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2022.6.13

【人事関係者必見】職務等級制度とは?等級制度の種類や作り方など紹介

人事評価制度は時代の変遷や社会の変化とともに移り変わっていくため、人事担当者は、人事制度を必要に応じてその都度変えていく必要があります。人事制度にはさまざまな種類があるため、自社に合う制度を取り入れるうえで、人事担当者はそれぞれのメリットやデメリットなど基本的な知識を熟知しておくことが不可欠です。この記事では、職務等級制度を中心にさまざまな等級制度の特徴やメリット・デメリットなどを紹介します。

そもそも等級制度とは?

等級制度とは、従業員のランク分けを行い、序列化したうえで業務を遂行する際の権限や責任を与える人事評価の制度です。等級制度の軸となり得るものは「能力」「職務」「役割」の3つ存在します。能力を軸としたものが「職能資格制度」、職務を軸としたものが「職務等級制度」、役割を軸としたものが「役割等級制度」です。等級制度は人事評価制度の根幹となるものなので、企業ごとの経営戦略や事業戦略などによって選択すべき等級制度が異なります。

等級制度では、等級ごとに従業員に求める能力、職務、役割が異なり、与える責任の大きさや権限などにも差があるという点が大きなポイントです。等級ごとに与える役職や権限をあらかじめ決めておくことで、基準を最も満たしている人材を役職に就け、権限を与えることができます。何を基準に役職や権限を与えているかという点を明確に示すことができるため、適材適所に人員を配置することが可能になるという点が、等級制度の最も大きな成果と言ってよいでしょう。

適材適所に人材を配置できるということは、会社全体の成長につながります。また、等級制度は人事管理や労務管理の基準となるものです。社員に明確な役割を負わせることができるので、人材面でどのように人員を活かしていくのか決めることも可能になります。さらに、等級制度によって会社の理想とする社員像を社員に対して明示できるという点も、会社にとっての利点と言えるでしょう。会社の理想とする社員像をはっきりとイメージできれば、社員のモチベーションや生産性を向上させることにもつながります。

職務等級制度とは?

職務等級制度とは、従業員が担当している職務のレベルを基準として等級を決定する制度です。仕事内容を細かく分け、それぞれの作業が会社にどのような効果を与えるかといった点を考慮して等級を決めます。そのため、職務の価値が高いほど等級も高くなり、従業員が任されている職務の価値が賃金にも反映されるのが特徴です。任された職務によって等級が決まるといっても、任されただけで価値を判断されるわけではありません。任された職務をしっかり完了できて初めて判断の対象となります。つまり「仕事ができるかどうか」が重視される、いわば成果主義です。

職務等級制度は欧米でよく導入される制度で、職務レベルと仕事の市場賃金相場をもとに給料や責任の大きさを決定していきます。職務内容や難易度はジョブディスクリプションと呼ばれる職務記述書に明確に記載されているので、業務上求められる成果やスキルが一目瞭然です。職務等級制度における社員の評価は、その職務に対する成果に応じたもので、属人的な要素は一切介入しません。職務内容のみで評価できるため、人種差別などで企業が訴えられるリスクがあるアメリカでは主流となっている制度です。

日本でも、2021年4月以降は中小企業でも同一労働同一賃金が導入されます。これまで採用していた等級制度では対応できない場合、等級制度の見直しを迫られることになるでしょう。同一労働同一賃金の導入を機に、職務等級制度を適用する会社が日本でも増える可能性があります。

他の等級制度との違い

職務等級制度についてより理解を深めるためには、職能資格制度、役割等級制度といったほかの等級制度についてもきちんと理解しておく必要があります。これらの概要やメリット・デメリットを理解しておくことは、正しい人事戦略を打っていくうえで重要です。この段落では、ほかの等級制度と職務等級制度との違いを中心に紹介します。

職能資格制度

職能資格制度は、高度経済成長期や安定成長期に普及した人事制度です。従来型の日本企業が長年採用してきた、日本特有の制度と言えます。職能資格制度の最大の特徴は、評価軸が従業員個人の持つ能力だという点です。そのため、どのような仕事を与えられたかにかかわらず、本人がどのような能力を持っているかによって等級が決まります。これは、仕事を通じて身につけた能力が蓄積され、社員として成熟していくという考え方が、職能資格制度の根底にあるからです。

