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2023.7.14

人時生産性とは?注目されている背景や向上させる方法・企業の成功事例など詳しく解説

働き方改革の推進にともなう生産性の向上や業務効率化が求められている現在、人時生産性を意識する企業が増えています。労働人口の減少や働き方が多様化しつつある中で、人時生産性は企業にとって重要な指数の一つです。

本記事では、人時生産性が注目されている背景や求め方、向上させる方法などについて詳しく解説します。人時生産性企業の成功事例も紹介するので、人時生産性を高めるための参考にしてください。

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人時生産性とは何?

社員ひとりあたりが1時間でどのくらいの粗利を生み出しているのかを測る指標人時(にんじ)生産性といいます。

生産性は、リソースの投入量(インプット)に対してどのくらいの成果(アウトプット)が得られたのかを示す指標です。人時生産性は社員ひとりが1時間働く際の生産性に絞ったものであり、現在の労働量でどれだけ利益を生み出せるのかを把握できます。人時生産性の数値が高いほど短時間で効率的に利益を生み出していることを意味するのです。

また、人時生産性に類似する言葉に「労働生産性」「人時売上高」があります。それぞれの違いや人時生産性の計算式について詳しく解説します

労働生産性との違い

労働生産性とは、社員数や総労働時間など投入した資源に対して生み出された成果を表す指標です。労働生産性を求める式は以下のようになります。

生み出された商品やサービスの量(産出量)÷資源を投入した量(労働投入量)

労働生産性を算出する際に用いられる労働資源には労働者数や総労働時間が含まれるため、人時生産性よりもやや広義的です。例えば、1ヵ月間に25人の労働者を投入し、1,000万円の利潤を計上したとします。この場合、計算式は「1,000万円÷25人」となり、1人あたりの労働生産性は40万円となります。その一方で、人時生産性は社員ひとりが1時間あたりに生み出す粗利高を表すため、労働生産性よりも限定的な指標として経営状況の分析に役立てられます。

労働生産性は、「付加価値」を分析する上でも用いられます。詳しくは下記の記事で紹介しています。

人時売上高との違い

人事売上高とは、社員ひとりあたりが1時間に生み出した売上を表す数値です。下記の計算式で表せます。

売上高÷総労働時間

例えば、1日の売上高が30万円のアパレルショップがあるとします。お店で働くのは社員とアルバイトの計5人、ひとりあたり8時間勤務した場合の人時売上高は「30万円÷40時間(5人×8時間)=7,500円(1時間)」です。

人事生産性は売上高から売上原価を引いた「粗利」を用いて1時間の生産性を算出する一方、人事売上高は売上にかかったコストも含めて算出します。つまり、上記の例でいうと1時間あたり7,500円から、人件費や材料費などをさらに引いていくことになります。このように人事売上高を用いることで、どのくらいの売上を出せる企業なのか把握できるのです。

人時生産性の計算式と具体例

人時生産性の計算式は以下のとおりです。

粗利益高÷総労働時間

粗利益高は売上高から売上原価を引いた純粋な利益を指し、総労働時間は雇用形態に関係なく時間外を含めた労働時間を表します。

例えば、粗利益100万円で総労働時間200時間の部署があるとします。この場合、人時生産性は100万円÷200時間=5,000円です。

ちなみに、粗利益200万円で総労働時間500時間の部署の場合、人時生産性は200万円÷500時間=4,000円となります。粗利益だけを見ると後者の利益が大きいように見えますが、人時生産性で見ると効率よく売り上げられているのは前者です。

人事生産性を正しく算出するためには、粗利益と労働時間の数値を正確に把握することが重要となります。とくに、労働時間に関しては社員一人ひとりの勤怠管理の徹底が必須です。

人時生産性が日本で注目される理由・背景

人時生産性が日本で注目されている理由や背景には以下が挙げられます。

  • 少子高齢化による労働人口の減少
  • 働き方改革の推進

それぞれの内容について詳しく解説します。

少子高齢化による労働人口の減少

人時生産性が注目されている背景の一つに、少子高齢化による労働人口の減少が挙げられます。内閣府が公表したデータによると、満65歳以上の総人口は昭和25年には5%未満でしたが、昭和45年には7%、平成6年には14%を超え、令和3年には28.9%に達し、高齢化率が上昇し続けました。一方、15〜64歳の人口は平成7年の8,716万人をピークに減少へと転じ、令和3年には7,450万人と総人口の59.4%になり、少子高齢化が進んでいることを表しています。(※)

