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2021.8.18

話題の1on1ミーティングとは?概要や効果的に実施するポイントを解説

「政府による働き方改革」の推進など、現代では働き方や仕事のあり方、意識の持ち方が刻一刻と変化しつつあります。このような環境の中、人材教育において注目を集めているのが「1on1」という手法です。人材教育の分野で高い実績を誇るシリコンバレーなどではすでに深く根付いており、日本でも導入する企業が増えてきました。今回は、そんな1on1の基礎知識から実施する目的、具体的な導入方法まで幅広く解説します。

1on1をシステム化するなら、1on1エバンジェリスト・堀井耕策氏が監修した「1on1 Talk」がおすすめです。タレントマネジメントシステム「CYDAS」も活用することで、さらなるエンゲージメント向上が期待できます。

1on1とは?

「1on1」とは、その名の通り、上司と部下が1対1で行う会話やミーティングなどのことを指します。こう聞くと人事評価面談をイメージする人も多いでしょうが、1on1では評価や管理、プロジェクト遂行といった人事的な内容はほとんど話しません。週に1回程度、最低でも月に1回といった短いサイクルで継続的に実施し、キャリアや悩みなどの話し合いによって、上司が部下の考え方や置かれている状況を把握する場として活用されています。

1on1で大切なのは、あくまでも上司が部下をサポートするという点です。部下の悩みにすぐ上司が解決策を教えるのではなく、部下自身に答えを考えさせなければなりません。このため、上司はもどかしさを感じても先に答えを言わないようにしたり、部下が上司に依存しないようにしたりするなど、注意しながら実施することが大切です。

評価や管理目的ではなく、ただ話をするだけでもよい1on1に「何の意味があるのか」と不思議に感じる人も多いでしょう。しかし、1on1はGoogleやAppleといった先進的なIT企業が数多く集まるアメリカのシリコンバレーを中心に、人材育成の一環として活用されているものです。半導体素子メーカーとして世界的に知られるインテル社では、元CEOのアンドリュー・グローブ氏が1on1を経営の重要事項として指定したほど広まっているものです。日本でも、楽天やYahoo!、クックパッドなど誰もが知るような大手企業で続々と導入されています。こういった面からも、1on1が人材育成に置いていかに効果的かがわかるのではないでしょうか。

1on1の基本については、こちらの記事でも紹介しています。

1on1とは?目的や人事評価面談との違い、「意味がない」と言われないためのポイントをわかりやすく解説

1on1ミーティングの目的って?

従来、日本で行われる人材育成目的の話し合いといえば、人事評価面談が一般的でした。半年に1回程度、上司と部下が目標の達成度や働きぶりなどを振り返り、評価や新たな目標設定などを行います。ここで上司と部下がコミュニケーションをとることになるのですが、人事評価面談は、あくまでも評価や管理が主な目的であり、気軽に悩みやキャリアの相談をできないことも多いでしょう。かといって、人事評価面談以外で上司と部下がコミュニケーションをとる機会といえば、上司が部下に対して指摘や叱責をするなど、ネガティブな内容のケースがほとんどです。上司は部下を一方的に管理・指導する関係性が一般的であり、部下の考えや置かれた状況を正しく把握できるものではありませんでした。

これに対し、1on1では、評価や管理といった難しい話ではなく、部下が抱える悩みや将来思い描くキャリアなどについて話し合います。上司による一方的な指摘ではなく、部下自身に考えさせて成長を促し、現状や悩みに寄り添って部下のパフォーマンスを最大限に引き出すことが主な目的です。部下が自ら話すことで自身の成果や行動を客観的に振り返り、上司がそれにアドバイスなどをすることで目標達成に向けた進捗管理や課題解決について一緒にじっくり検討できるため、個々の成長やパフォーマンスの向上が期待できます。人事評価面談が評価・管理のための場なら、1on1は部下の育成のための場といえるでしょう。

なお、1on1は部下だけのために行うものではありません。普段から部下のことを主体的にサポートすることで管理者としての自覚やスキルを高めるなど、上司にとってもメリットがあります。個々のマネジメント力が高まれば組織全体の運営力も高まり、企業としての一体感や生産性の向上なども期待できるでしょう。

1on1ミーティングが重要視される背景

従来の人事評価面談とは別に、1on1が導入されるようになった背景には「VUCA」が関係しています。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとったもの。変革を続ける現代はVUCA時代ともいわれており、日本で古くから行われてきたビジネスのやり方や経験が通用しないことも増えてきました。上司が部下にあれこれ指摘したとしても、それが正解とは限らなくなってきたのです。

