働きがいを応援するメディア

2021.1.13

「付加価値」とは?定義や計算方法・分析方法、付加価値の上げ方をわかりやすく解説

差別化を測る際に用いられやすい「付加価値」という言葉。付加価値が高いということは、商品やサービスに魅力があることを示唆しています。ビジネスにおける「付加価値」はどのように考えるとよいのか、具体的に数値化できるのか気になる人もいるでしょう。この記事では、ビジネスにおける「付加価値」の定義や計算方法、生産性との関係・分析方法、付加価値の上げ方などを説明します。

目次

1. 付加価値とは?意味を分かりやすく簡単に説明

ここでは、「付加価値」という言葉の一般的な定義から、ビジネスにおける意味をわかりやすく解説します。

一般的な付加価値の意味とは?

付加価値とは、商品やサービスに特別な価値を付与することを指します。多くの商品やサービスがひしめく中で、「なぜこれを購入したか」という決め手が付加価値ともいえるでしょう。例えば、雑誌に限定コスメの付録を付ける、シンプルなボールペンをおしゃれなデザインにして販売するなどが付加価値を付ける販売戦略の一つになります。 ほかよりもコスパがよい、デザインが格好いい、使いやすいなどの付加価値を吟味して、消費者は商品やサービスを選びます。 つまり、付加価値をつけることで他のサービスや製品と差別化を図ることができます。 

ビジネスにおける「付加価値」の意味とは?

ビジネスシーンでいう付加価値とは、会社がどれだけの価値を生み出せたかを測る指標といえます。経理(会計)担当の方には馴染みがある指標かもしれません。財務分析で生産性を測る際には、数値化された付加価値が利用されます。「付加価値=売上高-外部購入価値」で表されるので、イメージとしては「粗利」と捉えるとわかりやすいでしょう。例えば、食品製造会社が小麦粉や牛乳などを5万円分仕入れて加工し、出来上がった商品の価格が合計8万円となるように販売したとします。そのときの付加価値は3万円になります。
ちなみに、付加価値に関連して「労働生産性」という言葉もあります。労働生産性とは「従業員一人あたりの付加価値額」です。ポイントは、付加価値と労働生産性は相関関係にあること。どちらかを改善すれば、もう一方にも良い影響が見られます。なお、GDPの算出にも付加価値が使われます。GDPとは国内総生産のことで、一定期間内に国内で新たに生み出された商品やサービスの付加価値のことを指します。GDPの経年変化を観測すると、景気の良し悪しや経済成長を推測できるでしょう。

労働生産性については後ほど詳しく解説します。

付加価値は英語で何と言う?発音、読み方、例文

付加価値は英語で「added value」または「value added」と表現します。発音としては、「アディド・バリュー」が1番近い音です。「付け加える・付け足す」という意味を持つ「add」と「価値・有用性」の意味を持つ「value」が組み合わさっているため、比較的理解しやすい用語だと言えます。

付加価値の例文や類義語は?

付加価値の類義語としては、「プラスアルファ」などが挙げられます。また、「付加価値」を使った例文には、以下のようなものがあります。

・この商品には、他の競合商品にはない付加価値があります。例えば、環境に優しい素材を使用しており、持続可能な生産プロセスを採用しています。

・当社のチームは、業界の最新動向に精通しており、専門知識と豊富な経験を活かして顧客に付加価値を提供しています。

ちなみに、上記の例文はChatGPTが提案してくれたものです。タレントマネジメントシステム「サイダスピープル」の機能の一つに、人事や労務に関するあらゆるお問い合わせを自然な文章でやりとりしてくれる「CYDAS PEOPLE Copilot Chat」があります(※発表時の名称から変更)。

2. 付加価値を計算する方法とは?