職能資格制度では、勤続年数が長くなるほど高い職能を有しているとみなされます。そのため、仮に配置転換などによって保有している能力を活かすことができない職務に就いたとしても、これまでと変わらず高い評価を受けることになるのです。職能資格制度は、終身雇用が主流であった時代には問題なく機能していました。ジョブローテーションなどを通して、会社のなかでさまざまな職種を経験することが、有能な社員を育てていくうえで必要だと考えられていたからです。

時間をかけてあらゆる職種を経験させることが社員の能力を高め、会社の利益になると考えられていた時代背景が職能資格制度を日本に定着させたと言えます。社員としての能力は入社したてのころほど低く、勤続年数に比例して高まっていくという、きわめて年功序列的な考え方に基づく制度だからです。ひとつの職能を極めていける環境にあれば、ぴったりはまるでしょう。しかし、そうでない場合は、保有している職能と与えられた仕事、支払われる賃金のバランスが崩れて混乱することになります。

また、職能資格制度を適用すると、転職などによって職能がないと評価される社員が出かねません。終身雇用が当たり前でなくなった現代の雇用状況では正しい人事評価が難しくなったと言えるかもしれません。

役割等級制度

役割等級制度というのは、経営戦略や経営ビジョンなどと連動させて、そこから逆算する形で社員の果たすべき役割を明確にすることで成立する等級制度です。1980年代、アメリカで導入が始まりました。役割等級制度では、役割それぞれに等級を設定し、待遇を決定していきます。そのため、業界などにおける統一的な定義は存在しません。各企業が個別に等級や待遇を定義、設定するのがこの制度の特徴です。ほかの制度と比較すると、定義の幅が広く簡潔で導入しやすいと言えるので、導入が進めている企業が多くなっています。

役割等級制度は、職務等級制度に類似した制度と言えますが、はっきりとした違いがあります。まず、役割を軸にしているため、ポジションに応じた臨機応変な行動や業務も等級に反映させることができるという点です。職務ごとに等級を設定している職務等級制度では、同じ職務を行えば同じ評価になってしまいます。しかし、役割等級制度では、役割をこなすうえでどのような行動をしたかということも評価の対象となるため、より細かい人事評価が可能です。

役割に経営ビジョンや経営戦略を反映させられるという点も、職務等級制度とは大きく違います。役割を軸とすることで、会社が社員に求める理想的な行動を促せるという点は、ほかの等級制度にはない特徴と言ってよいでしょう。この特徴を活かせば、等級の設定の仕方を工夫することによって、ゼネラリストとスペシャリストのどちらも育成することが可能です。

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職務等級制度のメリットとは?

職務等級制度には以下のようなメリットがあります。

人件費を抑えられる

職務等級制度を導入することのメリットとしてまず挙げられるのが、人件費を抑えられるという点です。職務等級制度の場合、役職や仕事に等級を設定し、職務に応じた成果に報酬を支払うことになります。そのため、上位の役職に就かない限り賃金が上がることはありません。上位の役職はポスト数に限りがあるので、誰でも昇給できるというわけではなくなります。つまり、職務等級制度を適用することによって、必然的に人件費を抑えることになるのです。

職務等級制度の場合、給与やボーナスのベースは職務内容です。同じ職務を続けている限り、報酬は一定でよいので「長く働いてもらっているからそろそろ昇給させなければ」というような漠然とした理由による昇給はなくなります。年功的な要素を排除することができるため、定期昇給の必要もありません。全体に対する定期的なベースアップがなくなれば、会社にとってのメリットは大きいと言えるでしょう。

給与と労働の関係が明確になる

給与と労働の関係が明確になる点もメリットだと言えます。これは、会社だけでなく、社員にとってもメリットです。労働内容が明確に分類され、それぞれに対して報酬が設定されるため、労働の対価という点がよりはっきりします。社員は与えられた職務を果たせばよくなり、残業を強いられることがなくなるわけです。ワークライフバランスを保ちやすくなることにより、長期的なキャリア形成もしやすくなるでしょう。さらに、職務等級制度をうまく活用すれば、会社が社員に求める理想的な行動を提示することも可能です。企業理念を浸透させ、社員の意思統一を図ることにもつながるでしょう。

職務等級制度のデメリットとは?