また、インターネットの普及により、部下が知りたいことや正解を簡単に検索できるようにもなりました。若い世代は早くからインターネットを使いこなしてきたため、むしろ上司よりも効率よく情報収集や分析ができるかもしれません。このように、現代は上司と部下の関係性が変化し、「上司が部下へ一方的に教える」というスタイルでは不十分になってきました。このため、上司から部下への一方的な指摘ではなく、部下から上司へアプローチする対話型のコミュニケーションが必要になったのです。

さらに、少子高齢化による労働人口の減少も大きく影響しています。厚生労働省によると、2019年の日本の出生数は約86万人、死亡数は約137万人で総人口減少数は約51万人でした。日本では総人口のうち約60%が生産年齢人口のため、たった1年間で約30万人もの労働人口が減ったことになります。少子高齢化が進めば更なるスピードで労働人口が減り、企業は働き手の確保に苦労するようになるでしょう。しかも、現代では成果主義・能力主義を採用する企業も増え、終身雇用制や年功序列制といった従来の企業の仕組みが崩れはじめています。

転職も珍しくないため人材が流動的になり、外部人材やグローバル化による現地人の採用なども増えるなど、働き手がより自分の希望に合う企業へ移りやすい環境になってきたのです。うかうかしていると、自社の人材を次々に失いかねません。このように激しい変革の時期を迎えたこともあり、企業では人材をいかに自社に引き留めておくかが重要な経営課題になりつつあります。この点、1on1は上司と部下双方向からのコミュニケーションが実現でき、部下を効果的にサポートすることでモチベーションの維持が可能です。上司や企業がしっかり寄り添っていることが伝われば、部下が不満を膨らませて他社へ転職してしまうリスクを軽減できるでしょう。

このように、時代に合わせた新しいスタイルのコミュニケーション、そして労働人口減少による人材流出の予防のため、1on1は多くの企業から重視されているのです。

1on1ミーティングによって得られる効果は?

部下の成長促進

目標管理をメインとする人事評価面談とは異なり、1on1は部下の悩みやキャリアプランなどについて話をします。目標達成の視点で話すこともありますが、どちらかというと成長支援の面が強いといえるでしょう。部下に、自身の働きぶりや成果を振り返り、課題を明確にしたり改善策を考えたりする機会として利用してもらうことで、経験学習が可能になります。人材が成長するには、自身で経験することが一番です。1on1により経験学習を促すことで効果的にパフォーマンスを高められれば、業績アップも期待できるでしょう。

上司と部下の信頼関係の構築

週に1回という短いサイクルでコミュニケーションをとることで、上司と部下の関係性も深くなります。部下の働きぶりを細かく確認できるため、評価の面でもお互いに納得感を得やすいでしょう。短期間で会話を重ねて相互理解を深め、何ごとも気軽に相談できる環境を整えておけば、部下が突然退社して慌てるといった心配もありません。1on1できちんと信頼関係を築けていれば、部下は退社前に上司に相談してくれるでしょう。人材の流出を防ぐうえで、部下が本格的に退社を決断する前にいち早く対処することは非常に重要です。

社員の自律性向上

IT技術の発達とともに急速に変化していく現代では、社員も「自ら考えて行動できる」ようになる必要があります。企業としても、限られた働き手に成長してもらうことで順調な経営ができるようになるため、社員の成長を支援することは重要なポイントです。この点においても、上司と部下が直接知識や経験をぶつけ合ってコミュニケーションをとれる1on1は、時代の変化に柔軟に対応できる社員の育成に大きな効果を発揮するのです。

1on1ミーティングはどうやって実施するの?

部下の成長支援やコミュニケーションの質の向上が大きな目的である1on1では、上司と部下の信頼関係が非常に重要となります。お互いに話しやすい雰囲気づくりをするためにも、まずは1on1ミーティングの呼称を決めましょう。気軽に話をするためにも、「個人面談」といった部下が思わず身構えてしまうような呼び方はおすすめしません。ミーティングへの意識や先入観を変化させるためにも、堅苦しいイメージではなく部下の気分を乗せるようなユニークな呼称を決めましょう。

呼称が決まったら、ミーティングの日程と場所を設定します。部下に緊張感や圧迫感を与えないよう、会議室ではなくカフェやラウンジ、公園のベンチなど意外な場所で話してみるのも効果的です。話すべき話題や目的、部下のタイプなどによって場所を選ぶとよいでしょう。なお、話した内容をしっかり記録しておくことも重要です。1on1は継続的なコミュニケーションの場であるため、部下が以前話した内容を再び相談する可能性もあります。このとき、上司が部下の話を忘れていると、部下からの信頼は少なからず失われてしまうでしょう。

部下が抱える問題を効果的に解決し、上司が常に気を配っていることをアピールするためにも、共通のログを残して正しく管理することが大切です。部署異動があっても問題ないように、部下のミーティング記録をクラウドシステムなどで一元管理して整理しておくとよいでしょう。

効果的な1on1のポイントがまとまった資料はこちらからダウンロードできます。

1on1ミーティングを効果的に行うポイントは?

