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2023.3.7

レジリエンスとは?心理学やビジネスにおける意味・組織が高める方法など詳しく解説

社員一人ひとりのレジリエンスを高めることで、困難や脅威に直面しても、うまく適応できる組織をつくれます。組織の成長のためにレジリエンスを高めたいと思っても、具体的に何をすれば良いのか分からないという経営者や人事担当の方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、レジリエンスが高い人の特徴を解説しつつ、高めるメリットや高め方などをご紹介します。また、レジリエンスについてあまり詳しく理解できていない方のために、レジリエンスの意味や類似する用語との違いについても解説します。

組織の成長を促進したい方は、ぜひ参考にしてみてください。

レジリエンスとは

レジリエンスとは、「回復力」「復元力」「耐久力」などの意味をもつ言葉で、もともとは物理学の世界で使われていた用語です。バネやバランスボールなどに圧力をかけたときに起こる、元に戻る力こそがレジリエンスです。

近年では、物理学的とは別に、心理学的な意味として使われることが増えています。具体的にどのように使われているのか、そしてレジリエンスが注目されるようになった背景について解説します。

レジリエンスの心理学的な意味

心理学におけるレジリエンスは、「精神的回復力」という意味で使われています。

仕事や家庭、人付き合いの中で困難や脅威に直面し、強いストレスを感じることは誰にでもあるでしょう。そのような状況でもうまく適応しながら成長する能力を、レジリエンスと表現されているのです。

レジリエンスが高い人は激しく落ち込むことがなく、危機やストレスを乗り越えられます。しかし、レジリエンスが低い人は回復する力がないため、不安や不満が蓄積し、精神疾患に陥るリスクを高めてしまうのです。

組織には、社員一人ひとりの健康に配慮する義務があります。身体だけでなく心の健康も含まれているため、メンタルヘルス対策の一つとして、レジリエンスを高める取り組みが求められます。

レジリエンスが注目されるようになった理由と背景

ビジネスの領域でレジリエンスが注目されるようになった背景には、激しく変化する社会情勢や事業環境の変化が関係しています。

ウクライナ情勢や為替の変動、環境問題など、ここ数年の間で予想できない状況が目まぐるしく続いています。とくに、新型コロナウイルスによる感染拡大は、テレワークの導入や外出自粛、マスク生活など私たちの生活を一変させる出来事となりました。

いつどのような危機が訪れるか分からない今、柔軟に乗り越えられる力が必要とされています。

また、働き方改革や経済のグローバル化などにより、ビジネス環境がより多様化・複雑化しています。環境変化への柔軟な対応が求められる一方で、短期間で成果を上げる業務が増加するなど、職場環境は過酷さを増している状況です。

困難をしなやかに乗り越える力がなければ離職につながる恐れもあり、人材不足がより深刻化するでしょう。

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には、次のような特徴があります。

  • 物事に対して柔軟な考えができる
  • 向上心がある
  • 自身の強みを把握できる
  • 感情をコントロールできる
  • リスクを恐れず挑戦できる
  • 周囲と良好な関係を築ける

それぞれの内容について解説していきます。

物事に対して柔軟な考えができる

レジリエンスが高い人は、柔軟な思考力を身につけています。一つの考えに囚われることなく対応できるため、さまざまな逆境に立ち向かえるのが特徴です。

例えば、企画案が通らずネガティブな状況に置かれたとき、レジリエンスが高い人ならポジティブに考えを転換できるものです。「なぜ通らなかったのか」「どこをどのように改善すればよいのか」を考えるでしょう。

また、柔軟性に長けているため、発想を転換するのが得意です。環境変化に強く、あらゆる困難もしなやかに乗り越えられます。

向上心がある

レジリエンスが高い人には、向上心があります。「自分に改善点はないか」「もっとできることはないか」といったように、前向きに取り組む姿勢が見られるのが特徴です。

業務を行う中で、失敗したりトラブルが発生したりすることは少なくありません。一度は落ち込んでも自分の改善点を熟考し、新たに目標を立てようとします。ポジティブな思考で成長を目指せるのは、レジリエンスが高いからこそできることです。

また、チームや部署で問題が起きたとき、レジリエンスが高い人は他人事にならず、自分事に捉える傾向にあります。他者のせいにするのではなく、自分なりに改善点を見つけようとするのです。

