働きがいを応援するメディア

2021.4.7

推進されているキャリア教育!これを読んでキャリア教育を理解しよう

時代の流れが変わる中で、教育の流れも大きく変わってきています。そのような中で、「キャリア教育」という言葉を耳にした人もいるでしょう。言葉だけを聞くと、難しそうに感じるかもしれませんが、意外と身近に存在するものです。本記事では、キャリア教育について知りたい人のために、キャリア教育とは何かをはじめ、具体的な取り組みや課題などについて紹介します。

キャリア教育とは?

キャリア教育とは、子どもたちの社会的・職業的自立を目標に学ぶ意欲を高めて、一人一人が自分自身の価値を見つけ、自分らしく生きられるような能力や態度を育てていく教育的働きかけです。1970年代初頭の米国連邦教育長官であったシドニー・マーランドによって、「career education」が提唱されたことが始まりといわれています。文部科学省によれば、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要となる基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義され、2017、2018年改訂の学習指導要領からカリキュラムとして組み込まれているのです。
なお、キャリア教育には2つの側面があります。1つ目は社会に出て自立した職業人になるために、学校教育の中でそれに必要な能力を身に付けること、2つ目は働く意味や職業観を考え、自分の将来を主体的に選び、意欲的に働くために必要な主体性の育成です。キャリア教育での育みが期待される具体的な能力としては、人間関係形成能力・情報活用能力・将来設計能力・意思決定能力が挙げられます。人間関係形成能力では、自分だけでなく他者の個性も大切にしながら、協力して物事を進めていく自他の理解能力やコミュニケーション能力が、情報活用能力では学ぶことや働くことの意義を理解し、情報を活用しながら自分の進路を選択していく情報収集・探索能力や職業理解能力が求められています。
また、将来設計能力では自分の生き方について考え、将来を設計して進めていく役割把握・認識能力や計画実行能力が、意思決定能力では自分の意志で決定を行い、出現した課題に取り組むことに必要な選択能力や課題解決能力が求められているのです。これらの能力を身に付けるために、普段の生活の中だけでなく、教育カリキュラムとして盛り込むことで、より意図的に子供たちの能力向上を目指しているといえるでしょう。

キャリア教育と職業教育の違い

キャリア教育と似た言葉に「職業教育」がありますが、その違いは得ようとする要素です。キャリア教育では一人一人の社会的、職業的自立に向けて必要な能力や態度の育成など、職業教育を含んだ広義での知識や能力開発が目標であるのに対し、職業教育では一定、または特定の職業に従事するために必要な専門的な知能や技術、ノウハウなどの習得が目標となっています。さらに、教育活動においても、キャリア教育は普通教育や専門教育など、特定の教育の場に囚われることなく、あらゆる活動の中で行われるのに対し、職業教育では具体の職業に関する教育を通して行われる点が異なります。
職業教育においては、学校での教育だけでなく、専門学校に通いながら基礎を学びつつ、実際の現場でのアルバイトを通して技術を学ぶなど、具体的な職業の知識や技術を身に付けることが重要視されています。このように、キャリア教育と職業教育の2つの言葉は似ているものの、同じ意味ではありません。しかし、その一方で幼児期教育から高等教育までの体系的かつ実践的なキャリア教育の推進や、職業教育の意義の再評価や職業教育への道筋の体系的整備を進めること、生涯学習の観点に立ち、学校の機能充実を図り、キャリア形成支援を行っていくことを目指している点など、基本的な方向は同じです。

キャリア教育が重要視されるのはなんで?

キャリア教育が重要視されるようになった背景には、日本の社会構造の変化が関係しています。特に、現代社会はインターネットやテレビなどを通じた情報化社会になっていて、その中で産業の分業化、機械化、細分化などが行われることで、子どもたちが大人の働く姿を直接目にする機会が減っている点が問題です。さらに、少子高齢化、終身雇用制度の終了、グローバル化などにより若年層の就職や就業環境が大きく変わっている点も問題となっています。
特に、終身雇用制度の終了に関しては、これまでの日本では定年まで同じ会社で働く選択を取る人も多くいましたが、時代の変化と共に、終身雇用制度が当たり前ではなくなり、一人一人が雇用の形を選んだり、気軽に転職ができたりするようになりました。周りに流されるのではなく、自分の進むべき方向を自分自身でしっかり考えなくてはいけない時代であるといえるでしょう。このような社会のさまざまな要因によって、今の子どもたちが大人になったときに、うまく適応していくためには上級学校への出口指導だけに力を入れているだけではいけないことに気付いたのです。
そして、幼児期くらいの早期段階で子どもたちが主体的かつ意識的に職業やキャリアについて学ぶ機会を導入する必要が出てきたため、キャリア教育が注目され始めました。また、キャリア教育を実施することで、学習意欲の向上も期待できます。国立教育政策研究所が作成した統計資料によると、キャリア教育の実施状況別に見た学習意欲向上の認識率は、キャリア教育の充実度が低い中学校では24.3%にとどまっているのに対し、キャリア教育の充実度が高い中学校では48.7%であることが分かります。同様に、小学校や高等学校での調査においても、充実したキャリア教育の提供をすることで、生徒の学習意欲が向上するとの結果が出ているのです。

