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2020.8.31

キャリアアップ計画書の書き方・例文!助成金を受け取るためのポイント

キャリアアップ助成金の申請は、いくつもコースがあるのでわかりにくいと感じている企業も多いのではないでしょうか。キャリアアップ助成金の申請書の書き方を少し間違えるだけで審査が通らないこともあります。ここでは、キャリアアップ助成金の申請についてわかりやすく解説しています。キャリアアップ計画書の書き方も一緒に紹介しているので、申請前に目を通してみてください。

キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金とは、企業が非正規雇用労働者を雇用している場合に受け取れる助成金のことです。何にでも使える助成金ではなく、企業は非正規雇用労働者のキャリアアップを図るために使わなければなりません。非正規雇用労働者の待遇改善や職業訓練は、キャリアアップ支援に該当します。つまり、パートタイマーや派遣労働者、契約社員に対して研修を行ったり、時給を上げたりする際には、助成金を申請することが可能です。また、非正規雇用労働者に対して定期健康診断の実施、あるいは非正規雇用から正規雇用への切り替え行う場合もキャリアアップ助成金の対象となります。
企業を成長させるためには、非正規雇用労働者の存在は欠かせません。キャリアアップ助成金を利用して、非正規雇用労働者の教育に力を入れることができれば、業務効率は格段に上がるでしょう。また、企業が積極的に非正規雇用を正規雇用に転換させることで、非正規雇用者のモチベーションを高めることにもつながります。ひいては、正規雇用と非正規雇用の労働条件の差を縮め、人材の定着率を上げるのに役立つことでしょう。

キャリアアップ助成金の対象企業・労働者

キャリアアップ助成金の対象である労働者は、有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者です。たとえ、無期雇用労働者でも、正規雇用者と比べて勤務が短い場合は、短時間労働者に該当するため助成金の対象となります。総務省統計局が公表している統計調査によると、2018年における非正規雇用労働者の割合は、雇用者全体の37.9%を占めています。非正規雇用労働者はかなり多いことから、非正規雇用労働者を雇っている企業なら、キャリアアップ助成金を使わない手はありません。とはいえ、簡単に受給できるものでもなく、キャリアアップ助成金を受け取る申請をしたい場合は、いくつかの条件を満たす必要があります。

キャリアアップ助成金を受け取るための条件

キャリアアップ助成金を受給するには、雇用保険適用事業所の事業主でなければなりません。そして、事業主は助成金の対象となる労働者の賃金支払い状況がわかる書類を、あらかじめ揃えておく必要があります。ほかにも、キャリアアップ管理者を置くこと、キャリアアップ計画を作成して認定を受けることが条件として挙げられます。キャリアアップ管理者は、事業所に雇用されている人のなかで、有期契約労働者のキャリアアップに取り組むための知識や経験がある人が適任でしょう。管理者としての適正さえあれば、事業主や有期契約労働者でも就任することが可能です。ただし、同一人物が複数の事業所のキャリアアップ管理者を兼任することはできないので注意してください。

キャリアアップ計画期間内に実施しなければ受給できない

キャリアアップ計画は、最大5年という期間が決められているため、期間内に取り組むことが求められます。計画期間内に取り組むことができない場合は、期間が満了する前に延長の変更届を出す必要があります。しかし、既に計画開始から5年が経っている場合は、延長をすることができないため、計画を進めるときはぜひとも気をつけたいところです。

キャリアアップ計画書とは?目的と重要性

キャリアアップ助成金をもらうには、ハローワークにキャリアアップ計画書を提出する必要があります。キャリアアップ計画書には、不正受給を防ぐ目的があり、書き方次第では申請が認められないこともありえます。そのため、企業がどのようなプランをもって、対象の非正規雇用労働者のキャリアアップを進めていくか、はっきりわかる計画書に仕上げることが大切です。そのため、キャリアアップ計画書を作る際には、事前の計画と実施する施策とのあいだに整合性がとれているかを必ず確認しましょう。
仮に、正社員化コースの正規雇用の措置を講じると選択した企業なら、計画全体の流れとしては、正規雇用の転換方法について記載しなくてはいけません。しかし、正規雇用を選んでおきながら、正規雇用とは違う施策についての計画を立ててしまうと、整合性がないと判断されるおそれがあります。キャリアアップ助成金の審査が通るまでは、数カ月の期間がかかることも珍しくはないため、きちんと精査してから提出することが重要だと言えます。