自身の強みを把握できる

人にはそれぞれ強みがあるものです。しかし、自身の強みをしっかり把握できている人は、そう多くありません。

レジリエンスが高い人は、自身の強みを把握しており、たとえ困難や脅威に直面しても強みを活かして活躍できます。環境変化が起きたときでもうまく対応できる人がほとんどです。

また、強みだけでなく弱みを受け入れられる点も特徴です。弱みは見方を変えれば、強みになることもあります。自身の長所と短所、すべてを認めているのです。

感情をコントロールできる

感情をコントロールできることもレジリエンスが高い人の特徴です。嫌なことがあったとき、気分が落ち込んだままでは仕事の効率や成果に影響を及ぼします。

せっかくのチャンスが巡ってきてもネガティブな感情が尾を引くと、パフォーマンスが低下してしまうでしょう。これでは周りからの評価を下げてしまい兼ねません。

レジリエンスが高い人はメンタルの回復が早いため、一時の感情に囚われることなく、仕事の本質と向き合おうとします。また、感情をうまくコントロールできるよう、自分なりのストレス対処法をもち合わせているものです。

リスクを恐れず挑戦できる

新しいことにチャレンジするときは、リスクを伴うものです。レジリエンスが高い人は、リスクを恐れず、むしろ自身が成長できるチャンスと捉え、ポジティブに挑戦する傾向があります。

たとえ失敗や問題に直面しても、「できない」「無理」と騒ぐのではなく、冷静に取り組むことができます。困難を乗り越えたときには、自身が成長できたと意識し、次への活力につながるでしょう。

また、仕事ではさまざまな課題が発生します。レジリエンスが高い人は、目をそらさずに一つひとつの課題に向き合い、挑戦していこうとします。

周囲と良好な関係を築ける

レジリエンスが高い人は、周囲と良い関係を築けているため、誰かが困っているときは、自然と協力し合えます。

実際、トラブルが発生したとき、周囲の助けを得て乗り越えられたという体験をもつ人も少なくないでしょう。

コミュニケーションが得意なので、上司や同僚などからの信頼を得やすい傾向にあります。また、家族や友人などプライベートな場面においても良好な人間関係が築けているものです。

レジリエンスを妨げる考え方

レジリエンスは以下2つの考え方によって、妨げられる可能性があります。

  • ABC理論
  • A-C理論

それぞれの考え方や、レジリエンスを妨げる理由について解説します。

ABC理論

ABC理論とは、Adversity(出来事)・Belief(受け止り方)・Consequence(感情)の頭文字をとった言葉です。「人間の基本的な心理の働き方」をあらわしており、受け止め方の重要性を説いています。

人の感情は、出来事から思考・解釈が生じ、結果的に引き起こされるものです。しかし、解釈の仕方次第では、感情が大きく変わります。つまり、同じ出来事でも受け止め方の違いによって、その後の感情が変わるということです。

例えば、上司から高すぎる目標を設定されたとします。このとき、「頑張れば達成できる目標なのかもしれない」とポジティブに受け取るか、「無理なのを承知でわざと設定された」とネガティブに受け取るかによって、その後の感情は変わります。

ポジティブに受け取れば、前向きな姿勢でチャレンジできるでしょう。逆に、ネガティブに受け取れば、精神的なダメージを受け、モチベーションの低下や仕事の効率を下げてしまいます。

A-C理論

A-C理論とは、Adversity(出来事)・Consequence(感情)の頭文字をとった言葉です。Belief(受け止り方)がなく、「出来事と感情が直結している考え方」をあらわしています。

ABC理論のように、感情をコントロールできないため、自身で変えられる要素がありません。出来事が生じたときには、考えずとも感情に直結するため、ポジティブでもネガティブでもない、受け身の状況に陥りやすくなります。

レジリエンスと似た用語の違い

レジリエンスと類似する用語に、次のものがあります。レジリエンスと混同しないように注意しましょう。

  • メンタルヘルス
  • ストレス耐性
  • ハーディネス
  • ストレスコーピング

それぞれの意味について解説します。メンタルヘルスとの違い

メンタルヘルスとは、心の健康状態をあらわす言葉です。強いストレスにより心が不健康になると、うつ病やパニック障害などの精神疾患に陥る可能性があります。近年では、社員が健やかな精神状態で働けるよう、メンタルヘルスを行う企業が増えています。