会社の生産性や経済成長を推し量る手がかりになる付加価値は、どのように求められるのでしょうか。付加価値を求めるには、控除法加算法の2通りの方法があります。それぞれ、詳しく見ていきましょう。控除法と加算法は計算方法が異なりますが、理論的には同じものを算出しているという点を理解しておくことが大切です。

付加価値の計算方法①「控除法」(中小企業庁方式)

控除法とは、中小企業方式とも呼ばれる計算方法です。販売した価値から原料を仕入れた時点での価値を差し引くことによって付加価値を求めます。計算式としては、「付加価値=売上高-外部購入価値」で表されます。
売上高と経費さえわかれば、簡単に結果を求められるため比較的シンプルな方法です。一方で、控除法を採用すると、売上高から控除された費用の内訳情報がわかりづらいため、もう一つの付加価値の計算方法である加算法を使用する方が一般的です。

売上高の求め方

売上高(生産高)とは、自社製品やサービスを販売した結果得た代金のことを意味します。販売した個数が多くなれば、売上高も比例して高くなります。
例えば、1個1000円の製品を100個売り上げた場合の売上高は10万円となります。

付加価値の計算方法②「加算法」(日銀方式)

加算法は日銀方式とも呼ばれ、「付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課」で計算されます。加算法のポイントは、付加価値はさまざまな工程の積み重ねで作り上げられるということ。商品を加工したりサービスを提供したりする人材の確保、営業するための場所や資金の調達というように、ビジネスは多くの工程にわけられるという概念から加算法は成り立っています。なお、他社から購入した固定資産を償却した費用であるという理由から、減価償却費は付加価値に加算されない場合もあります。
減価償却費を含めるかどうかは企業によりますが、含んだ場合の数値を「粗付加価値」、含めない場合の数値を「純付加価値」と使い分けています。

「人件費」「経常利益」などのそれぞれの用語の意味は以下の通りです。

①人件費

人件費とは、企業が従業員を雇用する際に必要になる費用全般のことを指します。「人件費」と聞くと、給与や手当などをイメージする方が多いですが、それ以外にも福利厚生費や退職金、生産に必要な労務費なども含まれます。下記が人件費に含まれる項目の例です。

・生産する際の労務費
・生産管理の際の役員給与
・販売費
・福利厚生費
・退職金
・職給付引当金
・賞与引当金繰入額

②経常利益

経常利益とは、企業活動において得られた利益を意味します。企業が主軸としている事業以外にも利益があった場合は、その利益も含めた金額が経常利益になります。
経常利益は、売上高から原価と固定費を差し引いた営業利益に、営業外の利益と損失を加減することで求められます。ちなみに、有価証券売却益等を売却した金額は含まないので注意しましょう。

③賃借料

賃借料とは、会社の運営に必要な物品などを借りたときに支払う費用です。自動車のリース契約などが当てはまります。
コロナ禍になってからは、感染症対策としてサテライトオフィスを会社名義などで借りる企業も増えていますが、このような契約にかかる費用も賃借料に含まれます。

賃借料に該当する物品の例は下記の通りです。

・建物
・土地
・自動車
・機械
・機械設備
・パソコンやコピー機のレンタル

④租税公課

租税公課とは、会社を運営していく上で必要な公的機関などに支払う費用のことです。「税」という漢字が入っているように、印紙税や関税などの国税や、固定資産税などの地方税が該当します。

・国税(印紙税、登録免許税、関税など)
・地方税(事業税、固定資産税など)
・公的手数料などの賦課金(製造原価、販売費・一般管理費、営業外費用など)

⑤金融費用

金融費用とは、企業の運営・サービス開発にかかる資金を調達する場合に発生する費用のことです。債権者に対する費用のみを指し、株主への配当金などは金融費用に含まないのが一般的ですが、定義は企業により異なります。金融費用に含まれる項目は下記の通りです。

・支払い利息
・社債利息
・割引料
・社債発行差金償却・社債発行費償却

⑥減価償却費

減価償却費とは、高額な商品を購入した際の経費を、使用した分に換算して経費計上した費用のことです。付加価値計算における減価償却費には、製造原価や販売費・一般管理費が該当し、特別勘定に計上されたものは該当しません。

先ほども述べた通り、付加価値の計算に減価償却費を含めるかどうかは企業が決めることができます。含める場合の数値を「粗付加価値」、含めない場合の数値を「純付加価値」と表現するので違いを覚えておきましょう。

3. 付加価値を分析する方法とは?

