2020.04.02

随時改定は必要なもの?必要な理由や改定するスパンを理解しよう

随時改定は必要なもの?必要な理由や改定するスパンを理解しよう

算定基礎届や賞与支払届などの提出で忙しい7月が終わったあとに忘れてはならないのが、随時改定の手続きです。随時改定は社会保険料の支払いに関係するため、どの企業も必ず行う必要があります。手続きが遅れると提出する書類が増えるなど手間も多くなるため、できるだけスムーズに行いましょう。この記事では、人事担当なら知っておきたい随時改定の定義や注意点について解説します。

随時改定の定義

そもそも随時改定とはどのようなものなのでしょうか。行うべき理由も含めて解説します。

随時改定とは

随時改定とは、厚生年金保険や健康保険関係の仕組みのひとつです。昇給や降給などで固定的賃金が大幅に変動した際、この変更から3カ月経過した時点で必要となる手続きを指します。通常であれば定時改定により年に1度、4〜6月の給料をもとに7月に見直しが行われますが、定時改定後に給与額が大きく変わった場合には翌年の定時決定を待たずして標準報酬月額を変更する手続きを行う必要があります。翌年の定時改定まで待っていると報酬額と社会保険料のバランスがおかしくなり、将来受け取る年金額などに影響が出るためです。

随時改定を行う理由

定時改定後に給与が大きく変更された場合、その後1年間は給与額に見合わない社会保険料を支払うことになります。定時改定以外の時期にも従業員それぞれの給与額を正確に把握し、変更手続きを行うことで、実際の報酬額と社会保険料の差を埋めることができるのです。

随時改定における罰則

手続きをしなかったり遅れたりした場合はどうでしょうか。基本的に、随時改定をしないからといって企業側に罰則が科されることはありません。しかし手続きが遅れた分だけ新しい保険料が適用されるのが遅くなるため、従業員の将来受け取る年金額などに影響が出てくることは明らかです。社会保険料は2年に遡って請求できるため、あとからまとめて請求されるリスクも考えると、固定給の変動から3カ月経過した時点でスムーズに対応すべき手続きといえます。

随時改定の条件

随時改定は以下の3つすべてに当てはまった場合のみ適用されます。

1.昇給や降給により固定的賃金に変動があった場合

賃金には固定的賃金と非固定的賃金の2種類がありますが、随時改定においては固定的賃金がどのように変動したかをみることが重要です。昇格による昇給や降格による降給はもちろん、役職手当や家族手当、通勤手当に変動があった場合も随時改定の対象に含まれます。結婚して家族が増えるケースや引越しをして交通費が変わるなどのケースは意外と見過ごしがちなので、新たに手当がついた従業員はまめにチェックしておくといいでしょう。

2.変動前後の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合

たんに固定的賃金に変動があったからといって、必ずしも随時改定を行うわけではありません。変動があった月から連続した3カ月の平均月額に該当する標準報酬月額と、変動前の標準報酬月額に2等級以上の差が生じた場合に随時改定が適用されます。

3.支払基礎日数が17日以上ある場合

日給制や時給制の労働者であれば支払基礎日数が3カ月とも17日以上あることが必須となります。月額制の場合は2パターンあり、暦日数がそのまま支払基礎日数として適用される場合と、所定労働日数から欠勤日数を引いたものが支払基礎日数になるものとがあります。後者の場合、実際の勤務日数が17日に満たなければ条件に該当しないため、あらかじめ会社の規定を確認しておきましょう。また、特定適用事業所に勤務する短時間労働者であれば、支払基礎日数11日以上で条件に該当するという決まりが定められています。

対象外になるケースとは

昇給や降給があったものの、等級が1等級しか変わらなかった場合や、支払基礎日数が17日に届かない場合は対象外となります。

随時改定を行う時期

随時改定は具体的にいつ行うものなのでしょうか。定時改定との関連性も含め解説します。

随時改定の時期

随時改定は、固定的賃金を変更してから3カ月分の給与が支払われた翌月に行います。例えば4月に昇給や降給を行った場合、5~7月に変更後の給与が支払われるので、随時改定の手続きを行うのは8月ということになります。毎年の定時改定が行われるのは7月ですが、7月の時点でこの随時改定の条件がそろっている場合には定時改定は行わず、8月に随時改定を行うことを優先します。

改定月とは

随時改定により標準報酬月額が変わる月のことを改定月といい、この改定月の翌月の給与から新しい社会保険料が引かれることになります。例えば7~9月の3カ月で標準報酬月額が決定した場合、10月が改定月となります。この場合、11月に支払われる10月分の給与から、新しい社会保険料が控除されるということです。