職務等級制度のデメリットは以下の通りです。

人事異動における制約が大きい

職務等級制度の場合、ポストに等級が付いた形になるため、人事異動における制約が大きくなります。人事異動では、役職にとらわれてしまうケースが多いからです。たとえば、既に部長の職務についている社員は、ほかの部署に異動させる場合も部長以上の職務に就けざるを得ません。そうしなければ、人事異動によって給与が下がってしまうからです。異動先の部署によっては、どうしてもそれまでと同じポストには就けられないというケースもあるでしょう。役職を重視するあまり異動に制限ができてしまうという点は、企業にとって大きなデメリットと言わざるを得ません。

特別な役職についていない社員の場合も、配慮せずに人事異動や配置転換をすると問題が起こる場合があります。部署を異動したことによって役割が変われば、これまでよりも等級が下がってしまうこともあり得るからです。等級が下がれば給与も下がってしまうため、社員のモチベーションダウンにつながってしまうかもしれません。人事異動の際の制限が大きい点は、役職者以外の場合も同様です。

社員のモチベーションへの影響

社員自身のモチベーションに関わる部分にも大きなデメリットがあります。職務等級制度では、職務ごとに責任や職務内容が明文化されているため、職務記述書に記載されている内容をこなすことが社員にとって最大の関心事となりがちです。職務として記載されている内容の遂行が、等級を維持し報酬に反映されることにつながります。このことを突き詰めていくと、明文化されていることだけをしっかりこなせばよいという考え方になってしまいかねません。明文化されている職務内容だけにしか興味がなくなってしまうことは、能力の向上やモチベーションに対して悪影響を及ぼすことになるでしょう。

人事戦略の構築に時間と工数がかかる

職務等級制度では自社独自の評価基準とグレード分けを検討する必要があるため、人事戦略を構築するために時間と手間がかかってしまいます。給与制度等を変更する際にも、職務記載書の中身もその都度見直さなければなりません。人事担当者の負担が大きいという点はデメリットと言ってよいでしょう。

職能資格制度のメリット・デメリット

資格を取り入れていくことで経験や役職が明確になり、組織変革や改編に対して強い組織にできるという点は職能資格制度のメリットと言えます。資格を示すことで周囲の理解を得やすく、柔軟に人事異動や配置転換を行いながら組織を保つことが可能です。また、職能資格の明確化により、内部の人材に対して将来の在り方を提示することができます。その結果、早期の転職や離職を防ぐことができ、人材を確保することができるという点もメリットだと言ってよいでしょう。職能資格が一種のポストとなることにより、単純な勤続年数だけでなく、職務遂行能力も評価の対象となっていることを示せます。これは役職が欲しい人材に対して好影響を与えることになるでしょう。

一方、働いてスキルを磨けば磨くほど昇進することができる制度なので、全体として人件費が高騰する可能性があるという点は、会社にとってデメリットと言える部分です。また、基本的に職務遂行能力が勤続年数と比例しがちなので、どうしても年功序列型の組織体系になりやすいという問題点もあります。さらに、職能資格制度の評価軸となるべき職務遂行能力は客観的に評価するのが難しいものです。評価の客観性を示せなければ、社内で公平性が保たれていないという批判が起こってしまう可能性があります。

特に、年功序列によって、職務遂行能力による評価の基準があいまいになると疑問が生じやすく、批判も起こりやすくなるでしょう。たとえば、人事異動などによって職務が変わった場合など、保有能力を活かせていないのに、勤続年数などだけで高く評価されてしまうことがあります。誰もが納得する公平な運用が難しいという点は、職能資格制度の大きなデメリットです。

役割等級制度のメリット・デメリット

役割等級制度では、役割に応じた等級を設定することで、会社が社員に求める理想的な行動を示せます。役割に対する等級や報酬を上手に設定することによって、企業理念や社員の意思統一を狙うことができる点は役割等級制度の大きなメリットと言ってよいでしょう。職務等級制度と異なり、役割をこなすうえで発生する業務や行動などについても細かく等級を設定することが可能です。そのため、ポジションに応じた適切な評価を受け取ることができるうえに、スキルはもちろん行動面の評価も加わります。社員は単純に役割をこなすだけでなく、さらによい評価を得ようと行動するようになり、向上心もアップするでしょう。細かい設定によりゼネラリスト、スペシャリストのどちらの育成にも対応できるという点も役割等級制度を導入するメリットです。

メリットの多い理想的な等級制度のように思えますが、正常に機能させるためには、人事の負担が大きいというデメリットがあります。設定から運用まで自社で主体性をもって独自に行わなければこの制度は機能しないからです。業界等における統一的な定義がない以上、役割の設定はもちろん、細かい行動や業務に対する等級の設定も自社で自主的に考えて行わなければなりません。主体性をもって制度の内容を考え、運用していかなければならないため、人事担当者が担う部分が大きいのです。人事担当者が経営側の意見と現場の意見をすり合わせて適切な定義やグレードを定めることが、この制度を正常に機能させるための鍵と言えます。

さらに、配置転換や組織変更によって、課される役割が変化すると、社員に与えられる等級も変化してしまうため、等級が不安定になりやすい点も問題です。異動によってせっかく上がった等級が下がってしまうかもしれないと感じると、社員のモチベーションも安定しづらくなくなってしまいます。社員のモチベーションを維持にも配慮が必要です。

職務等級制度の仕組みとは?

