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2021.7.20

内製化とは?メリット・デメリットや失敗しない方法【わかりやすく解説】

会社は、生き残りをかけてさまざまな経営手法を取り入れています。ビジネスにおいては、ノンコア業務と呼ばれるような定型作業や、ITシステムの開発・保守などの業務を外部に委託するケースも少なくありません。しかし近年、外部に委託していた業務を自社内で取り組む「内製化」を推進する企業が増えつつあります。内製化を決断するにあたって重要なことは、どのようなメリット・デメリットがあるかを理解しておくことでしょう。この記事では、内製化を図る場合に把握しておくべきポイントについて解説します。

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内製化とは?

内製化とは、外部委託していた業務を自社の社員や設備などの社内リソースを使って実施するように体制を切り替えることをいいます。例えば、製造工程の一部について外部の会社に委託していたものを、自社内で製造するように切り替えることが内製化です。また、製品だけでなく事務作業などについて外部委託から自社内での作業に変えることも、内製化に該当します。ちなみに、英語では「insourcing」と表現します。

また、内製化の対義語は、外製化です。自社内で行っていた業務を外部委託することを、外製化といいます。外部委託のことを「アウトソーシング(outsourcing)」と表現しますが、よく見ると内製化の英語表記と対になっていることがわかります。業務委託も外製化に当てはまります。

IT関連業務は、専門的に知識が必要になるため、自社内ですべてのIT業務に対応できるようにすることは大変という理由から、IT業務については、SIerなどの「外部に委託することが多い」という傾向がありました。しかし、内製化の方が自社内のナレッジが蓄積されやすく、スピーディーな対応ができることから、近年は外部委託ではなく内製化する動きも見られるようになってきています。クラウドサービスやローコード/ノーコードといったトレンド技術も内製化を後押しする要因となっています。

内製化が注目されている背景:「2025年の崖」とは?

経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」では、2025年には21年以上にわかってレガシーシステムを運用している企業が6割に達するという試算が示されています。また、レガシーシステムの刷新に乗り遅れた企業は年間最大12兆円の経済損失が生じるとも言われています。これをいわゆる「2025年の崖」と言います。

日本は欧米諸国と比較すると、自社内にIT人材を雇用しているユーザー企業が少なく、ベンダー企業にシステムの開発を依頼するケースが多いため、「2025年の崖」問題からの脱却のため、システムの内製化を目指す企業が増えつつあります。

内製化の目的

内製化にはメリットとデメリットがあります。どのような目的で内製化を行うのかしっかり吟味して進めていくことが大切です。ここでは、内製化の目的について抑えていきましょう。

業務効率化

内製化の目的の一つは業務効率化です。外部委託は、ある特定の業務に優れた専門業者であることが多いですが、当然外部の組織の方のため、自社の業務を熟知しているわけではありません。そのため、要件が決まっている定型的な業務なら効率化できるかもしれませんが、都度確認が必要な業務や状況判断が必要な業務を外部に委託する場合は効率が悪くなるケースもあります。「内製化すべき業務なのか」をしっかり見極めることが大切です。

経費削減

外部委託の場合、仕事を依頼しているわけですから当然契約料など何かしらの費用が発生します。契約内容によりますが、一般的には月額固定費+オプション追加料金としているケースが多いのではないでしょうか。もし、外部に委託している業務を社内リソースで賄うことができるのであれば、毎月、または業務が完了するたびに発生する費用を抑えることができるため、大幅な経費削減につながります。

内製化のメリット

内製化を行うことによるメリットを理解しておかなければ、内製化するか否かの経営判断を行うことはできません。そこで、ここでは内製化のメリットを5つ紹介します。

メリット①:コストの削減ができる

1つ目のメリットは、内製化を進めることによってトータルコストの削減につながることです。アウトソーシングをしている場合、アウトソーシング先に対するコストが発生しますが、内製化することによって、このコストをゼロにすることができます。もちろん、自社内でのコストは新たに発生しますが、アウトソーシング先で生じていた利益分については、コスト削減できる可能性が高いでしょう。内製化によって、高いアウトソーシング料金の支払いを回避して資金を生み出せば、ほかの業務や新たな投資に資金を回すことが可能です。さらに、長期的に内製化を継続できれば、コスト削減効果はより大きくなります。