今後も少子高齢化によって労働人口が減少することが考えられるため、多くの企業ではさらに人材不足の深刻化が課題になるでしょう。ムダの多い生産方法では事業が立ち行かなくなることが予想されます。したがって、少ない人材で利益を出すために、人時生産性をいかに高められるかがポイントになってくるのです。

※出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

働き方改革の推進

人時生産性が注目されている理由として、働き方改革の推進が挙げられます。法改正により時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化などが開始され、これまでのように長時間労働に頼って生産量を上げることが困難となりました。限られた時間でいかに付加価値の高いものを多く生み出すかが問われ始めたのです。

また、働き方改革に取り組まない企業はコンプライアンス的に問題があると判断されるため、人材の流出や求人への応募がなくなり、さらなる人材不足に陥るでしょう。ムダな業務やコストをカットし、人時生産性の高い働き方の実現が求められています。

※出典:厚生労働省|「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について

人時生産性を低下させる損失(ロス)とは

人時生産性を低下させる原因には複数の損失(ロス)が関係しています。人時生産性を低下させないためには、ロスを減らして効率的に業務を進める必要があります。主な損失として次のような項目が挙げられます。

  • 生産ロス
  • 管理ロス
  • 動作ロス
  • 手動によるロス
  • 編成ロス

それぞれの内容について解説します。

1.生産ロス

生産ロスとは製造現場で発生する時間的ロスです。具体的には、品物を運搬する際に必要以上の時間がかかったり不良品を手直ししたりするなど、製造以外の業務にかかる時間が挙げられます。

生産ロスを改善するためには、ロスの可視化が欠かせません。製造現場で行う各業務にどのくらいの時間がかかっているのか可視化されれば、ロスが生じている業務を把握しやすくなります。生産ロスを減らすためには、各業務を振り返り、時間配分を設定し直すなどの見直しが必要です。

また、業務を見直す際は固定概念を捨てる必要があります。例えば、「品物を運搬するのに時間がかかるのは仕方がない」と決めつけてしまうと、一向に生産ロスは改善できません。客観的な視点で見直すことがポイントです。

2.管理ロス

管理ロスは管理上で発生する待機時間のことです。管理部門が立てた生産・修理プランが調整不足や突発的な故障などにより、社員が指示待ちや材料待ちの状態となったときに管理ロスが生じます。表面的には生産ロスのように思えますが、製造現場でのロスというよりも管理者のロスに該当します。

管理ロスは仕入れ先など外部要因によって生じるケースも多いため、自社ではどうしようもないこともあるでしょう。プランの立て直しに難航しやすいところが課題です。

3.動作ロス

動作ロスとは配属されている社員の動作や作業方法、レイアウトの不備などから発生する時間的ロスです。社員の動作が効率的でなく作業が遅れたり、材料の配置場所が悪くて資材を取りに行くたびに時間がかかったりするなど、ムダな工程が多いと余計な時間を費やすことになります。

動作ロスも生産性を下げる原因になるため、「本来であれば100個の商品が作れるところ80個しか作れない」といった状況になりかねません。動作ロスを少なくするためには、ムダな工程を削減することが重要です。具体的には、適切な人材配置や作業方法・レイアウトの見直しなどが必要になります。

4.手動によるロス

手動によるロスとは機械やロボットなどで自動化できる作業を人の手で行うことにより生じる時間的ロスです。自動化することで削減できるような作業を社員が行う必要があるため、時間と労力の両方にムダなコストをかけていることになります。

例えば、ロボット掃除機はオフィスや倉庫などを掃除するのに役立つ機械です。スイッチを入れるだけで綺麗になるため、人が掃除機をかける必要がなくなります。掃除にかけていた時間を別の業務に割けるようになれば生産性向上が期待できるでしょう。

自動化するにあたって新しいシステムの導入は欠かせません。導入するにあたってはコストや教育に時間がかかるものですが、中長期的に見れば導入する恩恵は大きく、必要な投資だといえます。

5.編成ロス

編成ロスとは、流れ作業を行う中でライン設計にミスがある場合に生じる時間的ロスです。ある工程の所要時間が長いと次の作業を行う社員は待ち時間ができてしまい、ムダな時間を過ごすことになります。

なるべくムダが発生しない編成を組み、編成によるロスの最小限を図ることが重要です。

人時生産性を向上させる方法

人時生産性を高めるためには、計算式の分子にあたる「粗利益高」の増加、もしくは分母にあたる「総労働時間」の減少につながる取り組みが必要です。具体的な方法としては、次のような取り組みが挙げられます。