(1)付加価値率

付加価値率とは、売上高のうちどの程度を付加価値が占めているのかを明らかにする指標です。計算式は、「付加価値額÷売上高×100」です。付加価値率が高いと、企業が顧客へ提供する価値が高いと考えられるため良い傾向と言えるでしょう。

(2)付加価値労働生産性

「付加価値生産性」とは、従業員一人あたりの付加価値を求めたもので、労働生産性とも呼ばれます。付加価値生産性は「付加価値額÷従業員数」で求められます。この数値が大きいほど生産性が高く、小さいほど生産性が低いと判断できます。労働生産性分析(付加価値生産性分析)は、自社の生産性の現状把握をする上で大事なポイントになるのでぜひ一度算出してみましょう。国際的な生産性を比較する際は、この付加価値労働生産性の数字が用いられます。世界規模で見ると「日本の生産性は低い」といわれるのを聞いたことがある人もいるでしょう。実は、その根拠になっているのが付加価値生産性です。

番外編1:日本の生産性が低いと言われてる理由は?

世界でも「日本の労働生産性」は低いといわれており、国家規模で問題視されています。具体的にはどの程度低いのでしょうか。2016年に発表された日本生産性本部のデータによると、2015年の日本の単位時間あたりの労働生産性は、OECD加盟35カ国中20位であると報告されています。特に生産性が低いのが、非製造業やホワイトカラーに該当する仕事です。生産性が低い要因としては、人件費の高さ労働時間の長さが考えられます。つぎに、ほかの国の生産性の高さにも注目してみましょう。フランスでは「週35時間労働制度」を取り入れています。ドイツでは「労働時間法」が整備されており、残業を取り締まる仕組みができています。平日には実質10時間を超えて労働することはできません。このように、世界の国々は労働生産性の向上に熱心であるといえるでしょう。
日本でも、政府の働き方改革によって生産性向上への取り組みが始まっています。それにともない、個々の会社も働き方を改善して生産性を上げようと画策しています。例えば、リモートワーク環境やITツールの導入です。リモート回線を使えば、出張が多い人も出先で会議に参加できるでしょう。また、クラウドカレンダーを活用すれば、スケジュールチェックのためだけに会社による必要はありません。そのうえ、メンバーのスケジュール共有も簡単です。ほかにも、柔軟に休暇を取り育児・家事などと両立できるよう便宜を図ったり、人事制度を見直し仕事へのモチベーションアップを試みたりする会社も登場しています。加えて、副業解禁も働き方改善の一つといえるでしょう。このように、さまざまな取り組みが労働生産性の改善に向けて検討されています。

4. 分配率を分析する方法とは?

付加価値から会社の経営を分析するための指標の一つが「分配率」です。円滑な事業活動を行うには、資本をバランスよく分配することが大切といえます。分配率には、「労働分配率」「他人資本分配率」「公共分配率」などがあり、それぞれの分配率を比較すると、資本の偏りをチェックできます。特に注目したいのが、「労働分配率」です。労働分配率とは、人件費にどのくらいの資本が配分されたかを示す指標です。つまり、労働分配率を見れば従業員にどれだけ付加価値が還元されているかわかるでしょう。

ここでは、労働分配率の求め方や評価方法について詳しく見ていきましょう。

労働分配率の求め方

労働分配率は、「人件費÷付加価値額×100」で算出されます。

労働分配率の評価方法

労働分配率を算出したら、自社の状況をチェックすることが大切です。労働分配率の評価方法について見ていきましょう。

労働分配率が高い企業は「人件費過多」の可能性あり

労働分配率が高いということは、人件費をかけすぎている可能性があります。人件費が高いと、従業員が離職しにくいメリットがありますが、利益とのバランスが崩れ企業の成長が阻害される恐れもあるため、注意しましょう。

