルカラーと呼ばれる場合があります。その他にも、環境系の仕事をしているグリーンカラー、福祉系の仕事に従事しているシルバーカラーなどといった具合に、職業の分類に用いられる色の種類は数多く存在します。
ホワイトカラーの過重労働とメンタルヘルス問題
前述のように、ホワイトカラーは一見、ブルーカラーよりも労働の負担が少なそうに見えて実際はそうともかぎりません。それどころか、ホワイトカラーにおける労働環境の苛酷さはしばしば社会問題になっています。たとえば、さまざまな対人関係などからもたらされる精神的負荷はホワイトカラーのほうが重い傾向にありますし、パソコンさえあればいつでもどこでも仕事ができてしまうので労働時間も長くなってしまいがちです。そうしたことが原因となり、うつ病や過労死、精神疾患の割合は増加傾向にあります。いまやそれらは深刻な社会問題となっており、ホワイトカラーに属する労働者のメンタルヘルスについて真剣に取り組まなければならない時代がやってきているのです。
「ホワイトカラーエグゼンプション」とは
働き方改革の重要な柱の一つにホワイトカラーエグゼンプション(頭脳労働者脱時間給制度)というものがあります。これは簡単にいうと、労働の評価を労働時間ではなく、実際の成果でしようという制度です。最大の特徴は、それを実現するために、ホワイトカラーと呼ばれる労働者の一部に対して規制を緩和し、労働法の適用を免除している点です。高度プロフェッショナル制度とも呼ばれており、労働時間より成果で評価されるため、長時間労働を是正できるという狙いがあります。
ただ、その是正が期待できるのはあくまでも短時間での成果が見込める場合のみです。たとえば、研究開発の仕事は成果が出るまでに数年単位の時間を要するケースも少なくありません。そうなると、いつまでたっても評価されることがなく、残業手当ももらえずに定額で長時間働かされるといったことにもなりかねないのです。そう考えると、長時間労働の温床になるのではないかという懸念は拭えないところです。
どの仕事もロボットやAIと仕事の奪い合いになる恐れ
AIやロボットの進歩に伴い、「どの分野がAIやロボットにとって代わられ、どういった仕事が生き残るのか」といった話題がさかんにされるようになってきました。
肉体労働のイメージが強いブルーカラーよりも知的な仕事という印象のあるホワイトカラーのほうが代替のリスクは低いのではないかと思われることもあります。しかし、実際はどちらもAIやロボットに仕事を奪われる可能性があり、どちらが安全だとはいえないと考えられているのです。
たとえ、ホワイトカラーの仕事であってもルーティンワーク主体の単純作業なら、AIによる代替はそれほど難しくありません。同様に、ブルーカラーの場合も単純労働ほど、ロボットに仕事を奪われる可能性は高くなります。したがって、いずれのケースにおいても、AIやロボットが苦手な分野はどういったものなのかをよく調べ、そのうえで、すみ分けを考えていくことが大切になってきます。
自分に合った仕事で市場価値を高めよう
社会が複雑化するなかで、新しい職業が次々と誕生しています。そうした現状においてホワイトカラーやブルーカラーといった区別はもはや意味がないのかもしれません。そのうえ、AIやロボットが人の仕事を奪う可能性すら出てきているのです。こうしたなかで生きていくには、自分に合ったやりがいのある仕事を長く続けるにはどうしたらよいかを各自が考え、それを踏まえて、市場価値の高い人材を目指していくことが大切です。