1on1は、ただ会話をすればよいというものではありません。目的は部下の成長支援なので、部下がよりリラックスして自分の気持ちや提案を話せるよう、工夫することも大切です。緊張しやすい部下であれば、お菓子や軽食を用意して場を柔らかい雰囲気にするのもよいでしょう。雑談ではなく目的のある会話であることを意識付けるために、タイムキープ用の時計を置いたりテーマやアジェンダをザックリと決めたりするのもおすすめです。

また、ミーティング中の上司の姿勢にも注意が必要です。資料などに目を通しながら聞くのではなく、ボディランゲージを取り入れたり部下の目を見たりしましょう。こうすることで、部下は「しっかり話を聞いてくれている」と安心感や信頼感を抱き、自分の思考を整理して話しやすくなります。さらに、部下に課題解決を促すような質問をする「コーチング」、上司が部下に直接知識をインプットする「ティーチング」、部下の失敗に対する評価や周囲の目などを正直に伝える「フィードバック」などを組み込むとより効果的です。

このほか、部下に信頼してもらえるよう、上司が自分の失敗や経験などの話をするのもよいでしょう。ただし、熱が入り過ぎて自分の話ばかりしてはいけません。自分の話は極力抑えながらアプローチすると、部下の意見を共有するだけではなく裏にある価値観などをうまく引き出すことができます。

1on1ミーティングで注意すべきことは?

1on1を実施する際、注意したい点が3つあります。

部下の話を否定しない

1つ目は、部下の話を否定しないこと。上司が部下の話や意見を否定したり自分の考えを押し付けたりしては、従来の「一方的な指摘」と変わりありません。信頼関係が崩れ、部下が気軽に相談できなくなってしまいます。これでは1on1の意味がないので、頭ごなしに部下を否定しないよう十分に注意しましょう。

目的を明確にする

2点目は、目的を明確にすること。人事にあまり関係のない話をする1on1ミーティングは、ともすると目的を見失いがちです。本当にただ雑談をするだけでは意味がないので、上司はミーティングの前や最中に、「部下の成長のために行っている」ことを意識的に伝えて戦略的に会話をすることが大切です。

時間をかけすぎない

3つ目は、時間をかけすぎないこと。1on1は貴重な勤務時間を割いて行われるため、内容のない会話を続けることはできません。上司は部下から効率よく考えなどを引き出し、目標達成のためのアウトプットにつなげる必要があります。1回あたり30~60分程度を目安に時間を取り、その中で部下の成功体験や失敗体験などの要素を的確に把握し、目標達成につなげるよう意識しましょう。

おすすめの1on1ミーティング支援システム

1on1の効率を高めたい場合は、ミーティング支援システムを活用するとよいでしょう。たとえば、「wisTANT」は上司と部下のペア登録やミーティング周期の設定、アジェンダの自動作成など、目標管理やフィードバックのサイクルの効率化に役立ちます。「HITO-Linkパフォーマンス」は、社員と組織が一丸となって同じ目標に向かって行動するOKR、およびそのフィードバックを兼ね備えた支援システムです。1on1だけのシステムではないものの、操作性のよいフィードバック機能やアジェンダの共有機能など、1on1に役立つ機能を備えています。

「1on1Talk」は、1on1の計画からフィードバック、振り返りまでを一貫してクラウド管理するサービスです。独自のツールで上司と部下の関係性を診断したり、話題に困らないようトークテーマを設定したりすることができます。スケジューリングや記録などの基本的な機能のほか、1on1をどのように行えばよいかといった効果的なノウハウも充実しており、初めて1on1を導入する場合に最適です。

1on1ミーティングで社内の円滑なコミュニケーションを!

1on1ミーティングは、適切に管理・実施すれば社員一人ひとりの意識やパフォーマンスを高め、企業全体の成長につなげる効果が期待できます。上司と部下に強い信頼関係を築けるだけでなく、目標管理の効率化や「自分で考える」社員を育成できるなど、さまざまなメリットが得られるでしょう。労働人口が減少し、限られた人材を最大限に活用しなければならない将来のためにも、ぜひ導入を検討してみてください。

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人材育成

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