2023.2.17
コンピテンシー評価シートとは?書き方やサンプル・項目例を紹介
コンピテンシー評価は、会社において高い成果を生み出す人材の行動特性を評価基準にして行う人事評価です。客観的で公正な人事評価ができるとして近年多くの企業が導入しているコンピテンシー評価ですが、実際に運用するにはコンピテンシーモデルや評価項目を設定し、「コンピテンシー評価シート」を作成する必要があります。
今回はコンピテンシー評価に欠かせない「コンピテンシー評価シート」の作成について、書き方やサンプルテンプレートを紹介します。
目次
コンピテンシー評価とは
優れた人材に共通する行動特性「コンピテンシー」を基準にした人事評価を、コンピテンシー評価といいます。コンピテンシー評価を基準にすることで、業務遂行上のプロセスが明確になるため、社員のどんな能力が不足しているか把握できることがメリットとして挙げられます。
従来の人事評価は、能力評価が主流でした。能力評価はキャリアを積めば能力も伸びるという前提で行われていたため、勤続年数や年齢が重視される年功序列型という点が特徴です。
しかし社員がいくら専門的な知識や技能を有していても、それが行動に結びつかなければ成果にはつながりません。コンピテンシーとは知識や技能を実践の場に活かす力であり、生産効率を図るためには欠かせない要素です。
成果主義が浸透したことにより生産性の向上が重視される昨今ではコンピテンシーが注目され、コンピテンシー評価を導入する企業が増えています。
コンピテンシーについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
コンピテンシー評価シートをそのまま再現できる!CYDASの目標管理について知りたい方はこちら!
コンピテンシー評価シートの作成目的
コンピテンシー評価を人事評価に用いるには、評価の項目や基準、尺度などを一覧化したシート「コンピテンシー評価シート」を作成し導入する必要があります。コンピテンシー評価シートを活用することで、社員は自分の評価を客観的に把握することができます。
一般的にコンピテンシー評価シートには、役職や階級などによって目指すべき人物像や、行動指針が記載されています。実際に運用する際は、数字や記号を入れて評価します。
コンピテンシーモデルの設定方法
コンピテンシー評価では、企業が求める理想の人物像を「コンピテンシーモデル」として定め、それを基に評価項目を設けます。
コンピテンシーモデルの主な設定方法は次の2つがあります。
- 実在する社員の行動特性を抽出し自社オリジナルのコンピテンシーモデルを作る方法
- コンピテンシーモデルとなる人物が実在しない場合、理想となる人物像を分析し、コンピテンシーモデルとして設定する方法
また、コンピテンシー評価の基準は、企業の経営方針や理念などによって設定された「全社共通のもの」と、管理職や営業職、事務職などの「職種や役職に応じた個別のもの」の2つに大別されます。
コンピテンシーモデルの3 つのタイプ
コンピテンシー評価を行うためには、評価基準と項目設定の基礎となるコンピテンシーモデルの設計が必要です。コンピテンシーモデルには、主に次の3つのタイプがあります。
1.理想モデル型
理想モデル型とは、企業が求める理想的な人物像に基づいて評価モデルを設計するタイプです。このタイプではまず、モデルの大枠を想定してから、評価項目を細かく設定していきます。
また理想モデル型は、生産性の高い人材の存在が乏しい場合に有効です。
2.実在型モデル
実在型モデルとは、企業内に実在する生産性の高い人材をモデルに設計するタイプで、多くの企業で採用されています。
実在型モデルは、他の社員にとって再現性がなければなりません。そのためにも、その人物の行動特性をできる限り正確に把握する必要があります。
3.ハイブリッド型モデル
ハイブリッド型モデルとは「理想型モデル」と「実在型モデル」のそれぞれの良い面を組み合わせ、望ましくない部分を補完し合うタイプのモデルです。
ハイブリッド型モデルは、先に挙げた2つのタイプを組み合わせているので、実在の理想人物を上回るコンピテンシーを有しているといえます。よって、全ての被評価者にとって有意義であるだけでなく、実在の理想人物にはさらなる機会を与えるタイプであるともいえるでしょう。
コンピテンシー評価シートの書き方
コンピテンシー評価シートに記載する項目は、主に以下の3つです。
