働きがいを応援するメディア

2019.6.10

人事担当者必見!現場のダイバーシティを推進させるためにすべきこととは?

「ダイバーシティ」という言葉は知っていても、カタカナ用語で意味まではよくわからないという人は少なくありません。今回はダイバーシティの意味や高める方法、有名企業が実際に行っている推進事例まで幅広く紹介します。今までダイバーシティについてよく知らなかったという方や実際何から手をつけていいのかわからないと思っていた方でも、この記事を最後まで読めばきっと理解が深まるはずです。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティは英語で「多様性」という意味を持つ言葉です。この段落では、ダイバーシティについての概要と重要になってきた背景について説明していきます。

ダイバーシティの意味は「多様性への理解」

ダイバーシティとは多様性を意味する概念であり、とくにビジネスの分野においては多様な働き方や人材の雇用を目指すマネジメント関連用語です。人材の多様性にも世界的な注目は集まっていますが、今回は多様な働き方にフォーカスして説明します。
ダイバーシティを広める運動は1990年代、アメリカで女性や有色人種への差別撤廃や人権の尊重を目的として始まりました。日本では女性の社会進出やワークライフバランスの向上、正規・非正規社員の待遇差改善といった文脈と共に語られることが多く、現在でも議論が続いています。

ダイバーシティを考えることが重要となった理由

ダイバーシティが注目を浴びるようになった要因の一つとして雇用形態の変化が挙げられます。現在、日本では少子高齢化が進み、労働人口も年々減少傾向しているため人材不足は深刻化する一方です。人材の確保という観点から、出産、育児中の女性や定年を迎えた高齢者、障がい者などの働く意欲を持ちながら条件が限られるために能力を発揮できなかった人たちが活躍できる社会に注目が集まっています。
さらに、上述の運動からもともとは労働者の権利や利益のために始まったダイバーシティの推進でしたが、取り入れた企業側にも大きなメリットがあることが分かってきました。さまざまな視点から物事を考えるられる人たちが共に働くことで、今まで思いつかなかった画期的なアイデアが生まれることもあり、イノベーション創出やヒット商品の開発に結びついた企業が多数あります。

ダイバーシティの種類は大きく2つ

一口にダイバーシティといっても文脈や人によって解釈はまちまちですが、ビジネスにおけるダイバーシティは、その内容によって大きくデモクラフィー型、タスク型という2つの型に分けることができます。ここからはこの2つの違いについて説明します。

デモグラフィー型

デモグラフィー型のダイバーシティとは、性別や国籍、年齢など「目に見える属性」における多様化のことです。育児中の女性や外国人、シルバー人材や障がい者の登用など、違う視点を持つ人々が共に働くことで新たな価値を創造することを目標としています。デモグラフィー型のダイバーシティ導入はコストの問題や成果が出るまでに時間がかかる場合もあることから、多くの部署や資金力を持つ大企業に多い傾向があります。一般的に「ダイバーシティ」として認知されているものはこちらのタイプです。

タスク型

タスク型は、個々の人材がこれまでに培ってきた経験やスキルを自社で生かすことによって生まれる多様化のことです。経験重視の中途採用や専門分野に特化した新人育成など実務に必要な人材を確保し、喫緊の人手不足の解消と生産性を高めることを目的としています。タスク型のダイバーシティのメリットは一人ひとりの社員に適した仕事を割り振ることで労働生産性を高めることにあり、少数精鋭型の中小企業で取り入れられることが多いタイプです。

ダイバーシティの計測方法

ダイバーシティは企業の多様性を指す概念ですが、概念そのものに色々な解釈の仕方があるため、総合的に数値化して計測することは難しいと言えます。そんな中、自社内でどれだけダイバーシティが浸透したかを測定する方法としては以下の2つが挙げられます。
1つめはダイバーシティを高めるにあたっての、企業として最終的な目標を決めることです。○年までに女性役職者を○人輩出する、海外国籍の社員を全体で○%以上にするなどの目標を定めることで、ふんわりとした概念ではなく目に見える成果によって達成率を測ることができます。
2つめは1年に一度など頻度を決め、「どれだけ企業全体にダイバーシティが浸透したか」を評価する機会を設けることです。上記の数値を参考に達成度を振り返り、来年の目標値といつまでに最終目標を達成できるかを見直すことで変化を目に見えやすくすることができるでしょう。

どうすればダイバーシティを高められるのか?