メリット②:スピーディーに対応できる

2つ目のメリットは、業務の変更などに関してスピーディーな対応を実現できることです。業務を外部委託している場合、変更や修正事項が発生すると、正式な手続きを経て会社間でやりとりを行い、情報共有しなければならなくなります。そうなると、一定の時間がかかってしまうことは避けられません。また、社内用語の違いなどから、情報を正確に伝えるために要する手間がかかることも多い傾向です。さらに、やり方に関するすり合わせなどの時間も必要になります。システム開発を行う場合、外注先との調整が不要になることで開発スピードが早まり、デジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに推進することができます。

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メリット③:ノウハウが蓄積される

3つ目のメリットは、自社内に業務に関するノウハウを蓄積できることです。アウトソーシングを行うことによって、その業務に関する社内の負荷はほとんどなくなります。しかし、実際に業務を行わないことによって、ノウハウを蓄積する機会も失っているのです。内製化を進め自社内で実際に業務を行えば、さまざまなケースに遭遇してその都度最適な対応方法を見つけることになります。そういったことを繰り返していくことによって、ノウハウが生み出され自然に蓄積されていき、ブラックボックス化を防ぐことができます。例えば、今後IT部門のエンジニア採用を強化していきたいという目標があるならば、システム開発業務の一部を内製化に切り替えて取り組んでいくのも一つの手です。

ノウハウは、貴重な経営資源の一つともいえます。別の業務に、そのノウハウを活用できる可能性があり、さらに業務を拡大する時にも役立つと期待できるでしょう。内製化によってノウハウを蓄積することは、経営体質の強化にもつながるのです。

メリット④:臨機応変な対応ができる

4つ目のメリットは、外部委託と比較すると柔軟で臨機応変な対応が取りやすいことです。外部委託の場合は、依頼内容や手段、納品タイミングといった条件をあらかじめ定めているケースが多く、イレギュラーな対応が難しいこともあります。内製化によって社内リソースで対応することができれば、業務の遂行方法やフローを見直しながら最適化し、スピードと質を追求し、臨機応変な対応をとることができます。

メリット⑤:セキュリティの向上

5つ目のメリットは、情報漏洩などのセキュリティ面でのリスクを減らすことができることです。業務を外部に委託する場合、会社で保有する情報も業務遂行のために外部に持ち出さなければならないことがあります。しかし、内製化すれば持ち出しの必要はなくなるため、情報漏洩などのリスクを低減させることができます。

内製化のデメリット

内製化を進めるにあたっては、デメリットを理解しておくことも欠かせません。メリットだけにとらわれていると、失敗するリスクを高めてしまうこともあるのです。ここでは、内製化の主な3つのデメリットについて紹介します。

デメリット①:導入・運用コストがかかる

1つ目のデメリットは、自社に業務を取り込むことで、コストが発生することです。新たに業務を導入するにあたっては、設備や備品などが必要になるケースもあるでしょう。例えば、IT業務の内製化においては、パソコン端末やサーバー、ハードウェア、業務に必要なソフトウェアやツール類などの準備が必要です。また、内製化したあと継続的に運用を行っていくためのコストもかかります。さらに、必要なものをそろえるためには、それ相応の労力と時間がかかりがちです。特に、内製化後の運用は簡単ではないケースが多い傾向のため、注意が必要でしょう。新たに取り込んだ業務を滞りなく進めていくためには、しっかりとした知識がないと対応できないため、あらかじめ事前調査を行いましょう。

また、コストのかかり方も変わってきます。アウトソーシングの場合は、必要なタイミングで必要な量の業務だけを委託して料金を支払うことが可能です。しかし、内製化すると一定の業務を行ったり必要な能力を維持したりするための固定的なコストが発生してしまいます。継続的にかかる固定費は、経営に大きな影響を与えかねません。そのため、しっかりとコスト検討を行ったうえで、内製化の判断を行うことが重要です。初期費用を抑えたいのであれば、SaaSシステムを利用するのもおすすめです。

デメリット②:研修や採用をする必要がある

2つ目のデメリットは、新たな業務に対応できるように自社の従業員を採用・教育する必要があることです。特に、過去に自社で行ったことがない業務を内製化する場合は、その業務に関するスキルをもつ人材を採用することになります。適切な人材を探すためには、一定の時間がかかることを覚悟しておく必要があるでしょう。