レジリエンスもメンタルヘルスも、心をケアすることを目的に実施するのは同じです。しかし、レジリエンスは困難をしなやかに乗り越えられるよう感情をコントロールする手法であり、メンタルヘルスはストレスの原因を軽減し、緩和することを目的としたサポートのことです。

また、メンタルヘルスの場合は、医療機関と連携する必要があるところも、レジリエンスと異なる点です。

ストレス耐性との違い

ストレス耐性とは、ストレスを感じた個人がそのストレスに対して心理的・精神的にどれほど耐えられるかをあらわす言葉です。分かりやすいイメージとしては、ストレスを溜められる入れ物がストレス耐性になります。

レジリエンスを語るうえで、ストレス耐性という言葉は多く用いられます。ストレス耐性を高めることで、ストレスに強くなれるため、レジリエンスを高めることにつながるのです。

ストレス耐性は、「レジリエンスを構成する要素の一つ」と覚えておくと良いでしょう。

ハーディネスとの違い

ハーディネスとは、脅威に直面しても傷つかない特性のことです。メンタルが強く、ちょっとやそっとのことでは傷つかないことをあらわしています。一方、レジリエンスには傷ついても回復するという意味があります。

そもそも、ハーディネスは傷つかない力なので、回復する必要はありません。混同しそうになったときは、「傷つかない力」がハーディネスで、「傷ついた後の回復力」がレジリエンスだと区別しましょう。

ストレスコーピングとの違い

ストレスコーピングとは、ストレスを感じたときに対処しようとすることです。コーピング(coping)には「対処する」「切り抜ける」の意味があり、ストレスとうまく向き合うための技術力です。

ストレスコーピングができるとイライラしにくくなったり、ストレスを過剰に溜めこまなくなったりします。レジリエンスはストレスを乗り越えるものであり、ストレスコーピングはストレスをかわすものです。

また、ストレスコーピングには主に2つの手法があります。一つはストレスの原因を変化させて解決を図る「問題焦点コーピング」です。そして、もう一つがストレスの原因に対して考え方・捉え方を変えようとする「情動焦点コーピング」です。

【分野別】レジリエンスの意味

レジリエンスは、心理学やビジネスの場以外でも使われている言葉です。ここでは、代表的な例を紹介するので、参考にしてください。

組織レジリエンス

組織レジリエンスとは、環境変化によってもたらされるリスクに対する「組織としての対応力」のことです。評価指標にもなり得る重要なものであり、組織の存在価値にも直結します。

組織レジリエンスが高い組織には、さまざまな変化に適応する力が備わっています。困難や脅威に直面しても、乗り越えられる強さをもつ組織です。

しかし、組織レジリエンスが低ければ、適応することができず、業績不振や経営破綻する恐れがあります。

組織が繫栄し続けるためには、組織レジリエンスを高める努力が必要です。

環境レジリエンス

環境レジリエンスとは、さまざまな環境変化に直面したとき、社会や組織にどれほどの復元力・適応能力があるのかを示すものです。世界的に環境問題が深刻化する今、注目されています。環境レジリエンスには、2つのレジリエンスが存在します。

一つは、主に自然災害への対応力をもちながら、地球温暖化による環境変化への脆弱性の改善が重視される「気候変動レジリエンス」です。地球温暖化がこのまま進行し続ければ、気候変動レジリエンスもまた低下し続けます。

そして、もう一つが自然生態系の回復・復元力を示す「生態学的レジリエンス」です。森林伐採などによる動物の生息地縮小化や、川などの水の栄養分が自然よりも増えすぎる「富栄養化」は、生態系に影響を及ぼす要因です。生態学的レジリエンスでは、この点に着目することが多くあります。

災害レジリエンス

災害レジリエンスとは、地震や台風など災害による被害から、しなやかに復興できる力のことです。災害への対応力を意味しています。

災害が起きると、電気や水道が供給できなくなったり、公共交通がストップしたりするなど、都市機能に大きなダメージを与えます。ダメージを受けても、スピーディーに機能回復できるよう備えておくべきという考え方です。

災害レジリエンスが高ければ、災害によってダメージを受けても日常生活に早く戻ることができます。

サイバーレジリエンス

サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を受けた後の回復・復元力のことです。サイバー攻撃を100%防ぐのは不可能であることを前提とし、組織のリスク管理戦略として注目されています。