キャリアアップ計画書の提出までの流れ

キャリアアップ助成金の申請をするには、キャリアアップ計画書を作るところから始めましょう。キャリアアップ計画書が完成したら、事業所がある地域を管轄するハローワークの窓口に提出します。ハローワークの窓口では、書類が揃っているかといった所定の確認が行われるだけで、審査が完了したわけではないので注意してください。その後、ハローワークから助成金事務センターへと書類が送られ、審査が実施されます。キャリアアップ計画書が郵送でも受け付けてもらえるかは、管轄のハローワークによって異なります。持ち込むことが難しい場合は、あらかじめ電話で郵送対応してくれるかを聞いておきましょう。

キャリアアップ計画書の各項目の書き方・例文

キャリアアップ計画書の申請書が手元にない場合は、厚生労働省のキャリアアップ助成金の申請様式のダウンロードページより入手してください。「様式第1号キャリアアップ計画書」のWordファイル、あるいはpdfファイルをダウンロードしましょう。用紙は全部で3枚あり、キャリアアップ助成金と書かれている1枚目には、事業所名と代表者名、労働組合の労働者代表者名を記入します。
企業に労働組合がないなら、社内に周知したうえで代表者を選出する必要があります。そして、共通事項と記載されているキャリアアップ計画書の2枚目には、事業所の情報を記入してください。事業主名や事業所住所、電話番号や雇用保険適用事業所番号、労働保険番号を書き入れます。さらに、代理人・社会保険労務士による提出代行者または事務代理者の欄には、代理人氏名や住所、電話番号の情報を記入しましょう。社会保険労務士に書類作成を依頼するとき、この代理人の欄も必ず埋めなくてはいけません。
最後の3枚目には、申請書の要となるキャリアアップ計画を書いていきます。キャリアアップ管理者の情報と業務内容を書き入れて、どのコースを推し進めていくかを詳しく詰めていきます。基本的にキャリアアップ計画の期間は、5年以内であれば期間を自由に設定して構いません。とはいえ、多くの企業は2~3年のキャリアアップ計画を立てることが多いでしょう。

キャリアアップ計画書の例文

1.キャリアアップ計画期間:令和2年4月1日~令和5年3月31日
2.キャリアアップ計画期間中に講じる措置の項目:人材育成コース(2年7月頃実施予定)
3.対象者:経理事務部門の経理業務に従事する契約社員およびパートタイム労働者
4.目標:職業訓練を通じて情報リテラシーに関する知識や技能を習得させる。
5.目標に達成するために講じる措置:情報リテラシーに関する知識や技能を習得するための職業訓練を実施。職業訓練後、対象者に技能検査を行いスキルの向上を確認する。
6.キャリアアップ計画全体の流れ:契約社員およびパートタイム労働者に対して、必要な知識や技能を習得するための7カ月程度の職業訓練を行う。職業訓練後は、知識や技能が身についているかを技能検査にて判断する。

コース内容・支給額・必要書類など

コース内容・支給額・必要書類など:正社員化コース

正社員化コースは、非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換、あるいは直接雇用する場合に、助成金が支給されるコースとなります。たとえば、契約期間が決まっている有期契約労働者を正規雇用労働者に転換させるときは、中小企業ならば1人あたり57万円が支給されます。大企業になるともらえる助成金が少し減るものの、それでも1人あたり42万7500円の助成金を受け取ることが可能です。そして、契約期間が決まっていない無期雇用労働者を、正規雇用労働者に転換したときは、中小企業なら1人あたり28万5000円をもらうことができます。大企業では、1人あたり21万3750円を受給することができ、企業が正規雇用するときの負担を少しでも減らすのに役立つでしょう。
上記は正規雇用でもらえる助成金ですが、実は正規雇用ではなくても助成金がもらえるケースがあります。それは、有期契約労働者を無期契約労働者へと転換させる場合です。支給される助成金は、無期雇用から正規雇用に転換したときと同額で、中小企業が1人あたり28万5000円です。大企業についても同様に、1人あたり21万3750円となっています。あくまでも正社員化コースの対象となる労働者は、支給対象の事業主に6カ月以上雇用される労働者です。派遣社員の場合は、6カ月以上同一の業務にあたっていると支給対象となります。正規雇用労働者には、勤務地限定正社員や短時間正社員、職務限定正社員も含まれます。
ただし、雇用されるときに、いずれ正規雇用労働者として雇われることを約束している場合は、支給の対象外となるので気をつけなくてはいけません。生産性の向上が認められる、あるいは父子・母子家庭の世帯主を正規雇用労働者に転換した場合は一部助成金が増額するケースもあります。なお、正社員化コースを申し込むときは、キャリアアップ計画書のほかに労働規約または就業規則を用意しましょう。