また、新規採用で対応するのではなく、すでに別の業務の担当者として働いている人材を新業務に充てる場合は、新たに教育・訓練を行うことが欠かせません。研修などを行って、必要となる知識を修得してもらうことになります。知識がない状態から学ぶとなると、修得には相当な時間がかかるケースも珍しくありません。内製化の判断を行うにあたっては、研修や採用に関して問題が生じないかについても、よく検討しておくようにしましょう。

デメリット③:育成に時間がかかる

3つ目のデメリットは、運用を任せる人材が育つまでに時間がかかることです。内製化する業務に関して知識がある人を採用したとしても、実際に業務運用を行うとなると慣れるまでに時間がかかります。経験がある業務の場合でも、会社によって組織形態や規模、やり方に違いがあるため、滞りなく運用できるように育つまでには一定の時間がかかる可能性があるのです。また、自社内の人員を配置転換して充てる場合は、研修だけですぐに業務ができるようになることは難しく、育成していくための時間が必要となります。技術者を採用すれば、育成時間の短縮が期待できますが、その分人件費の負担が上がってしまう点はデメリットです。

内製化する時のポイント

「内製化を行うか」は、重要な経営判断となります。そのため、大切なポイントを押さえて判断を行うことが必要です。ここでは、内製化する時の主な3つのポイントについて解説します。

費用を見て考える

1つ目のポイントは、しっかりと費用に関する検討を行ったうえで判断することです。内製化を行うと、アウトソーシング先に支払ったコストが減少する半面、自社内で新たなコストが発生することになります。内製化のデメリットでも触れた通り、研修や採用に費用がかかることは避けられません。また、導入や運用に関わる費用も発生します。この費用が多すぎれば、「採算の点から内製化は得策でない」というケースもあるでしょう。内製化を行った場合、「いくらのコストを投下するのか」「いつ収支がプラスになるのか」「費用対効果に問題がないか」といった点を必ず検討することが重要です。

内製化にこだわりすぎない

2つ目のポイントは、内製化することが最善だと妄信してこだわりすぎないことです。内製化することによって、ノウハウの蓄積などのメリットは得られる可能性はあります。しかし、コスト面などのデメリットが発生するケースもあるのです。また、しっかりと準備ができない状態で内製化をスタートさせてしまうと、業務が止まってしまうリスクもあります。アウトソーシングにもメリットとデメリットはあるため、ケースによっては内製化しないほうが良い場合もあることも認識しておきましょう。

また、対象となっている業務について、すべてを内製化するのではなく、「部分的に内製化する」という選択肢もあります。内製化を検討するにあたっては、「どの部分まで内製化すればメリットが得られるか」を検討することも欠かせません。さらに、内製化しても業務の質を低下させないようにしたり、適正に運用できるまでにかかる時間をできるだけ短縮したりするなどの点も考慮する必要があります。

内製化の事例

内製化についての理解を深めるためには、他社の事例を知っておくことも有効です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

DeNA

DeNAは、セキュリティツールの自社運用内製化を行い、年間1年間を超える外注費削減に成功した企業で、オープンソースの公開まで行うまでのノウハウ蓄積を進めました。

ZOZOTOWN

ZOZOTOWNは、自社業務に合わせてシステムを内製開発することを企業理念の一つの柱にしています。経営理念に沿って内製化を進め、自社の従業員が使いやすいサービスを開発して収益を上げることができました。

ファーストリテイリング

ファーストリテイリングでは、ものづくりから販売までを一貫して行っています。従来はブランドや国、地域ごとで異なるECプラットフォームを使用していましたが、2020年7月に自社開発のデジタルコマースプラットフォームを稼働しました。グローバル規模で統一したことにより、標準化が可能になり、迅速な横展開やアップデートを実現しています。

エディオン

エディオンでは、基幹システムのクラウド移行に伴い、外部ベンダーに依存していたシステム開発の内製化を推進し、開発スピードや社内に知見やノウハウが溜まりにくいといった課題の解決を目指しました。