近年、サイバー攻撃によって情報漏洩や不正アクセスなどの被害が拡大しています。被害が大きければ、事業継続が危ぶまれる可能性もあるでしょう。

サイバーレジリエンスが高ければ、仮に被害を受けても乗り越えられるため、事業継続が可能になります。

レジリエンスの危険因子と保護因子とは

レジリエンスには、「危険因子」と「保護因子」という2つの因子が存在します。世界では多くの研究が行われており、それぞれの具体例が見えてきました。

危険因子の具体例

危険因子とは、強いストレスや困難をもたらす原因になる出来事のことです。レジリエンスは、この危険因子を乗り越えたり克服したりすることを目的としています。

危険因子の具体例としては、戦争や災害、貧困、病気、離婚、いじめ、虐待などが挙げられます。日常生活で起こり得る出来事も多々あるため、決して他人事ではありません。

保護因子の具体例

保護因子とは、強いストレスや困難に適応する力、つまりレジリエンスを高める要因のことです。

具体例としては、個人の性格や特性といった先天的な個人内因子、問題を解決するなど後天的な能力因子、そして家族や友人などによるサポートを受けられる環境因子などが挙げられます。

保護因子はレジリエンスを機能させるためにも必要不可欠な存在です。

レジリエンスの精神回復力3つの構成要素

レジリエンスを語るうえで欠かせない要素に「精神回復力」があります。精神回復力とは、レジリエンスを導くための個人内因子のことです。

「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来指向」の3つで構成されており、困難に遭遇してもうまく適応できる人ほど、この精神回復力が高いといわれています。

ここでは、それぞれの精神回復力について解説します。

1.新奇性追求

新奇性追求とは、さまざまな分野や出来事、新たな出会い(人)などに興味や関心をもつことを意味します。言い換えるなら、好奇心旺盛ともいえるでしょう。

新奇性追求がある人は、常識や習慣、自分なりのルーティンなどに囚われることがありません。新しいことに積極的にチャレンジする姿勢や気持ち、行動力をもち合わせています。

2.感情調整

人はトラブルが発生したときや逆境に遭遇したとき、感情が大きく揺れ動きます。感情調整は、喜怒哀楽のなかでもコントロールするのが難しいといわれる、「怒」と「哀」をうまくセーブすることを意味します。

「悲しい」「嫌だ」「逃げたい」といったマイナス感情を自らコントロールできれば、困難に直面しても気持ちが下がり続けることはありません。切り替えが早く、チャンスを逃すこともありません。

3.肯定的な未来指向

肯定的な未来指向とは、未来に対して期待感をもつことを意味します。ただし、「何とかなる」というような漠然とした考えではなく、明確な目標やビジョンをたてて、実現するための具体的なプランを描くことです。

ストレスや逆境に遭遇しても、前向きな未来を予想することでモチベーションが高まるため、精神的回復を促せます。

レジリエンスが企業にもたらすメリット

企業はレジリエンスを高めることで、次のようなメリットを得られます。

  • 企業の評価指標の一つになる
  • 困難に負けない企業に成長できる
  • 離職率の低下につながる

レジリエンスを高める必要性を知りたい人は、参考にしてください。

企業の評価指標の一つになる

企業として社会情勢やリスクに適応する能力がどのくらいあるのかは、評価指標の一つになります。

レジリエンスが高い企業は、変化への適応能力や耐性に優れているため、顧客や市場からの評価が上がります。企業のブランドイメージは高まり、競合企業との差別化や優秀な人材確保、長期的な利益が得られるなどのメリットにつながるのです。

また、レジリエンスの向上は、投資家へのアピールにも有効です。レジリエンスを評価指標の一つとして重視する投資家は少なくありません。企業がレジリエンスを高めることができれば、企業価値を示す根拠になります。

困難に負けない企業に成長できる

昨今は企業や組織内だけでなく、市場全体が目まぐるしく変化する時代です。このような状況の中、企業においては困難に陥っても適応していく能力が求められます。

企業が長期的に発展し続けるためには、働き方改革による職場環境の改善やリスク対策などが必要です。具体的には、「社員が働きやすい環境をつくること」「起こり得るリスクに備えること」などであり、これらを実現するためには大きな変化を伴います。