労働分配率が低い企業は「労働環境が劣悪」な可能性あり

労働分配率が低いということは、従業員の生産性が高いことを示しています。しかしながら、一方では、ノルマを課すなど過酷な労働を強いていたり、給与が低かったりということも考えられます。低すぎる労働分配率では離職率が高まりがちなので注意が必要です。

同業他社と比較して自社の状況を捉えよう

算出した労働分配率が適正であるかを判断するには、同業他社と比較するとよいでしょう。労働分配率は、業界ごとに特色が出るためです。
例えば、オートメーション化が進んでいる製造業やIT企業は人件費が少なく済むため、労働分配率は低くなりやすいです。一方で、飲食業(飲食店)や宿泊業は接客が必要な業種のため、人件費がかかりやすく労働分配率が高くなる傾向があります。

5. 付加価値を高める方法とは?3つの具体例を紹介

利益をあげるためには、付加価値を高める努力が欠かせません。そこで、付加価値を上げる具体的な方法を3つ紹介します。

他社との比較

付加価値を高めるためには、同業種の他社の数値と比較する方法が有効です。なお、業種によって分配率の平均値が異なるため、比較対象は同業種であることが重要です。他社と比較することで、自社の数値が高すぎるのか低すぎるのかを判別しやすくなるでしょう。また、どの項目が高いのか、どの項目の分配率向上に取り組めば良いかが判断しやすくなるため、企業の成長が促進されます。さらに、他社にはない付加価値を生むきっかけとなるので、競合他社との差別化を図り自社の競争力アップに役立てることも可能です。しかし、すべての企業が財務諸表を公開しているわけではありません。非上場企業の場合は詳細を把握することが難しいため、中小企業庁が公開している「中小企業実態基本調査」などのデータを参照すると良いでしょう。 

システム化でDXを推進する

業種を問わず、システムによるDX化は付加価値の向上に貢献します。なぜなら、付加価値と付加価値生産性は相関関係にあるためです。無駄な業務をシステムが行い、従業員が本業に注力できれば、商品やサービスの質が良くなったり、売り上げがアップしたりというように生産性が向上するでしょう。結果として付加価値も向上します。 

 新たな製品やサービスを開発する

自社にしかない製品を開発すれば、自社でしか得ることのできない付加価値を消費者に与えることができます。そして、既存の製品に、他社にない機能を付け加えることも新たな付加価値となるでしょう。しかし、新製品を開発しても、思ったように売上が伸びないケースもあります。新製品の開発には多くの時間とコストがかかるため、開発時間がムダになる可能性もあります。このようなリスクも視野に入れ、計画的に進めていくことが大切です。 

番外編2:海外には「付加価値税」があるところも

VAT(Value Added Tax) とは

アジアやヨーロッパの一部では、「付加価値税」という税金がある国もあります。これは、消費者が商品やサービスを購入したときに課せられる税金のことで、日本の消費税と似た税金と言えるでしょう。
「付加価値税」は、正式には「VAT(Value Added Tax)」といい、日本語では「物品サービス税」と訳されることもあります。
税率としては15%前後を定めている国が多いです。

付加価値を意識して生産性を上げよう

生産性を考えずに働いていては、会社・従業員双方にとって良いことはありません。付加価値や労働生産性は数値化でき、経営状況を見るのに役立ちます。付加価値を高める方法は業界によって異なりますが、業務を効率化する、そこでしか得られないモノを提供するといった方法などが挙げられます。コンサルティング業やソフトウェア開発業など、ノウハウを商品として扱う企業であれば1人あたりの売上高が影響します。付加価値を意識して生産性を高めましょう。

サイダスのタレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE」は人材情報を一元化でき、社員の雇用情報も管理できるシステムです。評価やキャリア支援まで一気通貫して実現できます。
また、勤怠や給与のシステムとデータ連携することで、組織の状態をダッシュボードとして俯瞰的に見ることができ、人事や経営の意思決定にも役立てられます。
組織課題に合わせたご利用ができますので、まずはお気軽にご相談ください。

Category

ビジネス用語全般

Keyword

Keywordキーワード