1.分類された評価項目
分類された評価項目とは、コンピテンシーをモデル化する際に必要な思考や行動のパターンを集めた「コンピテンシーディクショナリー」をもとに作成する評価項目です。6つの領域に分類されています。
2.各評価項目の具体的な評価軸
各評価項目を、どのような軸で評価するのか具体的に示したものです。例えば営業関連の場合、「相手の立場に立って話を聴く」「相手の能力や必要としているものを正確に把握して対応する」など支援と人的サービスが重視されやすいでしょう。
3.各評価項目の尺度
各評価項目の尺度とは、記号や数字で評価を表すもののことです。評価尺度には会社全体で使用する「共通基準」と個人の目標や項目に沿って落とし込んだ「個別基準」があります。
コンピテンシー評価シートの書き方はこちらの記事も参考にしてください。
コンピテンシー評価シート作成のサンプル
コンピテンシー評価シートを作成する上で参考になる3つのサンプルを紹介します。
コンピテンシーディクショナリ
コンピテンシーディクショナリとは、ライル・M. スペンサーとシグネ・M. スペンサーが提唱した6つのコンピテンシー群と21のコンピテンシーで、最も古典的でよく使われている評価シートの作成基準です。
参考:日本におけるコンピテンシー ―モデリングと運用―|井村直恵
28のコンピテンシー
28のコンピテンシーとは、コンサルティングサービスを提供しているウィリアム・マーサー社(現マーサー社)が、1999年に上梓した「戦略人材マネジメント」において提示した28のコンピテンシーです。
引用:新しい能力主義としてのコンピテンシーモデルの妥当性と信頼性
iコンピテンシ ディクショナリ
情報処理推進機構による「iコンピテンシ ディクショナリ」は、タスクディクショナリ(約2,600項目)とスキルディクショナリ(約9,500項目)の 2つから構成されており、仕事とスキルの関係や必要とされる具体的なスキルの内容が明示されています。
参考:情報処理推進機構(IPA)によるi コンピテンシ ディクショナリシートのダウンロード
コンピテンシー項目の具体例
コンピテンシー評価シートを独自に作るためには、評価項目を定める必要があります。評価項目は企業の指針や理念によって異なるため、明確なルールや様式はありません。ここではコンピテンシー評価項目の例8つを、目標と具体に分けてそれぞれ解説します。
自己成熟性・自己理解力
自己成熟性・自己理解力は社会人に求められる項目なので、職種や役割を問わず、全社に共通するコンピテンシーです。
目標
- 自分の能力や言動を現実的かつ客観的に把握する
- 自分の能力が周囲にどのような影響を及ぼすのか理解する
具体例
- 相手の立場を理解したうえで発言、行動ができる「思いやり」
- 誰に対しても真摯な態度で接することができる「誠実さ」
- 仕事をするうえで必要な「ビジネスマナー」
- 一度決めたことは途中で諦めず、最後まで取り組む「徹底性」
- 自分の考えや意見を包み隠さず素直に話す「率直性」など
変革志向性・意思決定力
このコンピテンシーも、仕事を遂行するうえで全ての社員に求められる項目なので、全社に共通します。
目標
- 自分の意思で判断、決断を下し、その結果の責任を負う。
- 最後まで諦めず、粘り強く取り組む。
- 現状に満足せず、常に改善や改革を積極的に行う。
具体例
- 第三者のアドバイスや意見を受け入れる「素直さ」
- 困難な状況に直面しても最後まで諦めず、最善策を導き達成する「目標達成への執着」
- 斬新なプロセスやテーマを検討し実行する「チャレンジ精神」
- 失敗する可能性があっても、思い切って冒険を試みる「リスクテイク」
- 状況の変化を読み取り、臨機応変に対応する「柔軟思考」
顧客志向性・対人(顧客)
顧客志向性・対人(顧客)は、良好な対人関係を築いたり傾聴力を養ったりするため、営業関連の職種に向いています。
目標
- 顧客と信頼関係を結び、最良のビジネスパートナーになる
- 顧客の声に耳を傾け、期待以上の行動をする
- 顧客の課題を見つけ、解決する。
具体例
- 初対面の相手に対して好印象を与える身なりや言動を心がける「第一印象度」
- 内容を的確に伝え、相手に理解、納得してもらう「プレゼンテーション力」
- 相手の話に耳を傾け、本意を聞き取る「傾聴力」
- 組織の代表として社外の人と接し、協力・理解を得る「条件交渉力」
- 現在の顧客と親密な関係を維持できる「顧客維持力」