キャリア教育の課題

キャリア教育の課題として、まずは職場体験での活動を通してのみでキャリア教育だとしている現状があることが挙げられます。また、そのような現状に対して、改善の努力を行わない人や、そもそも何に取り組めばよいのか分からない教員が多くいるのです。キャリア教育の評価方法に悩んでいる教員も多く存在しています。さらに、社会との接続ではなく、上級教育への出口指導となっている点や、特定の既存組織の従来の在り方を中心として教育を展開し、職業を通じて未来の社会を作り上げるような大局的な視点が持てていない点も問題として挙げられます。ほかにも、将来設計の方に注力してしまい、具体的な能力や技術の育成に乏しいなどの課題もあるのです。
なお、キャリア教育全体の課題としては、上記のような点が挙げられますが、小学校・中学校・高等学校・大学におけるキャリア教育の課題については、それぞれ異なる問題があります。具体的には、小学校ではキャリアカウンセリングの必要性や実施方法の理解の低さが要因となり、その実施率が少ない点が、中学校ではキャリア教育とその他の教育活動が別々で扱われている点が問題です。また、高等学校ではインターンシップの実施率は高いものの、参加率が低く、両者に乖離が見られる点が、大学では担当の教員のみに任せることが多く、体制の整備や全教員への意識改革が必要な点が課題となっています。

キャリア教育の方法

キャリア教育の方法は、教育機関によって異なります。小学校では、全体のキャリア教育として、キャリア発達や望ましい勤労観・職業観を育てることなどを目指しています。学年別では、低学年の生徒には小学校での生活への適応や身の回りの物事への関心を高めることを目指し、ルールを守った生活や行事を通じて他者や社会への関心を高めさせています。また、中学校訪問や体験入学、学校説明会などがあるほか、自分の将来について考える機会を与える教育などを実施している学校もあります。
中学校のキャリア教育では他者と協力し合える人間関係を築くことや自分の役割の自覚を目指しています。学校行事や総合学習など学校教育全体を通してキャリア教育を推進するほか、授業だけでなく、課外活動や委員会活動などを通し、実践的なキャリア教育を提供している点が特徴です。一方、高等学校では自分の役割を果たし、喜びを体得したり、社会と関わる中で夢や希望を持ったりすることが目標とされています。そのために、個別面談を通した各自のフォローアップを行うだけでなく、職場体験活動を行い、大学などの卒業が前提となる職場を含めた外部組織との連携を図る取り組みが行われています。

キャリア教育の具体的な取り組み

教育機関だけでなく、民間企業でもキャリア教育の取り組みが行われています。たとえば、株式会社トモノカイでは「大学体感プログラム」という教育活動が実施されているのです。この活動は大学について中学生のうちから認識を深めようとするもので、座談会で中学生が大学生と交流したり、大学でのゼミを体験したりできる機会が設けられています。また、関西キャリア教育支援協議会という団体は、教育現場に社会人講師を派遣したり、職場体験や工場見学の受け入れなどを引き受けたりして、子どもたちと働く大人の交流の場を設ける活動を行っています。この活動は子どもたちが働く実感を得たり、職業観を深めたりすることが目的です。
ほかにも、公益財団法人マツダ財団と広島大学共同で開催した「科学わくわくプロジェクト」も挙げられます。このプロジェクトでは、科学者・技術者との交流を通して子どもたちに科学への興味関心を持たせるほか、科学・技術を通して地域風土づくりに貢献できることを学べるようにすることで、キャリアについて考えるきっかけを作っているのです。具体的には、プロジェクトに参加する小中高生は科学実験の体験授業などを受けられます。ここで紹介した3つの取り組みのほかにも、さまざまな企業や団体が、キャリア教育のための活動を行っているため、学校以外の活動に参加し、より学びを深めていくのもよいでしょう。

キャリア教育を通して生きる力を身に付けよう

キャリア教育はこれからの日本において必ず必要となる知識や心構えを持つために大切な教育です。このような教育を通して、子どもたちは自分で考え、選択し、激動の時代を生きる力をつけなくてはいけません。そのような力をつけるためにも、教育の在り方を見直し、いち早く実施していくことが求められています。日本という国を支え担っていく子どもたちをよい人材に成長させるためにも、キャリア教育の実施は重要でしょう。

Category

人材育成

Keyword

Keywordキーワード