内製化かアウトソーシングか?判断ポイントを5つご紹介

内製化にもアウトソーシングにもそれぞれメリット・デメリットがあります。どちらが良い、悪いではなく、自社にとって適した方法をとることが大切です。ここでは、内製化にするべきか、アウトソーシングにするべきかの判断基準について見ていきましょう。

1:コスト

アウトソーシングは外注を行うため、当然利用料金などを含めた費用がかかってきます。しかしながら、内製化する場合でも人材の育成費用や採用費用、設備費用などがかかってきます。
どちらの方が高くなるかについては、業務内容や手法によっても変わるため一概には言えません。アウトソーシングと内製化をする場合にそれぞれどれだけのコストがかかるのかを試算し、比較することが大切です。

2:業務継続性

業務が完了するまでにどのくらいの時間がかかるのかといった「業務継続性」も、アウトソーシングと内製化を判別するポイントの一つです。短時間で終わる業務であれば、その期間だけアウトソーシングすれば良いため、コストを抑えることができます。一方で、長期にわたって行う必要がある業務ならば、自社で調整・改善をしながら進めていく方がノウハウを蓄積しながらコストを抑えられることもあります。状況に応じて、どちらが適切か比較検討しましょう。

3:人材

内製化を行う場合は、外部に委託していた業務を代わりに行うことができる人材の育成が必須です。専門的な知識や高度な技術が必要な場合、研修にコスト・時間がかかることもあり、場合によってはアウトソーシングの方が良いこともあります。

4:内製化の範囲

アウトソーシングをするといっても、すべてを外注する必要はありません。また、内製化を行う場合も同様に、すべてを自社で担う必要はなく、業務の一部を内製化するという方法も考えることができます。大事なのは、内製化すべき範囲をきちんと明確にすることです。
・どの業務を内製化すれば良いのか
・どの範囲を内製化できるのか
・コストをかけすぎず、質を下げずに内製化するにはどうしたら良いのか

といった点を検討してみましょう。

5.コア業務なのかどうか

開発の対象となる業務が競争優位性を生み出すコア業務であるかどうかもない成果をするべきかどうかの判断基準のポイントの一つです。内製化を行うことで、自社内のノウハウが蓄積され、独自のサービスの提供につながるのであれば内製化する意義があります。また、機密情報を扱う必要がある業務の場合、内製化することで情報漏洩のリスクを下げることができます。反対に、競争優位性を生み出すコア業務ではない、機密情報を扱わないという場合は内製化の優先順位を下げても問題ないでしょう。

失敗しない内製化の進め方は?

内製化を推進するためには、始める前に事前準備や検討すべき項目があります。詳しく見ていきましょう。

社内のシステムの棚卸を行う

社内で複数のシステムを稼働している場合は、全てのシステムの棚卸を行い、内製化すべきシステムを検討しましょう。基幹システムから担当者だけが使っているシステムまで大小さまざまなシステムが社内に点在していることもありますが、最初に見える化しておくことでスムーズに内製化を進めることができます。

リソースを確保する方法を考える

内製化を図るためには、必要な人員を確保することが大切です。社内に必要なスキルを持った人材がいない場合は、専門スキルを持った人材を採用しなければなりません。また、別の部門にいる場合は異動をする必要があるため、会社全体の人材情報の見える化をしっかり行い、適任な人材を見つけ出しましょう。

内製化する範囲を考える

内製化かアウトソーシングか判断する際のポイントでも述べたように、全ての業務を内製化に切り替える必要はありません。自社にとってメリットのある範囲で内製化を進めていけるよう、どこまでを内製化するかあらかじめきちんと定義しておきましょう。

内製・外注の判断を適切に行おう

内製化を進めることができれば、委託業務会社との連絡が不要になり、自社業務をスピーディーに行うことができるようになることは大きなメリットです。ただし、内製化しても運用がうまくいかなかったり、コストがかかり過ぎたりするなどデメリットが生じる可能性もあります。内製化するかどうかを判断する場合には、メリット・デメリットの両面を検討して、自社に合っているほうを選択するようにしましょう。

内製化を進めていく上では、プロジェクトに適した人材を見つけ出すことが大切です。サイダスピープルなら人材情報の一元化はもちろん、さまざまな条件を掛け合わせた社員検索の機能もご利用いただけます。

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