2020.03.11

【2020年版】残業時間の基礎知識と対策方法について

【2020年版】残業時間の基礎知識と対策方法について

2019年4月1日から大企業を対象に「働き方改革関連法」が施行されるなど、残業時間に関する規制が強化されつつあります。しかし、具体的にどのような対策をとれば残業時間を減らせるのかわからないという管理職の人もいるでしょう。そこで、管理職として働き方改革に取り組む人のために、残業時間にまつわるルールやリスク、残業時間を削減するための具体的な施策などを紹介します。

残業時間の上限が設定されている理由

働き方改革にともない残業時間の上限が設けられた理由として、4つの問題が挙げられます。
1つは、長時間労働により健康の確保が困難になるという点です。2015年にロンドン大学より発表された研究結果によると、1週間あたりの労働時間が55時間以上の労働者は、労働時間が35~40時間の労働者に比べ、約40%も心臓病や脳卒中のリスクが高いことがわかっています。
2つ目は、長時間労働が女性のキャリア形成や、男性の家庭参加を阻んでしまう点です。長時間労働が定着することにより、出産を控えた女性や子育て中の女性が働きづらくなり、退職へ追い込まれるケースは少なくありません。
また、過度な残業は、男性が家事や育児に参加する機会を奪ってしまいます。結果として、仕事と家庭生活の両立が困難になるのが、3つ目の問題です。
さらに、4つ目の問題である少子化の原因にもなります。内閣府が発表した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2016」によると、夫が休日に家事・育児に全く参加しない家庭では、第2子以降の出産割合はわずか10%でした。しかし、2時間未満でも夫が家事・育児に参加すれば、出産割合は32.8%まで増加しています。2時間以上4時間未満なら59.2%、4時間以上6時間未満なら79.7%、6時間以上なら87.1%と、夫が家事や育児に参加する時間が長い家庭ほど、第2子の出産割合が高いのです。

2019年に改定された現在の残業時間

働き方改革関連法とは、労働基準法や労働契約法、雇用対策法などをはじめとした8本の労働法を改正するための法律です。施行時期は大企業と中小企業で異なります。大企業での施行時期は2019年4月、中小企業では2020年4月です。大企業と中小企業のどちらに該当するかは、資本金または出資金の総額と、常時使用する労働者の人数により決まります。ただし、業種により判定基準は異なるため注意しましょう。

小売業の場合、資本金または出資金の総額が5000万円以下、労働者の人数が50人以下であれば中小企業です。サービス業の場合は総額5000万円以下、労働者数100人以下であることが中小企業の条件となります。卸売業の場合は総額1億円以下、従業員数100人以下なら中小企業です。その他の業種では総額3億円以下、従業員数300人以下の企業が中小企業と定義されます。ただし、これらの定義はあくまでも原則です。制度や法律により条件が変化する場合もあるので、詳しくは中小企業庁に問い合わせたほうが安心です。

大企業でも中小企業でも、原則として残業時間の条件は1カ月あたり45時間、年間360時間までと設定されています。残業時間には休日労働の時間も含めなければいけません。ただし、原則として定められている残業時間上限に合わせると業務に支障が出る企業では、臨時の場合としての措置が適用される場合があります。

残業時間の仕組みについて

働き方改革関連法を適用するには、残業時間の計算方法や、賃金へ与える影響について正しく理解しておかなければいけません。まず、残業時間とは法定労働時間を超えて働いた時間のことです。労働時間は法律により1日8時間、1週間40時間までと制限されており、これを法定労働時間と呼びます。1日の勤務時間が8時間、週5日勤務、週休2日制の企業が多いのは、法定労働時間におさまるためです。ただし、1週間のうち6日間勤務することになったとしても、法定労働時間を超えなければ時間外労働とは見なされません。

たとえば、7時間勤務が4日、6時間勤務が2日であれば、週40時間におさまります。ただし、労働基準法により雇用者は最低でも毎週1回は休日を与える義務があるため、7日間働き続けることはできません。なお、会社によっては法定労働時間の範囲内で、出勤時間と退勤時間を定めている場合もあります。会社が独自に設定した労働時間を所定労働時間といい、法定労働時間とは異なるため注意が必要です。所定労働時間を1日7時間と設定している会社で8時間働いたとしても、週40時間を超えなければ時間外労働にはなりません。

また、休日労働や深夜労働が発生した場合、割増賃金が発生します。法定時間外労働または深夜労働の割増賃金は、1時間あたり1.25倍です。休日労働なら1時間あたり1.35倍の割増賃金を支払わなければいけません。