それでは、どのようにすれば自社内でダイバーシティを高めることができるのでしょうか。ダイバーシティ導入促進のために重要なポイントを主に4つに絞って説明していきます。

経営者が自らメッセージを発信する

ダイバーシティを高めていくには、会社が大きければ大きいほど経営層の強い意志が必要になります。経営者自らが社員に向けてダイバーシティの重要性やメリット、予想される問題に対する理解を促すメッセージを発信し、自社内でも取り入れていきたいという真摯な姿勢を示し続けることが大切です。たとえば週に1回他社のダイバーシティ推進事例をとりあげたメールを全社員に送信する、自社の教育プログラムにダイバーシティの学習を取り入れるなど、経営陣の本気を見せ続けることで従業員一人ひとりの意識を変えていく必要があります。

人事や評価制度の改革を行う

新卒一括採用、終身雇用などの古い日本の企業文化や風潮に基づいた人事と評価制度では、人材が多様化した今の時代には対応できません。そのため、現状の就業規則・人事・評価などすべての制度を根本から見直す必要があります。そもそもダイバーシティは、個々の多様性を重視し働きやすい環境をつくるためのものです。特に女性や若手社員など、従来の慣習に染まっていないマイノリティの意見にいかに耳を傾けられるかが重要となります。
ダイバーシティを高め、それぞれ異なる条件の下でも働きやすい環境にするためには公平かつ公正な人事、評価制度の構築は必要不可欠です。人事部内にダイバーシティ推進担当や若手社員活躍推進担当など、新たに役職を設けることも有効な手段といえるでしょう。

自社内のコミュニケーションを促進する

ダイバーシティを推進していくために大きな障害となるのが、社員間でのダイバーシティへの理解不足、認識のギャップです。それを緩和するためには、社員同士、社員と経営層が本音で意見交換できるコミュニケーションの場を設置することが大切になります。部署ごとに月1回程度ダイバーシティについて議論する場を設けたり、教育の中で個々のダイバーシティの考え方についてヒアリングを行うなどの対策が考えられます。

ダイバーシティへの意識改革を行う

現状から脱却してダイバーシティを浸透させるためには、社員に対して意識改革を行うことが必要不可欠です。適切に意識改革が行われなければ、ダイバーシティは浸透せず楽な現状維持に流れてしまいます。特に既存のルールに長年慣れ親しんだ管理職への意識改革は必須です。今までのやり方に問題意識を持たない管理職も多く、彼らの意識を変えることは容易ではないかもしれません。しかし、柔軟な考え方を受け入れ、ワークライフバランスを尊重できる管理職を育てることこそがダイバーシティの促進につながります。たとえば、主だった管理職の意識をまず変革し、「ダイバーシティ推進担当部門」などの新たな部門を社内に設けた上で社内でも影響力のある人物を配置し、全社に訴えかけていくなどの方法も有効です。

ダイバーシティ推進の4つの事例を紹介!

続いて、ダイバーシティの向上に成功した企業事例を4つ紹介します。具体的な事例を見てイメージを膨らませ、ダイバーシティを自社で推進していく上での参考にしてみてはいかがでしょうか。

1:海外技術者の採用

自動車や航空機のエンジン部品を製造している「小金井精機製作所」では、若手技術者の不足に悩んでいた際、ベトナムの大学から紹介を受けたことをきっかけに10年以上にわたってベトナム人の新卒学生を採用しています。単にベトナム人を採用するだけはなく、候補者やその家族にも面会して丁寧な説明を行ったり、社員とともに来日した配偶者を積極的に採用するなど、異国の地で暮らすことになる社員へのケアも注目すべきポイントです。そうした会社の真摯な対応が功を奏し、今では精密加工に関わる社員のうち10%をベトナム人の技術者が占めており、後進の教育や売り上げの牽引に大きな成果を出しています。

2:女性役職者の活躍推進

誰もが知る大手企業、「日産自動車」では1999年からダイバーシティ推進の取り組みに力を入れています。女性の管理職拡大を目指すために、メンター・キャリアアドバイザーという役職を設置し、女性の心理的なサポートや今後のキャリア形成について相談ができる環境を作り上げました。女性が商品企画責任者を務めた日産の自動車「ノート」は大ヒットを記録し、顧客ニーズの把握はもちろん生産ラインの改善や生産性向上などの分野にも女性社員の意見が積極的に取り入れられています。