職務等級制度は、職務における成果に対応する形で報酬が支払われる仕組みです。役職と等級の組み合わせによって、成果に対する報酬がいくら支払われるかが決まります。等級の高さは、担当する職務に連動して変化するものです。職務内容がどれだけの価値になるのかは、あらかじめ決められており、職務を担うとそれに応じた等級が自動的に付与されます。

職務等級制度を構築していくうえで重要なのは、それぞれの職務内容や責任、必要な能力などを、誰が見ても正しく理解できるような形で明確に示せるようにしておくことです。そのためには、職務記述書に明文化し、マニュアル化しておく必要があります。職務等級制度では、職務記述書に記載されている内容をきちんと行った場合が報酬の対象です。逆に言えば、記載されていないことはやっても報酬の対象になりません。何が報酬の対象になり何がならないのかを理解しやすくするために、確実に明示しておくことが大切です。

等級制度の作り方とは?

等級制度を構築する際は、事前の準備として現状の分析をしっかり行うことが大切です。具体的なやり方としては、現行の人事制度の特徴を部門、役職、給与、年齢など細かい単位で確認し、問題点などの分析を行います。現状をしっかり分析することによって、理想の形に近づけるうえで何が必要なのかがはっきりわかるため、欠かせない作業です。事前に現状分析を十分に行ったうえで、具体的な制度設計を始めましょう。

等級制度の構築で最初に行うことは、役職と等級の基本方針を定めることです。事前準備で浮き彫りになった内容を踏まえつつ、役職内での等級の数を確認しておきましょう。同時に職種ごとのキャリアコースを用意するのも大事です。この時点で基本方針を決め、大まかな枠組みを設定しておくようにします。人事戦略にはさまざまなタイプがあるので、どの制度を活用していくのか決めることが重要です。活用する制度によって、評価の軸が異なります。綿密に評価制度を定めていくためには、具体的な評価要件を洗い出して決めていかなければなりません。職種ごとに異なる制度を用意してもよいでしょう。

評価要件が決まったら、枠組みに沿って具体的な等級づくりを行います。等級と役職や要件がマッチするように具体的なフレームワークを作るのが大事なポイントです。等級づくりが完了したら、出来上がった人事制度に社員を1人ずつ当てはめてシミュレーションしてみましょう。ずれが生じるようなら、どこかにミスがあります。原因を探って修正を行いましょう。この段階で等級制度と評価制度・賃金制度との整合性が十分か、社員のモチベーションとの間でずれが生じていないかなどを入念にチェックしておくことが重要です。

現在の等級制度のトレンドは?

日本では、戦後に年功序列、終身雇用といった日本独自の雇用慣行が普及しました。そのため、職能資格制度を採用している企業が主流です。職能資格制度は社員の個人的な能力を評価軸としているため、年功序列型の組織になりやすいという特徴があります。職能資格制度は、これまで大企業を中心に多くの企業で採用されてきました。ところが、時代が進み、ベンチャー企業などが台頭するようになると、年齢や在籍年数による評価制度が実情に合わなくなってきたのです。そこで、役割によって序列つけ、等級を割り振る役割等級制度を導入する企業が見られるようになりました。現代の等級制度のトレンドと言えるのは役割等級制度です。与えられた役割だけでなく、役割に応じて発生する行動や業務まで評価の対象として、細かく等級が設定されています。

時代が流れるにつれて、企業や従業員の在り方や求められるものが変化しています。それらが変化すれば、当然従業員を評価するシステムも変えていかなければなりません。人事制度が古いままでは、正しく評価できないからです。従来の職能資格制度や職務等級制度では対応しきれなくなってきたため、役割等級制度が導入されるようになったと言えるでしょう。

人材難の時代に合わせて最適な人材戦略を考えよう

変わりゆく時代のなかで、人事戦略を時代に合うように変えていくことは、企業を強くすることにつながる一方で、場合によっては弱くする原因にもなってしまいます。最適な人材戦略を打っていけるように、人材戦略のメリットとデメリット、概要などをしっかり理解することが大切です。自社にとって最適な人事戦略は何なのかということを常に考え続けていきましょう。

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