随時改定が必要な理由

随時改定を行うべき理由は主に2つあります。

将来の年金額に影響がでる

随時改定はすべての従業員分をまとめて行うのではなく、該当する従業員が現れるごとに不定期に行う必要があるため忘れられがちです。それでも必ず行うべき理由は、第一に、当該従業員の将来の年金額に影響することがあげられます。実際の報酬に見合わない社会保険料を支払い続けていれば、従業員が給与に見合った年金を受け取れなくなるなど、将来まで影響が出てしまいます。正確な保険料を算出するためにも、常に随時改定の対象者がいないか気にかけておくことが大切です。

手続きが遅れることで手間が増える

また、手続きが遅れると複数の添付書類を用意しなくてはならないため、迅速に提出した場合に比べ手間がかかります。法律上の義務でもあるため、企業側の都合で随時改定の手続きをしないといったことがないようスムーズに手続きを進めましょう。

随時改定の注意事項

随時改定を行う際の注意点や、遅れた場合の添付書類について詳しく説明します。

60日以上手続きが遅れた場合

随時改定の手続きが遅れると手間がかかることは先ほど説明しましたが、具体的には60日以上遅れると手続きが複雑になります。一般社員のケースでは、月額変更届に賃金台帳や出勤簿のコピーを添付する必要があります。役員のケースでは、株主総会または取締役会の議事録、代表取締役等による報酬決定通知書、役員間の報酬協議書など多くの書類が必要となり、用意するだけでも多くの手間と時間がかかるのがわかるでしょう。

標準報酬月額の下がり幅が5等級以上ある場合

標準報酬月額の等級が5等級以上さがる場合も、60日以上手続きが遅れた場合と同様の書類を添付する必要があります。これは会社側が社会保険料の負担を減らす目的で申請していないことを示すため、事実確認の書類といった意味で提出するものです。

固定的賃金のみが対象

固定的賃金とは先ほど説明した通り、基本給や月によって変動することのない手当など、毎月必ず支払われるものを指します。残業代や休日手当などは非固定的賃金となるため、これらを含んだ金額は標準報酬月額の対象にはなりません。手取り額が増え3カ月連続で平均報酬額が上がったとしても、随時改定の対象とはならないため注意が必要です。

随時改定の手続きの流れ

随時改定の手続きの流れは概ね以下のような手順になります。ポイントと合わせてみてみましょう。

1.書類の準備

随時改定の手続きに必要な月額変更届は、年金事務所または健康保険組合で受け取ることができます。直接取りに行くこともできますが日本年金機構のホームページからもダウンロードが可能です。

2.届け出をする

随時改定の要件が整った従業員がいるとわかった時点で、速やかに「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を提出します。管轄の年金事務所または健康保険組合に届け出ましょう。提出方法は電子申請、CDやDVDなどの電子媒体、郵送、窓口持参のどれでも可能です。この随時改定の手続きは月額変更届を略して月変(げっぺん)と呼ばれることもあります。

3.通知が来る

提出した書類が審査され、内容に不備がなければ「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」という決定通知書が届きます。

4.保険料額の確定

決定された標準報酬月額を最新の保険料額表にあてはめ、新たな健康保険料額と厚生年金料額を確定します。

届け出を忘れないようにするためのポイント

随時改定は定時改定とは違い、従業員によって手続きを行うべき時期にばらつきがあるため忘れてしまいがちです。手続き漏れを防ぐには、随時改定の時期を社内で決めてしまうというのもひとつの手でしょう。4月に昇給や降給のある会社では、8月に随時改定を行うことが多くあります。7月は算定基礎届や賞与支払届の提出、8月は月額変更届の提出、とセットで考えることで随時改定の存在を忘れにくくすることができます。給与のベースが変動する月に合わせることがポイントです。

ただし4月以外にも結婚や引っ越しなどで固定給がアップすることも考えられるため、その時期だけ気にしておけばいいというものでもありません。固定給がアップした従業員に関してはその都度ピックアップして、3カ月後に随時改定の要件を満たしているかの確認を忘れないようにしましょう。一覧表で管理したり、メモをとったりするのが効果的です。従業員が多く対応しきれない場合は、随時改定を管理するアプリケーションの活用やアウトソーシングを利用することで管理が楽になることもあります。

要件を満たさない月を挟むケースの対処法

随時改定の対象になるには、昇給や降給が発生してから3カ月間、3つの条件すべてを満たしている必要があります。例えば、4月に昇給し4〜6月の標準報酬月額が2等級上がっていても、6月の支払基礎日数が17日未満だった場合には6月時点では随時改定の対象にはなりません。あくまで3カ月連続で固定的賃金が2等級以上変わっている、かつ支払基礎日数が17日以上ある場合のみ適用されます。

随時改定は忘れずに行うようにしよう

随時改定は手続きの通知が来ないこともあり、行う必要がないと考える人事担当者も少なからずいるようです。しかし、随時改定は法律により企業側に課された義務であり、すべての企業で行う必要があります。ここで紹介した要件や注意点などを理解したうえで、さっそく随時改定を導入しましょう。手続き漏れがないよう必要な書類をそろえたり、固定給の変動があった従業員を確認したりしてあらかじめ準備を整えておくことが大切です。

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