3:高齢者雇用への取り組み

長野県にある「株式会社小川の庄」の事例です。主に食品関係の製造業を担っているこの会社では、「60歳入社・定年なし」というスローガンをかかげ、高齢者を継続採用してきました。最近では、若手社員の採用も進めており、その結果
・高齢者:培ってきた知恵の提供と気配り
・中間層(40~50代):マネジメント、教育
・若手:仕事の速さ、効率のよさ
などそれぞれの良さを生かした明確な役割分担に成功しました。また、多種多様な人が活躍しているため、互いに尊重し合い風通しのよい社内雰囲気をつくることにもつながっています。

4:労働時間の短縮

ZOZOTOWNなどの運営を行う「株式会社スタートトゥデイ」では、ワークライフバランスの向上を実現することで従業員の人生を充実させることを目標とし、2012年から6時間労働制を導入しました。昼休みをなくす代わりに15時には仕事が終わるという短時間勤務制の導入により、育児中や小さなお子さんがいる社員からは働きやすくなったという声があがっています。

ダイバーシティ推進における留意点

ダイバーシティを机上の空論で終わらせず、きちんと自社に浸透させるためにはいくつか留意点があります。これらを見落とさず、しっかりと対応していくことでダイバーシティの推進につながっていくでしょう。

基本的な理念や価値観の土台をかためておく

ダイバーシティを推進するにあたって、避けては通れないのが利害の対立です。例として、育児中などに短時間勤務制度を利用する社員のサポートのために、他の社員の負担が増えることなどが挙げられます。全社員の不平不満全てに100%応えることは現実的に不可能です。そのため「どういった点に着目してダイバーシティを進めていくか」という基本理念、価値観をあらかじめ固めておく必要があります。

他社の取り組みをそのまま取り入れない

このような基本理念や価値観は企業ごと、経営者ごとに異なります。そのため、他社が行なっている取り組みをそのまま自社に取り入れても失敗してしまうことが多いでしょう。ダイバーシティ推進を成功させるためにも、「この取り組みは自社でも可能か」「この事例を自社の状況に合うようアレンジできないか」と議論をかさね、自社独自の多様性を築く必要があるのです。

ダイバーシティとインクルージョンが切り離せない理由とは

最後に、ダイバーシティと切り離すことができないインクルージョンについて説明します。ダイバーシティの推進にあたり、インクルージョンの考え方は必要不可欠ですので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそもインクルージョンとは

インクルージョンとは直訳で包括・包含という意味になります。ビジネス用語としてのインクルージョンは、すべての社員が仕事に参画する機会を与えられ、それぞれのスキルや強み、能力を活かして働ける状態のことです。ダイバーシティと似ているようですが、ダイバーシティが社内に多様な人材が「存在」している状態であるのに対してインクルージョンとは多様な人材が「一体となって働いている」状態を指します。ただ人材を採用しただけでは、「ダイバーシティ」は達成できても「インクルージョン」の状態にはなりません。

インクルージョンの考え方が必要な理由

上記の違いを踏まえると、ダイバーシティをさらに発展させ、理想的に稼働している状態がインクルージョンということになります。多様な人材が自社内に混在しているということは、それだけ社員間での摩擦や対立が起こりやすくなるということ。ダイバーシティを推進したために摩擦や不満が増え、従業員の労働に対する満足度が下がっては意味がありません。ダイバーシティを高めることと同時にそれぞれが立場や違いを尊重し、一体となって働ける状態=インクルージョンを見据えて取り組みをしていく必要があるのです。このように、ダイバーシティとインクルージョンは切り離すことのできない密接な関係にあります。

ダイバーシティを高めるために率先して活動しよう!

グローバル化社会において、企業は生存競争の激化や顧客ニーズの多様化などあらゆる問題に対応することが求められています。少子高齢化で日本市場が縮小する中で勝ち残るためには、ダイバーシティへの取り組みがさらに重要になっていくでしょう。今回紹介した意識改革や制度の見直しなど、社内に確実な変化を起こすためには、経営者自らが率先して行動することが必要不可欠です。まずは自社に合う理念や制度の絞り込み、業務の効率化や管理をサポートしてくれる新しいサービスの調査など、すぐに着手できるところから行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

Category

人材育成

Keyword

Keywordキーワード