日本における残業時間の現状

OECD(経済協力開発機構)が発表した統計によると、2017年における日本の年間平均労働時間は、38カ国中22位でした。また、男性の1日あたりの平均労働時間は、日本がトップクラスです。これらの調査結果から、日本人の労働時間は世界的に見ても長いことがわかります。なお、厚生労働省が発表した「月間実労働時間及び出勤日数」によると、2019年10月時点の平均労働時間は1カ月あたり約14.5時間です。しかし、大手転職エージェントサービスとして知られる「duda」が労働者1万5000人を対象に行った調査によると、平均労働時間は1カ月あたり約24.9時間でした。

どちらも平均労働時間を調査しているにも関わらず、10時間以上もの違いが生じるのは、厚生労働省が雇用者を対象に調査を実施しているためです。厚生労働省の調査結果には、サービス残業など雇用者が把握していない労働時間は含まれていません。民間企業の調査結果のほうが、より実態に近いといえるでしょう。なお、残業時間の長さは職種により違いがあります。特に残業時間が長いのは電気工事や内装工事などの工事を監督する設備施工管理です。平均残業時間は月41.6時間にも及びます。一方、残業時間が短いのはエステやマッサージなどの美容関連職で、平均残業時間は10.3時間です。

36(サブロク)協定とは何か?

働き方改革関連法により、労働時間や残業時間に関するさまざまなルールが見直されました。しかし、実際は月45時間、年360時間の残業では業務が回らない会社も存在します。そこで、特別な事情により上限時間を超える場合に適用されるのが「36協定(さぶろくきょうてい)」です。36協定とは、法定労働時間を超えて就労する場合、あらかじめ労働者の代表または労働組合と協定を結ばなくてはならないという決まりを指します。労働基準法36条に規定されていることから名付けられました。36協定を結ばずに法定労働時間を超える残業をさせた場合、違法となるため注意しなければいけません。

2019年4月以前は、違反したとしても行政指導の対象になるだけで、罰則は適用されませんでした。しかし、働き方改革関連法が施行されてからは、違反した企業には労働基準法第119条により、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。なお、36協定を締結すれば、何時間でも残業をさせられるというわけではありません。延長できるのは月45時間、年360時間の範囲内です。特例として、特別条項付36協定を締結した場合は、年720時間以内、月100時間未満まで労働時間を延長できます。原則として、月45時間以上の労働をさせられるのは年間6カ月までです。複数月にわたって労働時間を延長するのであれば、平均80時間以内におさめる必要があります。

残業時間が増えてしまう理由と特徴

そもそも、なぜ働き方改革が必要になるほど長時間労働が問題になってしまったのか、不思議に思っている人もいるでしょう。残業が増える理由は、1つだけとは限りません。さまざまな要因が関係した結果、過度な残業が発生してしまうのです。まず、人手が足らなかったり、仕事量が多過ぎたりなどの理由で、業務時間内に終わらないことが挙げられます。日本では労働契約法により厳格な解雇規制が設けられており、一度雇った従業員を簡単にやめさせることはできません。そのため、繁忙期に大量採用し、閑散期に解雇するといった対策がとれないのです。結果として、既に雇用している従業員の労働時間を調整して対応することになります。

労働人口そのものが減少しているのも、人手不足が深刻化しつつある要因の一つです。さらに、非効率な働き方や、長時間労働を推奨する風土も残業を増やしてしまいます。アナログな仕組みが定着してしまっているために生産性が上がらず、労働時間を長引かせてしまっているというケースは少なくありません。さらに、早く帰りづらい空気が職場に蔓延しているために、本来であれば早く帰れるはずなのに、周りに合わせて意味のない残業をしているという人もいます。また、勤務時間を把握できていないために、残業が多いことに気付いていない会社が存在するのも事実です。

残業時間の長さが会社に与えるリスク

長時間労働は従業員だけではなく、会社や株主にも非常に大きなリスクをもたらします。まず、従業員が負うリスクとして挙げられるのが、うつ病をはじめとした精神疾患の発生リスクや過労死のリスクです。精神障害に関する労災申請や過労自殺の増加を受け、厚生労働省は2011年に新たな精神障害の労災認定基準を策定しました。2015年の時点で、精神障害に関する労災申請件数は1515件にも及びます。これは、10年前の2005年度における申請件数の約2.3倍です。また、長時間労働により36協定に違反すれば、罰則金を支払わなければいけません。

一方、会社が負うリスクとしては、人件費や光熱費、治療費などの支払いが挙げられます。残業時間が増大するほど会社が支払うコストは大きくなるでしょう。さらに、健康を損なった社員が休職または退職すれば、補填採用のためのコストもかかります。いわゆる「ブラック企業」として評判が広まってしまえば、社会的信用を失うリスクも避けられません。

結果として、株主は株価低下や倒産のリスクを負うことになります。万が一、ブラック企業として非難の的となり、不買運動などが起こった場合、株価が低下し資金調達は難しくなるでしょう。そのまま業績が上がらなければ従業員のモチベーションも下がり、ますます回復が困難になります。このような状況に陥れば、会社が倒産するのは時間の問題です。