コース内容・支給額・必要書類など:賃金規定等改定コース

賃金規定改定コースは、有期契約労働者の基本給が2%以上増額するように、賃金規定や賃金一覧表を改定した場合に助成金が支払われるコースです。対象労働者の人数に応じて、助成金の金額が変わります。対象労働者数が1~3人の場合は、中小企業で9万5000円、大企業で7万1250円が支給されます。対象労働者数が4~6人になると、中小企業で19万円、大企業で14万2500円を受け取ることが可能です。生産要件を満たしたり、職務評価を実施して増額改定したりした場合は支給額が加算されます。さらに、中小企業が3%以上の増額改定を行った場合も加算対象となります。
賃金規定等改定コースに申し込む際に必要な書類は、キャリアアップ計画書、労働協約または就業規則、賃金規定と賃金一覧表です。ほかにも、助成金の対象となる労働者の賃金台帳と出勤簿、雇用契約書または労働条件通知書が必要となります。中小企業の場合は、中小企業であることを確認するための登記事項証明書、事業所確認票も一緒に用意してください。

コース内容・支給額・必要書類など:健康診断制度コース

健康診断制度コースは、健康診断を受けさせる義務がない有期労働契約者に対し、企業が健康診断を行う場合に助成金を申請できるコースです。助成金の申請をするには、いくつかの要件をすべて満たさなくてはいけません。まず、有期契約労働者の健康診断制度、および健康診断制度を利用できる従業員の要件について就労規則に規定する必要があります。そして、キャリアアップ計画期間内に、4人以上の有期契約労働者に健康診断を実施します。そのうえで、企業は就労規則に規定した健康診断を、有期契約労働者に対して定期的に行うことが求められます。導入する健康診断として人間ドックを選択する場合は、企業が実施した費用を半額以上負担しなければならないので注意しましょう。
助成金は1事業所あたり1回のみ受け取ることができ、受給額は中小企業が38万円、大企業が28万5000円です。生産性の要件を満たす場合のみ、中小企業は48万円で、大企業が36万円と受給額が加算されます。健康診断制度コースを申し込む場合は、企業が指定した医療機関で受診し、健康診断の結果を提出します。助成金の支給申請をする際は、キャリアアップ計画書と就業規則、助成金支給申請の提出が必要です。4人目の有期雇用契約労働者が健康診断を受けた月の給与日から、2カ月以内に助成金支給申請を出さなくてはいけないので気をつけてください。

コース内容・支給額・必要書類など:賃金規定等共通化コース

有期契約労働者が、正規雇用労働者と共通の職務を行っているのに、正規雇用労働者より賃金が低くては働く意欲が低下してしまいます。そこで、有期契約労働者と正規雇用労働者の賃金の差を縮めたいときに、利用できるのが賃金規定等共通化コースです。有期契約労働者の賃金を職務に応じて払うように賃金規定を作成し、実施した場合に助成金が支払われます。1事業所あたり中小企業では57万円、大企業では42万7500円が支給されます。ただし、生産性の向上が認められる場合は支給額が増額され、中小企業で72万円、大企業なら54万円を受け取ることが可能です。
この賃金規定等共通化コースでは、対象人数が増えれば、助成金の支給額が加算されます。上限が20人までで、支給額は中小企業が1人あたり2万円、大企業は1万5000円です。生産性の向上が認められる場合の加算額は、中小企業が1人あたり2万4000円、大企業が1万8000円です。賃金規定等共通化コースを申し込むには、キャリアアップ計画書とキャリアアップ助成金支給申請書が必要となります。さらに、事業所確認票や賃金規定等共通化コース内訳、支給要件確認申立書、就業規則と対象の労働所の報酬支払簿が必要です。

コース内容・支給額・必要書類など:諸手当制度共通化コース

諸手当制度共通化コースは、住宅手当や扶養手当のない有期契約労働者に対し、正社員と同じ諸手当制度を設けることで、助成金が支給されるコースです。1事業所あたり中小企業なら38万円、大企業なら28万5000円が支払われます。生産性の向上が認められると支給額が増え、中小企業で48万円、大企業で36万円を受け取ることができます。諸手当制度共通化コースは、人数に応じて支給額が加算され、対象労働者1人あたり中小企業で1万5000円、大企業で1万2000円の支給額です。
人数に応じた加算額も、生産性の向上が認められるときは増額対象となり、1人あたり中小企業で1万8000円、大企業で1万4000円が支払われます。諸手当制度共通化コースも、賃金規定等共通化コースと同じく、加算対象者の上限は20人までです。必要書類は、キャリアアップ助成金支給申請書、諸手当制度共通化コース内訳、支給要件確認申立書が挙げられます。ほかにも、対象となる労働者の賃金台帳や出勤簿、雇用契約書や就業規則が必要となるので準備しておきましょう。