  • 人材配置の見直しを行う
  • 公平で適切な人事評価を行う
  • 社員の総労働時間を把握・分析する

人時生産性の向上を図るための参考にしてください。

人材配置の見直しを行う

総労働時間を減らす取り組みとして人材配置の見直しが有効です。社員には業務内容によって得手不得手があるものです。それぞれの適性に合わせて最適な人材配置を行うことで生産性の向上が期待できます。

例えばパソコン業務を得意とする社員なら2時間ほどで完成する資料作りも、パソコン業務が苦手な社員は倍以上かかることがあります。資料内容の質が悪ければ、作り直しが必要になることもあるでしょう。これでは総労働時間が増える一方なので、はじめからパソコン業務を得意とする社員に任せたほうがムダな時間を作らずにすみます。

また、人材配置の最適化は社員のモチベーション向上にもつながります。社員の仕事に対する意欲が高まり、人材流出を防ぐ効果も期待できるのです。

人事システム「CYDAS」では各社員のスキルチェックを把握できる機能が付いているため、人材配置の最適化を容易とします。

公平で適切な人事評価を行う

人時生産性を向上させるためには、社員が納得する人事評価の実施が不可欠です。社員一人ひとりの特性や能力を公平・適切に評価しなければ、社員は企業に対して不満を抱くでしょう。優秀な社員ほど退職することになりかねません。その結果、総労働時間の増加により人時生産性が低下することが考えられます。

また、人時生産性の数値を上げることを目的として単に人件費を削減するケースには注意が必要です。仕事が給料と見合わないと感じれば退職を考える社員が増えるかもしれません。人件費を削減する場合は社員一人ひとりの成果やスキルを把握し、納得できる説明が不可欠です。

CYDASでは360度評価や評価フィードバックなど、社員の評価・育成・キャリアプランに役立つ機能を搭載しているため、公平で適切な人事評価を可能とします。

社員の総労働時間を把握・分析する

業務を分析するには、社員一人ひとりの正しい総労働時間を把握する必要があります。総労働時間を正しく把握できなければ、人時生産性を正確に算出できません。現在の労働量でどれだけ利益を生み出せるのかがあやふやとなります。

しかし、総労働時間を正確に把握するのは容易ではありません。給与担当者は社員の入退出のたびに更新作業を行ったり、部署ごとの労働時間や月ごとの推移などを分析したりするなど業務が増えます。給与担当者の労働時間が増える原因になりかねません。このような事態を避けるためにも勤怠管理を自動化できるツールの導入がおすすめです。

CYDASでは勤怠・給与システムと手軽に連携できる機能が搭載しているため、給与担当者の負担を増やすことなく総労働時間を把握できます。

人時生産性の改善に成功した事例

サイダスのタレントマネジメントシステム導入により、人時生産性の改善に成功した事例をご紹介します。

株式会社イノベーション

株式会社イノベーションでは、人事情報を社内で作成しExcelで管理していました。しかし、一元管理できていないことやデータが蓄積されないことから、作業工数を失うリスクが高いといった課題を抱えていました。

そこで導入したのが人事情報を一元化できるシステム『サイダス』です。社員一人ひとりの情報が過去のものから最新のものまで管理できるため、人材配置の最適化が可能となりました。また、システム導入前の部署異動では、社員がどのような経歴をもっているかわからず仕事の振り分けに時間がかかっていました。システムを導入したことで社員の情報を把握しやすくなり、新所属でのスタートダッシュが早くなったそうです。異動後も即戦力として働けるため、人時生産性の向上につながりました。

適切な評価・人材配置は人時生産性の向上につながる

人時生産性とは、社員ひとりあたりが1時間でどのくらいの粗利を生み出しているのかを表す指標のことです。人時生産性の数値が高いほど短時間で利益を生み出していることになります。労働人口の減少や働き方改革の推進によって多くの企業では人時生産性の向上が課題となっています。適切な評価・人材配置を行い、人時生産性の向上につなげましょう。

適切な人事評価や人材配置の最適化には、社員一人ひとりのスキルや経験を把握する必要があります。しかし、社員数が多い企業ほど困難を強いられるでしょう。そこで人事システム「CYDAS」の活用がおすすめです。「CYDAS」には、社員の情報を把握するのに役立つ機能が充実しています。スムーズかつ効果的に人事生産性を高めたい企業におすすめです。まずは気軽にお問い合わせください。

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