残業時間を抑制するための施策

残業時間を確実に減らすためには、まず従業員自身が実行できる施策を取り入れることが大切です。たとえば、習慣化している業務のプロセスを、もう一度会社全体で見直し、より生産性を上げる方法がないか考えてみましょう。不要な業務は含まれていないか、より効率化できるやり方はないか検討することで、業務のムダを減らせます。また、タスク管理も重要です。自分がやるべき仕事の全体像を理解しながら、必要なタスクを洗い出すことで、効率よく業務に取り組めるようになります。状況に応じてタスクの順番を入れ替えれば、さらなる効率化も可能です。

ただし、ある程度生産性が向上しても、それだけで満足しては従業員ひとりひとりの成長も望めなくなってしまいます。常に自分自身を高めるための知識やスキルを身につけることも重要です。たとえば、ショートカットキーや資料作成のノウハウを覚えるなど、簡単でも業務に生かせるスキルを取得できれば、大幅な効率化が期待できるでしょう。さらに、適度に休憩をとったりインセンティブを設けたりなど、従業員自身がモチベーションを維持する工夫をすることで、結果的に生産性の向上へつながります。

会社が行う施策

個人ができる施策を行いながら、会社の仕組みや体制を見直すことで、残業時間を大きく削減できます。具体的な方法として挙げられるのが、適切な人員の確保です。業務量に見合った人員計画が立てられているかを確認することで、従業員の業務過多を減らすことができます。さらに、非効率な業務を改善するには、適切な設備投資が欠かせません。業務に必要なITソリューションを導入することで、生産性が大きく向上します。

人員や設備を見直したら、風土作りにも注目してみましょう。長時間労働が良くないことであるという意識を根付かせるためにも、全社一丸となって残業時間を削減するよう仕組みや風土を定着させることが重要です。さらに、人事評価と生産性が連動するような制度を導入するという方法もあります。なるべく残業をせず成果を上げている従業員の評価を上げるなど、残業時間を減らすことが従業員のメリットにつながるような制度を取り入れてみましょう。

従業員の意識改革も必要

会社があらゆる施策を行っても、従業員の意識が根本的に変わらなければ、残業時間を抑制するのは難しいでしょう。仕事量が多すぎるために定時では終わらず、仕方なく残業をしている従業員もいるはずです。たとえ定時で退勤しても、終わらなかった仕事を自宅に持ち帰っているだけでは、労働時間そのものは変わりません。また、残業時間を削減すれば残業代も減り、生活が苦しくなる従業員もいるでしょう。さらに、管理職は残業時間を抑制しながら、部署の目標達成や部下のマネジメントまでこなさなければいけません。

そもそも、働き方改革の目的は、従来の働き方や仕事に対する考え方を変え、自ら時間を作り出すことです。日本には非効率的な作業をこなしながら、長時間職場にいるだけで「仕事をしている」と思い込む風潮が根付いている企業が数多く存在します。しかし、無駄な作業を見直し、捻出された時間を自主的な学びに充てれば、新たな人脈や知見を獲得できるでしょう。最終的に自己成長とキャリアアップをはかりながら業績向上に還元するという、理想的なサイクルを生み出せるのです。

改めて自社の残業時間を確認しよう

働き方改革を導入するには、まず自社の残業時間を正確に把握しなければ始まりません。厚生労働省が発表している「労働時間の客観的な把握」によると、3つの方法が定められています。

1.タイムカードによる記録

1つ目は、タイムカードによる記録です。印字式のタイムカードのほか、ICタイムカードという勤怠管理システムを連動させられるタイムカードを導入している会社もあります。

2.電子計算機の使用時間による記録

2つ目はパソコンなど電子計算機の使用時間を記録する方法です。クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、パソコンから残業時間や休暇の申請ができます。

3.その他の方法による記録

3つ目が、これらの方法に該当しない適切な方法です。指紋認証や顔認証など、さまざまな勤怠管理ツールやソフトがあるため、従業員や労務担当者にとって利用しやすい方法を選ぶと良いでしょう。いずれかの方法を導入し、残業時間の実態を的確に把握できれば、どのような施策を導入するべきか検討できます。上述した対策を参考にしたうえで、それぞれの会社の状況に合った方法で残業時間の抑制に努めましょう。

残業時間は会社に大きなリスクが伴う

過度な残業は労働基準法に違反するというだけではなく、会社や従業員に対してさまざまなリスクをもたらします。働き方改革を成功させるためには、まず従業員の意識を変えることが大切です。ここで紹介した情報を参考に、労働時間の削減や業務の効率化のために何をするべきかを考え、着実に残業時間の抑制を進めていきましょう。

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