社員一人ひとりのレジリエンスが高ければ、さまざまな変化にも柔軟に対応できるため、企業の長期的な成長が可能です。しかし、レジリエンスが低いと、変化することに抵抗を感じ、企業の成長を妨げる原因になり得ます。

離職率の低下につながる

レジリエンスは、離職を防ぐための施策としても有効です。多くの企業では人材不足による業務の増加や、職場環境の変化などにより、ストレスを抱えて心身のバランスを崩す社員が少なくありません。

また、日本人は自己肯定感(自らの価値や存在意義を評価できる感情)が低い傾向にあるため、失敗を引きずりやすく、ストレスを溜めやすいといわれています。

精神的な疲れが溜まり、うつ病やパニック障害に陥れば、働ける状況ではなくなり離職につながります。レジリエンスが高ければ、仮にストレスを感じても、回復して心身の健康の維持が可能です。

社員の離職率が低下するため、優秀な人材の流出や人材不足などを防げます。

組織のレジリエンスを高める方法

企業は組織のレジリエンスを高めることで、さまざまなメリットが得られます。組織のレジリエンスを高めるためには、次のような取り組みが必要です。

  • 社員が働きやすい職場環境を整える
  • 失敗を活かせる企業風土をつくる
  • ミッションやビジョンを浸透させる
  • BCP(事業継続計画)に取り組む
  • セミナーや研修を開催する

組織のレジリエンスを効果的に高めるための、参考にしてみてください。

社員が働きやすい職場環境を整える

組織のレジリエンスを高めるためには、社員にとって働きやすい職場環境を整える必要があります。

仕事をする中で、基本的にポジティブな考えをもつ人でも、どうしても逆境を乗り越えられない場面が出てくるでしょう。

例えば、上司が抑圧的だったり、お互いにサポートする体制がつくられていなかったりすると、うまく適応できず、ネガティブな感情を引きずってしまいます。一人でできることには限界があるため、お互いにサポートし合える関係性をつくることが重要です。

また、自己価値を認める「自尊感情」を高める取り組みも必要です。自尊感情が高ければ、できることとできないことの境界線が分かるため、自分の限界を素直に受け入れられます。

精神的回復が難しい状況に陥る前に、周囲にサポートをお願いできます。

失敗を活かせる企業風土をつくる

失敗を許容しない企業風土があると、ミスをした社員が責められるだけの状況に陥るため、逆境から回復するのが遅れてしまいます。このような状況が続けば、大きなストレスを抱えてうつ病を起こしたり、離職率が高まったりする恐れがあります。

企業は、失敗を報告しやすい企業風土をつくる努力が必要です。失敗した後、責めるのではなく、「なぜ失敗が起きたのか」「失敗を次にどのように活かすのか」を一緒に考えられるようにしましょう。

失敗を恐れない職場環境をつくれば、困難な課題に直面しても積極的にチャレンジする社員が増えるため、企業の成長促進につながります。

ミッションやビジョンを浸透させる

組織のレジリエンスを高めるためには、自社のミッションやビジョンを明確にし、社員に浸透させることも重要です。

ミッションとビジョンをしっかり社内共有できれば、企業と社員の目指す方向が一致するため、思い違いによるトラブルを防げます。その結果、社員は迷わずに自信をもって行動できるようになります。

仮に、ミスをおかしても、「何がいけなかったのか」その原因を把握しやすくなるため、向上心をもって次に活かそうとするでしょう。

社会情勢や市場の変化に柔軟に対応できるようになるため、困難をしなやかに乗り越えられる企業の土台をつくれます。

また、ミッションやビジョンを伝える相手は、社員だけでなく外部との関係も含まれています。自社はどのような課題を抱えており、将来的にはどのような姿を目指すのかを社員や外部に向けて発信することが求められます。自社のミッションやビジョンを浸透させることは、投資家や求職者などへのアピールとして有効です。

BCP(事業継続計画)に取り組む

BCPとは「Business Continuity Planning」の略称で、事業継続計画を意味する言葉です。災害やサイバー攻撃などの緊急事態が生じたとき、損害を最小限に抑え、事業の復旧・継続を図ることを目的に作成されます。