組織・チームワーク
組織やチームワークは、チームで行動する機会が多い組織に求められるコンピテンシーのため、全社に共通します。
目標
- 組織全体の方針や理念を踏まえた上で協力、支援する。
- 生産性の高いチーム作りに貢献する。
具体例
- 自分自身の言動によりチームの目標達成の意欲を高める「ムードメーカー性」
- 相手が理解しやすい言葉とストーリーで論理的な会話ができる「コミュニケーション」
- 組織を動かすためのトリガーポイントを把握し、自ら組織に働きかける「政治力」
- 多くの人の知恵や技術を集め、組織をまとめ上げる「マンパワーの結集」
- 組織が効果的に仕事を遂行できるために、自ら進んで苦労を背負う「チーム精神の発揮」
戦略・思考
戦略・思考は、問題解決のための具体策を導き出すスキルが求められるため、企画やクリエイティブの職種に向いています。
目標
- 問題を分析し、主な原因を正確に捉える
- 問題の解決策を体系的に導き出す
具体例
- 問題を深く掘り下げ、本質を導き出した上で問題解決を行う「分析思考」
- 物事を客観的に捉え、自分の考えを筋道を立てて展開する「論理的思考」
- 新たな発想や着眼点で情報の活用方法を考える「アイデア思考」
- 物事の原因と結果を正確に把握する「状況分析」
- 担当業務における潜在的かつ将来的な問題を解決するためのプロセスを計画する「解決策の立案」
業務遂行力
業務遂行力は、組織の方針や理念に基づいて業務を管理するコンピテンシーのため、管理関連の職種に向いています。
目標
- 業界において最先端の知識・技術を保有する
- コストを意識して業務を遂行する
- 迅速かつ適切に業務を処理する
具体例
- 業界トップレベルの知識と技術を習得している「専門知識・革新技術の習得」
- 相手に目的が明確に伝わる文章を簡潔に書くことができる「文章力」
- 計算が速く、かつ導き出した数値が意味することを即座に理解できる「計数処理力」
- 業務の流れを正確に理解したうえで、安定した運用ができる「安定運用」
- 担当業務の遂行手段、または仕事そのものを自ら改善できる「業務改善/品質の向上」
情報処理能力
情報処理能力は、組織内の情報共有が必要な管理職や幹部候補に求められるコンピテンシーです。
目標
- 状況や目的に沿って情報を収集、活用する
具体例
- 数ある情報の中から正しい情報をいち早く広い範囲で収集する「情報収集力」
- 収集した情報を状況・目的にそって整理し体系的にまとめる「情報整理力」
- 相手の求めている情報をタイミングよく伝える「情報伝達力」
- 収集した情報に新たな情報を追加したり、修正または加工したりし周囲に発信する「情報発信力」
- 収集した情報を公開し、共有する「情報の活用と共有化」
統率力
統率力は、組織をまとめ、方針や理念に沿って先導するコンピテンシーのため、プロジェクトのチームリーダーや管理職に向いています。
目標
- 明確に設定した成果基準通りに、メンバーに行動してもらう
- チームを統率し、先導する
具体例
- 業務の効率化を図るために、仕事の流れや役割分担を把握する「業務管理力」
- 部下や後輩に対して目標や新しいやり方を明示したり、規則を徹底して守らせたりする「指揮・指示の徹底」
- 仕事を通じて部下や後輩の人間性を高め、成長させる「後輩の指導・育成」
- 組織の経営戦略に貢献できる人材を見出し、活躍の場を与える「採用と抜擢」
- 部下や後輩を企画立案や改善活動に参加させる「経営への参画」
コンピテンシー評価はサンプルを参考に自社にあった運用を
コンピテンシー評価とは、会社が求める業務成果を生み出す人に共通する行動特性「コンピテンシー」を評価基準にして行う人事評価です。
コンピテンシー評価を行うにはまず、職種や役割に応じて理想の人物像をモデル化した「コンピテンシーモデル」を定め、習得すべき具体的なコンピテンシーを細分化した「コンピテンシー項目」を明確にする必要があります。
これらを基に、役職や階級などによって目指すべき人物像や行動の指針が記載された「コンピテンシー評価シート」を作成することで、効率良くコンピテンシー評価を行うことができるでしょう。作成にあたっては、コンピテンシーディクショナリなどのサンプルやテンプレートを参考にすると、内容が具体化されより書きやすくなります。
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