コース内容・支給額・必要書類など:選択的適用拡大導入時処遇改善コース

選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、社会保険を選択適用させるときに便利なコースです。有期契約労働者に対して、労使合意に沿い社会保険を適用し、かつ基本給を上げることで助成金が支給されます。社会保険の加入と基本給の引き上げを同時に行う理由は、有期契約労働者の手取りが少なくなってしまうためです。有期契約労働者にも社会保険に加入してもらうことで、ケガや老後の不安を取り除けるため、安心して働いてもらうことができるようになります。
ただし、対象者は1週間の所定労働時間が20時間を超える者であること、賃金が月額8万8000円以上である者に限られます。また、雇用期間が1年を超えると見込まれることと、学生ではないことも必須条件です。受給金額は、対象者の基本給の増額割合で変わります。基本給の増額割合が3~5%未満の場合は、1人あたり中小企業で1万9000円、大企業で1万4250円が支給されます。生産性の向上が認められるときは、1人あたり中小企業で2万4000円、大企業で1万8000円を受け取ることが可能です。
基本給の増額割合が5~7%未満だと、1人あたり中小企業で3万8000円、大企業で2万8500円に増えます。生産性の向上が認められると、1人あたり中小企業で4万8000円、大企業で3万6000円です。支給は1事業所につき1回までで、申請上限人数は30人までです。申し込む際には、キャリアアップ助成金支給申請書、賃金規定等内訳、支払い要件確認申立書を用意しましょう。キャリアアップ計画書と賃金規定、対象労働者の出勤簿並びに賃金台帳も必要です。

コース内容・支給額・必要書類など:短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者労働時間延長コースは、短時間労働者の労働時間を延長した場合に助成金を申し込めるコースです。短時間労働者の週の労働時間を、5時間以上延長することで申し込むことができます。もしくは、賃金規定等改定コースと合わせて、社会保険加入と同時に週の労働時間を1~5時間未満延長したときにも申し込みが可能です。受給金額は、週の所定労働時間を5時間以上延長した場合で、1人あたり中小企業が19万円、大企業なら14万2500円が支給されます。生産性の向上が認められると判断された場合には、1人あたり中小企業は24万円、大企業で18万円の支給です。
一方で、社会保険の加入により対象労働者の収入が減らないように週の労働時間を増やした場合は、上記の受給額とは異なるので注意しましょう。週の労働時間を1~2時間未満延長したときは、1人当たり中小企業で3万8000円、大企業で2万8500円を受け取ることができます。生産性の向上が認められるときには、1人あたり中小企業で4万8000円、大企業で3万6000円まで支給額が増えます。必要書類としては、キャリアアップ助成金申請書、短時間労働時間延長コース内訳、支給要件確認申立書です。ほかにも、生産性要件算定シート並びにキャリアアップ計画書、対象労働者の雇用契約路や賃金台帳、出勤簿を用意しましょう。

キャリアアップ助成金受給のためのポイント

キャリアアップ助成金を受給するには、計画通りに実行したことの証明が必要となるので、たくさんの申請書類を用意することとなります。そのなかでも優先度が高いのは、就業規則に新たな規定を盛り込んだり、もしくは就業規則を改定したりすることです。就業規則とは、労働基準法に基づいて、被雇用者の労働時間や賃金、並びに服務規程といった労働条件などを定めた規則のことです。従業員が10人以上の事業所ならば、就業規則を作成して労働基準監督署または地方運輸局へ届けることが義務付けられています。10人未満の労働者を雇用している企業の場合でも、届けを出すときは同じく労働基準監督署か地方運輸局です。
正社員化コースと処遇改善コースは、申請の際に就業規則内に新たな規定を設けることが求められます。特に、正社員化コースの場合、転換試験制度といった制度を実施する前に、就業規則に盛り込んで社内に周知しなくてはいけません。キャリアアップ助成金の申請を行うときは、事前に就業規則の届け出をしなくてはいけないのかを、しっかりと確認しておきましょう。

必要書類をしっかり準備して助成金を受け取ろう

キャリアアップ助成金の申請は、すべての審査が完了するまで時間がかかるものです。申請書類がたくさん必要なうえに細かいところまで確認されるので、中途半端な状態で出すことはできません。一度で審査が通るようにするためにも、キャリアアップ助成金の申請の際は必要な書類をしっかりと準備してから手続きに移るようにしましょう。

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