BCPに取り組まないと、トラブルが生じたときにうまく対応できず、ダメージからの回復・復元が遅れてしまいます。事業を再開するのに時間がかかれば、業績が低迷したり企業としての信用を失ったりしまい兼ねません。

このような状況を回避するためにも、緊急事態によってダメージを負った後の速やかな復旧力が重要です。

具体的な取り組みとしては、テレワーク環境でのサイバー攻撃に対する対策、自然災害発生時の初動対応から復旧までの計画書づくりと共有などが挙げられます。

万が一に備え、事業を継続するための仕組みやガイドラインの整備が必要です。

セミナーや研修を開催する

レジリエンスは大人になってからでも習得できる能力の一つです。レジリエンスを高めるセミナーや研究を開催することで、社員一人ひとりのレジリエンスを向上できます。

例えば、グループワークやディスカッションなどから、「ネガティブ思考からポジティブ思考に変換する習慣」「困難をバネにする回復力」「ストレスに負けない耐性」を身につけることが可能です。

セミナーや研修を積極的に取り入れることで、社員一人ひとりのレジリエンスが高まり、結果として組織全体のレジリエンス向上につながります。

ただし、社員に対するレジリエンスの研修は自己流では難しいものです。外部セミナーや教育プログラムを活用すると、より効果的なセミナーや研修を実施できます。

組織のレジリエンスを高めるためにリーダーに必要なこと

組織のレジリエンスを高めるため、リーダーには次のようなことが求められます。

  • 自身のレジリエンスを高める
  • 部下やチームのレジリエンスを高める
  • リーダーが率先して情報や意見交換を行う

組織が変わろうとする中で、リーダーはとても重要な存在です。リーダーには何が求められるのか、それぞれ参考にしてください。

自身のレジリエンスを高める

リーダー自身のレジリエンスが高くなければ、組織のレジリエンスは向上しません。

リーダーは責任ある立場です。業務内容の質や量は新人・若手社員とは比べ物になりません。ストレスを抱えやすい立場でもあるため、気持ちを安定させて業務を行わなければ、部下に影響を及ぼします。

目標の達成が難しいときでも、高いレジリエンスをもつリーダーなら、ポジティブな発言や前向きな姿勢でチームを引っ張ります。レジリエンスが高いリーダーは部下たちに良い影響をもたらすため、組織全体のレジリエンス向上につながるのです。

部下やチームのレジリエンスを高める

組織のレジリエンスを高めるためには、社員一人ひとりのレジリエンスを高めなければいけません。そのためリーダーには、直属の部下やチームのレジリエンスを高めることが求められます。

リーダーは部下の感情のコントロール力や自尊感情を高めることが必要です。たとえ失敗したり、つまづいたりしても立ち直れる克服力を身につけさせなければいけません。

また、チームにおいては、困難や脅威を乗り越えられるよう、サポートし合える職場づくりが必要です。そのためにも、リーダーは広い視野をもち、チーム全体を見ることが大切です。

リーダーが率先して情報や意見交換を行う

組織内の風通しが良くなるよう、リーダーは部下やメンバーと率先して話をするようにしましょう。

「自分が思っていること」「今の状況」「今後やるべきこと」といった情報を共有したり意見交換したりすることで、部下からも意見が出やすくなります。風通しの良い職場環境となるため、仮にトラブルが起きたとしても、部下はすぐに相談できるようになるでしょう。

組織のレジリエンスを高めるには働きがいのある環境作りが重要

社会情勢や事業環境が目まぐるしく変化し、さまざまな困難に遭遇する近年、これまでの常識が通用しない中でも、困難をしなやかに乗り越えられる高いレジリエンスが組織にも求められます。

組織のレジリエンスを高めるためには、社員一人ひとりのレジリエンスを高める取り組みが必要です。社員にとって働きがいのある職場環境が整っていれば、課題や困難が生じても、サポートし合いながらうまく適応できるでしょう。

「CYDAS」は、社員にとって働きがいをつくるシステム開発を行うタレントマネジメントシステムです。働きがいは「自己成長」と「貢献実感」の2つで構成されていると考え、データを活用した人事施策によって、社員の働きがいをつくり、組織の成長につなげます。

「組織のレジリエンスを効率よく高めたい」「社員の採用・異動・育成などの人事施策に活用したい」と考えている方は、お気軽にお問い合わせください。

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